西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

VWショックでユーロ圏経済に暗雲! ECB 追加緩和期待が高まりユーロは1.05ドルへ ブログ

VWショックでユーロ圏経済に暗雲! ECB 追加緩和期待が高まりユーロは1.05ドルへ

■ユーロ/米ドルは長期の調整局面から脱してきた みなさん、こんにちは。

 2015年初頭のユーロ/米ドルは、1月22日(木)にECB(欧州中央銀行)がQE(量的緩和策)導入を決定したことにより、想定以上のスピードで1.04ドル台ミドルまで急落。

【参考記事】

●ドラギマジック炸裂! ECBが予想以上のオープンエンドQEを決定してユーロ急落!(1月29日、西原宏一)

 その後、ユーロ/米ドルは暴落の反動で、調整局面が長期化していましたが、それも6カ月経過してようやく終了。ユーロ/米ドルは再び動意をみせてきました。

■フォルクスワーゲンショックで、ユーロ圏経済は停滞へ ユーロ/米ドル反落のきっかけは、ドイツの大手自動車会社のスキャンダル。

ユーロ/米ドル 2時間足(出所:米国FXCM)

独VW、米国内で一部車の販売を停止=排ガス規制の不正回避で

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は20日、米環境保護局(EPA)から排ガス規制の不正回避を指摘されたことを受け、米国内の販売店に対し、同社のディーゼル車の一部の販売停止を指示した。

同社のウィンターコルン社長は「顧客の信頼を裏切ったことを深くおわびする」との声明を出し、この問題に関して外部調査を依頼したことを明らかにした。

EPAは18日、同社の一部車が排ガス規制を不正に回避するためのソフトウエアを搭載していたと指摘。同社に科される制裁金は、最大180億ドルに達する可能性もあるという。

VW社の広報担当は、該当車の一部販売停止を認めたが、具体的な台数については明らかにしなかった。

ウィンターコルン社長は「内規や法律に対する違反を容認するようなことはしない」と強調し、関係当局に全面的に協力する姿勢を示した。

出所:ロイター

 このフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題は、米国に続き欧州やアジアで販売された車両についても調査の動きが拡大。

 混乱の中、ウィンターコルン会長(68)は辞任を表明。創業78年のフォルクスワーゲンの歴史上、最大のスキャンダルに発展したこの不正操作は、ドイツに限らず、ヨーロッパの自動車メーカーの株を軒並み急落へと誘引。

 このフォルクスワーゲンショックは、金融市場に置き換えれば、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)スキャンダルと同様の重大な事件に発展。

(※編集部注:「LIBOR」とは、国際的な金融取引の際に基準となる金利のこと。2012年6月ごろ、この金利が操作されているという疑念が持ち上がっ た。この金利は複数の銀行が関与しなければ操作できないしくみとなっていたことから、世界中の銀行を巻き込んだスキャンダルとなった)

【参考記事】

●下落が収まらないユーロクロス。LIBORの不正操作問題でポンドの下落余地拡大!(2012年7月5日、西原宏一)

 この事件により、質実剛健で誠実な工業国のドイツのイメージも大きく傷つきました。この混乱は、当然通貨にとってマイナスとなり、じわじわとユーロは軟調な展開に。

 ユーロがじわじわと下落を再開している背景には…
日銀の追加緩和期待が高まるワケとは? ドル/円は底固め後に124円へ上昇濃厚! ブログ

日銀の追加緩和期待が高まるワケとは? ドル/円は底固め後に124円へ上昇濃厚!

■G20以降は上海株下げ止まり、豪ドル/円は反発 みなさん、こんにちは。

 8月24日(月)の「チャイナブラックマンデー」以降、不安定な状況が続いていた上海株ですが、9月4日(金)~5日(土)に開催されたG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)で、中国が「バブル崩壊を認めた」ことをきっかけに、下げ止まりを見せています。

【参考記事】

●中国人民銀行総裁が株バブルを認めた! なぜ中国の外貨準備高は大幅減になった?(9月8日、西原宏一&松崎美子)

上海総合指数 日足(出所:CQG)

 バブル崩壊を認めたということは、中国が株の暴落に対して、さらなる対策を打つということになるため、市場に安心感が広がってきているわけです。

 これに連れて、上海株のプロキシー(代替)である、豪ドル/円も下げ一服で反発傾向。

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

 もっとも、前回のコラムでご紹介させていただいた英ポンド/円が187円台まで反発していることが、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を牽引している要素も大きいわけですが…。

【参考記事】

●日経平均1343円暴騰はなぜ起きたのか? さらに利下げ見込むNZドルは0.55ドルへ(9月10日、西原宏一)

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 英ポンド/円が牽引するクロス円の反発により、米ドル/円も120円台を回復しています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 急落は収束したとはいえ、日経平均は1万8000円台…
日経平均1343円暴騰はなぜ起きたのか? さらに利下げ見込むNZドルは0.55ドルへ ブログ

日経平均1343円暴騰はなぜ起きたのか? さらに利下げ見込むNZドルは0.55ドルへ

■世界的に株価不安定で為替も方向感のない展開 みなさん、こんにちは。

 8月24日(月)のグローバルな株の急落以降、金融市場は不安定な展開が続いています。グローバルに株が不安定であるため、為替も方向感なく不安定な展開。

【参考記事】

●中国人民銀行総裁が株バブルを認めた! なぜ中国の外貨準備高は大幅減になった?(9月8日、西原宏一&松崎美子)

 特にSQ(※)を控えた今週(9月7日~)の日経平均は乱高下。9月8日(火)の日経平均は433円安。

(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている)

 それが9月9日(水)の日経平均は一転して急騰。なんと1343円高の1万8770円でクローズ。空売り比率も大幅に低下。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 この21年7カ月ぶりの上昇幅となる日経平均急騰の背景には、英ポンド/円の急騰が影響しています。

■巨大M&Aが影響!? 英ポンド/円は3日で6円急騰! 9月8日(火)のロンドン市場から突然、英ポンド/円が暴騰。前日、7日(月)の英ポンド/円の安値は180.23円ですので、そこからわずか2日で約5円急騰。

 9月9日(水)はさらに円安が進行しており、英ポンド/円は、一時、186円台ミドルまで到達しています。実に、3日で6円の暴騰。

英ポンド/円 2時間足(出所:米国FXCM)

 この英ポンド/円急騰の背景には、巨大M&Aが影響しています。

三井住友海上が5000億円超で英損保買収。

三井住友海上火災保険は英損害保険大手のアムリンを買収する方向で最終調整に入った。買収額は5000億円超とみられる。保険会社の保険金支払いリスクを引き受ける再保険を中心に、海上保険、航空保険などを幅広く扱う同社の買収で、海外展開を加速する。

出所:日経新聞

 人口減による国内の保険需要の縮小に対し、海外で活路を見出す戦略が続きます。

 9月8日(火)には、このM&Aが正式発表となり、ロンドン市場ではM&Aに絡む英ポンド/円の買い(ユーロ/円の買い、ユーロ/英ポンドの売り)が大規模に持ち込まれた模様。

 これを受けて、英ポンド/円は急騰しました。

英ポンド/円 1時間足(出所:米国FXCM)

 連れて、118.00円台後半で軟調に推移していた米ドル/円も、一気に120円台を回復。

米ドル/円 1時間足(出所:米国FXCM)

 この円安に呼応して、9月9日(水)の日経平均は前営業日比で1343円の暴騰。これは、史上6番目の上げ幅となるものでした。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 公的年金に加え、巨大M&Aの円売りが、米ドル/円と日経平均をサポートした展開。

 ただ、前回のコラムでご紹介したように、NYダウが安定しない限り、グローバルに株はまだ不安定。

【参考記事】

●日本株安・円高でアベノミクスが苦境に。待望される日銀の追加緩和はあるのか?(9月3日、西原宏一)

  公的資金に加え、巨大M&Aの円売りにより…
日本株安・円高でアベノミクスが苦境に。 待望される日銀の追加緩和はあるのか? ブログ

日本株安・円高でアベノミクスが苦境に。 待望される日銀の追加緩和はあるのか?

■公的年金の買い? 大量の「株買い・円売り」が入る みなさん、こんにちは。

 8月24日(月)に起こったミニクラッシュ(株安・円高)に対し、先週(8月24日~)は本邦公的機関からの「株買い・円売り」により、事態が沈静化したのは前回コラムのとおり。

【参考記事】

●NYダウはさらに暴落するリスクあり!? 株高のカギを握る本邦当局の一手とは?(8月27日、西原宏一)

 ただ、今週(8月31日~)、9月1日(火)にも、NYダウが再び急落。一時、1万6000ドルを割り込み、200週移動平均線が再び見えてきたことから、マーケットは神経質に。

NYダウ 週足(出所:CQG)

 連れて、米ドル/円は119.22円まで急落。

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 ただ、先週(8月24日~)同様、9月2日(水)の東京市場では、公的年金とウワサされる「株買い・円売り」が大量にマーケットに投下され、米ドル/円は一気に、120円台ミドルまで反発、日経平均も1万8000円台を回復しました。

日経平均 日足 (出所:株マップ.com)

 マーケット参加者は、改めて本丸であるNYダウが不安定な環境下、「株と米ドル/円」も壊れやすい(fragile)状況にあること、そして、本邦当局からの対応がなければ、続落する可能性が高いことを認識することになります。

【参考記事】

●NYダウはさらに暴落するリスクあり!? 株高のカギを握る本邦当局の一手とは?(8月27日、西原宏一)

■伸びない設備投資と消費で、アベノミクスは苦境に… 一方、永田町に詳しい友人によれば、政府関係者の間で「伸びない設備投資」が話題になっている模様。

 第2四半期の法人企業統計によれば、設備投資は相変わらず芳しくない結果に。

法人企業4-6月期に過去最高益、設備投資は前期比減で2次QE下押し

財務省が1日発表した2015年4─6月期の法人企業統計(金融業・保険業を除く)によると、経常利益は円安と原燃料コスト低下を主因に過去最高益となった。一方で、設備投資は前期比2.7%減少し、4期ぶりに落ち込んだ。

4-6月期の国内総生産(GDP)の設備投資が、下方修正される見通しが高まった。

4-6月期の売上高は前年比1.1%増と1─3月期の減収からは脱したが、昨年同期が消費税引き上げ直後だったにもかかわらず、伸び率は低い。前期比では2期連続で減収となった。

出所:ロイター

 過去2年強、アベノミクスがマーケットをけん引してきたのですが、消費は伸びず、多くの企業では、手元流動性が拡大しており、デフレマインドも払拭できないまま。

 麻生財務相も「設備投資に積極姿勢出てもおかしくない」とコメントするほど。

 伸びない設備投資と消費の中、徐々にアベノミクスは苦境に…。

  前述のように、アベノミクスが苦境に追い込まれている中…
NYダウはさらに暴落するリスクあり!? 株高のカギを握る本邦当局の一手とは? ブログ

NYダウはさらに暴落するリスクあり!? 株高のカギを握る本邦当局の一手とは?

■上海株は重要サポート・200日移動平均線決壊で急落 みなさん、こんにちは。

 上海株の下落は先週(8月17日~)から始まったわけではありませんが、中国当局のたび重なる株価対策が短期以外は効果を見せず、徐々に上値が下がっていました。

【参考記事】

●上海株暴落、商品市況悪化でも豪ドル下落が緩慢だった理由判明! 豪ドル下落再開か(8月20日、西原宏一)

 ただ、上海株は、200日移動平均線が長期に渡って下値をサポートしていました。それが先週(8月17日~)、ついに決壊すると、上海株は支えを失って急落。 

上海総合指数 日足(出所:CQG)

 それが、本丸であるNYダウの急落を誘引しました。

【参考記事】

●NYダウが一時、1000ドル以上の大暴落!セリングクライマックスはいつなのか?(8月25日、西原宏一&松崎美子)

NYダウ 日足(出所:CQG)

■NYダウはマジノ線の1万7000ドル割れ 2015年に入ってからのNYダウは、米国経済の好調さを背景に底堅いながらも、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ予測を背景に徐々に上値を切り下げていました。

【参考記事】

●ついにマイナス金利の住宅ローンが登場!? 金利正常化に向かう米ドルは一人勝ち!(3月5日、西原宏一)

 それが、上海株の急落をきっかけに、8月20日(木)のNY市場で1万7000ドルを割り込んでしまいます。

 NYダウのマジノ線(※)である1万7000ドルが決壊すると、米国株の下落トレンドが明確に。

(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)

 週明けの8月24日(月)には、市場参加者の投げ売りを誘い、NYダウは、一気に1万5370ドルまで暴落しました。

NYダウ 日足(出所:CQG)

■米ドル/円は、116.15円まで暴落 上海株のような新興国の株が急落しても、主要市場に激震が走るわけではありませんが、金融市場の本丸であるNYダウが急落すると世界は一変。

 日経平均も暴落。連れて、米ドル/円も118.00円のサポートが崩されると、あっという間に、116.15円まで暴落しました。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 リスクアセットである豪ドル/円も総崩れし、一気に82.08円まで急落。

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

 一方、株が急落すると、円に替わって、ファンディング通貨(=キャリートレードをするときに調達される通貨)の代表となったユーロは逆に急騰。

【参考記事】

●中国発のリスク回避強まり世界同時株安! 南アランド/円は乱高下、一時10%超暴落!

 ユーロ/米ドルは、1.1712ドルの高値まで反発するといったようにマーケットは大混乱。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 NYダウという本丸が崩されると、金融市場が色めきたち、8月24日(月)の急落はリーマンショックを彷彿とさせる暴落相場となりました。

 ただ、今週、8月25日(火)に公開した「FXほっとLINEで作戦会議」でもご紹介しましたが、24日(月)のように、短時間で一気に暴落する相場は、いったんセリングクライマックスになる傾向があります。

【参考記事】

●NYダウが一時、1000ドル以上の大暴落!セリングクライマックスはいつなのか?(8月25日、西原宏一&松崎美子)

 8月24日(月)の暴落翌日から、本稿執筆時点(8月27日)までのマーケットは、暴落からの反動で、いったん沈静化しています。

 一時、116.15円まで暴落していた米ドル/円は、120円台前半で推移。日経平均も本稿執筆時点で1万8720円と回復しています。

 今回の、各市場のドミノのような急落の連鎖には…
上海株暴落、商品市況悪化でも豪ドル下落 <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>が緩慢だった理由判明! 豪ドル下落再開か</i> ブログ

上海株暴落、商品市況悪化でも豪ドル下落 <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>が緩慢だった理由判明! 豪ドル下落再開か</i>

■中国経済急減速の影響を受ける「Troubled 10」 みなさん、こんにちは。

 8月中旬以降の金融市場を震撼させたのは、中国人民元の突然の切り下げでした。

【参考記事】

●人民元ショックの対抗策で浜田節が炸裂!? 日本株高でドル/円は128円へ上昇濃厚!(8月13日、西原宏一)

 中国人民銀行[中国の中央銀行]による連日の中国人民元切り下げに、夏季休暇明けのマーケットは混乱し、一時、世界的に株価が急落しました。

 その後、中国人民元の切り下げはいったん収まり、マーケットに安堵感が漂ったのもつかの間、8月18日(火)に再び上海株が急落し、世界的に株価も再び不安定な展開に。

上海総合指数 日足(出所:CQG)

 8月に入って、中国発の報道に金融市場は翻弄されています。

 呼応して、原油を筆頭に、鉄鉱石、ミルクプライス(乳製品に対する支払い価格)といった商品価格は軒並み急落。

NY原油先物 2時間足(出所:米国FXCM)

 商品価格は世界経済の先行指標と言われています。

 中国経済の急減速に伴う商品価格の急落は、中国経済に依存して発展してきた多くの国の減速を意味します。

 米系の大手金融機関・モルガンスタンレーは、中国関連ビジネスで悪影響を受けるブラジル、ロシア、韓国、台湾、シンガポール、タイ、チリ、コロンビア、ペルー、南アフリカの10カ国の通貨を「Troubled 10」と称し、これら諸国の経済の急減速を警告しています。

【参考記事】

●中国人民元切り下げで売り推奨の通貨は? さらに利下げ濃厚のNZドルは売り戦略で!(8月17日、西原宏一&松崎美子)

米ドル/ロシアルーブル 日足(出所:CQG)

米ドル/コロンビアペソ 日足(出所:CQG)

■商品価格の下落で豪ドル/米ドルは再び軟調に 一方、新興国通貨のみならず、主要通貨の中でも、商品価格の動向に大きな影響を受ける資源国通貨と称される通貨があります。

 たとえば、原油であれば加ドル、鉄鉱石は豪ドル、ミルクプライスはNZドル。

【参考記事】

●NZドルは1200pips急落! NZ中銀がさらに利下げする公算が濃厚な理由とは?(7月23日、西原宏一)

●商品価格の低迷が資源国通貨に痛手! 原油下落で、ユーロ安になる理由とは?(7月30日、西原宏一)

 また、今回のように中国経済の動向にも大きな影響を受ける国といえば、オセアニア通貨であるオーストラリアとニュージーランドです。

 昨年(2014年)末、為替市場参加者の間では、豪ドル/米ドルの下落は、ユーロ/米ドルの下落と双璧をなすものとされ、豪ドル/米ドルは明確なトレンドのある注目の通貨ペアと言われていました。

 また、昨年(2014年)末に公開したコラムにもあるように、米系の大手金融機関・バンク・オブ・アメリカ(BOA)が、今年(2015年)推奨するトレードの筆頭は豪ドル/米ドルでした。

【参考記事】

●衆院選までドル/円は116~121円のレンジ。120円接近で口先介入が出やすい理由は?(2014年11月27日、西原宏一)

 多くの銀行の豪ドル/米ドルのターゲットは0.7500ドル。その予想どおり、豪ドル/米ドルは年末年始にかけ、急落。

【参考記事】

●米ドル/円は高値追い禁物で押し目待ち。豪中銀総裁は0.75ドルのターゲット明言!(2014年12月18日、西原宏一)

 そして、2015年3月には、豪ドル/米ドルは、ターゲットである、0.75ドルレベルまで早々に急落し、多くの為替トレーダーの収益に貢献。その後は、半年に渡って0.7500~0.800ドルで調整局面入りとなっています。

 しかし、中国経済の悪化に伴い、商品市況が悪化の一途をたどることによって、豪ドル/米ドルは再び軟調な展開に。

  ただ、今回の下落局面で市場参加者がとまどいをみせたのが…
人民元ショックの対抗策で浜田節が炸裂!? 日本株高でドル/円は128円へ上昇濃厚! ブログ

人民元ショックの対抗策で浜田節が炸裂!? 日本株高でドル/円は128円へ上昇濃厚!

■突如、中国人民銀行が中国人民元を切り下げ みなさん、こんにちは。

 今週(8月10日~)のサプライズは中国人民銀行[中国の中央銀行]が、8月11日、12日と2日連続で、合計で3.5%もの実質的な中国人民元の切り下げを行ったこと。

 本日(8月13日)も1.1%の人民元安を容認。結果、わずか3日間で中国人民元は4.6%の切り下げ。

米ドル/中国人民元(USD/CNH) 日足(出所:CQG)

 市場では、10%の人民元安容認とのウワサも出始め、世界的に株価は下落。

 8月12日(水)の日経平均先物は2万円近くまで急落。呼応して、米ドル/円は、一時、123.79円まで下落しました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 ただ、NDF(※)市場では、すでに8%近い人民元安進行を織り込みつつあります。

(※編集部注:「NDF」はノン・デリバラブル・フォワードの略。ざっくり言うと、特殊な先物取引のようなもの)

米ドル/中国人民元(USD/CNH) 日足(出所:CQG)

 前述のように、中国当局が約10%の人民元安を容認するとの観測もありますが、すでに、さらなる人民元安もマーケットはかなり織り込んだと言えます。

■日銀の追加緩和で人民元切り下げを相殺? 今回の中国人民元ショックに対し、浜田宏一・内閣官房参与がすかさずコメント。

日本は金融緩和で人民元切り下げの相殺可能

内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は、中国の人民元切り下げについて、日本は金融緩和で相殺することができるため、懸念する必要はないとの見方を示した。

浜田氏は13日、ブルームバーグの問い合わせに対し英文電子メールで回答し、日本の外需に過大な影響が出るようならば、日本銀行が追加緩和する可能性もあると述べた。

出所:Bloomberg

 中国人民元切り下げがマーケットに与えたショックを和らげるためのコメントですが、逆にマーケットに負荷がかかれば、日銀の追加緩和の可能性があることを示唆しています。

内閣官房参与の浜田宏一氏は、中国人民元ショックは日銀の追加緩和で相殺できるので、懸念する必要はないとの見方を示している。

写真:ロイター/アフロ

 直近、原油がじわじわ下落しており、日本とユーロ圏にデフレ圧力がかかっている状況。

【参考記事】

●米国株は不調でも日本株はなぜ強いのか? 原油安が日銀やECBの追加緩和圧力に(8月11日、西原宏一&松崎美子)

NY原油先物 日足(出所:米国FXCM)

 この浜田内閣参与のコメントは、可能性が低いといえども、仮にマーケットに強い負荷がかかれば、日本銀行が追加緩和に出る可能性があることを想起させるコメントです。

 今回の中国人民元ショックで、日経平均は…
商品価格の低迷が資源国通貨に痛手! 原油下落で、ユーロ安になる理由とは? ブログ

商品価格の低迷が資源国通貨に痛手! 原油下落で、ユーロ安になる理由とは?

■商品価格低迷で資源国通貨が下落 みなさん、こんにちは。

 上海株式市場は、中国政府の介在によって、不安定ながらもなんとかサポートされていますが、中国経済の減速が大きな影響を与えているのが商品市場。

【参考記事】

●第2のリーマンショックの引き金を引くのか? 上海株急落も中国政府はもう打つ手なし!?(7月28日、西原宏一&松崎美子)

 原油、鉄鉱石、ミルクプライス(乳製品に対する支払い価格)と軒並み低調。

NY原油先物 日足(出所:米国FXCM)

 原油は加ドル、鉄鉱石は豪ドル、ミルクプライスはNZドルといったように、こうした商品価格の低迷は、資源国通貨にダイレクトに影響を与えます。

【参考記事】

●NZドルは1200pips急落! NZ中銀がさらに利下げする公算が濃厚な理由とは?(7月23日、西原宏一)

 原油の反落により、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])は7月15日(水)に今年(2015年)2度目の利下げを決断。呼応して加ドル/円は95円台へと反落。

加ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:加ドル/円 4時間足)

 鉄鉱石価格の急落により、豪ドルも軟化。

 RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は政策金利をすでに2.00%まで下げており、追加利下げは予測されていないことから、豪ドル/円は急落こそしていませんが、90円台という低水準で推移。

豪ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 そして、ミルクプライスの急落により、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が、なりふり構わず追加利下げをしているNZドルも急落。

 RBNZはさらに追加利下げをする公算も濃厚です。

【参考記事】

●NZドルは1200pips急落! NZ中銀がさらに利下げする公算が濃厚な理由とは?(7月23日、西原宏一)

 NZドル/円は、一時、80円台ミドルまで急落しています。

NZドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 上海株が不安定ながらも政府の介在によってサポートされていることから、前述の資源国通貨もサポートされていますが、中国は株よりも実体経済の低迷が顕著になっており、需要が停滞している商品市況は低迷。

 よって、調整はあるものの、資源国通貨の上値は限定的となる公算が濃厚。

 低迷する原油価格はユーロの動向にも影響を与えます…
NZドルは1200pips急落! NZ中銀が さらに利下げする公算が濃厚な理由とは? ブログ

NZドルは1200pips急落! NZ中銀が さらに利下げする公算が濃厚な理由とは?

■キー首相がNZドルの下落スピードについてコメント みなさん、こんにちは。

 当コラムで連続して取り上げているNZドルですが、7月20日(月)に特記すべきコメントがありました。

【参考記事】

●ハト派的な米FOMCで米ドル/円急反落!NZドル/円が80円割れ濃厚な理由とは?(6月18日、西原宏一)

●フランスがユーロ圏・EU離脱(Frexit)!? ユーロ/ドルが1000pips下落するとの予想も(6月25日、西原宏一)

 それは、ニュージーランドのキー首相のコメント。

「NZドルは予想しているより早く下落した」

 このコメントが発せられたのが、NZドル/米ドルの0.6500ドルレベル。

NZドル/米ドル 4時間足(出所:米国FXCM)

 以前、このコラムでご紹介したとおり、NZドル/米ドルの0.6500ドルというレベルは、2014年9月に、キー首相自らがターゲットとしたレベルです。

「ニュージーランドドル(NZドル)にとって、いわゆるゴルディロックス(景気が過熱しすぎず不況でもない、ほどよい状態)な水準は1NZドル=0.65米ドル前後だ」

【参考記事】

●ドル/円は110円到達でスピード調整入り。首相の口先介入で急落のNZドル、今後は?(2014年10月2日、西原宏一)

■NZドル/米ドルは2カ月半で1200pips急落 キー首相のコメントにより、今週(7月20日~)のNZドル/米ドルは調整局面入り。

NZドル/米ドル 4時間足(出所:米国FXCM)

 もっとも、NZドル/米ドルは、2015年4月下旬の0.77ドル台ミドルから、7月16日(木)の0.6497ドルまですでに急落しています。

 つまり、わずか2カ月半で1200pips、米ドル/円で考えれば12円急落しているわけですので、キー首相がコメントしているように、下落のスピードが速すぎることは否めません。

NZドル/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

 自分が使用しているデマーク(※)のオシレーターも、7月16日(木)に「売られすぎ(over sold)」が点灯していたため、先週末(7月17日(金))には自分も含め、多くのトレーダーはNZドル/米ドル、NZドル/円をスクエアにしていました(これについては、7月16日(木)配信のメルマガ「ザイFX!×西原宏一 FXトレード戦略指令」を参照してください)。

(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと) 

【参考コンテンツ】

●「ザイFX!×西原宏一 FXトレード戦略指令」

 マーケットがかなり、NZドルショートに傾いていたこともあり、NZドル/米ドルはいったん0.66ドル台ミドルまで反発。同様にNZドル/円も82円台ミドルまで上昇しました。

NZドル/米ドル 4時間足(出所:米国FXCM)

NZドル/円 4時間足(出所:米国FXCM)

 そして、キー首相のコメントを受け、さらに注目度が上がったのが本日(7月23日)早朝のRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])からの金融政策発表でした。

 7月23日(木)早朝のRBNZでは、政策金利を0.25%引き下げて…
ユーロ/円は126円台までの下落も視野に! 日本株が好調だと、なぜユーロ安になる? ブログ

ユーロ/円は126円台までの下落も視野に! 日本株が好調だと、なぜユーロ安になる?

■ミルクプライス続落でNZドルは売り継続 みなさん、こんにちは。

 このコラムで過去何度も取り上げているNZドルですが、今週(7月13日~)も続落。

【参考記事】

●ハト派的な米FOMCで米ドル/円急反落!NZドル/円が80円割れ濃厚な理由とは?(6月18日、西原宏一)

●フランスがユーロ圏・EU離脱(Frexit)!? ユーロ/ドルが1000pips下落するとの予想も(6月25日、西原宏一)

 特に7月15日(水)に、ニュージーランドの大手乳製品メーカー・フォンテラ社から発表されたGDT価格指数(※)が前回比10.7%の低下。

(※編集部注:「GDT価格指数」とは、ニュージーランドの大手乳製品メーカー・フォンテラ社が入札ごとに発表する、乳製品の国際価格を示す指数のこと)

 このミルクプライス(乳製品に対する支払い価格)の続落を受け、NZドル/米ドルは、一時、0.6500ドル、NZドル/円は、一時、80.48円まで下落しました。

NZドル/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 4時間足)

NZドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 4時間足)

 NZドル/米ドルの0.65ドル台というのは、昨年(2014年)、キーNZ首相が、下落のメドとコメントしたレベル(過去コラム参照)。

【参考記事】

●ドル/円は110円到達でスピード調整入り。首相の口先介入で急落のNZドル、今後は?(2014年10月2日、西原宏一)

 しかし、NZドルを取り巻く環境は昨年(2014年)以上に悪化しています。

 まず、中国経済の低迷、それに伴うミルクプライスの下落。

 呼応して、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の連続利下げが予測されている環境下では、NZドルの上値は重いまま。NZドル/米ドルは0.6000ドルへ向けて続落する可能性が濃厚。

【参考記事】

●ギリシャ問題、次のXデーは7月15日! 利下げ濃厚なあの通貨ペアに売りチャンス(7月4日、西原宏一&松崎美子)

NZドル/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

■クロス円が上値を抑え、米ドル/円は120~125円のレンジ 一方、米ドル/円は120円をボトムに反発(前回コラムを参照)。

【参考記事】

●上海株暴落で中国警察当局が動いた! ビル・グロス氏もビビる驚きの対応とは?(7月9日、西原宏一)

 しかし、前述のNZドル/円や、ユーロ/円といったクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上値が重いこと(利上げの可能性がある英ポンド/円は除く)が、米ドル/円の上値を抑えていることも確か。

 そのため、当面の米ドル/円は、120~125円のレンジで推移することが濃厚です。

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 先週(7月6日~)は、各テレビ局が報道特番まで組むほど話題に…