陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドル/円を「黒田レジスタンスライン」で売ると 投機筋のカモに!? 130円の大台トライは? ブログ

ドル/円を「黒田レジスタンスライン」で売ると 投機筋のカモに!? 130円の大台トライは?

■米ドル高・ユーロ安トレンド、まもなく加速? 米ドル高基調が一段と強まっている。ドルインデックスは、5月高値のブレイクをもって上昇波に復帰したサインが鮮明となり、今週(7月20日~)に入ってからの反落は、上昇波におけるスピード調整とみるのがいいだろう。

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM)

 この視点では、ユーロ/米ドルも早晩下落波を加速し、1.08ドルの節目割れをもって一段とベア(下落)トレンドを加速する公算が高く、近々1.05ドル~1.06ドルといった下値ターゲットゾーンを狙うだろう。 

ユーロ/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

 前回のコラムでも指摘したように、この場合、ユーロ/円もつれ安になる可能性が大きく、目先のユーロ/円のリバウンドを過大評価すべきではなかろう。

【参考記事】

●リスクオンなら米ドル買い? 米ドル売り?三尊型形成中のユーロ/円下落に要注意!(2015年7月17日、陳満咲杜) 

ユーロ/円 日足 (出所:米国FXCM)

■米ドル/円のごく短期の天井は「黒田レジスタンスライン」 もっとも、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)としてのユーロ/円は、ユーロのみならず米ドル/円の動向とリンクしているから、米ドル/円の「天井」が気になる。

 ごく短期の「天井」と言えば、下記のチャートが示している「黒田レジスタンスライン」に、市場関係者は神経をとがらせている。 

米ドル/円 日足(クリックで拡大) (出所:米国FXCM)

 7月21日(火)に、黒田日銀総裁は国内のインフレ率について、向こう数カ月で相当加速するとの見通しを示した。これを受け、米ドル/円は124.47円から反落してきた。

 黒田さんがどんな根拠で、これからインフレ率が相当加速すると判断しているかは我々の関心事ではないが、インフレ率が相当加速するなら、追加緩和不要といった連鎖的な思惑が当然くすぶる。米ドル/円の頭打ちも当然のなりゆきだと思われる。

 124.47円と言えば、ちょうどレジスタンスゾーンの密集区域にあたる。

 6月17日(水)、24日(水)高値のほか、もっとも気になるのは6月10日(水)高値に近いことだ。何しろこの日は、黒田さんが円安牽制と思われる発言をし、いわゆる「黒田ショック」をもたらした日だからだ(6月12日のコラム参照)。

【参考記事】

●黒田総裁発言はピーターパンが「疲れた、飛び過ぎた」と言っているようなものだ!(2015年6月12日、陳満咲杜)

 同日の高値が124.61円だったことから考えると、市場関係者は当然疑う。要するに、125円に近づいてくると、黒田さんが意図的に発言してくるのでは?となり、やはり、125円手前が「黒田レジスタンスライン」となるか?と、疑心暗鬼に陥る。

 黒田さんの真意がどこにあるかは測れないところだが…
リスクオンなら米ドル買い? 米ドル売り? 三尊型形成中のユーロ/円下落に要注意! ブログ

リスクオンなら米ドル買い? 米ドル売り? 三尊型形成中のユーロ/円下落に要注意!

■米ドルはブルトレンドに、ユーロはベアトレンドに復帰 米ドル高は新たな段階に入った模様。ドルインデックスを見ると、7月7日(火)高値97.23のブレイクがサインの点灯と見なされ、米ドルはブル(上昇)トレンドに復帰したとみる。

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM)

 当然のように、米ドルの対極と位置づけられるユーロは、ベア(下落)トレンドへ復帰したと思う。ユーロ/米ドルでは、同じく7月7日(火)の安値割り込みがサインの点灯と見なされ、ユーロのベアトレンドはこれから加速していくと思われる。

ユーロ/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

 このような視点、14日のレポートをもって説明したい。原文は以下のとおりだ。

ドルインデックスの対極としてユーロ/ドルのチャートを並べ、大型トライアングル型保ち合いの早期終焉、といった可能性を想定しておきたい。

ドルインデックス 4時間足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

ユーロ/米ドル 4時間足(出所:米国FXCM)

ドルインデックスの3月高値は、ユーロ/米ドルの3月安値と対応、それぞれ大型調整波を形成してきた。トライアングル型保ち合いが一番有力視されているだけに、最終子波Eの進行、なお続くと思われる。(同シナリオはデイリーにて既述)

ところで、上のチャートに記したカウントの通りなら、E波の早期終焉というシナリオが浮上される。同カウントでは、昨日ドルインデックスの上昇やユーロ/ドルの下落を最大評価し、それぞれ守れば、E波の終焉に繋がる公算が高まるだろうと推測している。

同シナリオのポイント、ドルインデックスなら、昨日安値95.63を下回らずにして7日高値97.24を上回れば、最初のサインが点灯されるでしょう。半面、ユーロ/ドルの場合、10日高値1.1216を上回れずにして7日安値1.0915割れが生じれば、下放れのサインが点灯されよう。従って、近々シグナルが点灯される公算が大きいから、しっかり確認してから大きなトレンドに乗っていきたい。

 細かいウェーブカウントは違ってくるが、6月19日の当コラムで示唆していたように、ドルインデックスの反落が限定的だったため、ブルトレンドへは早晩、復帰するはずだった。だから、これはシナリオどおりと言える。

【参考記事】

●黒田ショックでミセス・ワタナベ往復ビンタ! 身軽になった米ドル/円は再び高値トライか(2015年6月19日、陳満咲杜)

■リスクオンなのに米ドル買いとなっている理由とは? イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、米ドル高をけん制したものの、2015年内利上げを強く示唆し、その上、米ドル高でも米経済成長が続くと語った。

 ギリシャ問題や中国株暴落の一服もあり、前回のコラムでも強調したように、とりあえずリスクオンの環境へ復帰し、米ドル高トレンドも加速しやすいだろう。

【参考記事】

●ギリシャGDP14年分を吹っ飛ばした上海株暴落は収まり、相場はリスクオンムードへ(2015年7月10日、陳満咲杜)

 ここまで書くと、「何を言ってる? リスクオフの米ドル買いが鉄則で、リスクオンなら米ドル売りじゃないか」といったお叱りを受けるかもしれない。しかし、リスクオフの米ドル高自体は原則論としては問題ないが、ケース・バイ・ケースで、いつでも通用するとは限らない。

■ギリシャ危機の中、なぜ、ユーロは不思議なほど強かった? ギリシャ問題はその典型であろう。ギリシャのEU(欧州連合)離脱は、今はいったん回避されてこそいるが、非常に危なかった時期が何回もあった。そのつど、米ドルが買われたものの、すぐ売られ、結果的にギリシャ危機でもユーロは不思議なほど強かった。

 その背景には、ユーロキャリートレードの存在が大きくあり、また、ユーロ資産投資に伴うヘッジも大きなポイントであった。

 これを簡単に説明すれば、「ユーロキャリートレード」ではユーロを借り入れ、また、「ユーロ資産投資に伴うヘッジ」とはユーロ売りを指しているから、リスクオフになると、その逆転(共にユーロ買い)が生じるということだ。ギリシャ危機が高まる中、ユーロが不思議なほど強かった原因はここにあった。

 したがって、リスクオフが一服してくると、ユーロ売りが再開されやすいので、このタイミングでユーロが売られ、米ドルが買われるのも納得できる。だから、いつまでも通用するとは限らないが、目先、リスクオンへの復帰は、米ドル高を牽引することだろう。

 円の場合も然り。ユーロに比べ、円の事情は…
ギリシャGDP14年分を吹っ飛ばした上海株 暴落は収まり、相場はリスクオンムードへ ブログ

ギリシャGDP14年分を吹っ飛ばした上海株 暴落は収まり、相場はリスクオンムードへ

■チャイナショックが市場を震撼! このところ、チャイナショックがマーケットを震撼させている。

 中国株は、わずか4週間足らずで最大33%も暴落、時価総額にしてギリシャGDPの14年間分の金額が吹っ飛んだ格好となった。中国の個人投資家は、一時総パニックの状況に陥り、にわかに経済危機の様相を呈していた。 

上海総合指数 日足(クリックで拡大)(出所:CQG)

 中国市場のパニックは、まず商品相場に伝染し、商品相場の総崩れで日本株もパニック売りにさらされ、日経平均は一時、1万9115円まで急落したほどだ。前々回のコラムの最後に「中国株の暴落、日本にとって決して対岸の火事ではない」と警告したのも、そのためであった。

【参考記事】

●ギリシャ問題は合意でも決裂でもユーロ安。上海株暴落! 中国株バブル崩壊にご用心(2015年6月26日、陳満咲杜) 

日本株(JPN225)(出所:米国FXCM)

 日本株が外部要素に弱いことは、今に始まったものではない。しかし、日中経済相互関係の深さから考えると、中国が本当に経済危機になれば、日本経済に深刻な打撃を及ぼすから、日本株がパニック的な反応を示したとしてもサプライズではない。

 もっとも、投資家はマスコミの報道に影響されやすい。今回、中国株の暴落に関しても案の定、「中国経済崩壊か」、「中国共産党政権崩壊か」といった記事が一部日本のマスコミにあふれていたことが、市場センチメントを悪化させたところは大きい。

■日本や欧米諸国は中国政府を過小評価しすぎ!? しかし、冷静に考えてみれば、中国株の暴落は確かに深刻な問題であるものの、たちまち経済危機にまで発展する可能性は小さく、また、コントロールできないほど、中国政府は軟弱でないことも明らかだ。

 なぜなら、全体主義国家の性格が強い中国は、世界トップの外貨準備高を有し、外部に限定的な開放しか許していない、基本的にローカルな市場である中国株市場をコントロールする財力も手段もたくさんあるからだ。

 その上、中国政府の意思と能力を、日本を含めた西側がいまだに過小評価しがちで、問題の本質をよく理解できていない評論が氾濫していることも、大きな問題だ。

 確かに今回は、株の暴落スピードが速すぎ…
ギリシャデフォルト濃厚、ユーロ暴落かと 多くの人が思ったら逆に上昇した理由とは? ブログ

ギリシャデフォルト濃厚、ユーロ暴落かと 多くの人が思ったら逆に上昇した理由とは?

■「相場は理外の理」を再認識させられた結果に マーケットは保ち合いを続けている。各材料が錯綜し、マーケットの反応も通常ではなかったので、市場関係者はとまどい気味である。

 一番代表的な事例は、6月29日(月)の市況だろう。

 ギリシャはデフォルトかと伝えられたことで、6月29日(月)朝にユーロ/米ドルが大きなギャップをつけて始まり、ユーロ暴落かと多くの人々が思っていたが、ユーロは続落するどころか、逆に大きくリバウンドし、典型的なリバーサル・デーを記録した。ちなみに、6月29日(月)の値幅はリバーサル・デーとして史上最大だった。 

ユーロ/米ドル 1時間足(6月29日、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 このような値動きを事前に予想できた者は、筆者が知っている限り、皆無に近い(皆無ではないが、根拠の説明が今イチであった)が、事後的な解釈をうまくまとめた者が多い。いろいろな見解のうち、もっとも説得力のある見方として、以下の理由を記しておきたい。

 曰く、「ギリシャデフォルトでユーロ資産の変動率が高まるから、ユーロ資産売りに備えた防衛である」。

 つまり、ギリシャ危機が長引き、ユーロ安が必然視される中で、ユーロ資産投資にはユーロ売りのヘッジがつきものだった。そして、変動率の上昇でユーロ資産が売却に転換されると、必然的にヘッジとして行っていたユーロ売りポジションの解消に動いたわけだ。言うまでもないが、ポジションの解消は、今度はユーロ買いへの転換でもある。

 「相場は理外の理」という本質を、今回の「ユーロ事件」を通じて、筆者を含め、多くの投資家が再確認させられただろう。ギリシャデフォルトでもユーロが上がる場合があるのだから、世の中、やはり、「鉄板トレード」は存在しないわけだ。

■個人投資家はテクニカルの視点を大事にすべき ところで、国際的なマネーフローの事情が複雑で、一個人どころか、ウォール街のトップ集団でもすべてを把握できず、事後解釈ばかり繰り返している以上、我々、個人投資家はやはりファンダメンタルズ上の視点ではなく、テクニカル的な視点を大事にすべきだ。

 ユーロの切り返しは、以下のチャートをもって、短期スパンにおける構造上の理由を説明できるのではないだろうか。 

ユーロ/米ドル 4時間足(6月30日、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

ギリシャデフォルトはほぼ確定、それにしても昨日ユーロの大幅切り返しが値幅大きい故(リバーサル・デーとして史上最大)、単純にサプライズではなく、ウェーブカウント上における構造的な視点をもってアプローチする必要がある。

上のチャートで記しているように、3月安値1.0462を起点とした大型切返し、なお継続中の公算が大きく、同切り返し自体も大型トライアングル型フォーメーションの構造を強め、昨日の大幅反騰、同フォーメーションにおける子波と位置付けるのが自然である。

トライアングル型保ち合いとして典型的なシンメトリカル・トライアングルに近い形で展開される値動きが同カウントの蓋然性を証左、昨日の反騰、D波(黄)のボトムと見做されるだろう。従って、昨日安値から最終子波E(黄)展開され、昨日高値をもって完成されたかどうかは目下の焦点である。

前記トライアングル型フォーメーションの示唆に加え、各子波自体のジグザグ構造に鑑み、E子波(黄)のジグザグ変動、なお途中の公算が大きい。従って、目先性急な判断と行動をなお控えるべきで、トップアウトのタイミングを狙ってから再度エントリーすべきだろう。ユーロ/円も同様で、デイリーレポートのシナリオより遅れて頭打ちの可能性があるので、サインの点灯を待ちたい。

 上は筆者が6月30日(火)に書いたレポートからの引用であるが、構造上の視点をもって検証すれば、ユーロの切り返しに大きな違和感がなくなるかもしれない。

 昨日(7月2日)の米雇用統計の結果があまり良くなかったこともあり、ユーロは反落に転じるまで、なお切返しの余地を拡大する可能性がある。

 ただし、前述のチャートはあくまで6月30日(火)時点の見方で、ユーロ切返しのターゲットを具体的に示唆するものではなく、また、ユーロは早期に頭打ちとなる可能性が大きいので、ご注意いただきたい。

 昨日(7月2日)の米雇用統計は、市場の想定ほど…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ギリシャ問題は合意でも決裂でもユーロ安。</i> 上海株暴落! 中国株バブル崩壊にご用心 ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ギリシャ問題は合意でも決裂でもユーロ安。</i> 上海株暴落! 中国株バブル崩壊にご用心

■ドルインデックスは下げ一服、高値再更新も視野に ドルインデックスは切り返してきた。前回(6月19日)のコラムで指摘したように、5月安値を下回らない限り、米ドル全体の反落はスピード調整と見なすことができる。そして、先週(6月15日~)はこの5月安値に接近していたから、下げ一服のタイミングに差しかかっていたわけだ。

【参考記事】

●黒田ショックでミセス・ワタナベ往復ビンタ!身軽になった米ドル/円は再び高値トライか(2015年6月19日、陳満咲杜)

 新たな上昇波動は、近々5月高値(97.77)の突破によって証左される見通しで、その後、高値再更新も視野に入る。

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM)

 米利上げが規定路線である以上、利上げ時期に関する思惑も短期材料にすぎず、それが米ドル高のスピードを抑えることはあっても、米ドル高の基本的な構造を修正することはできないだろう。

 ユーロサイドのギリシャ問題も大きいが、根本的な要因として、やはり、9年(10年に近い)ぶりの米利上げがより決定的役割を果たすとみる。

■ギリシャ合意がユーロ売り再開のチャンス? 米ドル高が進めば、対極として位置づけられるユーロの一段安は避けられないだろう。前回(6月19日)のコラムで指摘したように、近々ユーロ売りの好機に恵まれるはずで、ギリシャ問題が合意に至った時点がまさにユーロ売り再開のチャンスと思われるフシがある。

【参考記事】

●黒田ショックでミセス・ワタナベ往復ビンタ!身軽になった米ドル/円は再び高値トライか(2015年6月19日、陳満咲杜)

 なぜなら、ギリシャが本当にEU(欧州連合)離脱をすれば、真のリスクは「ギリシャのデフォルトがマーケットにもたらすインパクト」ではなく、「EU一体化を決定的に傷つけること」にあるだろうからだ。

 1951年から推進されてきたEUの一体化は後戻り不可能なので、それがいったん傷つけられると、修復不可能となる。マーケットはEU自体の存在を疑い、破滅的な結果がもたらされるだろう。

 ゆえに、俗説と違って、マーケットはギリシャ合意自体をそんなに懸念しておらず、むしろ、何とかなるのでは…と楽観視しているほどだと言える。

 ユーロ/米ドルの値動きは、もっとも有力な証明材料であろう。ギリシャ談判が二転三転する中、ユーロは上下しながらも切り返しを継続し、6月18日(木)には一時1.1436ドルを打診し、5月高値に接近していた。 

ユーロ/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

 その後、反落してきたが、それはむしろ、ギリシャ合意が近いといった報道を受けた反応であった。明らかに、マーケットはギリシャ合意自体を織り込んでいた。要するに、ウワサの買いで、事実の売りだ。

■ギリシャ問題が合意でも決裂でも「ユーロ売り」 また、たとえギリシャ合意を織り込んでいないとしても、どう転んでもユーロ売りと見る向きが多いことが示唆される。合意できた場合、ユーロはキャリートレードの対象として売られ、決裂した場合は、EU圏の不確実性で売られる。

 この意味では、ギリシャ談判がだらだら続いてきたからこそ、この間のユーロ切り返しや足元の保ち合いにつながったという側面が強く、結果が出れば、ユーロ売りの流れが再開しやすいと言える。いずれにせよ、ユーロの先安感は強く、3月安値から続いてきたユーロの反騰局面は、そろそろ終焉に向かう公算が高い。

 より細かく考えると、ギリシャのEU離脱は現実的な選択肢ではないが、ギリシャがあえて、それを選択した場合、マーケットへのショックを和らげるためにECB(欧州中央銀行)が緊急流動性を提供するだろうから、これがユーロの売り要素として大きく効いてくるだろう。

 決裂の場合の結果は予測しやすいが、では合意…
黒田ショックでミセス・ワタナベ往復ビンタ! 身軽になった米ドル/円は再び高値トライか ブログ

黒田ショックでミセス・ワタナベ往復ビンタ! 身軽になった米ドル/円は再び高値トライか

■米ドル続落もドルインデックスのスピード調整はもう終焉か 米ドル全体が続落している。今回(2015年6月18日)のFOMC(米連邦公開市場委員会)は、市場コンセンサスよりハト派とされ、米ドルロング筋の手仕舞いを一段と促した格好だ。

米ドル VS 世界の通貨(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 マーケットでは早くも9月利上げに懐疑的な見方が浮上、ウォール街に君臨する某投資銀行は、2015年内利上げなしといった過激な見通しを示したほどだ。

 ところで、FRB(米連邦準備制度理事会)理事らの投票に変化はあったものの、投票結果自体は2015年内2回の利上げを示唆している。

 米利上げ時期の不透明感は増加したが、米利上げ自体は規定路線で早晩行われるものであれば、目先の米ドル全体の軟調は、なおスピード調整の領域に留まるだろう。FRBの慎重姿勢が米ドルを買わない根拠になっても、米ドル売りの根拠にはならない。

 したがって、米ドル全体の反落は、なおポジション調整の段階にあり、また、いつものように、調整があったほうがこれからのトレンドがより健全化するから、ドルインデックスを見る限りでは、5月安値に接近しているドルインデックスのスピード調整もそろそろ終焉を迎えるだろう。

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM)

■英ポンド/円の高値更新が円安トレンドの継続を示唆 米ドル軟調のなか、英ポンドの強さが目立ってきた。

 英国インフレ指標の改善やBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のタカ派スタンスが英ポンドを支え、対米ドルでは5月高値を更新、対円では2008年9月以来の高値を再更新した。

 特に英ポンド/円は、事実上、2011年安値を起点とした大型ブル(上昇)トレンドの延長を果たし、ほかの主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)と異なる構造が一段と浮き彫りになった。

英ポンド/円 月足(出所:米国FXCM)

 英ポンド/円の構造については、5月29日(金)の本コラムで説明しており、また先週(6月10日)の「黒田ショック」により上昇トレンドがかえって加速したことを、昨日(6月18日)、筆者のブログにて解釈したので、ここでは重複して説明しないが、英ポンド/円の高値更新自体、円安トレンドの継続を示唆していることは強調しておきたい。

【参考記事】

●上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ(2015年5月29日、陳満咲杜)

 もちろん、クロス円としての英ポンド/円の急伸は、今月(6月)から円安の側面よりも英ポンド高の側面が強かったことは事実である。しかし、クロス円であるゆえに、米ドル/円がベア(下落)トレンドへ転換すれば高値更新が続くわけがないから、英ポンド/円の上昇ぶりは、円安トレンド自体の維持に依存していると言える。

 したがって、メインの米ドル/円が今月に入ってから、たび重なる打撃を受けたものの、上昇波自体が否定されたといった判断は性急だと思う。

■黒田ショックの安値を割り込んでいない米ドル/円は… 実際、米ドル/円は2014年12月高値から形成されてきた大型「上昇トライアングル」型保ち合いを5月末に上放れしたばかりで、保ち合いのスパンに比例した上昇幅をもう達成したとは言いにくい。

 その上、現執筆時点で、米ドル/円は6月10日(水)のいわゆる「黒田ショック」日の安値を割り込んでいないから、現時点で円安トレンドの終焉を認定するのは、何と言っても性急すぎるであろう。

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 黒田総裁発言の真意はいまいちつかみにくいところだが、話がちょっとつたなかったと総裁自身も気づいたか、自らも釈明していた。しかし、マーケットは単に失言と受け取らず、米ドル全般の軟調と相俟って米ドルロングポジションの削減に動いている。米ドル/円がいっそう「身軽」になっていることは確かだ。

 ちなみに、くりっく365の統計を見る限り…
黒田総裁発言はピーターパンが「疲れた、 飛び過ぎた」と言っているようなものだ! ブログ

黒田総裁発言はピーターパンが「疲れた、 飛び過ぎた」と言っているようなものだ!

 米ドル全体が軟調な推移に留まっている。

 先週末(6月5日)の米雇用統計は、米国の2015年内利上げを示唆する内容となったが、ドルインデックスの上昇は短命に終わり、先週末(6月5日)の上昇幅は今週(6月8日~)の週初の下落ですべて帳消しとなった。

 結果として、5月高値を起点とした反落が継続された形となり、米ドルのロング筋をがっかりさせた。 

ドルインデックス 4時間足(出所:米国FXCM)

■ユーロの意外な堅調を支えたのは苦い「スイスショック」 米ドルの軟調は、その対極にあるユーロの「意外」な堅調によって「浮き彫り」となっているが、ユーロの堅調はギリシャ問題に関する思惑やドイツ国債利回りの上昇に支えられた以外に、マーケットの苦い記憶に起因していたところが大きいと思う。それは他ならぬ、あのスイスショックだ。

 スイス当局の政策変更で、ユーロ/スイスフランが1日どころか、わずか20分で41%もの前代未聞の大暴落を演じたことは記憶に新しい。

【参考記事】

●9.11に匹敵する衝撃の「スイスショック」!円相場がその二の舞となる可能性も!?(2015年1月16日、陳満咲杜)

●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!


ユーロ/スイスフラン 日足(出所:米国FXCM)

 金融マーケットに大混乱をもたらしたあのスイスショックは、偏った相場がもたらした大惨事とも言え、その特徴として、極端な流動性低下があったと指摘される。

 周知のように、「レッドライン」を引いたスイス当局を信じ、マーケットはもっぱらユーロロング・スイスフランショートのポジションを積み上げ、当局に対抗して、わざとスイスフランのロングポジションを作る者は極端に少なかった。

 このような流動性が極端に低下した偏った市場になっていたから、それがいったん崩れると、皆が一方向に積み上げられたポジションの処理に迫られ、買い手が見つからず、いまだに信じられないほどの大暴落相場につながったというわけだ。

■オバマ大統領の米ドル高牽制発言が市場の不安を喚起 こういった記憶や教訓が、市場関係者の頭にあまりにも鮮明に残っているから、あるウワサにビビり、米ドルロングポジションの処理に走ったわけだ。そのウワサとは、今回、ドイツで開催されたG7(先進7カ国首脳会議)にて、オバマ大統領が米ドル高を牽制する発言をした、というものだ。

 このウワサは、ホワイトハウスにたちまち否定されたが、マーケットは疑心暗鬼に陥り、あのスイスショックへの連想から、米ドルロングポジションの削除に走ったわけだ。

 ユーロの売りポジションに偏った相場の構造は、何となくスイスショック前の状況を思い出させ、また、米ドルロングポジションの決済で一層流動性が低下するのでは…といった恐怖心に支配された側面も大きいと思う。

 ギリシャ問題になお最終結果が出ない中、ユーロはこういった市場心理に支えられ、「意外に」堅調になったわけだ。

 ユーロ以外の主要通貨では、円の急上昇がもっとも目立ち…
ドル/円は126~127円への上昇も。しかし、 一気の130円超えは難しいとみる理由とは? ブログ

ドル/円は126~127円への上昇も。しかし、 一気の130円超えは難しいとみる理由とは?

■米ドル高ではなく円安、米ドル/円は125円にトライ 米ドル高ではなく円安、といった感が強まったのは先週(5月25日~)からの市況だ。米ドル/円は、一時125円の大台にトライしてから保ち合いが続いているものの、ユーロ/円は2015年年初来高値を更新し、英ポンド/円の高値更新に追随した。

米ドル/円 4時間足(出所:米国FXCM)

ユーロ/円 4時間足(出所:米国FXCM)

 以前のコラムでも述べたように、米ドル全体がブル(上昇)基調をキープしながら、スピード調整を行っている間は、総じてクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上値追いしやすい時期でもある。

【参考記事】

●ドル全体の調整はしばし続く可能性大だがドル/円は118円台死守ならやがて上放れ(2015年5月15日、陳満咲杜)

 先週(5月25日~)のドルインデックスの反落は、ユーロ、英ポンドなどの外貨が対ドルで切り返したことを意味するから、ユーロ/円、英ポンド/円の上値追いは当然の成り行きでもある。

 ドルインデックスでみると、5月安値を起点とした切返しは、いったん3月高値を起点とした全下落幅の61.8%反騰位置に抑えられて、再反落してきたので、昨日(6月4日)まで外貨の反騰につながった。  

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 対極としてユーロ/米ドルの反騰が一番大きく、昨日(6月4日)一時1.14ドルの節目に迫ったことが、ユーロ/円の141円の節目打診をもたらした。 

ユーロ/米ドル 4時間足(出所:米国FXCM)

■125.7円まで押し目なしで、126~127円台の上値余地も 当然のように、ユーロ/円の高値打診は、米ドル/円の堅調ともリンクしているから、米ドル/円の底固さが目立つ。

 6月2日(火)に125円の大台を打診した後、米ドル/円は上昇スピードを緩めたものの、現執筆時点まで同日安値(123.73円)を下回っていない一方、昨日(6月4日)は米ドル全体が一時大幅反落したことから考えて、円売りのモメンタムが維持されていることが明らかだ。 

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 前回のコラムでも指摘したように、基本的には米ドル/円は3月高値を更新したあと、上昇モメンタムを維持できる公算が大きく、125.70円前後の高値をトライするまで、大した押し目がない可能性が大きい。

【参考記事】

●上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ(2015年5月29日、陳満咲杜)

 「押し目待ちに押し目なし」といったリスクを覚悟しておいたほうが良いのは、5月中旬まで続いた長い保ち合いがあったからだ。

 換言すれば、保ち合いの長さに比例して、ブレイク後のモメンタムは強いわけだから、目先の米ドル/円が堅調なのは自然の成り行きだ。

 本日(6月5日)の米雇用統計次第でまた一波乱が想定されるが、指標次第で変動幅が大きくなる可能性はあるものの、米ドル/円の高値トライは、なお途中といった見方は不変。再度高値更新を果たした上に、場合によっては126~127円台の上値余地も視野に入れておくべきだろう。

 反面、早くも浮上してきた130円、あるいは132…
上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み 上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ ブログ

上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み 上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ

■米ドル全面高! 米ドル/円急伸の理由は? 米ドル全面高が続いている。ドルインデックスは97.75まで切り返し、ユーロ/米ドルは1.08ドルの節目に再接近した。 

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM) 

ユーロ/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

 そして、何より注目されるのは米ドル/円だろう。2007年高値124.16円を更新し、2011年安値(戦後最安値)から事実上一本調子の上昇を続けてきただけに、円売りトレンドの雄大さに感心させられたところだ。 

米ドル/円 月足(出所:米国FXCM)

 米ドル/円の上昇スピードが非常に早かったので、日経平均の上昇に伴った外国人投資家の円売りヘッジとか、日本の個人投資家(いわゆるミセスワタナベ)の米ドル売りが踏み上げされた結果だとか、いろんな解釈が聞こえてくる。

 テクニカルの視点では、単純にこの前の保ち合いが長かったので、いったん上放れが確認されると、モメンタムが強まり、相場のスピードが速くなったということだろう。これは自然な成り行きだ。

 こういった長い保ち合いを経てから上放れを果たし、その後、一本調子の上昇をもたらす局面は、今まで何度もあった。単純に言えば、その繰り返しである。

米ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

■逆張りして踏み上げられたミセスワタナベが上昇を加速 この意味では、米ドル/円の上放れとその後のターゲット測定は難しいものではなく、また、少なくとも高値更新後はトレンドフォローを基本的なスタンスにすべきであろう。

 筆者のブログで5月21日(木)に開示したチャートはこの見方を証左し、まだ達成されていない125.70円のターゲットも、これから達成される公算が大きいと思う。 

米ドル/円 日足(5月21日作成、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 筆者自身、米ドル/円の上放れ自体や上昇スピードにサプライズはないが、気になるのは日本のFX会社の統計に見られる、最近の個人投資家の逆張り傾向だ。米ドル/円の上放れにつれて、ミセスワタナベは全体として順張りではなく、逆張り傾向を強めた模様で、その踏み上げによって米ドル/円の上昇が加速した、といった見方も多い。

 筆者の記憶が正しければ、個人投資家は全体として逆張りの傾向が強いが、米ドル/円に限って言えば、日本の個人投資家が積極的な売りを仕掛けてくるのは珍しい。

 最近の米ドル売り・円買いの仕掛けは、値ごろ感によるところが大きいか、さすがに2007年高値は超えないだろう、あるいは調整なしでは超えないだろうといった「相場観」によるところも大きいのではないだろうか。

 いずれにせよ、上放れが確認された後の逆張りは無謀すぎて、相場の基本に反する行為だから、踏み上げられるのも当然。踏み上げの土台になったこと自体、米ドルの急騰につながった側面を否めないと思う。

【ミセスワタナベに関する参考記事】

●「ミセス・ワタナベ」のルーツを探れ(1) 実は90年代半ばに英国で生まれた言葉?

●「ミセス・ワタナベ」のルーツを探れ(2) なぜ佐藤、鈴木ではなくワタナベなのか?

 ところで、ミセスワタナベによる大規模な米ドル売り…
米ドル/円の上放れはホンモノと認定! 円安トレンド加速に要注意。倍返しだ! ブログ

米ドル/円の上放れはホンモノと認定! 円安トレンド加速に要注意。倍返しだ!

■米ドル全体の調整はすでに終了した公算大 米ドル全体は下げ一服、至ってブル(上昇)基調回復の兆しを見せている。ドルインデックスは93の節目割れを回避して、96の節目手前にリバウンド、早くも底打ちの可能性を示唆している。

 この見方が正しければ、3月から続いてきた米ドル全体の調整は、すでに終了した公算が大きく、これからメイントレンド、すなわち米ドル高の展開が継続されよう。

 今回のドルインデックスの調整は、2月安値(93.25)が示したサポートゾーンの再確認といった意味合いも大きく、また、1月16日高値(93.26)と相俟って見ると、今回93.13前後における底打ちが整合性をもつ。

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 このサポートゾーンを下回ると、場合によっては200日線(現在、約91)の打診があってもおかしくないから、底割れの回避自体が重要であった。

 一方、96前半から同後半が目先のレジスタンスゾーンで、上放れなしではなお下値リスクがくすぶるだろう。

 ドルインデックスの上昇モメンタムが強まっていくには、米サイドの経済指標が再度好転し、米利上げ時期についての市場関係者の確信が必要であるから、なお時間がかかるだろう。

 したがって、米ドル全体はこれからなお安値鍛錬の期間となる公算が大きいものの、底打ちしたという見方が強まり、米ドルの押し目買いといったストラテジーが総じて有効になるのでは…と思う。

■反発していたユーロは頭打ちか こういった判断は、ドルインデックスの対極として位置つけできるユーロ/米ドルの事情や動向からも確認できよう。

 前回のコラムでは、ユーロ/米ドルが1.15ドルの節目打診の余地ありと指摘していたが、実際は1.1467ドルに留まり、また反落してきたことで、ユーロの早期頭打ちが示唆された。

【参考記事】

●ドル全体の調整はしばし続く可能性大だがドル/円は118円台死守ならやがて上放れ(2015年5月15日、陳満咲杜)

ユーロ/米ドル 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足) 

 ユーロの頭打ちは、ファンダメンタルズとテクニカルの両方から「効き目」があったことに注意すれば、ユーロの早期頭打ち、またベア(下落)トレンドへの復帰といったシナリオを有力視できる。 

 ファンダメンタルズでは、ギリシャ問題よりも、ECB(欧州中央銀行)政策のほうがより重要かと思われる。

 何しろ、ギリシャはユーロ圏の一国にすぎないが、ECBの方はユーロ圏全域の金融政策を司るから、現在実行されているQE(量的緩和)策に変更があれば、マーケットに大きなインパクトをもたらす。

■クーレECB理事の衝撃発言がユーロリバウンドを阻止 そして、5月19日(火)、衝撃的な発言が伝わり、ユーロが急落した。クーレECB理事が、何と「ECBは、夏の閑散期の前に、QEのペースを加速させる」と言い、QEの拡大を示唆したのだ。

 実際は、この発言はマーケットに伝わった5月19日(火)の前日(すなわち18日)に、クーレ理事が英金融業者主催の催しで発したもので、一種の「インサイダー情報」になり得るといった問題も大きいが、ユーロのリバウンドを阻止するには絶妙なタイミングだった。

 ECBがQEを決定して以来の高値は1.1534ドル前後(2月)にあり、1.15の節目に接近してきたユーロのリバウンド自体、ECB関係者の立場からみると、牽制しなければならない値動きだ。

 また、ユーロ高の牽制が「口漏れ」といった形で行われるなら、あたかも市場自体の動向と受け取られやすいから、クーレ理事の「失言」は単純に額面どおりに受け取れない。言ってみれば、ECBに政策変更の余地ありと示唆し、ユーロ高を牽制する思惑があった。

 テクニカルの視点では、筆者が5月19日(火)に書いた…