仮想通貨ATMの資金洗浄懸念、米銀行団体がクラーケンのFRB口座見直しを要求

この記事の要点

  • 米銀行協会がクラーケンのFRB決済口座の見直し・停止を要求
  • ATM詐欺や英国制裁との関連で資金洗浄リスクを指摘

ICBA、クラーケンの連銀口座見直し要求

全米独立コミュニティ銀行協会(ICBA)は2026年6月18日、暗号資産(仮想通貨)系のクラーケン・ファイナンシャルが持つ連邦準備制度(FRB)の決済アクセスを直ちに見直すよう、カンザスシティ連邦準備銀行に求めました

同協会は、現行の口座条件では根本的なリスクを抑えきれないとして、追加的な制限や利用停止に加え、更新拒否・口座解約も含めた対応を検討するようカンザスシティ連銀に要求しています。

クラーケン・ファイナンシャルは2026年3月、ワイオミング州の特別目的預金機関(SPDI)として連銀の限定口座を取得し、暗号資産系の企業として連邦決済網への直接接続を認められました。

同社は連邦預金保険の対象外のまま、銀行を介さずFedwire(フェドワイヤー)で直接ドル決済を行えるようになり、こうした立場は仮想通貨系の事業者としては数少ない事例となっています。

ICBAは、連邦レベルの統合的な監督を受けない暗号資産系企業に連銀の決済インフラを開放すること自体が、資金洗浄(マネーロンダリング)や不正金融、前例形成の各面でリスクを生むと主張しています。

クラーケンのATM供給と制裁網にICBAが警告

連銀が承認したクラーケンの1年期限付き口座

ICBAが見直しを求めるこの口座について、カンザスシティ連銀は2026年3月4日、ワイオミング州拠点のペイワード・ファイナンシャル(事業名クラーケン・ファイナンシャル)に対する限定目的口座の開設を承認しました。

同口座はFRBの口座アクセス指針における「ティア3」に分類され、連邦預金保険の対象外かつ連邦の健全性監督も受けない機関として、最も厳格な審査区分に位置付けられています。

ICBAによれば、承認された口座は初回1年間の期限付きで、利用範囲はFedwire資金決済サービスに限られ、日中与信や連銀貸出制度(割引窓口)の利用、残高への付利はいずれも対象から外されています。

同協会はこうした制限を必要なものと認めつつも、包括的な連邦監督や全社的な可視性、更新・停止・取消の明確な基準を代替するものではないとしています。

ICIJが暴いたATM業者への巨額BTC供給

ICBAが問題視する根拠のひとつとして、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が2026年5月26日に公表した、記者スペンサー・ウッドマン氏による調査報道が挙げられます。

同報道によると、クラーケンは暗号資産ATM(キオスク)大手のCoinhub(コインハブ)に対し、7億ドル(約1,130億円)超相当のビットコインを供給したとしています。

またクラーケンは、2023年後半から2025年半ばにかけて、Athena Bitcoin(アテナ・ビットコイン)へ平均で週100万ドル(約1.6億円)超のBTCを供給していたと報じられています。

一方、クラーケンは同取材に対し、規制上の義務を重く受け止め、取引関係には厳格な審査や継続的な確認、強化された監視を適用していると説明しました。

ATM詐欺1.4万件超、州当局の摘発も相次ぐ

ただし、ATM関連の詐欺被害は急速に拡大しており、米連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪報告書(IC3)によると、その被害は2024年比で件数が23%増の約1万4,000件に上りました。

このうち60歳以上の被害は約2億5,700万ドル(約415億円)に上り、ATM関連被害全体の約3分の2を占めるなど、被害は高齢者に集中しています。

ICBAは、暗号資産関連の詐欺が米国の詐欺被害の主要な発生源となるなか、クラーケンはATM業者からの異例のBTC需要を資金洗浄の観点から精査し、疑わしい取引として報告すべきだったと批判しています。

書簡が挙げた州当局の摘発事例では、コロンビア特別区(ワシントンD.C.)の司法長官が2025年9月、アテナのATM入金の93%が詐欺に直結していたとする調査結果を示し、同社を提訴しました。

また、カリフォルニア州金融保護当局は2025年10月、コインハブの運営事業者に対し、取引上限違反などを理由に67万5,000ドル(約1.1億円)の制裁金を科す同意命令を公表しています。

ジャスティン・サン氏とHTXの制裁リスク

ATM業者との関係に加え、ICBAはクラーケンと、暗号資産取引所HTX(旧Huobi)を実質的に支配するジャスティン・サン氏との結びつきにも懸念を示しています。

英国は2026年5月26日、ロシア向けの不正な支払いを支援したとして、HTXの運営会社Huobi Global S.A.を制裁対象に指定しました。

ICBAによれば、サン氏はトロン(Tron)ブロックチェーンの創設者でもあり、2026年5月時点で流通するTRXの約63%にあたる600億TRXを保有することで、同ネットワークの議決権の過半を握っています。

クラーケンはトロンの取引を承認する27の「スーパー代表」の一社でもあり、ICBAは、クラーケンが英国の制裁を受けたHTXを含むサン氏の経済圏を結果的に支えていると主張しています。

米国は2026年6月時点でHTXやHuobiを制裁対象としていない一方で、ICBAは、同盟国が制裁した事業との関係はクラーケンのリスク管理体制を問う材料になるとして、カンザスシティ連銀に厳格な精査を求めています。

FRBが新たな「決済口座」制度案を公表

クラーケンの口座をめぐる議論が続くなか、FRBの理事会は2026年5月20日、連邦預金保険の対象外の機関も利用可能な「決済口座(payment account)」制度の創設案を公表しました。

同案では決済の清算・受け渡しに口座機能を絞り、日中与信や割引窓口、残高への付利をいずれも認めないものとし、現在はパブリックコメントが募集されています。

この提案では、ティア3機関からのアクセス申請について政策づくりが完了するまで各連銀が判断を一時停止するよう促されており、3月に承認済みのクラーケンは、この一時停止が示される前に口座を得ていました。

FRBによるこの制度づくりの背景には、仮想通貨企業の連邦決済網への直接アクセスを再評価するよう求めた大統領令があり、銀行業界と仮想通貨業界の間では、決済網の開放をめぐる対立が続いてきました。

制度設計をめぐってはFRB内部でも意見が分かれており、マイケル・バー理事は、監督が及ばない機関による資金洗浄やテロ資金供与への歯止めが不十分だとして、同案への反対を表明しました。

今後はカンザスシティ連銀が、口座条件の見直しや追加制限、更新拒否を検討するのか、それとも現行条件のまま1年の期限満了まで運用を継続するのかが判断事項となっています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=161.48 円)

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Source:ICBA書簡
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:仮想通貨ニュース最新一覧【毎日更新】 - 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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