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2026年7月14日、株式会社Digital Entertainment Asset(以下、DEA)は、人間の行動を検証・証明するLayer 1ブロックチェーン「DEPプロトコル」のメインネット稼働を開始した。Avalanche上に構築された同チェーン(※Avalancheでは、独自のバリデータセットを持つ主権的なチェーンを「L1」と呼ぶ)は、ゲームプレイから得られる「人間らしい揺らぎ」をオンチェーンに記録し、個人情報を収集することなく「人間であること」を証明する。生成AIの普及で「人間が作った・人間が見た」の価値が問い直される時代に向けた、新しいインフラの試みだ。
DEAは2018年にシンガポールで創業し、2026年1月に日本法人を設立した「課題解決ゲーム」の企業だ。電柱などのインフラ設備を撮影して点検データを集める参加型社会貢献ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」と、写真投稿などのミッションに現地へ行かずスマホで参加し、ポイントや賞品を得られる関係人口プラットフォーム「ご当地ひみつエージェント」。2つのゲームを軸に、遊びと社会課題の解決を重ねる事業を続けてきた。
そのDEAはなぜ、自らLayer 1ブロックチェーンを持つ決断をしたのか。熊本県南部・人吉球磨(ひとよしくま)地域での復興支援キャンペーンや企業連携の裏側とともに、DEPプロトコルが目指すビジョンを、代表取締役社長の山田耕三氏に聞いた。
(取材日:2026年7月13日)
【プロフィール】
山田 耕三(やまだ こうぞう)
株式会社Digital Entertainment Asset 代表取締役社長
1977年生まれ。東京大学法学部卒業後、2002年テレビ東京入社。制作局にて音楽・バラエティ番組を中心に番組制作を担当。2018年に独立し、エンターテインメント全般のプロデュースを手がける。同年シンガポールにてDEA社を創業。
メインネットが稼働した「DEPプロトコル」は何のためのチェーンか

編集部:まず、「DEPプロトコル」は何を実現するチェーンなのか、改めて教えていただけますか。
山田耕三氏(以下、山田):DEPチェーンのメインネットは、「人間証明スコア」を出すことで、広告領域の健全化を図るというテーマを持っています。
「PicTrée」と「ご当地ひみつエージェント」にSDK(アプリに機能を組み込むためのソフトウェア部品)を組み込むことで、ゲームプレイの様子が人間証明スコアとしてオンチェーンに刻まれていきます。それが広告のインプレッション(表示回数)などに、いわば「人間が見た」というお墨付きとして付与されていく形です。そうやって、プレミアムな広告商品の展開を進めていきます。
編集部:ゲームで遊ぶこと自体が、「人間である」ことの証明になっていくわけですね。その2つのゲームは、DEAの事業の中でどのような役割分担なのでしょうか。
山田:もともと「ご当地ひみつエージェント」は、地域創生と関係人口の創出をテーマにしたゲーミフィケーションです。少し抽象的なレイヤーで言うと、リアルな場所での活動・行動変容を促すのが「ピクトレ」で、遠隔地から隙間時間で継続的な活動を促すのが「ご当地ひみつエージェント」です。この2つが補完的に連携する形ですね。
ゲーミフィケーションとしては、この2つがしっかり成立すれば、「現地に行くか、遠くから関わるか」という観点で役割分担するだけで、ほとんどのことができるようになります。
個人情報を集めずに、人間を証明する

編集部:先ほど「人間が見たというお墨付き」というお話がありました。そもそもなぜ今、「人間であること」の証明がそれほど重要になるのでしょうか。
山田:社会には、人間であることが前提になっている仕組みがたくさんあります。広告はまさにそうですし、AIやロボットの学習には、ちゃんとした人間由来のデータを使いたいですよね。インターネットで世論を集めるときも、当然、人間であることが前提です。その「当たり前だった前提」が今、大きく崩れようとしています。
編集部:「前提が崩れようとしている」というのは、具体的にどういうことでしょうか。
山田:ちょうど先月、インターネットトラフィックの約2割を支える米Cloudflare社のCEOが、ボットのトラフィックが人間を上回ったと発表しました。これまでボットに対抗する方法は、基本的に「個人情報をたくさん集める」ことでした。でも、個人情報を集めること自体にリスクがあります。
僕たちの考え方は、個人情報に頼らずに人間証明を実現する、という方向です。「個人情報を出してください」ではなく、その人の動き、つまり均一的な機械の動きではない、位置・時間・動作といった人間の揺らぎをオンチェーンに記録して、みんなが検証できるようにするんです。揺らぎによって、人間であることを証明していくアプローチですね。
編集部:なるほど。本人確認の書類ではなく、行動そのものが証明になるということですね。その仕組みは、自社のゲーム以外にも広げていくのでしょうか。
山田:まずは自社の「ピクトレ」と「ひみつエージェント」にSDKを組み込んで実装します。ゆくゆくは、あらゆるアプリやWebサービスにSDKを入れていただいて、DEPチェーンから人間証明を取ってビジネスを作ってもらえるようにしたいんです。それが、DEPプロトコルでこれから作っていく世界ですね。
狙うは2つの市場。AI学習データの「産地証明」と広告の健全化

編集部:その人間証明を使いたいという引き合いは、すでにどのような領域から来ていますか。
山田:大きくは2つのターゲット市場を狙っています。1つはAI学習の市場です。教師データ(AIの学習に使うデータ)が売買される市場はすでに存在しますが、「人間から取った教師データです」と言いながら、実はAIで作られたデータが出回っている可能性があるんです。それを排除したいと考えています。人間証明付きのデータが売買されるように、いわば「産地証明シール」をチェーンから引っ張り出せるようにするイメージです。
もう1つは広告の領域で、こちらは広告詐欺への対策です。人間が見ていない、ボットが回している再生回数やクリック数に対して、広告主がお金を騙し取られているんです。人間証明付きのインプレッションやクリックを広告主側が要求するようになれば、世界はぐっと変わります。
そうなると、証明の仕組みを安価に実装できないと、広告が売れなくなっていきます。そのときにDEPチェーンにつなぎ込むだけで、各インプレッションや動作ごとに証明が付く世界を作れるようにしておく、という狙いです。
編集部:テキスト以外の、写真や動画といったマルチモーダルなデータの需要もすでに見えているのでしょうか。
山田:例えば米国では、「プロがあなたの家を無料で掃除します。ただし、掃除している動画はすべて学習データとしていただきます」というスタートアップが話題になり、資金も集まっています。汚い部屋を片付ける動画はAIでいくらでも作れますが、部屋の本当の汚れ方や片付け方は、生の人間のデータのほうがいいんですね。
DEAの「ご当地ひみつエージェント」なら、同じことができます。「あなたの部屋を片付ける様子を動画で撮ってください」というミッションを出せば、まったくパラレルに同じデータが取れるわけです。写真、音声、動画といった、テキスト以外のデータはまだまだ必要とされています。ゲームから取っていくというのは、世界的に見ても新しいと思います。
編集部:その世界が実現していくと、DEPトークンの役割はどのように変わっていくのでしょうか。
山田:今までDEPコインの存在意義は、「僕らが発行するゲームアイテムやNFTが買える。だからDEPに実力がある」というロジックでした。それはもう、やめました。
これからは、人間証明スコアという、あらゆる事業者が必要とする証明をお渡しするときに、手数料をいただきます。その手数料の支払いには、チェーンの利用料である「ガス代」としてDEPが使われていきます。実需の意味が完全に変わった形で、再スタートを切ります。
編集部:ゲームの中で使うための通貨から、「人間証明」というサービスの決済手段へ変わる、ということですね。すでにDEPを保有している方にとっては、どう変わりますか。
山田:経済圏との本格的な接続は11月末を予定していて、12月以降はDEPホルダーがチェーンに対してステーキング(保有するトークンをチェーンの運営に預けて、報酬を得る仕組み)ができるようになります。主にガス代収入に由来する報酬の取り分を、ホルダーが得られる設計です。
白米の写真から始まった、人吉球磨での実証実験と企業連携

編集部:その、人間の行動データを集める実証実験が、6月からビットトレードと共催している「ニッポンの一膳グランプリ」ですね。全国のユーザーが食事の写真を投稿すると人吉球磨地域(人吉市と球磨郡の一帯)の特産品が当たり、気に入ればふるさと納税での応援につなげる、という設計だと理解しています。どういう経緯で実現したのでしょうか。
山田:もともとは、うちの投資家の関係者の方が人吉のご出身で、地域の状況をいろいろ教えていただいていたのがきっかけです。人吉地域は、令和2年7月の豪雨で甚大な被害を受けて、6年経った今も傷跡が残っています。DEAは防災を1つのキーワードにしているので、そのお話を聞いて、地元と連携しようと考えました。米どころでもあるので、日本中からふるさと納税でお米を買ってもらえれば地域のためになりますから、そこを最終ゴールにしました。
その上で、やはり「遊び」になることをやらないといけません。「ひみつエージェント」は「わざわざ行かなくてもいい」がコンセプトなので、普通にご飯を食べるときにパシャッと撮ればエントリーできて、お米が当たったりする、という設計にしました。表面上はそう紐付けつつ、裏側ではマルチモーダルなデータ収集の実験も考えている、という形ですね。
編集部:自治体側には、費用や作業の負担はない形なのでしょうか。反応はいかがでしたか。
山田:はい、負担はお願いしていません。ですので自治体の方々の反応は、「特に害はないから、どうぞやってみてください」というものがほとんどです(笑)。断られたことはない一方で、ゲームで地域を応援するという取り組み自体が新しいぶん、最初は狙いをすぐに理解していただけないことも多いですね。
今は実証期間中だという立て付けでもあるので、「ゲーム側でできる範囲で盛り上げてみて、結果をご報告します」とお伝えすると、「お金も手間もかからないなら、ちょっとやってみてください」と進んでいくんです。逆に「こういうことで困っています」というご相談をいただいて、一緒に形にする、ということも始まっています。
編集部:キャンペーン開始から約1カ月、実際のユーザーの反応はいかがですか。想定どおりに写真は集まっていますか。
山田:まだプロモーションを一切かけていない、実質は既存ユーザーによる公開デバッグ状態なんです。それでも数十人の方が熱心に参加してくれていて、写真は順調に集まっています。
日々、みんながある程度簡単にできることに落とし込めば、ちゃんと参加してもらえるという手応えはありますね。面白いのは、白飯じゃなくても食事の写真がどんどん上がってくること(笑)。
編集部:白飯でなくても写真を上げてしまう。それも含めて「人間らしさ」ということですね。
山田:そうなんです。AIなら白飯の画像しか出てこないでしょうから。
編集部:自治体だけでなく、企業との連携も同じように「まず実験から」という進め方なのでしょうか。
山田:基本的には「どんどん実験しましょう」というお話をしています。例えばご当地サイダーの木村飲料さんとは、参加者が「自分のご当地だったら、どんなサイダーがあるか?」を考えて答える、大喜利のミッションを展開しています。
もともと木村飲料さんご自身でやりたかった企画だけれど、SNSの運用にそこまで手間はかけられない、というお話でした。それなら、こちらでフォロワーが増えるように動きます、とご提案して始めた形です。お金はいただかずに、サイダーやラムネを賞品として少しご提供いただいています。ここで実績と方向性が見えたら、「費用対効果はこれくらいです。買いませんか?」と、広告PRパッケージという商品にしていく流れですね。
編集部:企業側は商品を提供するだけで、まず無償でSNS施策を試せる。数字が出てから、有償の広告商品として買うかを判断できる、という順番なんですね。
すべてが回り始めるのは「今年の年末から来年」
編集部:ここから年末にかけてのロードマップを教えていただけますか。
山田:8〜9月中には「ピクトレ」と「ひみつエージェント」へのSDK実装が完了するので、そこから裏側で人間証明のスコアを動かしながら、数字の取り方などを検証していきます。
「ピクトレ」側は、電柱を撮影して点検データを集める仕組みを2年間実証してきて、運用の勘所がだいたい見えてきました。ですのでこれからは、電柱に限らずさまざまなインフラ設備の点検に使える汎用的なパッケージとして、導入いただく企業や自治体を増やしていくフェーズです。実際に、カーブミラーなど電柱以外を対象にした実例も出てきています。
さらにJTBさんと連携して、日本中の自治体にインフラ点検のパッケージとして販売していく取り組みも進んでいます。単純な代理店契約というより、うちの商品を売っていただきながら事例を作って、地域活性化や旅行・インバウンドといったJTBさんの本業領域にもつなげて、一緒に企画として広げていく形ですね。
編集部:お話を伺っていると、ゲーム、チェーン、地域、企業連携と、すべてが同時に動き出している印象を受けます。
山田:当社としては、大きなロードマップとしてイメージしていたことを、1つ1つ形にしてきました。メインネットの稼働やゲームへのSDK実装、人吉での実証実験、企業の皆さんとの連携が、ここに来て連動し始めています。すべての要素がうまく回り始めるタイミングが、今年の年末から来年にかけて来ると見ています。
編集部:最後に、NFT Mediaの読者へメッセージをお願いします。
山田:「ピクトレ」の防災チャンピオンシップと、「ご当地ひみつエージェント」、両方触っていただきたいですね。防災活動や避難訓練をみんながあまりやらないのは、「時間を合わせないといけない」からです。「ピクトレ」なら、10分空いたときに身の回りを歩いてポイントを稼ぎながら、「家の周りにこんな設備があったのか」と必ず気づきがあります。やっておいて損はない防災活動だと思います。
「ひみつエージェント」は、カジュアルゲームやポイ活をやっている方にこそ触ってほしいですね。自分の成長につながるポイ活なんです。どこかの地域に詳しくなっていくと、行ったことがなくても、その自治体や地場企業から見て「重要な人物」になっていけるんです。ゼロの人より、ちょっとでも知ってくれている人のほうが大事ですから。お金を多少稼ぎながら、いい体験になると思います。

インタビューを終えて
「ゲームの会社がブロックチェーンを作った」と聞くと、Web3ブームの残像を思い浮かべるかもしれない。だが順序は逆だ。DEAには先に、人間の行動データが日々集まる2つのゲームがあった。そのデータの価値を証明するために、検証のレイヤーを自前で持った。それがDEPプロトコルである。
象徴的なのは、トークンの役割を「ゲームアイテムが買える通貨」から、人間証明の決済手段へと「やめました」と言い切って転換したことだ。トークンの価値の根拠づけは、国内のブロックチェーンゲーム事業に共通する課題だった。その答えをゲームの外、AIと広告という巨大市場に求めた選択は、同じ課題を抱える事業者にとって重要な先行事例になる。
試金石は本人の言うとおり、経済圏が接続する「今年の年末から来年」だ。白米の写真から始まった小さな実証実験がどこまで届くのか、NFT Mediaでは引き続き追っていく。
※本記事に記載の情報は取材時点(2026年7月13日)のものです。
※既存のDEPトークンは、上場取引所との連携完了後、Avalanche上のDEPチェーンのトークンへのスワップ(交換)が案内される予定です。詳細はDEA公式の発表をご確認ください。
- 株式会社 Digital Entertainment Asset 公式サイト:https://dea.sg/
- Digital Entertainment Asset 公式X:https://x.com/PlayMining_JP
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