
コア開発維持に年間約3,000万ドル
イーサリアム財団(Ethereum Foundation:EF)の元コントリビューターであるトレント・ヴァン・エップス(Trent Van Epps)氏が、イーサリアム(Ethereum)のコア開発を支える資金基盤に構造的な課題があるとして、今後3〜9カ月以内に「ゆっくりと進行する資金危機(slow-burning funding crisis)」に直面するリスクがあるとの見解を6月18日に示した。
同氏は「Succession After Subtraction」と題した論考を公開。2021年5月から2026年4月までEFに在籍し、コア開発の調整やプロトコル・ギルド(Protocol Guild)を通じた資金提供、イーサリアムの政治経済研究などに携わってきた立場から、イーサリアムエコシステムが直面する制度的課題について論じた。
ヴァン・エップス氏は、資金圧迫の要因として主に2つの変化を挙げている。
1つはEFの財政方針だ。EFは2025年6月に財務計画を公表し、年間支出率を現在の15%から今後5年で長期基準の5%へ段階的に引き下げる方針を示した。ヴァン・エップス氏は、この計画の実行がエコシステム全体に波及効果をもたらしていると説明している。
もう一つは、クライアントチーム向けの資金支援制度であるClient Incentive Program(CIP)の終了だ。同制度はステーキング収益を活用してクライアント開発チームへ資金を配分する仕組みとして約4年間運営されてきたが、2026年4月に終了した。ヴァン・エップス氏によれば、現時点で後継制度が近く導入される見通しは示されていないという。
ヴァン・エップス氏の試算では、イーサリアムのコア開発エコシステムを維持するためには年間約3,000万ドル(約48億円)の継続的な資金が必要になるという。
この資金は10以上のクライアントチームに加え、研究者やコーディネーションチームなど、プロトコルの開発・保守を支える組織横断的な体制を支えている。
同氏は、資金不足によって長年の知見を持つ人材の流出が起これば、量子コンピューティング対応やスケーリングなど将来的な課題への対応が遅れる可能性があると指摘。また、その影響は12〜18カ月後に顕在化する可能性があり、その段階では回復コストが大幅に高まるとの見方を示した。
ヴァン・エップス氏は、こうした問題の背景にはEFが長年掲げてきた「減算)Subtraction)」という組織哲学があると説明する。
同氏によれば、EFは2019年から「組織内部への価値の蓄積を避け、価値創出をエコシステム全体へ広げる」という考え方を推進してきた。さらに2026年3月に公表されたEFのマンデートでは、「財団の相対的な影響力を時間とともに低下させること」を目標として掲げている。
またエップス氏は、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏による最近の投稿も引用。ブテリン氏は「EFはトークンセール文書などで定義された限定的な役割を果たすために設計された組織であり、その使命は2022年に完了した。永続的な管理者として設計されたものではない」と述べている。また同氏は、EFは永続的な管理者として設計されたものではないとの見方も示している。
ヴァン・エップス氏は、イーサリアムが今後も発展を続けるためには「制度的継承(institutional succession)」が必要だと主張する。
同氏は、新たな制度設計において、ソフトウェアとしてのEVMおよびクライアント、ネットワークとしてのEthereum、資産としてのETHという相互に依存する資源を適切に認識し管理する必要があると指摘。また、コア開発を支える共有インフラを維持するため、中立性と説明責任を備えた持続可能な資金調達メカニズムの構築も求められるとしている。さらに、Ethereumの価値観である自己主権や自己決定、人間の繁栄といった理念をより広範な利用者へ届けるため、普及促進を重要な課題として位置付けるべきだとの考えを示した。
同氏は「過去の管理者たちが築いてきた基盤の上に立つことでのみ、新しい制度を構想することができる」と述べ、コミュニティ全体で議論を進める必要性を訴えた。
なおEFを巡っては組織体制の変化も続いている。6月18日には、共同エグゼクティブディレクター兼理事を務めていたシャオウェイ・ワン(Hsiao-Wei Wang)氏が退任を発表した。同氏は2025年3月17日付でトマシュ・スタンチャック(Tomasz Stańczak)氏とともに共同エグゼクティブディレクターへ就任していたが、休暇期間中に自身の今後について熟考した結果、退任を決断したと説明している。
EFでは、2026年2月末にスタンチャック氏も共同エグゼクティブディレクターを退任しており、その後はバスティアン・アウエ(Bastian Aue)氏がワン氏とともに共同エグゼクティブディレクターを務めていた。ワン氏の退任後は、アウエ氏を中心とする暫定的な運営体制が続いている。
ブテリン氏は今年5月、EFについて「イーサリアムの中心」ではなく、エコシステムを構成する一つのノードとして機能すべきだとの考えを示していた。活動領域の絞り込みや主要メンバーの離脱が進む中、イーサリアムのコア開発を支える新たな制度設計に注目が集まりそうだ。
— trent.eth (@trent_vanepps) June 18, 2026
画像:PIXTA
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参照元:ニュース – あたらしい経済


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