イーサリアム研究者、耐量子署名「SPHINCS-」提案。既存EVMでの検証効率向上目指す

EVM向け耐量子署名「SPHINCS-」提案

イーサリアム(Ethereum)の研究フォーラム「イーサリアムリサーチ(Ethereum Research)」に、耐量子署名方式「SPHINCS-(スフィンクスマイナス)」の提案が投稿された。イーサリアム財団(Ethereum Foundation)が6月12日に同提案を公式Xアカウントで紹介した。

この提案を投稿したのはイーサリアム財団(Ethereum Foundation)の研究者ニコラ・コンシニー(Nicolas Consigny)氏だ。同氏は、量子コンピュータの発展により将来的に現在の暗号方式が脅威にさらされる可能性を踏まえ、既存のイーサリアム上で利用可能な耐量子署名方式の研究を進めている。

SPHINCS-は、米国立標準技術研究所(NIST)が標準化した耐量子署名方式「SLH-DSA(FIPS 205)」の基礎となったハッシュベース署名方式「SPHINCS+(スフィンクスプラス)」をベースに、EVM向けに最適化した提案だ。

同署名方式の特徴は、新たなプリコンパイル(Precompile)の追加やプロトコル変更を必要とせず、既存のEVM上で署名検証を行える点にある。つまり、イーサリアムのネットワーク仕様を変更する大型アップグレードを実施せずとも、開発者がスマートコントラクトとして耐量子署名機能を導入できる可能性があるということだ。

コンシーニー氏によると、イーサリアムには「KECCAK256(ケチャック256)」と呼ばれるハッシュ関数が標準実装されている。同氏は、SPHINCS+で利用される暗号処理の一部をイーサリアム標準の仕組みに置き換えることで、既存ネットワーク上での署名検証コスト削減を目指したとしている。

提案では、この耐量子署名方式の実装を実現した場合、標準化方式に近い構成で約15万ガス、最適化版では約12.7万ガスで署名検証が可能だと説明されている。

コンシーニー氏は投稿の中で、現在のイーサリアム上でプロトコル変更を必要とせず導入可能な耐量子署名方式として、SPHINCS-が将来の量子耐性アカウントへの移行を支援する「橋渡し役」になる可能性があるとの見方を示した。

また将来的には、ゼロ知識証明(ZK)との親和性を高めた「leanSPHINCS(リーンスフィンクス)」の研究も視野に入れているという。

なお、イーサリアムコミュニティでは耐量子化を巡っては署名方式そのものに加え、既存アカウントやスマートコントラクトをどのように移行するかも重要な論点となっている。

イーサリアムで続く耐量子化議論

耐量子署名を巡っては、SPHINCS+のほか、格子暗号ベースのFalcon(ファルコン)やDilithium(ディリシウム、現ML-DSA)など複数の方式が候補として研究されている。SPHINCS+はハッシュベース署名、FalconやDilithiumは格子暗号ベースの署名方式として知られており、それぞれ署名サイズや処理性能、安全性に異なる特徴を持つ。

イーサリアムコミュニティでは近年、量子コンピュータへの対応を巡る議論が活発化している。

2024年12月には、イーサリアム財団の研究者アントニオ・サンソ(Antonio Sanso)氏が、イーサリアムのトランザクション署名を耐量子署名へ移行する方法について議論する投稿をイーサリアムリサーチに公開した。同投稿では、Falconなどの耐量子署名方式の活用や、アカウント抽象化(Account Abstraction)を利用した移行方法などが検討されている。

また、イーサリアム財団傘下のPSE(Privacy & Scaling Explorations)は2025年5月、Falconを活用した耐量子署名集約技術に関する研究成果を公開した。これは複数の署名をまとめて検証することで、オンチェーンでの処理負荷を削減することを目的としたものだ。

さらにイーサリアム財団は、耐量子化に向けた取り組みをまとめた専用サイト「ポスト・クオンタム・イーサリアム(Post-Quantum Ethereum)」を公開している。同サイトでは、実行層やコンセンサス層を含むイーサリアム全体の耐量子化ロードマップが整理されており、署名方式の検討だけでなく、既存アカウントや資産をどのように保護しながら移行するかについても研究が進められている。

今回のSPHINCS-提案も、こうしたイーサリアムの耐量子化に向けた継続的な研究の一環として位置付けられる。

参考:イーサリアムリサーチ1イーサリアムリサーチ2イーサリアムリサーチ3
画像:Ethereum

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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