米ドル/円は、相場が落ち着くのを待つべき。 米ドル高の終焉や米ドル安への転換だと 予測するのは、相場よりも先走った憶測!

米ドル全体の反落が鮮明に。米ドル/円は114円割れ 米ドル全体の反落が鮮明になってきた。執筆中の現時点では、ドルインデックスは94台半ばに迫り、米ドル/円も114円の節目割れを果たし、113円台半ばをトライしようとしている。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
 一昨日(1月12日)の米CPI(消費者物価指数)発表が大きなきっかけとなった。昨年(2021年)12月分の米CPIが7%と39年ぶりの高い水準を示したのだ。しかし、これを受けて米長期金利がむしろ反落したことで、市場参加者の疑心暗鬼を招き、米ドルのロングポジションの手仕舞いをもたらした模様。
 米ドルの反落に関しては、事前予想と同じだったことによる「事実の売り」であるとか、米長短金利差が縮小気味であることが景気後退を示唆する「イールドカーブ平坦化」の兆しと見なされて米ドル売りを招いたとか、高いインフレ率が定着し、それが政治問題化されることが懸念されたなどの解釈がある。
FRB議長の発言と次期FRB副議長の発言が反対になっているが、どう受け取ったらよいか? さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)議長さんの態度が軟化したことが原因である、という向きもあるようだ。
 最新の発言のトーンが、想定よりはハト派の色合いが濃くなっているから、米インフレ傾向の高まりがあっても、結局、FRBはインフレ退治を緩くしか行わず、そうすると、高いインフレ率が逆に米ドル売りの根拠になり得る、という理屈のようだ。
 しかし、FRB議長さんの態度云々を持ち出して相場の流れを説明するのは、明らかに適切ではない。
 なにしろ、議長さんの話の「揚げ足」を取って解釈するなら、キリがないというか、これから議長さんもいろいろな話をされるから、その都度、過大解釈されるハメになる。それらの見方から、ある程度意図的に距離を取らないと、マーケットの本流を見誤ることになりかねない。
 実際、次期FRB副議長に指名されたブレイナード理事は、従来はハト派スタンスが強いとされる人物だったが、指名承認公聴会にて「インフレを抑える政策を確実に実施」と語り、利上げを急ぐ考えを示した。FRB議長さんの話云々を根拠にするなら、こちらも取り上げなければならないだろう。
 また、FRB理事の中に今年(2022年)、4回の利上げもあり得ると示唆する者がいたり、アナリストの中に5回の利上げも可能と予想する者が出たりし始めているが、FRBのスタンスは特に変わっていないから、憶測というかポジショントークに左右されないほうが賢明だ。
米ドルの反落は米ドル買いポジションの積み上げ過大が要因 それでも米ドル全体が大幅反落しているのは事実であり、米ドルロングポジションが調整されていること自体は間違いない。
 それはほかならぬ、米ドルロングポジションの積み上げが過大だったからだ。材料が出るたびに、その材料自体を反映して相場が動くというよりも、材料を利用してポジション調整が行われてきた可能性が大きい。
 実際、米ドル全体の話として、8月以降、CPIがリリースされるたびに、その直後は米ドル売りが観察された。
 過去6カ月において、同指標は総じて予想を上回る内容であったにもかかわらず、米ドルのロング筋は利益確定の機会として利用したようだ。
 今回も然り。従来より規模が大きく、また値幅も拡大され、時期も長くなるとみるが、本質的には大差はないだろう。
 米ドル/円に至っては、2022年年初来高値から反落してきたところ、日銀早期利上げ云々の憶測も出始め、これが米ドル/円の下落を一段と後押ししているわけだが、トレンドの後に出る憶測のほとんどはポジショントークであることに注意が必要だ。換言すれば、そういった噂は無視したほうが無難である。
米ドル高基調はなお健在、メインサポートラインを大きく割り込むかどうかは定かではない まとめてみると、米ドル全体の大幅調整が見られているものの、大きな流れとして米ドル高の基調はなお健在。現時点で米ドル高の終焉、また、米ドル安への転換と予測するのは時期尚早というか、相場より先走りの憶測にすぎない。
 ドルインデックスは現在、メインサポートラインをトライしようとしているように見えるが、大きく割り込むかどうかは定かではない。性急な判断と行動は避けたい。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルは本格的な上昇地合いにはほど遠い ユーロ/米ドルは、確かに昨年(2021年)9月高値から引かれた元レジスタンスラインを破り、上放れを果たしているものの、昨年(2021年)10月安値さえ回復しきれないうちは、本格的な上昇波へ展開、といった想定ができる地合いにはほど遠い。
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
 ましてや、昨年(2021年)高値を「ヘッド」とする大型「三尊天井」の存在や支配力があるため、ユーロの「売られすぎ」の状況が改善されたところでユーロ反騰継続を予測するのは飛躍しすぎる話だと思う。
米ドル/円が落ち着いたらクロス円に恩恵、押し目買いを狙いたい 米ドル/円はしばらく高値を再更新する機運を失ったと思うが、米ドルの頭打ちや、円高へ反転する地合いにはほど遠い。
 実際、少し前には、2021年11月24日(水)高値から12月1日(水)安値まで、約3円ほど急落する場面もあったが、その時も米ドル高の終焉云々といった予測が出回っていた。
 しかし、2022年年初来の高値再更新は、こういった見方が間違いであったことを証左した。今回も同じではないかとみる。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
 もっとも、米ドル/円は1月4日(火)高値116.36円から急落してきたが、まだ3円(300pips)の下落幅を達成していない(現執筆時点)。ここでジタバタせず、相場の落ち着きを待つべきだと思う。
 ちなみに、米ドル/円の落ち着きが観察されると、実はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方がより恩恵を受けるから、クロス円における押し目買いのチャンスを狙いたい。
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 このあたりの検証や話はまた次回。市況はいかに。
(14:00執筆)

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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