陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドル全体の調整はしばし続く可能性大だが ドル/円は118円台死守ならやがて上放れ ブログ

ドル全体の調整はしばし続く可能性大だが ドル/円は118円台死守ならやがて上放れ

■足元の米ドルの調整は、今後の米ドル高の基盤固め 米サイドの経済指標が引き続き軟調で、米ドル全面安が進んでいる。一部市場関係者は年内米利上げなしの可能性にも言及しており、これが米ドルの圧迫要素として効いている格好だ。 

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

(※米ドルの強さを見やすくするため、このチャートには“逆転通貨ペア”が含まれています。これにより、この一覧チャートでは、米ドルが上がるとすべてのチャートが上昇する形になっています。)

 もっとも、これまで米早期利上げに対する期待感が過大で、米経済成長見通しに関する見方も楽観的すぎたところがあった。3月までの米ドル全面高はオーバーボートの疑いが大きかっただけに、足元の市場センチメントの修正は、健全化の一環として受け止められる。

 言い換えれば、足元まで続く米ドルの反落は、これからの米ドル高の基盤を固める上で、むしろ必要であり、これが米ドル高トレンドの健全化につながるとみられる。

■米ドルの調整はもう少し続く可能性大 目先の焦点は、当然のように調整のメドに集まる。

 ドルインデックスで見ると、2月安値93.25を一時下回ったから、92.25~92.50といった下値ターゲットの打診を覚悟しておきたい。

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM)

 この下値ターゲットの根拠については、昨日(5月14日)、筆者のブログにて開示しているから、ここでは重複して説明しないが、要するに米ドルの調整は、もう少し続く可能性が大きいということだ。

■ユーロ/米ドルの売りはまだ時期尚早か となると、ドルインデックスの対極として、ユーロ/米ドルの反騰も目先なお上値余地ありという結論が得られやすい。1.14ドルの節目をブレイクしたユーロ/米ドルは、1.15ドルの節目がらみまで反騰余地を拡大してもおかしくないだろう。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 メインストラテジーのユーロ売りは、なお時期尚早の感があり、より良いタイミングを待たなければならないだろう。

 実際、ユーロの切り返しはドイツ国債利回りの急上昇とリンクしており、ユーロクロスの底固さも、その整合性を示している。 

ユーロVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)

 ユーロ/英ポンド、ユーロ/豪ドルなど、ユーロクロスが揃って底割れ回避の兆しを示し、これがユーロの反騰につながっている。そして、もっとも注目されているのはユーロ/円であろう。

 ユーロ/円は今週(5月11日~)、続伸し、2月高値に接近している。この値動きは、筆者が5月1日(金)のコラムにて指摘ずみで、想定内であり、今さら特筆するところはないが、ユーロ/円を中心としたクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の状況を再検証し、円全体のトレンドを探ってみたい。

【参考記事】

●ユーロ/ドルの下落トレンド転換判断は早計。ドル/円はいよいよ三角保ち合い上放れか(2015年5月1日、陳満咲杜)

 主要クロス円の中では、英ポンド/円の騰勢が…
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■米雇用統計がどうあれ、米ドル/円は底割れ回避か ドルインデックスが反落を続ける中、米ドル/円が保ち合いを維持しているがゆえに、ユーロ/円、英ポンド/円の強さが目立つ。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 特に英ポンド/円は、英選挙情勢を反映し、英ポンド/米ドルの切り返しとリンクした形で2月高値を突破し、前回のコラムで指摘した187円の上値ターゲットに一段と近づいてきた。

【参考記事】

●ユーロ/ドルの下落トレンド転換判断は早計。ドル/円はいよいよ三角保ち合い上放れか(2015年5月1日、陳満咲杜)

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 選挙の最終結果、また、本日(5月8日)の米雇用統計次第で、市場がまた波乱となってもおかしくないが、円買い基調は当面遠のいたと言える。

 もっとも、たびたび指摘してきたように、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)経由の影響を考えると、ドルインデックスがブル(上昇)基調を保った上でスピード調整を行っている間は、米ドル/円の底堅さにつながりやすいから、今はまさにそのような市況だと思う。

 本日(5月8日)の米雇用統計の影響を考慮しても、基本的には米ドル/円は底割れを回避でき、上放れの公算が高いとみる。

米ドル/円 日足 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■ドルインデックスの反落はあくまでスピード調整 言うまでもないが、ドルインデックスのメイン基調も重要だ。

 3月高値を起点とした反落波の値幅が拡大されている足元では、米ドル高のトレンドがすでに転換されたのでは…といった見方も浮上しているが、米金融政策が規定路線どおり進んでいる以上、米ドル高トレンドの早期終焉といったシナリオ自体、かなりリスクの高い判断だと思う。

 言い換えれば、3月高値からの反落は、あくまで米ドル高に対するスピード調整と見なした方が無難だ。

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM)

 今晩(5月8日)の米雇用統計次第で、利上げ時期に関する思惑はまたくすぶるが、利上げ路線が変わらない限り、それは時間の問題であり、FRB(米連邦準備制度理事会)の出口政策は、すでに実施されているという事実も変わらない。

 また、足元まで米ドル全体の反落の値幅が拡大している原因は、米ドル自体の問題のみではなく、諸外貨サイドの要素も重なったところが大きい。

 ユーロサイドでは、ギリシャ問題の先送りや… 
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■ドルインデックスの反落は、トレンド転換なのか? 米ドル安・円安の同時進行、といった市況が鮮明になりつつある。

 米ドル全体のパフォーマンスを示すドルインデックスの反落は大きく、3月安値を下回ると下落は加速。昨日(4月30日)はメインサポートラインにトライしていたほどだ。

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 ドルインデックスの反落は、米第1四半期GDPが芳しくなかったことにより加速したが、テクニカルの視点では、大きなサインがあった、4月27日(月)の筆者のツイートをもって説明したい。

 要するに、4月13日(月)高値99.99を「ヘッド」と見なし、4月6日(月)と4月27日(月)安値を連結した「ネックライン」を下回ったから、「ヘッド&ショルダーズ(※)」の下放れが成立し、一段と下落余地が拡大したわけだ。ちなみに、この下放れの下値計算値は、すでに達成されている。

 ここに来て、2014年5月安値を起点とした大型米ドル高トレンドが、一服しただけではなく、すでに転換したのではないかという見方もある。トレンド転換の可能性を測る「1-2-3」の法則に沿って、ドルインデックス日足におけるポイントを表示すると、以下のチャートのようになる。

【「1-2-3の法則」に関する参考記事】

●「1-2-3の法則」に基づくトレードの例(「材料はどうにでも解釈できる。そんなことより相場の本音を聞け!」(陳満咲杜)より)

●「1-2-3の法則」とは?(「中川問題は関係ない!? 為替相場で円安が進んでいる本当の理由」(陳満咲杜)より)

(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。典型的なものは3つの山がある形で、これを人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダーズ」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)

ドルインデックス 日足(4月29日作成、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 具体的な解釈は筆者のブログに記載しているので、ここでは省略するが、米ドル高トレンドが転換されるなら、ユーロをはじめ、諸外貨のベア(下落)トレンドも修正されるはずであり、ユーロ危機はすでに終焉したと思われることになるが、果たしてそうなるだろうか。

■ユーロ/米ドルの反騰はスピード調整と解釈するのが妥当 ユーロ/米ドルのGMMAチャートで見ると、2014年5月高値から一貫してベアトレンドを推進してきたユーロは、初めてレジスタンスゾーンを示す長期線グループ(ピンク)を上回っているが、メインレジスタンスライン(緑)にはほど遠い位置にあることがわかる。

ユーロ/米ドル 日足(クリックで拡大)(出所:アイネット証券)

 となると、3月安値を起点とした切返しをトレンド転換と認定するには性急で、売られすぎだった状況に対するスピード調整、といった位置づけが妥当であることが示唆される。

 この見方は、月足でみると… 
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■ドルインデックスの反落はスピード調整という見方が優勢 マーケットは保ち合いが続いている。ドルインデックスは、今週(4月20日~)に入ってからの戻しは限定的で、足元は再度50日線(≒97.23)を打診、サポートの有無が注目される。

 ただし、3月高値を起点とした反落は、スピード調整と見なされ、これが拡大していくかどうかは問題だが、米ドル高トレンドの終焉ととらえる見方は現時点では少数派のようだ。

 米利上げ周期入りといったファンダメンタルズの材料と相俟って、テクニカルの視点でも、米ドル高の終焉を判断するにはなお性急だという示唆がある。

 もっともシンプルな見方として、下に掲載したドルインデックスの月足が示しているように、2005年11月高値から構築してきた大型トライアングル型保ち合いが2014年9月に上放れし、その上放れターゲットがまだ達成されていないということがある。

ドルインデックス 月足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 ちなみに、2001年高値を起点とした全下落幅に対する78.2%反騰位置は101.80前後。これは前述のターゲットより下に位置しているから、当面の上値余地として意識される。

■調整局面後に再度高値更新? それともダブルトップ形成? となると、筆者が4月19日(日)のレポートにて提示したドルインデックスの高値圏での保ち合いが、もっとも想定されやすいだろう。3月高値からトライアングル型整理局面を経て、再び高値を更新していく、というシナリオである。

ドルインデックス 日足(4月19日作成、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 もう1つのシナリオは、下のチャートが示すように、ドルインデックスがダブルトップを形成し、より深い調整波を形成していく可能性がある。

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 ただし、この見方は3月安値96.17の割り込みを前提条件とするだけに、目先、あくまでサプライズシナリオとして留意する程度に留まるだろう。

 米ドル/円に関しては、先週(4月24日)118.70円…
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■ドルインデックスはスピード調整しやすい構造にあった 先週(4月6日~)の米ドル高から一転、今週(4月13日~)は米ドル安基調になった。ドルインデックスは4月13日(月)に100の節目にいったんトライして失敗。これが足元の反落につながったようにみえる。 

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 もっとも、先週(4月6日~)、米ドルは一本調子に上昇、4月13日(月)の陽線を加えると日足では「6連陽」を形成し、スピード調整しやすい構造にあったと言える。

 それを証左するように、今週(4月13日~)に入ってから米経済指標が総じて市場予想を下回ったことで、早期利上げ観測の一段後退がもたらされ、米ドルの調整幅を拡大させた側面が大きい。ちなみに、昨日(4月16日)のドルインデックスの下落幅は、4月以降最大だった。

■本日のドルインデックスが陽線引けか否かに注目 この意味では、今晩(4月17日)の米インフレ関連指標が一層注目されるだろう。利上げ時期に関する思惑が米ドルの高安を左右しているだけに、インフレ見通しが重要な手掛かりとなる。

 テクニカルの視点では、ドルインデックスが4月14日(火)から「3連陰」を形成しているのが4月1日(水)~3日(金)のパターンと似ており、本日(4月17日)、陽線引けするか否かが、来週(4月20日~)、米ドル高トレンドへ復帰できるかどうかを示唆してくれるだろう。 

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 というのは、2014年5月から始まった今回の米ドル強気相場において、本格的な「3連陰」は2015年4月に入ってから初めて形成され、「4連陰」はこれまでなかったからだ。本日(4月17日)、陽線で引けた場合はスピード調整が一服し、ブル(上昇)トレンドへ復帰する公算が高まる。

 反面、本日(4月17日)も陰線引けで「4連陰」を形成するなら、調整波の進行はより長いスパンとなり、値幅もより大きくなる恐れがあるから、要注意である。

■反落しても、米ドルの優位性に何ら変わりはない ところで、軟調な米経済指標や米利上げ時期に関する思惑が米ドルの反落をもたらしたとしても、利上げ周期や経済成長の格差をみると、米ドルの優位性は変わっていないとみる。

 米ドル高のスピード調整を、そのまま米ドルロングポジションの調整と見なした場合、反落自体がむしろブルトレンドを健在化させる側面があるから、米ドル高基調の強化につながる。

 ポジション調整の視点から外貨サイドの反騰をみると、積み上げすぎたショートポジションの整理という意味合いが大きく、外貨サイドのベア(下落)トレンド自体を修正するには力不足だ。ファンメンタルズ上の思惑が存在する以上、トレンドが転換したという判断は時期尚早であろう。

 豪3月雇用統計の好調が豪ドルのショートポジションを踏み上げているが、豪州に利下げ余地がある以上、豪ドルの切り返し余地は限定されるといった見方と同じく、EU(欧州連合)のギリシャ問題、英国の選挙問題や日本の追加緩和の思惑などは、引き続きユーロや英ポンド、円の圧迫要素として効いてくる見通しだ。

豪ドル/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 4時間足)

 今週(4月13日~)の外貨の反騰は、総じてベアトレンドにおけるスピード調整と見なしたほうが妥当であろう。

 円サイドでは、4月13日(月)に浜田内閣官房参与の発言で… 
米雇用統計が悪かったのにドル全面高は なぜ再開?中国株はなぜバブルと言える? ブログ

米雇用統計が悪かったのにドル全面高は なぜ再開?中国株はなぜバブルと言える?

■悪い米雇用統計の影響は一時的、再び米ドル全面高へ 今週(4月6日~)に入ってから、米ドル全体は強い。リンクした値動きで、米ドル/円の強さも確認されている。

 先週末(4月3日)の米雇用統計がもたらした米ドル全体の売り圧力が一掃され、先週(4月3日)のコラムで指摘したとおり、米ドル/円が深押しを避けたことで再度高値トライの気運が高まっているとみる。

【参考記事】

●日銀追加緩和への思惑が消えない限り、米ドル/円は深押し回避、高値トライもある(2014年4月10日、陳満咲杜)

 テクニカルの視点では、ドルインデックスがすでにブル(上昇)トレンドへ復帰した公算は高い。下に掲載したチャートが示しているように、先週末(4月3日)の米雇用統計がもたらした影響は限定的だった。

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 先週末(4月3日)の米雇用統計を受け、ドルインデックスは急落したが、3月末の安値を更新できなかったことで底堅さを暗示。ドルインデックスは今週(4月6日~)に入ってから一貫して上昇し、3月31日(火)高値を更新したことで逆にダブルボトムといったフォーメーションの形成可能性を示唆。ブル基調の再開につながっていると思う。

■米ドル/円、ユーロ/米ドルも元のトレンドへ復帰 米ドル/円も然り。基本的にドルインデックスとリンクした値動きだが、より強かったところをあえて指摘するならば、それは今週月曜(4月6日)の安値が先週末(4月3日)安値を下回らなかったところだと思う。

 その上、ドルインデックスに比べ、米ドル/円の方が、短期スパンにおいて「逆三尊(※)」のフォーメーションをより鮮明に描けたところも、テクニカル上、強気の解釈につながっているから、見逃せない。このあたりの詳説は、筆者のブログに書いてあるから、ここでは省く。

(※編集部注:「逆三尊」とはチャートのパターンの1つで、大底を示す典型的な形とされている。ヘッド&ショルダーズ・ボトムとも呼ばれる。また、「逆三尊」の逆で、天井を示す典型的な形が「三尊」(ヘッド&ショルダーズ))

米ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 反面、ユーロ/米ドルは頭打ちのサインが、3月31日(火)安値の割り込みをもって点灯した模様。

 3月高値と今週4月6日(月)の高値が相俟って、トリプルトップのフォーメーションが成立しているから、ユーロはすでにベア(下落)トレンドを再開したとみるほうが無難であろう。当然のように、近々の安値更新も視野に入る。

ユーロ/米ドル 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 ところで、先週末(4月3日)の米雇用統計…
日銀追加緩和への思惑が消えない限り、 米ドル/円は深押し回避、高値トライもある ブログ

日銀追加緩和への思惑が消えない限り、 米ドル/円は深押し回避、高値トライもある

■足元のドルインデックスは再度反落 マーケットは横ばい状態を継続している。ドルインデックスは、先週後半(3月26日)の「反転サイン」に支えられた形で、今週火曜日(3月31日)まで切り返しを継続したものの、足元は再度反落し、週初来の上昇分をほぼ帳消しにする勢いだ。 

ドルインデックス 1時間足(出所:米国FXCM)

 一方、米ドル/円はいったん120円台前半へトライしてから反落しているものの、119円台前半のサポートを維持し、前回のコラムで指摘したように、3月26日(木)の安値打診をもって、3月高値を起点とした調整を完了させた公算が強まりつつある。

【参考記事】

●米ドル全体の調整はもう終わったのか?イエメン空爆後の今が相場の正念場!(2015年3月27日、陳満咲杜)

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 総合的に見ると、足元ではおおむね前回の見方を継承する。すなわち

「米ドル全体はなお調整の余地あり、と同時に米ドル/円は底堅さを発揮し、ユーロ/円を中心とするクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のベア(下落)トレンドは変わらないものの、スピード調整を先行させる可能性がある」

 といったシナリオだ。

【参考記事】

●米ドル全体の調整はもう終わったのか?イエメン空爆後の今が相場の正念場!(2015年3月27日、陳満咲杜)

■本日の雇用統計の市場への影響は来週以降に出るか 本日(4月3日)は米雇用統計のリリースがあり、マーケットの一波乱も想定されるが、イースター休暇のため、薄商いとも見られ、よほどのサプライズがない限り、マーケットへの影響は来週(4月6日~)以降に反映されるのではないかと思う。

 薄商いで大波乱といったシナリオも念頭におきたいが、株式、債券市場ともにお休みの中、為替市場のみ変動率を高めていくのもやや難しい話だと思う。

【参考記事】

●主要市場休場の中で発表される雇用統計。過去3回の同一ケースで為替はどう動いた?

 もっとも、4月1日(水)夜に発表された米3月ADP雇用統計とISM製造業景況指数は芳しくなかった。前者は今晩(4月3日)の米雇用統計が市場の想定を下回る可能性を示し、後者は米ドル高が米企業収益を圧迫していることを示唆。

 イエレンFRB議長が米ドル高を懸念材料として挙げていただけに、あとを追う形でそれが証左されたわけで、当面、米ドル高のスピード調整が継続しやすいと思われる。今晩(4月3日)はよほど良い数字にならない限り、たちまち米ドル全面高につながる、ということはないとみる。

■日本のファンダメンタルズの悪化はどう影響する? ところで、利上げ前夜の米サイドと違って、量的緩和途中の日本サイドでは、ファンダメンタルズの悪化はむしろ追加量的緩和観測につながるから、市場関係者にとって必ずしもマイナスの材料とは限らない。

 4月1日(水)に発表された3月日銀短観は、その典型であろう。

 市場センチメントに比べ、明らかに横ばい状況に留まった今回の日銀短観は、景気の先行きに対する企業の慎重姿勢をうかがわせるもので、3月CPI(消費者物価指数)の実質ゼロ成長と相俟って、デフレに逆戻りするリスクを示唆している。

 自民党の山本幸三議員が「4月にも追加緩和が必要」と主張したのも、こういった危機感の表れだと思う。

【参考記事】

●山本幸三議員発言があっても4月緩和の可能性は低い。ドル/円の調整に要注意!(4月2日、西原宏一)

 原油安は想定外というのを理由に、日銀総裁の黒田さんはある程度の進捗の遅れを認めているものの、なお2%のインフレターゲットを堅持し、それが達成可能だと主張している。

 しかし、異次元緩和に続き、2014年10月末の…
米ドル全体の調整はもう終わったのか? イエメン空爆後の今が相場の正念場! ブログ

米ドル全体の調整はもう終わったのか? イエメン空爆後の今が相場の正念場!

■目先の焦点は米ドル全体の調整幅に 米ドル全体の調整が進んできた。前回のコラムで指摘したとおり、先週週末(3月20日)に米ドルロング筋の手仕舞いがみられ、ドルインデックスの一段下げにつながった。

【参考記事】

●ドルインデックス高値更新には懐疑的だがドル/円調整は近々終わるとみる理由とは?(2015年3月20日、陳満咲杜)

 目先の焦点は、なお米ドル全体の調整幅にあるだろう。

 というのは、スピード調整があっても、米ドル自体のブル(上昇)トレンドは変わらず、これからも継続されるといったコンセンサスが市場関係者には共有されており、見方に分岐点があるとすれば、それはスピード調整の度合いや調整期間の違いにあるのが実情であるからだ。

 米ドル全面高は行きすぎだったとはいえ、これで米ドル高自体が終焉したとの判断にはつながらない。

■米ドル全体の調整はすでに一服したのか? ところで、米ドル全体の調整はすでに一服したのではないか、といった見方も急浮上してきた。

 何しろ、昨日(3月26日)、ドルインデックスは96.17と3月5日(木)以来の安値をつけたものの、その当日、一転して高く引け、3月23日(月)以来、最も高い終値をもって、反転のサインを灯したのだ。

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 リンクしたように、ユーロ/米ドルも昨日(3月26日)、いったんFOMC(米連邦公開市場委員会)当日の3月18日(水)の高値をブレイクしたものの、大きく反落して大引けし、3月24日(火)、25日(水)の値幅を包む形の陰線を形成した。

 一般的には、こういったサインは直前の値動きを否定する存在であり、米ドル安の一服、そして、米ドル高トレンドへ復帰する公算が大きいものとして解釈される。

ユーロ/米ドル 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 ただし、昨日(3月26日)の材料と総合的に判断しないといけないので、昨日、米ドル反転をもたらした要因を見てみたい。

■イエメン空爆のニュースが最大の材料 実際、一番効いていた材料はイエメン空爆のニュースだ。

 サウジアラビアを中心とする湾岸国家連合がイエメン内戦に介入することで、イラン(反乱軍支持とされる)と直接衝突しかねない事態に市場が敏感に反応し、リスクオフのムードに入った。

 典型的なリスクオフムードと言えば、米ドル買い・円買いのセットで、これが昨日(3月26日)のユーロ/米ドルの高値突破失敗や米ドル/円の安値トライをもたらしたとみる。

 中東情勢は極めて複雑なので、専門家でない筆者の出番ではないが、アラビアの世界では宗教流派の違いから、サウジアラビアとイランが不倶戴天の敵であることは常識である。アラビアの二強が直接衝突を起こすのは、かなりまずいことなので、同材料にはインパクトがある。ましてやサウジアラビアの駐米大使が核兵器の開発を公言してしまったなら、なおさらだ。

 したがって、昨日(3月26日)のマーケットの反応は極めて正常で、事の性質を考えれば、むしろ、米ドルの反騰具合が小さい方だと感じる。ちなみに、米株安がもたらしたリスクオフが、なかなか米ドルの反転につながらなかったのは米ドルが買われすぎているがゆえだが、中東情勢の緊張になれば、リスクオフの本気度が違ってくる。

 また、歴史が繰り返し証明しているように、米ドルは安全資産として中東のお金持ちに一番選好されやすいから、中東混乱の兆しが拡大していくなら、米ドルはさらに買われるだろう。

 一方、イエメン内戦はかつて冷戦時代に多く発生した…