
この記事の要点
- ECB、中銀マネーのオンチェーン化へ3方式提示
- DLT決済基盤Pontesは9月に稼働、実装段階へ
中銀マネーをDLTへ、ECBが3モデル提示
欧州中央銀行(ECB)のイザベル・シュナーベル専務理事は2026年10月1日、英イングランド銀行で開かれたカンファレンスで、中央銀行マネーをオンチェーン化するための3つのモデルを提示しました。
ECBは、金融資産や銀行預金などのトークン化が進む中でも中央銀行マネーの基軸的な役割を維持する方針を掲げ、中央銀行自身が分散型台帳技術(DLT)上に進出する方向性を示しています。
シュナーベル専務理事は、その実現方法として、準備預金をDLT上に直接発行する「直接発行」、既存の即時グロス決済システム(RTGS)とDLTをつなぐ「ブリッジ/同期」、民間仲介者が中央銀行準備を裏付けに決済トークンを発行する3つの方式を挙げました。
構想の一部はすでに実装段階にあり、ユーロシステムは9月21日にDLT決済基盤「Pontes」の運用を開始しています。
英金融71%「トークン化で金融変革」
3モデルの設計とPontes・Appiaの役割
「直接発行」「ブリッジ」「民間仲介」の3経路
シュナーベル専務理事は「直接発行」について、中央銀行がプログラマブルな基盤上に準備預金を直接発行し、準備預金自体をネイティブにトークン化するモデルと説明しました。
これに対して「ブリッジ/同期」では、準備預金を既存のRTGSに残したまま、相互運用レイヤーを介して分散型台帳技術(DLT)プラットフォームと接続し、トリガーやハッシュリンクで両システムを同期させる仕組みを示しています。
「民間仲介」では、民間事業者が中央銀行準備を裏付けとする決済トークンを発行する一方、準備預金自体はオフチェーンに残り、発行されたトークンは民間への請求権にあたるとしています。
Pontes始動で中銀マネーDLT決済が実現
Pontesでは「ブリッジ/同期」の考え方とユーロシステム独自のDLTを組み合わせており、ユーロシステムは2026年9月21日に運用を開始しました。
ECBによると、Pontesはブリッジ方式とユーロシステム独自のDLTを組み合わせ、TARGET2またはDLTを通じて決済できる二重モデルを採用しています。
市場側のDLTではトークン化証券や預金、ステーブルコインなどを扱うことが想定され、ユーロシステム側ではDLT取引をトークン化された中央銀行マネーで決済する構成が示されました。
ECBは今後、Pontesに24時間365日の稼働と分散型プログラマビリティを追加する方針を示しています。
長期構想Appia、3つのアーキテクチャ
Pontesでオンチェーン決済の実装が始まる一方、ユーロシステムはより長期的な市場構造を「Appia」で検討しています。
ECBはその候補として、中央銀行マネーと金融資産を共通基盤にまとめる「単一統合台帳」、ユーロシステムと市場側のDLTをつなぐ「相互接続ネットワーク」、複数の台帳を組み合わせる「複数共有台帳」の3つを示しました。
単一統合台帳では、ホールセール中央銀行マネーと証券、銀行預金、ステーブルコインなどの金融資産を共通のDLT上で扱う構成を想定しています。
これに対して相互接続ネットワークと複数共有台帳では、ユーロシステムのDLTと市場側のDLTを分けたうえで、それぞれを接続または複数の共有基盤として構成する案が示されています。
「銀行から預金が消える」SCに警鐘
中銀マネーDLT決済、実証を経て実装段階へ
ユーロシステムは2024年5月から11月にかけて分散型台帳技術(DLT)を用いた中央銀行マネー決済の探索的な取り組みを実施し、9つの法域から64の参加機関が加わって約16億ユーロ(約2,840億円)を決済しました。
この実証を経て、ユーロシステムのDLT決済は検証段階から実際の運用へ移り、2026年9月にはPontesの稼働に至っています。
今後は長期構想を担うAppiaで市場構造の検討が続き、トークン化された金融市場と中央銀行マネーをどのような形で結びつけるかについて検討が進められる見通しです。
関連の注目記事はこちら
Source:ECB資料
サムネイル:AIによる生成画像





コメント