
この記事の要点
- BlackRock、AI普及がデジタル資産需要の源泉になると分析
- トークン化・決済・計算資源の3領域で融合が進行と指摘
BlackRock「AIがデジタル資産需要の源泉」
世界最大の資産運用会社BlackRock(ブラックロック)は2026年9月23日、AIとデジタル資産の関係を分析した研究論文を公表しました。
同論文では、これまで並行して発展してきたAIとデジタル資産が、AIシステムによる金融・経済ネットワークとの連携が進む中で融合し始めていると分析しています。
そのうえでブラックロックは、AIを「マシンネイティブな知能」、デジタル資産を「マシンネイティブなマネー」と表現し、AIの普及がデジタル資産の需要や実用性を押し上げる「過小評価された源泉」になり得るとの見方を示しました。
両者が交わる領域として、同論文はトークン化、AIエージェントによる決済、計算資源(コンピュート)の3つを挙げ、ステーブルコインやブロックチェーンなどのデジタル資産基盤がAI経済で果たす役割を分析しています。
「大規模トークン化に備え」
トークン化・決済・コンピュートで重なる3領域
「トークン化」で重なるAIとブロックチェーン
ブラックロックは第1の接点として、大規模言語モデル(LLM)とブロックチェーンが、異なる対象を機械が処理できる形式へ変換する共通構造に着目しています。
同論文によると、LLMは人間の言語をトークンに分割して数値化する一方、ブロックチェーンでは現金や証券、ファンド持分などの経済的価値や権利がデジタルトークンとして表現されています。
ブラックロックは、こうした機械可読型のデータ構造が、AIエージェントとブロックチェーン上のデータを直接つなぐ接点になり得るとの見方を示しました。
エージェント決済でステーブルコインが先行
第2の領域では、AIエージェントによる取引の拡大に伴い、24時間稼働する高頻度・少額決済に適した金融インフラへの需要が高まる可能性をブラックロックは指摘しています。
同論文は、既存のACHやカードネットワークについて、口座開設や認証で人手を要する場合があるほか、加盟店手数料や決済完了までの時間などが、大量の少額取引では制約になり得ると分析しました。
こうした動きの中で、Coinbase(コインベース)のx402やStripe(ストライプ)とOpenAIのACP(Agentic Commerce Protocol)に加え、AIアプリが外部データを参照するためのMCP(Model Context Protocol、Anthropic開発)やエージェント同士を連携させるA2A(Agent2Agent、Google開発)といった関連規格も同論文は紹介しています。
エージェント取引に用いられる資産の中では、ブラックロックはステーブルコインが先行するとみており、流通時価総額は2026年9月時点で3,000億ドル(約47兆円)超、2025年の調整後取引高は11兆ドル(約1,730兆円)を上回ったと報告しています。
AI計算需要がデジタル資産市場を刺激
第3の領域では、AIの訓練や推論に使われる計算資源(コンピュート)の市場拡大が、デジタル資産分野にも新たな機会を生む可能性が示されました。
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Intelligent Cloud、Google Cloudの関連収益は、アナリスト予測で2025年水準から年平均29%の成長を続け、2030年には合計約1.1兆ドル(約170兆円)に達する見通しとなっています。
ブラックロックは、コンピュート容量に対する標準化された請求権を移転・担保・決済可能な形で扱えるようになれば、機関投資家の参加が広がり、新たなデジタル資産市場が形成される可能性があると分析しています。
計算需要では、McKinseyの推計で2030年にAI推論がデータセンター電力需要の43%を占めると予測されており、ブラックロックは企業から個人まで幅広い利用者を持つ推論需要の拡大も論点に挙げました。
1京円規模の米国株にトークン化の道
Visa・Google参入でAI決済基盤が本格化
AIエージェント向けの決済インフラをめぐっては、VisaがTAP(Trusted Agent Protocol)を、GoogleがAP2(Agent Payments Protocol)を打ち出すなど、大手企業による規格整備が始まっています。
こうした動きは決済分野にとどまらず、2026年8月にはStripeが400以上のAIモデルを80社超のプロバイダーから振り分けるOpenRouterの買収で合意し、AIモデルの選択やコンピュート利用の最適化にも事業領域を広げました。
こうした決済とコンピュートの接近に加え、決済・クラウド分野の大手企業が業界の垣根を越えて連携する動きもみられ、AIが情報取得から決済、計算資源の利用までを自律的に行うための基盤づくりが進んでいます。
ブラックロックは、エージェント決済やコンピュート市場はなお初期段階にあるとしながらも、AIの普及に伴ってデジタル資産がAI経済を支える基盤として役割を広げる可能性を示しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.51 円)
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Source:BlackRock論文
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用
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