
この記事の要点
- JCBAが「ウォレット・AI部会」を新設し37社参加
- AI取引の責任分界や申告分離課税など8分野を議論
JCBA「ウォレット・AI部会」新設
一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2026年7月1日、新たに「ウォレット・AI部会」を設立し、同年6月29日に第1回全体会合を開催したと発表しました。
同部会では、ノンカストディアルウォレットやAI統合ウォレットをめぐる制度や実務上の論点を整理し、自主基準の策定や制度要件の検討に加え、申告分離課税を含む政策提言の取りまとめを進める方針です。
制度整備が進むことで、事業者はウォレットサービスの設計や法令対応に関する判断材料を得やすくなり、利用者にとっても安全性や信頼性を確認するための基準形成につながることが期待されています。
部会にはウォレット事業者や法律事務所など計37社・51名が参加・登録しており、第1回全体会合では設立の目的や運営体制に加え、今後取り組む検討テーマや成果物の方向性について意見を交わしました。
年金基金が暗号資産に投資開始へ
AI・税制含む8テーマの論点整理へ
制度改正下で増すウォレットの役割と課題
JCBAは部会設立の背景として、日本の暗号資産(仮想通貨)制度が金融商品取引法(金商法)への規制移管に向けた議論や、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業制度の開始などにより、大きな制度改正の局面を迎えていることを挙げています。
制度の見直しが進むなか、ウォレットは暗号資産の保管や送受信に加え、DeFi(分散型金融)やNFT、ステーブルコインなどブロックチェーン上の各種サービスへの入口として、その重要性が一段と高まっていると同協会は説明しています。
ウォレットには近年、AIエージェントによる取引支援や、MPC(秘密鍵の分散管理技術)と生体認証を組み合わせたシードレス認証など、新たな技術の導入が進んでいます。
その一方で、利用者保護やAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)への対応に加え、AIが関与する取引時の責任分界や海外との規制差など、制度・実務の両面で新たな課題も浮上しているとしています。
利用者保護から税制まで8つの検討テーマ
こうした課題への対応に向け、部会では制度・技術・コンプライアンス・税制など8つのテーマを掲げ、自主基準や制度設計に向けた論点整理を進める方針です。
| 分野 | 検討テーマ |
|---|---|
| 利用者保護 | ノンカストディアルウォレット提供事業者における利用者保護・安全管理の自主基準 |
| 規制上の扱い | DEX(分散型取引所)接続UI、DApps(分散型アプリ)ブラウザ、ブリッジ等の規制上・実務上の扱い |
| AI | AIエージェントによる取引提案・実行時の責任分界 |
| AI | AIを活用した詐欺検知・リスク説明・取引前確認等のベストプラクティス(優良事例) |
| 技術 | MPC・生体認証・シードレス認証等の新たな秘密鍵管理手法 |
| コンプライアンス | AML/CFTとプライバシー保護の両立 |
| コンプライアンス | 国内外の規制格差とイコールフッティング(対等な競争条件) |
| 税制 | ノンカストディアルウォレット利用時の申告分離課税の実現に向けた制度・政策上の論点整理 |
AI分野では、AIエージェントによる取引の提案・実行時の責任分界に加え、詐欺検知やリスク説明、取引前確認などへのAI活用に関するベストプラクティス策定も検討対象とされています。
20%課税の論点整理と今後の活動
部会では税制も重点テーマの一つに位置付けられており、ノンカストディアルウォレットを利用した取引へ申告分離課税を適用するための制度・政策上の論点整理も進める予定です。
暗号資産取引による所得は現在、原則として雑所得に区分され、給与などと合算して課税される総合課税の対象とされている一方で、JCBAは日本暗号資産取引業協会(JVCEA)とともに2025年7月、申告分離課税20%の導入を最優先事項とする税制改正要望書を金融庁に提出しました。
その後、2025年12月に公表された令和8年度税制改正大綱の主要項目には、暗号資産取引による利益を申告分離課税(約20%)へ見直す方針が明記されており、部会では制度改正を見据えた具体的な論点整理を進める考えです。
今後は勉強会や事業者ヒアリング、国内外の制度・技術動向の調査を通じて、ウォレット・AI領域の論点整理資料や自主基準、ベストプラクティス、政策提言を段階的に取りまとめ、公表するとしています。
申告分離課税20%・金商法
新部会含め13体制、金商法改正に対応
こうした業界側の取り組みと並行して、政府でも暗号資産規制の根拠法を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正案が2026年4月10日に閣議決定され、制度設計に向けた議論が続いています。
こうした制度改正の動きに合わせる形で、JCBAでもウォレット・AI部会を新設し、税制検討やステーブルコイン、DeFi、セキュリティ・システムなどを含む計13の部会体制となりました。
新部会への参加はJCBA会員に限られており、ウォレット事業者や交換業者、金融機関などの知見を集約しながら、自主基準や政策提言の取りまとめを進める方針です。
改正案には、新規口座開設直後のノンカストディアルウォレットへの送金を制限する熟慮期間なども盛り込まれており、JCBAが進める自主基準の検討は今後の制度設計とも重なるテーマとなっています。
関連の注目記事はこちら
Source:JCBA発表
サムネイル:AIによる生成画像







コメント