長期保有BTCが30%到達の可能性、供給減で価格上昇の圧力強まるか|Fidelityレポート
希少性増すビットコインに上昇圧力か
米資産運用大手Fidelity(フィデリティ)傘下の仮想通貨部門Fidelity Digital Assetsが2025年6月18日、10年以上移動していないビットコイン(BTC)の保有量が、新規発行量を初めて上回るペースで増加していることを明らかにしました。
同社の最新レポートによれば、2024年の半減期以降、1日あたり平均566 BTCが「10年以上移動していない超長期保有」カテゴリに分類されており、これは現在の新規発行量(約450 BTC/日)を上回る水準です。
さらに、市場で流通していないビットコインの割合が増加しており、6月8日時点で発行済みBTCの17%以上が10年以上動いていないことも報告されています。
レポートでは、長期保有の傾向がさらに強まることで市場に流通するBTCの供給量が減少し、ビットコイン全体の希少性が一段と高まる可能性があると分析されています。
また、現在の傾向が続けば2026年までに総供給量の30%(約630万BTC)が長期間移動しないコインになるとの見方も示されました。
市場で流通するコインが減少し、アクセス不能なコインが増加することで、ビットコインの希少価値は年々高まっています。このような供給構造の変化により、市場における希少性がさらに高まり、価格を押し上げる要因となる可能性があると同社は分析しています。
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長期保有比率がビットコイン価格に与える影響
同レポートによると、こうした長期保有者の増加がビットコインの供給動態を変化させつつあります。
長期保有とビットコインの希少性
2019年以降で約340万BTCが新たに「エンシェントサプライ(長期間移動していないコイン)」に加わり、記事執筆時点の市場価格で換算した場合、時価総額は約3,600億ドル(約52兆円)に達すると推計されています。
この中にはビットコイン創設者サトシ・ナカモトの保有分が約3分の1含まれており、残りの一部もアクセス不能な「失われたコイン」である可能性が指摘されています。
こうした動かないコインの存在は、時間の経過とともに市場で取引される供給量を徐々に減少させ、結果としてビットコインの実質的な希少性を高めることにつながっています。
Fidelityは、このように供給が絞られていく傾向が今後も続けば「希少性」がビットコイン価値の重要な焦点となり得ると分析しています。
短期的には売り圧力も発生か
一方で、短期的な価格変動への影響については慎重な見方も示されています。
同社は「超長期保有が新規供給を上回る現象自体はただちに価格上昇を保証するものではない」と強調しており、市場環境次第では逆に売り圧力となる場合もあると指摘しました。
2024年末以降の市場では長期保有者による利確売りも散発しており、レポートの中で、2025年初めには5年以上保有されたコインの供給が一時減少する動きも明らかにされています。
これは、長期保有コインが増加するほど、それらが移動した際の市場への影響が短期的に大きくなる可能性があることを示唆しています。
希少性が支えるビットコインの価値
しかしFidelityは、半減期を経て供給増加率が逓減するビットコインのプログラム上の特性や、高い確信を持つ保有者の存在、さらにはアクセス不能なコインの存在などを踏まえ、将来的に希少性が一段と高まる可能性があると結論付けています。
需要が高まる局面ではこの希少性が一層重要となり、ビットコイン価格の長期的な押し上げ要因になり得ると分析されています。
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仮想通貨市場に強気な見解
供給減少に伴う希少性の高まりを背景に、ビットコインに対する強気な価格予想が相次いで発表されています。
スタンダード銀が示すビットコイン価格の将来像
英国大手銀行スタンダードチャータードは2025年2月、公表したレポートで「2028年末までにビットコイン価格が50万ドル(約7,260万円)に達する」との見通しを示しました。
同社は米国での現物ビットコインETF普及による投資環境の改善や価格変動率の低下を根拠に挙げ、今後機関投資家からの資金流入が加速するとの予測に基づいてこの高い目標を設定しています。
実際、スタンダードチャータードは直近の市場動向を受けて2025年末の予想も従来の10万ドルから20万ドル(約2,900万円)へと上方修正しており、強気姿勢を鮮明にしています。
ARKインベストの中長期シナリオ
米著名投資家キャシー・ウッド氏率いるARKインベストも2025年4月に発表した市場予測で、2030年末までにビットコイン価格が最大240万ドル(約3億4,860万円)に達する可能性を示しました。
この予測は前年初頭時点の見通しを大幅に引き上げた強気シナリオであり、同社は標準シナリオでも120万ドル(約1億7,160万円)、保守シナリオでも50万ドルと、いずれも従来予測を上方修正しています。
ARKインベストのレポートでは、ビットコインの潜在的な利用分野拡大やネットワーク成長に伴う市場規模(TAM)の拡大と、固定供給による希少性を組み合わせたモデル分析により、今後約5年間でこれほどの価値上昇が起こり得ると説明されています。
ヘイズ氏が示すビットコインの将来予測
暗号資産取引所BitMEXの元CEOであるアーサー・ヘイズ氏は今年5月、自身のブログで「ビットコイン価格が2028年までに100万ドル(約1億4,525万円)に達する可能性がある」との大胆な予測を発表しました。
ヘイズ氏は、米国の巨額債務問題や海外資本の流出によって今後ドル価値が低下し「ビットコインが既存の金融システムに代わる唯一のセーフヘブン(安全な避難先)になり得る」と述べています。
一方で、市場関係者の中には過熱する強気予想に対して依然慎重な声もあり、各国金融政策の変化などマクロ経済要因によって価格動向の予測は従来以上に困難との指摘もあります。
ビットコインの供給減少と希少性の高まりを背景とした強気な長期予想が相次いでいる現状について、市場関係者はビットコインがデジタル資産クラスとして成熟段階に入っていることを示す動きと捉えています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.25 円)
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Source:Fidelity Digital Assetsレポート
サムネイル:AIによる生成画像