チリ、大統領選でビットコインが争点に「反対はインターネット否定と同じ」

大統領選でビットコインが争点に「反対はインターネット否定と同じ」(Bitcoin becomes a central issue in Chile's presidential election: "Opposing it is like rejecting the internet")

この記事の要点

  • チリの2025年大統領選挙でビットコインが重要な争点に
  • 主要候補が反ビットコイン姿勢から支持へ傾く動き
  • チリ中央銀行は価格変動を理由に慎重姿勢を維持
  • 国内ではビットコイン議員連盟の設立や法整備が加速

チリ次期政権の鍵を握るビットコイン

ベンチャーキャピタリストのダニエル・バッテン氏は2025年5月20日、自身のX(Twitter)でビットコイン(BTC)がチリの2025年大統領選挙の争点になりつつある」と指摘し、右派と左派双方の有力大統領候補者がビットコインへの反対姿勢を明確に示さなくなったと投稿しました。

バッテン氏は「ビットコインに反対することはインターネットに反対するのと同じ。政治的自殺行為だ」と述べ、インターネットが普及した際の流れを考えれば、ビットコインに反対するのは得策ではないとの見解を示しています。

2025年のチリ大統領選挙では、ビットコインが重要な争点となりつつある

現在、アンドレス・ビジャグラン氏は、6月の予備選挙で有力とされる左派・右派両陣営の候補者と面会を済ませており、ビットコインに対する認識が大きく変わり始めています。(後略)

現在チリでは、エネルギー業界や経済界からはビットコインのマイニング(採掘)活用によるエネルギー問題解決への期待が示されています。

一方でチリ中央銀行などの金融当局は公式声明で、ビットコインの価格変動(ボラティリティ)の激しさや法的地位の不確実性に対する懸念を表明しています。

ラテンアメリカの主要国であるチリが初めてビットコインを本格的な政治課題として取り上げる可能性に、国内外から注目が集まっています。

チリで高まるビットコイン支持の波

チリ政界を動かすロビー活動

バッテン氏がXに投稿した背景には、チリ人ソフトウェア開発者で政策アドバイザーのアンドレス・ビジャグラン氏が主導するビットコイン推進のためのロビー活動があります。

ビジャグラン氏は2023年から米国のビットコイン支援団体サトシ・アクション基金のデニス・ポーター氏らと協力し、チリ各地の議員に対してビットコインマイニングを再生可能エネルギーの過剰生産対策(電力の余剰分を有効活用する方法)として提案してきました。

「チリでは毎年6テラワット時もの太陽光・風力発電が無駄になっている。ビットコインのマイニングのような柔軟な電力消費先と組み合わせれば、この無駄を完全になくせる」とポーター氏も指摘するなど、ビットコインは余剰電力の有効活用や電力網の安定化に資するとの主張がなされています。

ビットコイン反対の政治的リスク

バッテン氏が「ビットコインに反対することは政治的自殺行為だ」と述べた背景には、こうした丁寧な働きかけが功を奏し、主要候補者が誰も公然とビットコインに反対しなくなったことがあります。

同氏は米国民主党が仮想通貨規制の強化により若者層や投資家の支持を失った過去の失敗事例に言及し、チリの候補者たちがこれを教訓としていると分析しています。

バッテン氏によれば左右両陣営の有力候補がビットコイン支持に転じつつあり「多くの有権者がイノベーションや安価な電力、マクロ経済のヘッジ手段としてビットコインを捉えている以上、それに敵対することは得票面でも不利だ」と指摘しています。

バッテン氏の見解は、ビットコインの環境・経済上の意義を強調するものであり、同氏の投稿は国内外のビットコイン支持者から支持を集める一方で、一部の慎重派からはその楽観的すぎる見通しに対する疑問の声も上がっています。

仮想通貨政策を競うチリ大統領候補

右派候補のビットコイン支持

共和党のホセ・アントニオ・カスト氏は市場経済を重視する立場をとっており、ビットコインにも積極的な姿勢を見せています。

2021年の選挙期間中にもエルサルバドルの事例を引き合いに出し、ビットコイン導入の可能性を示しました。現在はビットコインを国家の競争力強化策と位置付け、産業活用を積極的に検討しています。

中道右派連合のエブリン・マテイ氏も、チリ経済の成長促進や新技術導入による競争力強化の視点からビットコインに注目しています。最近の世論調査ではカスト氏と支持率を二分しており、両候補ともエネルギー政策や投資促進策としてのビットコイン活用に前向きです。

与党陣営の慎重姿勢

与党連合所属のカロリーナ・トハ内務大臣は、明確な反対姿勢を示していません。また、ゴンサロ・ウィンター下院議員やジャネット・ハラ労働相など左派系候補者も、ビットコイン活用を否定しておらず、慎重ながら検討を続けています。

その他候補の動向

人民党のフランコ・パリシ氏は、公式な政策発表はまだ行っていないものの、自身が出演する番組などで積極的に仮想通貨やブロックチェーンについて肯定的な発言をしています。若者層からの支持が強く、2025年5月のフィンテックフォーラムでもビットコインに肯定的な発言を行っています。

一方、元大統領ミチェル・バチェレ氏も候補として取り沙汰されていますが、正式な出馬表明や仮想通貨に関する姿勢は未だ不明です。ただし、現在のところ、主要候補の中で公然とビットコインを否定する人物はいない状況です。

チリの仮想通貨法整備と市場の拡大

2024年4月以降、チリでは仮想通貨関連の法整備が進み、市場規模の急拡大とともに政策面での議論も一層活発になっています。

まず法制度面では、チリ政府は2022年末にフィンテック振興法(イノベーション金融法)を成立・公布し、仮想通貨ビジネスの包括的な規制枠組みを整えました。これにより仮想通貨取引所の登録制や投資家保護策が進みつつあります。

また、チリ国内の仮想通貨利用は拡大傾向にあり、過去3年間で仮想通貨の取引高は3.42倍に増加し、累計取引額は1,050億米ドル(約15兆円)を超えています。こうした市場の成長も、政治家が仮想通貨政策を無視できない一因となっています。

チリで広がるビットコイン政策の議論

「ビットコイン戦略備蓄」構想と議員連盟の動き

政策提言としては、2024年12月に複数の国会議員が「ビットコイン戦略備蓄(SBR)」構想を発表し、大きな注目を集めました。

これは中央銀行の外貨準備の一部にビットコインを組み入れる大胆な提案で、2024年11月にはビジャグラン氏のチームがボリッチ大統領の政権メンバー(財務省当局者や与党議員)に対して直接説明を行いました。

さらに与党・左派連合に属するガエル・ヨーマンズ下院議員は「ビットコイン議員連盟(バンカダ・ビットコイン)」の結成を提案し、各国の事例研究や法整備の検討を進める考えを示しています。

ヨーマンズ議員は「このプロジェクトはチリを地域のビットコイン導入のリーダーとして位置付け、国家経済のツールにもなる」と強調しており、政界でも超党派で仮想通貨を研究・推進しようとする動きが活発になってきています。

中央銀行の慎重な姿勢

一方、金融当局の対応も伝えられています。

チリ中央銀行は2024年12月、ビットコインを外貨準備に組み入れる可能性について正式に見解を発表しました。

声明では「ビットコインなどの仮想通貨は価格変動(ボラティリティ)が大きく、流動性や信頼性の点で国際通貨基金(IMF)の定める準備資産基準を満たさない」と指摘し、ビットコインの外貨準備入りを拒否する姿勢を明らかにしました。

中央銀行は「外貨準備は法定通貨や国債など安全で流動性の高い資産に限定すべき」と主張し、現時点では仮想通貨ビットコインを準備資産に含める計画はないと明言しています。

このように金融当局は依然として慎重であり、チリの姿勢は戦略的ビットコイン備蓄を検討するブラジルなど周辺国に比べても保守的だと言われています。

ボリッチ政権の中立的スタンス

しかしチリ政府は完全に背を向けているわけではなく、現政権も表向きは中立を保っています。

ガブリエル・ボリッチ大統領自身は2025年4月のインド訪問中、熱心なビットコイン支持者である隣国アルゼンチンのミレイ大統領が関与した仮想通貨スキャンダルを引き合いに出し「我々はネット上で無責任に仮想通貨を推奨することはありません」と皮肉交じりに述べました。

この発言はスタートアップイベントでのものですが、暗に「国家として無責任な仮想通貨推奨はしない」という立場を示したものです。

一方で同じ演説でボリッチ大統領は「技術革新は人々の生活向上に資するべきだ」とも語っており、ブロックチェーン技術の利活用そのものを否定するものではありません。

実際、政府高官も参加するフィンテック・ブロックチェーン関連のカンファレンスが国内で定期的に開催され、仮想通貨政策についての議論の場が積極的に設けられています。

チリ大統領選とビットコイン政策の今後

2025年6月20日に全国テレビ放送で予定されている大統領選候補者討論会では、エネルギー政策と仮想通貨を含むデジタル資産に関する特別討議セッションが設けられる見通しです。

報道によれば、少なくとも一人の有力候補がこの討論の場でビットコイン採掘に関する政策提案を公約として打ち出す意向であるとされています。

これはチリの選挙史上初めて仮想通貨が国内テレビ討論の正式議題となることを意味し、チリ国内でビットコインがいかに重要視されているかを示す象徴的な出来事となります。

この流れが続けば、2025年のチリ大統領選挙は主要候補全員がビットコイン関連の公約を掲げる世界初のケースになる可能性があります。

気候変動対策やエネルギー問題の解決策として、また国家の競争力強化やインフレヘッジ手段として、仮想通貨ビットコインがどのように政策に位置付けられるかが2025年チリ大統領選挙の最重要な争点の1つとなっています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=144.29円)

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Source:ダニエル・バッテン氏X投稿
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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