ユーロ/米ドルは、1.1500ドルを超えると 上昇が加速しそう。ECBは、輸入インフレを 悪化させるユーロ安を望まない?

1月はニュージーランドドルが最弱通貨。ニュージーランド/円の売りが最良パフォーマンスに みなさん、こんにちは
 前回のコラムのとおり、1月の為替市場の主役は、ニュージーランドドル/円でした。以下は、米ドルに対する主要通貨の1月騰落率です。
【参考記事】●ニュージーランドドル/円は、2月も下値余地が拡大! 米国株の下落は、2000年のドットコムバブルの時代と非常に似ている!?(2月3日、西原宏一)
 米国の利上げ期待を背景に、米金利は軒並み上昇。呼応して、米国株が急落する中、リスクオフの展開で対米ドルでは円が強含み。
 そして、利上げが織り込まれているニュージーランドドルが最弱通貨に落ち込むという展開で、ニュージーランドドル/円のショート(売り)が最良のパフォーマンスという結果で、2022年最初の月は終了しました。
ニュージーランドドル/円 日足(出所:TradingView)
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! 10日間の無料体験期間もあります! 詳しくは、以下のバナーをクリック!
ECB理事会のラガルド総裁の発言きっかけに、ユーロが急騰。為替市場の主役に躍り出る しかし2月に入り、そうした流れは一気に変わりました。
 以下は、米ドルに対する主要通貨の年初来騰落率(年初来)になります。年初からの最弱通貨はニュージーランドドルで変わりませんが、ユーロが一気に最強通貨に躍り出ています。
 このきっかけとなったのが、先週(1月31日~)、2月4日(金)に行われたECB(欧州中央銀行)理事会でした。
 これまでECBは、(公言はしていませんが)輸出に有利という観点で「ユーロ安」を支持していました。
 マーケットがユーロ高に振れると、ECB当局者からユーロ高牽制コメントが飛び交うのはよくある事。特にECBの主任エコノミストであるレーン専務理事は、ユーロ上昇に伴うリスクの高まりを指摘し、ユーロ高に警鐘を鳴らしていました。
 しかし、ユーロ圏のインフレ率が過去最高まで上昇するという状況下、ユーロを取り巻く環境は大きく変わり、ECBは輸出支援のためのユーロ安よりも、インフレ抑制を優先させるのではないかという観測が浮上。
 つまり、輸入インフレを悪化させるユーロ安をECBは望まなくなっているのではないかという憶測が少しずつ拡大していました。
 そうした中で行われた先週(1月31日~)のECB理事会では、ラガルド総裁が年内利上げの可能性を排除しなかったことから、市場では年内利上げ観測が急浮上。
 過去2年、大きなボラティリティを見せなかったユーロ/米ドルが、1.12ドル台ミドルから一気に1.1500ドルに迫るほどの急騰となりました。
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
 ユーロは対米ドルのみならず、主要通貨に対して上昇しています。
ユーロVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! 10日間の無料体験期間もあります! 詳しくは、以下のバナーをクリック!
利上げへの扉を開いたECB。ユーロ/米ドルは1.1500ドルを超えると上昇加速するか ユーロ圏は10年以上という長期にわたり、実質的に金利がゼロの状態が続いてきました。
 その流れに終止符を打ったのが、先週(1月31日~)のECB理事会でのラガルド総裁のコメントだったわけですので、マーケットが大きく反応するのはわかります。
 ドイツ銀行のクリスティアン・ゼービングCEOは、先週(1月31日~)のECB理事会は利上げへの「扉を開いた」という意味で歴史的な転換点だったといえるとコメントしています。
 実際、先週(1月31日~)のECB理事会が歴史的な転換点だったとすれば、ユーロはどこまで上昇するのでしょうか?
 ユーロはすべての主要通貨に対して上昇していますが、ここではユーロ/米ドルを取り上げてみましょう。
 先週(1月31日~)のECB理事会以降、一気に値を上げてきたユーロ/米ドルですが、1.1500ドルを超えられず、もみ合いに入っています。
 これは、1.1500ドルにあるまとまったオプションが上値を抑えていると推測できます。たとえば、本稿執筆時点では下記のようなオプションが残存しています。
ユーロ/米ドル
1.2170ドル(ユーロ7億8600万)1.1600ドル(ユーロ15億6000万)1.1500ドル(ユーロ17億6000万)
※権利行使期限:2022年2月10日
注目のストライクプライス(※)
1.1550ドル(ユーロ10億3000万(2月11日))1.1500ドル(ユーロ19億8000万(2月11日))1.1300ドル(ユーロ13億8000万(2月11日))
出所:Bloomberg
(※編集部注:「ストライクプライス」とは、権利行使価格のこと)
 ユーロ/米ドルの1.1500ドルのオプションは増加し、37億ユーロを超えていて、先週(1月31日~)からずっとレジスタンスとして機能しています。しかし、本日(2月10日)に17億ユーロ消滅。
 このように上値を抑えていた1.1500ドルのオプションが徐々に減少するため、ユーロ/米ドルは、数日中に再び上昇を再開すると考えています。
 そして、1.1500ドルをブレイクすれば、ユーロ/米ドルの上昇は加速すると考えています。
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
 利上げへの扉を開いた先週(1月31日~)のECB理事会は歴史的転換となるという評価が多数。呼応して、ユーロが主要通貨に対してどこまで上昇するのかに注目です。

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です