豪ドルで始まり、豪ドルで終わる為替相場。 豪ドルの反落でリスク資産が軟調に転じる 可能性、今後の豪ドルの動きには警戒!

RBAの金融政策の決定が、リスク資産の行方を大きく左右するきっかけとなる傾向 みなさん、こんにちは。
 前回のコラムでもフォーカスしましたが、今月(11月)に入ってからのイベントはなんといっても、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の金融政策決定会合。
【参考記事】●米ドル/円は、年内120円を目指した押し目買い継続! 主要中央銀行は金融緩和縮小に追い込まれるが、日銀は蚊帳の外。円安は進む!(11月4日、西原宏一)
 もちろん、先週(11月1日~)はBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])やFOMC(米連邦公開市場委員会)といった主要中銀の金融政策決定会合も行われていることは認識しています。
 ただ、筆者がRBAに注目しているのは、RBAの金融政策の決定が、リスク資産の行方を大きく左右するきっかけとなる傾向があるからです。
2020年3月のRBAのYCC導入をきっかけに、リスク資産が急反発 たとえば、昨年(2020年)の3月。
 RBAは2020年3月19日(木)に政策金利を0.10%に引き下げています。
 それと同時に、RBAは日銀が初めて採用したYCC(※イールドカーブ・コントロール)を採用し、翌日物金利と3年債利回りを0.25%に設定しました(その後、2020年11月に設定を0.1%に引き下げています)。
(※イールドカーブ・コントロールとは、中央銀行が国債の利回りを一定の水準以下に保つために必要なだけ国債を購入することを約束するもの)
 つまり、RBAが金融緩和を推し進めたわけですが、それをきっかけに、豪ドルは逆に上昇に転じ、すべての主要通貨に対して反発開始。
【参考記事】●「株安・米ドル高」の流れは早晩反転か? 豪ドルは悪材料出尽くしで中期的に反発へ(2020年3月26日、西原宏一)
 豪ドル円は2020年3月19日(木)に到達した59.91円という安値から、86.25円まで約26円も暴騰します。
豪ドル/円 日足(出所:TradingView)
 豪ドル/米ドルは0.5510ドルから0.8007ドルへと2497pipsも暴騰しています。
豪ドル/米ドル 日足(出所:TradingView)
 そして注目すべきは、RBAが大幅金融緩和に動いた2020年3月19日(木)前後に、一部の主要通貨がボトムを打っていることです。
 たとえば、英ポンド/円、カナダドル/円です。
豪ドル/円&英ポンド/円&ニュージーランドドル/円 週足(出所:TradingView)
 加えて、主要な株式インデックスも2020年3月に底打ちしています。
 たとえば、NYダウ、ナスダック総合指数、そして日経平均となります。
NYダウ&ナスダック総合指数&日経平均 日足(出所:TradingView)
 こうした背景から筆者は、次にRBAが金融政策を変更するタイミングを待っていました。
2021年11月2日にRBAがYCCから撤退し、豪ドルが値を崩した そして2021年11月2日(火)にRBAの金融政策決定会合を迎えます。
 先週の復習になりますが、今回のRBAが注目されたのは、10月29日(木)、大方のマーケットの予想に反し、RBAが豪3年債利回りを0.10%前後の目標水準に抑制するための対応を行わず、国債を購入する計画を公表しなかったこと。
【参考記事】●米ドル/円は、年内120円を目指した押し目買い継続! 主要中央銀行は金融緩和縮小に追い込まれるが、日銀は蚊帳の外。円安は進む!(11月4日、西原宏一)
 このRBAの対応見送りは、YCCが停止されるのではないか?との市場の観測に拍車を掛けることになります。
 それにより、豪3年債利回りは一時1.2150%まで急騰。
豪3年債利回り 日足(出所:TradingView)
 豪長期金利(豪10年債利回り)も2020年3月以降で初めて2.00%を上回りました。
豪長期金利(豪10年債利回り) 日足(出所:TradingView)
 よって、いつも以上に注目が高まっていたRBAですが、結果は、豪3年債利回り目標の撤廃。
 つまり、マーケットが懸念したとおり、RBAはYCCからの撤退を発表します。
 呼応して、豪ドルは値を崩し始めます。
 以下は、今月に入っての主要通貨の対米ドルの騰落率。本稿執筆(11月11日)時点で、豪ドルはすべての主要通貨に対して値を下げていることになります。
 この局面で筆者は、この豪ドルの動きがシンプルにRBA後の「セル・ザ・ファクト」による豪ドルの利益確定売りに終わるかどうかを見極めようとしていました。
 しかし、2020年3月から始まった豪ドルの急上昇は、RBAがYCCを導入したことから始まっているわけですので、2021年11月2日(火)にRBAがYCCから撤退したことを見逃すわけにはいきません。
今週はクロス円も軟調。鉄鉱石の大暴落や銅価格の下落も豪ドルのネガティブ要因に 今週(11月8日~)に入っても豪ドルのみならす、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は総じて軟調。
世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
 加えて、豪ドルのサポート要因ともいえるiron ore(鉄鉱石)も、節目の100を割り込み、84.50まで大暴落しています。
シンガポール鉄鉱石先物 日足(出所:TradingView)
 この鉄鉱石の大暴落と銅価格の下落は、中国の不動産部門の債務危機の深刻化が需要を抑制するとの懸念拡大と結びついたものであり、こちらも豪ドルに対してネガティブ要因となります。
NY銅先物 日足(出所:TradingView)
RBAのYCC撤退で、豪ドルの下落が深まり、リスク資産も軟調に転じる可能性が高まっているため要注意 昨年(2020年)3月、RBAがYCCを導入したことが、豪ドルのみならず、株やコモディティといったリスク資産急騰のきっかけとなっています。
 そして先週、RBAがYCCを撤退したことが、豪ドル反落のきっかけになり、下落が深まる公算が高まっているので要注意です。
 豪ドル/円、豪ドル/米ドルの下落、加えて、株などのリスク資産も軟調に転じる可能性も高まっているため、豪ドル絡みの動向に警戒です。

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

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