米ドル/円、年内118円台の目標は変わらず! 円安は既定路線、円が買われる理由は見当 たらない。米ドル/円は押し目買いスタンスで

FOMCは無風通過、一方、英中央銀行会合後は英ポンド暴落 FOMC(米連邦公開市場委員会)は無風通過したが、昨日(11月4日)、英中銀会合後に市場は大きく波乱となり、結果的に米ドル全面高を促進した。また、米ドル全面高だからこそ、円安の一服がもたらされた……目先は、このような市況説明ができるのではないかと思う。
 市場関係者が一番注目していたFOMCは、至って平穏に行われ、米国株は新高値を更新した。
NYダウ 日足(出所:TradingView)
 計画どおりのテーパリング開始、また、想定どおりの利上げを急がないという示唆など、声明文やFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言が至って平穏だったからこそ、波乱なしの市況が形成された。
 しかし、英中銀会合はまったく反対であった。ベイリー英中銀総裁は、あんなに利上げ、利上げとうるさく示唆してきたにもかかわらず、昨日(11月4日)、利上げに反対票を投じ、その後の発言もきわめて無責任だった。
 言い訳ばかりでまるで子どもがすねたような言動が、とても中央銀行総裁に見えなかったことが市場関係者に衝撃を与え、英ポンドの暴落も当然の結果だったというわけだ。
英ポンド/米ドル 日足(出所:TradingView)
 その結果、米国債利回りの急落があったにもかかわらず、ドルインデックスは急伸し、一時、94.47まで上昇、2021年年初来高値(10月高値の94.57)をこれから更新していく勢いを示している。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 英国ほどではないものの、先日の豪中銀の金融政策発表でも似たような展開があった。豪中銀の発表内容が総じてマーケットのコンセンサスと乖離していたので、豪ドルの反落が見られた。そして、豪ドルのような外貨が下がることによって、米ドル高が鮮明になるという流れになった。
 英ポンド安、豪ドル安、そして、そもそも軟調なユーロの一段安があって、これらの外貨は対円でも急落を演じた。
 そして、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円高圧力は、間接的とはいえ米ドル/円に波及し、米ドル/円の頭を抑え込んでいるというわけだ。
世界の通貨VS円 日足 
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 このような市況が継続すると、米ドル/円の115円大台突破が後ずれになるかもしれない。
円売りの一服があれば押し目買いの好機 一方、米ドル高のメイン基調が変わらない以上、円売りの一服があってもあくまで途中のスピード調整であり、見方を変えれば逆に、押し目買いの好機と映る。
 主要クロス円が、仮にすでに頭打ちになっているとしても、このままベア(下落)トレンドへ転換していくとは想定しにくい。保守的なシナリオでも、高値圏での保ち合いを保てるから、レンジ内の押し目買いがなお有効な戦術だとみる。
 なぜなら、いくら英中銀の無責任があっても、いくら豪中銀の見通しが明白ではないと言っても、日本よりはマシだからだ。
 テーパリングのテ字もなく、利上げなんかは夢の中の夢と言えるほどまったく展望のない円より、英ポンド、豪ドルなどの外貨が優位なことは変わらない。円が買われる理由は、円売りポジションの整理ぐらいしか見つからない。
 足元まで円はいったん買われたから、ポジション整理も一巡した可能性が大きく、連続した円の急騰はなかろう。
 この意味合いにおいて、米ドル/円の押し目買いのスタンスは不変だ。主要クロス円の持ち直しさえあれば、米ドル/円は上値トライ、また115円の心理的大台を突破できるだろう。
 115円の節目はあくまで心理的大台だが、いったん打診があれば、マーケット心理を大きく左右し、新たな円安段階に入っていくだろう。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
今晩の米雇用統計によって米ドル/円の上放れがあってもサプライズではない 実際、10月20日(水)から足元まで、米ドル/円は高値圏での保ち合いをだいぶ継続してきた。
 FOMCに続き、今晩(11月5日)の米雇用統計を通過すれば、上放れのタイミングにあることは間違いないだろう。
 相場は現実より先に行くから、円安の可能性が強ければ強いほど、今晩(11月5日)の米雇用統計の中身は、米ドル高に寄与する可能性が大きく、今晩上放れがあってもまったくサプライスではないと思う。
 もちろん、米雇用統計自体、まったく予想できないほど厄介な指標なので、断定的な話はできない。
 場合によっては米ドル/円の大波乱が先行し、その後、再度高値トライの可能性もあるが、強調したいのは、円安は規定路線である以上、途中の進行路線がどうであれ、たどるところは一緒である、ということだ。
 115円の大台の打診はもはや短期ターゲットにしかならず、2021年年内のターゲットを118円台に定める見通しは不変だ。
 米ドル/円を月足で見るとわかるように、先月(10月)の大陽線が決定的な存在感を示している。
 それは、昨年(2020年)高値をブレイクしたことはもちろん、コロナショックの昨年(2020年)3月の月足から2021年9月まで続いた大きな「インサイド」を上放れしたことがもっと大きな示唆と見なされる。
米ドル/円 月足(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
 この「インサイド」(はらみ)のサインは長い歳月をかけて形成されてきただけに、上昇波が先月(10月)の高値前後に留まることは逆に想定しにくい。2016年年末~2017年年初高値の118円台後半の打診を目指していくのがむしろ規定路線に見えるから、調整の先行があっても上値志向は変わらないだろう。
 いずれにせよ、昨日(11月4日)の英中銀の「裏切り」がもたらした一時の波乱は、長く続かない公算が高い。円売りトレンドが変わらない以上、米ドル/円は中長期、主要クロス円は短期における押し目買いのチャンスに恵まれる。市況はいかに。
(13:30執筆)

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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