主要クロス円にとって、コロナショックは 長かった円高時代の終焉を意味する存在!

■円安基調は、円に主体性がなくなったことが背景 円安の基調が一段と強まっている。主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方では、ユーロ/円、豪ドル/円が、ともに2019年高値を更新、英ポンド/円はもう少しでブレイクするところまできている。
ユーロ/円 週足(出所:TradingView)
豪ドル/円 週足(出所:TradingView)
英ポンド/円 週足(出所:TradingView)
 主要クロス円における円安基調の、一段の強化自体は自然な成り行きで、ロジックも単純明快である。
 筆者は繰り返し指摘してきたが、再度まとめてみると要するに、円の主体性がなくなったところが、一番、根本的な背景だと思われる。
 確かに、円は昔から「翻弄される通貨」として有名であるが、「リスクオフの円高」という言い方があるように、昔は主体性を発揮する場面が多かったのも事実だ。
 しかし、昨年(2020年)のコロナショック以来、円にはそのような性質が見られなくなり、もっぱら受動的な存在に化したと言える。
 ゆえに、史上最大規模の金融緩和の環境下で、米ドルは主要外貨に対して大幅な下落を果たしてきたが、相対的に、円に対しては下落幅が限定的だったから、主要外貨のうち、円は実に一番弱かった。
 この場合、ドルインデックスが下落すればするほど、主要クロス円におけるメイントレンド、すなわち、外貨高・円安の流れが強まる。そして、その流れの強化によって、逆に米ドル/円の下値余地が限定され、円高阻止といった波及効果もあったと見られる。
 この意味では、コロナショックは、歴史的な試金石的出来事だった。
 不謹慎な言い方であるが、日経株価の3万円大台回復自体は、トレンドの一環として早晩達成されたかもしれないが、コロナ禍がなければ、少なくとも、こんなに早く達成できなかったかもしれない。
 相場は「理外の理」であるが、「相場の理」を軽視せずに直視すれば、コロナショックは、日本株式市場における内部構造の試金石となり、また、内部構造を鮮明化させる材料でもあることを素直に認められるだろう。
■主要クロス円は、2020年3月安値を安易に下回らない 為替市場でも然り。
 コロナショックは、まず、円の属性を一段と明らかにした。従来の「リスクオン・オフ」の概念で円の値動きが捉えられなくなってきたことを示唆し、米ドル全体も、巷で言われるほど弱くないことを暗示している。
 換言すれば、円は米ドル次第であるが、米ドル自体は、巷の「常識」で言われるほど弱くはないから、円高の可能性や余地が一段と削がれていることが示される。
 足元、主要クロス円における、外貨高・円安のトレンドの進行は、ほかならぬ、米ドル全体の切り返しにおいて、米ドル/円の方がドルインデックスより鮮明で、またモメンタムが強いことを表している。よって、米ドルは主要外貨のうち、一番弱い円に対する反騰幅を拡大しやすい環境にあると言える。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
 最近の英ポンド/円の連騰も、英ポンドが主要外貨のうち一番強く、対ユーロでも対豪ドルでも強気変動を保ち、米ドル全体の切り返しがあっても高値トライを維持できているから、一番弱い円に対してモメンタムを維持しながら上値余地を拡大していると言うほかあるまい。
英ポンド/円 日足(出所:TradingView)
 この意味において、主要クロス円における大底は、コロナショックで検証された以上、歴史的な円高の底打ちと記憶され、これから何かあっても安易に昨年(2020年)3月安値を下回らないだろう。
 コロナショックは主要クロス円にとって、歴史的な転換点を証明する材料であり、長期に渡って形成されてきた円高時代の終焉を意味する存在であったと思う。
■米ドル自体の強さも証左されつつある さらに、米ドル自体の強さも、今回のコロナショック、また、足元まで続いている歴史的な緩和環境によって証左されつつあるかと思う。
 簡単に言えば、前代未聞、また、前人未踏と言われる今回の大緩和や米ドルのバラ撒きの状況のなか、ドルインデックスは「意外」に堅調な推移を見せ、ここからむしろ反発してくる兆しを見せている。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 もちろん、堅調かどうかは比較する基準がないと言えないし、昨年(2020年)3月高値から米ドル全体が、すでに大幅に売られてきたのも事実である。
 しかし、2018年安値割れを回避し、また、いったん91半ばまでトライしたドルインデックスの値動きに照らして考えると、巷の「米ドル暴落」説が危うくなってきたとも言えるではないかと思う。
 繰り返しとなるが、相場は「理外の理」。あのリーマンショック時も米ドル暴落、また、基軸通貨地位消滅説が盛んであったことを思い出せれば、今回も「巷の常識」では測れない可能性が大きいかと見る。
■短期スパンでもドルインデックスは切り返しの余地あり 長期スパンにおける視点はさておき、今回は、短期スパンにおけるドルインデックスの一段の切り返し余地を指摘しておきたい。
 テクニカル上の視点を、昨日(2月18日)のレポートにまとめたので、下記に掲載したものをご覧いただきたい。
ドルインデックス 日足(2月18日配信、クリックで拡大)(出所:TradingView)
 一昨日ドル指数におけるサインが注目される。結論から申すと、ドル指数の続伸が有力視され、92関門の打診やブレイクが射程圏に入る。
 まず、プライスアクションでは一昨日の足型、「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを点灯していたことを指摘しておきたい。同日ザラ場にて一旦安値更新したものの、一転して陽線で大引け、反発のシグナルを出していた。
 次に、同シグナルの有効性、昨日の続伸や目先の堅調に証左され、これから一段と効いてくるかと思われる。5日からの反落、GMMAにおける「トビウオ」(ゴールデンクロス)の形成や一目均衡表における「雲」の突破が一旦阻止されたことが示唆しただけに、今回はブレイクを果たす可能性が高まる。
 最後に、一昨日の安値、「雲」の下限に支えられたところ、また昨年3月高値から引かれた元抵抗ラインの延長線の支持を事実上確認したところも大きい。さらに、年初来の全上昇幅の61.8%の押しに留まったポイントも見逃せず、ドル指数のリバウンド、続くことが暗示され、目先の主要抵抗ゾーンを突破できれば、一段と反騰の余地を拓く公算。
 ドルインデックスが切り返してくれば、クロス円における頭打ち、また、いったん反落も推測されるが、今のところ、あってもスピード調整で、本格的な頭打ちには程遠く、過度な警戒はいらないと思う。
 そのあたりの詳説は、また次回。市況はいかに。

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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