クラリティ法案、米財務長官「預金流出なら権限行使」銀行8団体と攻防

この記事の要点

  • 財務長官「預金流出なら権限行使ためらわない」と宣言
  • 銀行8団体が利回り規制強化を要求、上院投票は目前

米財務長官、預金流出への対応権限を明言

スコット・ベッセント米財務長官は2026年9月14日、仮想通貨の市場ルールを定める「CLARITY(クラリティ)法案」の最終案に、コミュニティ銀行を保護するための追加権限が盛り込まれたと、自身のX(Twitter)投稿で明らかにしました

この追加権限についてベッセント氏は、ステーブルコインがコミュニティ銀行に損害を与えた場合には「これらのツールを行使することをためらわない」と述べ、預金流出による影響が表面化した際には対応する考えを示しています。

ただし、銀行業界はこうした事後的な対応だけでは不十分だとみており、同じ9月14日には米国銀行協会(ABA)や米独立コミュニティ銀行協会(ICBA)など主要8団体が、ステーブルコインの利回りや報酬への規制をさらに強めるよう求める共同書簡を上院指導部に送りました。

ステーブルコインによる預金流出への対策をめぐって意見が分かれるなか、クラリティ法案は9月15日午後2時15分(日本時間16日午前3時15分)、上院で審議入りを問うクローチャー(討論終結)投票を迎えます。

私はこれまで、米国が新たなテクノロジーをめぐる世界的な競争で勝ち抜くためには、CLARITY法案が不可欠だと繰り返し述べてきました。議会がGENIUS法を成立させたのも、革命的な金融技術であるステーブルコインのインフラを米国内で発展させるためです。

一方で、政権発足以来、米国のコミュニティ銀行が今後も健全に発展できる環境を整えることにも一貫して取り組んできました。新たなデジタル技術の発展を促すことと、コミュニティ銀行に対する規制を適切な形に整えること。この2つを両立させることが、今後数十年にわたって米国経済の成長を支えるうえで重要になります。

CLARITY法案の最終案には、こうした方針をさらに進めるための措置が盛り込まれています。預金流出をめぐる状況が変化し、コミュニティ銀行に悪影響が及ぶ場合には、米財務長官が対応できるよう、追加の権限が与えられています。

もしステーブルコインによってコミュニティ銀行に悪影響が生じるのであれば、私はこれらの権限をためらうことなく行使し、コミュニティ銀行を確実に守ります。コミュニティ銀行は、米国経済の成長や地域経済の発展にとって欠かせない存在です。

経済の安全保障は国家安全保障にも直結します。そして、その重要な役割を担っているのがコミュニティ銀行です。

ABA・ICBAら8団体が共同書簡で修正迫る

「預金流出で地域融資が縮小」と警告

8団体は共同書簡で、決済用ステーブルコインに預金と同じような利回りや特典が付けば、銀行から資金が流出する「預金流出(デポジット・フライト)」につながる可能性があると警告しています。

銀行預金は住宅購入や進学、中小企業や農業への融資に加え、軍人や退役軍人とその家族向けの金融サービスを支える資金源であり、預金が減少すれば地域への信用供給も縮小すると書簡は訴えました。

なかでも預金を元手に地域密着型の融資を行うコミュニティ銀行やミッション志向の銀行は、資金流出の影響を受けやすいと8団体は指摘しています。

実質利息の抜け穴を塞ぐ3つの修正案

共同書簡によると、クラリティ法案の現行条文はステーブルコイン残高への利息や利回りを禁じる一方、取引や活動に伴うリワード(報酬)は認める内容となっています。

8団体はこの線引き自体には賛同しつつ、現行案には利息に近い支払いを別の形で認めかねない余地が残るとして、セクション10404の修正を求めました。

修正案では、セクション10404(c)(1)(A)から「もっぱら」を削除するとともに、(1)(B)から「決済用ステーブルコイン残高」と「利息付き銀行預金」に関する限定文言を外し、判断基準も「機能的・経済的同等性」から「実質的類似性」へ変更するよう要請しています。

さらに、残高や保有期間などを基準に報酬を算定できるセクション10404(c)(3)(B)については、利息の計算方法と実質的に重なるとして、条項そのものの削除を訴えています。

銀行側「事前規制なければ安全策にならず」

8団体は利息に近い報酬を条文で事前に制限するよう求める一方、9月14日に公表されたクラリティ法案の最終案に盛り込まれた「サーキットブレーカー(預金流出が深刻化した際に財務長官の対応を促す安全装置)」にも懸念を示しています。

ベッセント財務長官は、この条項によって預金流出をめぐる状況がコミュニティ銀行に不利な方向へ変化した場合に、財務長官が行動するための追加権限が与えられると説明しています。

これに対して8団体は、大規模な預金流出が起きた後にしかサーキットブレーカーが働かないのであれば、十分な安全策にはならないと主張しました。

銀行側は、被害が発生してから当局が対応するのではなく、利息と同じように機能するステーブルコインの報酬や特典を法案の段階であらかじめ禁じるべきだとしています。

利回り規制で揺れるCLARITY法案が上院へ

ベッセント財務長官は同じX投稿で、2025年7月に成立したステーブルコイン規制法「GENIUS法」について、革新的な金融技術であるステーブルコインのインフラを米国内に構築するために議会が可決したものだと述べました。

そのうえで同氏は、新しいデジタル技術の成長とコミュニティ銀行の保護を両立させるうえでクラリティ法案が重要だとの立場を改めて示しています。

同法案は2025年7月に米下院を賛成294票・反対134票の超党派多数で通過しており、上院では9月15日のクローチャー投票を通過して審議入りに進めるかどうかが最初の関門となります。

一方、利回りや報酬の扱いをめぐっては銀行業界が追加修正を求めており、コミュニティ銀行の保護とステーブルコインの成長をどう両立させるかという争点を残したまま上院での手続きに入ります。

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Source:ベッセント財務長官X投稿 / 銀行8団体共同書簡
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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