【独自取材】JPYC募金で用途を見える化|熊本地震の情報を発信する福原健氏に聞いた

※当サイトには広告が含まれます。

2026年7月、熊本県で発生した大地震を受け、八代市を拠点にWeb制作・IT支援を手がけるoffice Glean代表の福原健氏は、地域の災害・生活情報を共有するWebサイト「やつしろ災害情報共有」を立ち上げた。

同サイトでは、避難所や給水所、店舗の営業状況などを住民同士で共有できるほか、日本円と1対1で連動するステーブルコイン「JPYC」による運営支援も受け付けている。

特徴的なのは、集まった金額だけでなく、出金額や使い道まで公開している点だ。取材時点では128件の支援が寄せられ、その一部はサイト更新スタッフへの作業費としてJPYCで支払われた。

なぜ、被災地の情報サイトがJPYCを選んだのか。支援金の「使い道」を見える化することで、寄付のあり方はどう変わるのか。そして、支援を被災者の「仕事」につなげる取り組みは、どこまで広がっているのか。

本記事では福原氏に、サイト立ち上げの経緯やJPYCを採用した理由、実際に使って見えてきた可能性と課題について話を伺った。

【プロフィール】
福原 健(ふくはら・たけし)
office Glean代表

熊本県八代市を拠点に、Web制作・IT支援を手がける。2016年の平成28年熊本地震でも情報集約サイトを立ち上げた経験を持つ。2026年7月の地震では自身も被災するなか、発生2日後に生成AIを活用して「やつしろ災害情報共有」を公開。 

被災地の情報を住民同士で共有する「やつしろ災害情報共有」

編集部:福原さんは、熊本県八代市にお住まいですよね。2026年7月28日の地震での被害状況はいかがでしたか。

福原: 幸い、家族も含めてけがはありませんでした。ただ、かなり揺れたので、家の中は悲惨な状況でしたね。

電気は切れずに済んだのですが、断水が結構長く続きました。8月中旬ごろにようやく戻ってきて、今は生活としては落ち着いてきたところです。

NFTMedia編集部(以下、編集部):そのような大変な状況の中で、被災地の状況を共有するサイト「やつしろ災害情報共有」を立ち上げられたのですね。このサイトについて、詳しく教えてください。

福原 健(以下、福原):熊本県の八代市や氷川町を中心に、避難所や給水所、入浴できる場所、店舗の営業状況など、災害時に必要な生活情報を住民同士で共有できるサイトです。

情報は地図や一覧から確認でき、会員登録をしなくても誰でも投稿できます。投稿には情報源や確認日時も添えられるようにしていて、地域で必要な情報をできるだけ早く共有できる場を目指しています。

編集部:「やつしろ災害情報共有」を地震発生からわずか2日後に立ち上げられましたよね。ご自身も被災されたなかで、すぐにサイトを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

福原:直接のきっかけは、友人との雑談でした。友人が「ヤツシロラジヲ」というラジオメディアをやっていて、災害情報を放送するなかで「どうやって情報を集めようか」「集約するサイトが作れないか」という話が出てきたんです。それを聞いて「やはり情報収集できるWebサイトが必要なのかな」と思いました。

とはいえ、正直なところ最初から作るつもりだったわけではありませんでした。私はもともとWeb制作の仕事をしていて、10年前の熊本地震でも同じようなサイトを立ち上げた経験があります。しかしそこまで技術力があったわけではなかったため、SNSに上がってくる情報を集めて見やすく加工して掲載するくらいしかできませんでした。

しかも今回は生活環境も変わり、10年前ほど時間を使える状況でもありません。

編集部:そのような状況にもかかわらず、2026年の地震ではわずか2日後にサイト公開まで至っています。これには、どのような背景があったのでしょうか。

福原:今回はAIを使ったことが大きいですね。

10年前も頭の中に描いていたものはあったのですが、技術的に実現できませんでした。「これしかできない」という状態が本当にもどかしかったんです。

一方で今回はAIを使うことにより、自分が思い描いているものをダイレクトにサイトへ反映できました。

誰でも情報を投稿できる仕組みも作れましたし、情報も集めやすくなりましたね。

編集部:サイトの機能も、最初からすべて用意していたわけではないのでしょうか。

福原:そうですね。まず自分一人でサイトを作って、その後、周囲から「こういうニーズがある」という話を聞きながら追加していきました。

「開いているお店を知りたい」「給水所はどこなのか」「入浴できる場所はどこなのか」といった声ですね。

必要な機能を追加していくうちに、サイトを訪れた人たちが自律的に情報を書き込んでくれるようになりました。

なぜ支援にJPYCを選んだのか

編集部:サイトでは、募金の方法としてJPYCを採用されています。銀行振込など数ある支援手段のなかで、なぜJPYCだったのでしょうか。

福原:以前から、JPYCのようなステーブルコインを社会でどう使えるか考えていたことが大きいです。

もともとUSDT(テザー)やUSDCといったステーブルコインには関心がありました。日本でもステーブルコインを使える環境が整ってきたというニュースを見て、「JPYCを使った決済サービスができないだろうか」と以前から考えていたんです。

編集部:そこに今回のサイト運営が重なった、と。

福原:そうですね。サイトを立ち上げたあと、開発費の問題が出てきました。

AIを使えば開発コストは抑えられますが、それでもある程度のお金はかかります。自分自身も被災していましたから。

ちょうどそのころ、熊本県全域をカバーする情報サイトがクラウドファンディングを始めていました。ただ、クラウドファンディングは共感型なので、「これだけ多くの人に見られています」といった数字のインパクトも必要だと思うんです。

しかも私のサイトは、八代市周辺だけを対象にしたローカルなものです。アクセス数で大きな数字を出すのは難しい。クラウドファンディングをやっても、どれだけ集まるのかと考えると迷いがありました。

編集部:そこでJPYCによる募金が候補に浮かんだのでしょうか。

福原:そうです。私の中では、JPYCにはいい意味での「くすぶり感」があるように感じていました。

Xを見ていると、「素晴らしい技術だ」「今後の決済を変える」と期待する声がある一方で、「実際に使うメリットは何なのか」という議論も出てくる。

だったら、被災地支援とJPYCを組み合わせることで、何か新しい使い方を示せるのではないかと思ったんです。

編集部:ある意味では、賭けでもあったのでしょうか。

福原:賭けではありました。ただ、可能性も感じていました。

結果として、多くの方に広げていただき、開発を続けられるだけの支援が集まりましたね。JPYCの「くすぶり感」を、いい意味で活用させてもらい、それを被災地支援につなげるというのが狙いでした。

寄付額も使い道もサイト上で公開

編集部:サイトでは、受け取ったJPYCの総額だけでなく、出金額や用途まで公開されています。なぜ、使い道まで見えるようにしたのでしょうか。

福原:一番は、ご支援いただいた方に「何に使ったのか」をきちんと見せたかったからです。

ネットでも「使途がわからないから寄付しづらい」という声を目にします。それが嫌だったんですね。

JPYCであれば、ブロックチェーン上で資金の移動を追うことができます。だからこそ、「こういうふうに使いました」と示せる仕組みにしました。

また、JPYCでただ支援を募るだけでは、支援する側にとっても面白みがないと思ったんです。クラウドファンディングのように、支援したくなる見せ方も必要だろうと考えました。

編集部:実際に使ってみて、透明性以外のメリットも感じましたか。

福原:面白いと思ったのは、ごく少額から送れるところですね。

クラウドファンディングだと最低金額が設定されている場合がありますが、JPYCなら気軽に支援できます。

小数点以下の金額を送ってくださった方もいました。「0.いくつ」という金額ですね。それもすごく面白かったですし、感じるものがありました。

あとは、自分のウォレットへ直接届くところもメリットだと思います。

編集部:支援した人が、あとから再びサイトを訪れる仕組みも意識されたのでしょうか。

福原:そうですね。「今これだけ集まっています」「自分が支援したものがどんどん大きくなっています」と感じてもらえれば、もう一度サイトに来てもらえると思いました。

仕組みとしては、既存のクラウドファンディングを参考にした部分も多いですね。

128件・33万4,000円──「ゼロもあり得る」と思っていた

編集部:7月26日時点では、128件、33万4,000円相当のJPYCが集まっていました。この結果はどう受け止めていますか。

福原:想像していた以上に集まって、本当にうれしいですし、感謝しています。

初めての取り組みだったので、正直、ゼロの可能性も考えていました。「集まらないんじゃないか」「少しでもあればいいかな」くらいの気持ちで始めたんです。

それがここまで集まったので、本当にありがたいですね。

編集部:Xでもかなり反響が広がっていましたね。

福原:私の中ではすごく感銘を受けましたね。

一番印象的だったのが、JPYC代表の岡部さんが個人のウォレットから10万円を送ってくださり、それをXで投稿していただいたことです。そのことが一番の起爆剤になったと思っています。

実際に使って見えた「チェーン」の壁

編集部:JPYCを実際に受け入れてみて、難しいと感じた点はありましたか。

福原:一番難しいと感じたのは、チェーンの違いですね。

公開してから、JPYCが複数のチェーン上に存在していて、チェーンをまたいでそのまま送受信できるわけではないと知りました。

最初の導入時点では、私自身もブロックチェーンの技術的な部分に詳しかったわけではありません。このあたりは、いかにもテクノロジーらしい使いづらさだと感じましたね。

編集部:当初は一つのチェーンだけに対応していたのでしょうか。

福原:はい。そのあとXを通じて知り合い、様々なサポートを現在もしていただいている「ジャンクお宝鑑定団の本アカ」さんからに「Kaiaチェーンのほうが流通量が多いですよ」と教えていただいて、対応するチェーンを追加しました。

こういう部分は、一般に広がっていくうえではまだ課題になると思っています。

支援を「仕事」に変える

編集部:もう一つ特徴的なのが、「被災した方の仕事をつくる」という取り組みです。サイト更新スタッフへの作業費としてJPYCを支払っていますね。

福原:現在、3名の方に手伝っていただいています。

情報掲載を自分一人で続けると、どうしても更新が遅れてしまいますし、私にもほかの仕事があります。

一方で、被災によって仕事や収入が減っている方が実際に周囲にいます。大型の商業施設が閉まったままで、そこで働いていたスタッフの方々が仕事をできないという状況もありました。

サイトへの投稿自体は簡単にしているので、SNSから情報を探して投稿する作業であれば、特別な技術がなくてもできます。

毎日作業費としてJPYCをお送りすることで、皆さん1時間、2時間とかけてきちんと作業してくださっています。

編集部:作業費は、日本円ではなくJPYCのまま支払っているのでしょうか。

福原:JPYCのままです。しかも、受け取っている方はブロックチェーンを知らない方たちです。

私からウォレットのインストール方法をご案内して、「ウォレットのアドレスをLINEで送ってください」とお願いしています。日本円に換えるときは、その都度説明するという形です。

編集部:ブロックチェーンを知らない人が、仕事の対価としてJPYCを受け取っているわけですね。

福原:そこも一つ、JPYCを広める活動になるのかなと思っています。

一般の方は、実際に触ってみないと分からないと思うんです。だから、あえて最初から詳しく説明するのではなく、「とりあえずウォレットを入れて、アドレスを送ってください。そうしたらJPYCで送ります」という形にしています。

編集部:その先には、地域のお店でもJPYCを使えるようにする構想があったのでしょうか。

福原:はい、ありました。仮に1,000万円くらい集まったら、被災した飲食店さんや個人商店さんにJPYCのQRコードを置いてもらう。

そうすれば、私が作業費としてJPYCを支払った方が、そのお店でJPYCを使って買い物できる。そこまで実現できればいいなという構想でした。

現時点では難しいので、まずは作業していただいた方へJPYCをお渡しするところまでですね。

復興は「物資」から「経済」へ

編集部:現在、八代地域の復興はどの程度まで進んでいるのでしょうか。

福原:地域内でも本当に格差があります。

物資が潤沢にある場所もあれば、全然行き届いていないところもあります。八代は土地がかなり広く、山間部とは距離もあります。そのため、まだ水が足りないところもありますね。

また、地下水を使っている地域が多く、地震で井戸が使えなくなったご家庭もあります。水道が復旧しても井戸は直らないので、掘り直さなければならない。そこはかなり大変だと思います。

一方で、電気・ガス・水道は多くの世帯で回復し、飲食店や店舗も少しずつ再開しています。最低限の生活は取り戻しつつありますが、まだ支援が届いていない人もいるという状況です。

編集部:サイトに求められる役割も、少しずつ変わってきているのでしょうか。

福原:そうですね。災害直後が最もニーズの高いサイトではありますが、今は経済面での復旧・復興が次のフェーズに来ていると思っています。

そこで、サイトにもクラウドファンディングの仕組みを入れました。

経済的な支援だけでなく、まだ物資が足りない人と、その人を助けたい人をマッチングできないかとも考えています。

ただ、サイト上で直接やり取りすると個人情報の問題がありますし、落ち着いてくると悪用する人が出てくる可能性もあります。

安全につなげる仕組みを作りたいのですが、その都度、開発費もかかるので、そこは今後の課題ですね。

次の災害にも使えるサイトへ

編集部:最後に、この取り組みを今後どのように育てていきたいと考えていますか。

福原:今後は、ほかの地域や災害でも使える仕組みにしていきたいと考えています。

このサイトは、実は今回の地震だけのために作ったわけではありません。まさか10年でまた大きな地震に見舞われるとは思っていませんでしたが、実際に起きてしまった以上、この先また別の災害が起こる可能性もあります。

今回をある意味で実証実験として仕組みを作り上げておけば、ほかの災害でもそのまま生かせるのではないかと思っています。

編集部:あえて八代周辺にエリアを絞っていることにも意味があるのでしょうか。

福原:その地域にいる人にしか届けられない情報があると思うからです。

例えば、隣町や隣の市の有志の方に同じシステムを渡して、そこで運用してもらう。そうやって各地域に広げていければいいと思っています。

今回の災害が落ち着いたあとも、次の災害に備えて使えるような作りにしているつもりです。

編集部:支援を検討している方に、伝えたいことはありますか。

福原:被災地を応援すると同時に、JPYCを使った一つの実験に参加するような気持ちで支援していただければと思っています。

経済的な復旧・復興はこれからですし、今後さらに課題が表面化してくると思います。実際、仕事を失った方もいます。

今回応援してくださる方には、被災地を支援したいという気持ちに加えて、「JPYCという技術で何ができるのか」という関心をお持ちの方もいると思うんです。そういう意味でも、一緒に可能性を試していただければと思っています。

編集部:被災地支援とステーブルコインを組み合わせた今回の取り組みが、今後どのような形へ発展していくのか注目したいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えて

「ゼロの可能性も正直考えていた」と福原氏は語る。八代市という限られたエリアの情報サイトでは、クラウドファンディングで大きな反響を得るのは難しい。そこで、「実際に使うメリットは何か」という声もあったJPYCに着目し、被災地支援と組み合わせた。

印象的だったのは、「使途がわからないから寄付しづらい」という実感から、ブロックチェーン上で資金を追える特徴を生かし、出金額や用途まで公開している点だ。技術ありきではなく、支援者の不安に応えるために活用している。

一方で、チェーンをまたいだ送受信など、利用上の課題も残る。それでも、取材時点で33万4,000円相当が集まり、ブロックチェーン未経験のスタッフ3人への作業費にもJPYCが使われている。

地域の店舗でもJPYCを使えるようにする構想はまだ先だが、支援を「集める」だけでなく、「見える化し、仕事につなげる」取り組みはすでに始まっている。次の災害への展開も含め、この挑戦はこれからが本番だろう。

関連リンク

暗号資産・NFTの取引をこれから始めたい方には、GMOコインの口座開設がおすすめです。

GMOコインのおすすめポイント
  • 国内最大級の銘柄数を取引できる
  • 入出金や送金など各種手数料0円
  • ステーキングやつみたて、IEOなど豊富なサービスを展開

現在GMOコインでは、暗号資産を購入することで、毎日10名に現金1,000円が当たるプログラムを実施中です。

GMOコイン キャンペーン

プログラムの参加手順は以下の通りです。

  1. 下のボタンからGMOコインにアクセスし、口座を開設(無料)
  2. 口座開設/ログイン後、販売所で暗号資産を500円以上購入、または「つみたて暗号資産」で暗号資産を1回以上購入
  3. 毎日抽選で10名に現金1,000円をプレゼント!当選結果は会員ページで確認可能

毎日抽選で10名に当たるチャンスですので、興味のある方はぜひ参加してみましょう。

The post 【独自取材】JPYC募金で用途を見える化|熊本地震の情報を発信する福原健氏に聞いた first appeared on NFT Media.

参照元:NFT Media

コメント

タイトルとURLをコピーしました