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近年、暗号資産業界ではグローバル規模でAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)の規制強化が進んでおり、特にトラベルルールへの対応が急務となっています。
そうした中、日本国内でトラベルルールソリューションとして圧倒的なシェアを持っているSygna株式会社が、グローバルで展開するVerifyVASPによって買収されるという大きな動きがありました。
本記事では、Sygna株式会社のカントリーマネージャージャパンである斉藤 寿幸氏に、VerifyVASPによる買収の裏側やネットワーク統合のメリット、そして今後の暗号資産業界の再編の可能性についてお話を伺いました。
【プロフィール】
斉藤 寿幸
Sygna株式会社 カントリーマネージャージャパン
30年以上にわたり外資系金融機関に在籍、国内外資本市場の第一線で従事。
近年はAIやブロックチェーン等を活用するグローバル・フィンテックビジネスのマネジメントを牽引している。
VerifyVASPによる買収の背景
NFTMedia編集部(以下、編集部):2026年5月15日、SygnaがVerifyVASPのグループ傘下に入りました。水面下では、いつ頃からこの話が進行していたのでしょうか。
斉藤 寿幸(以下、斉藤):私がVerifyVASPの代表と出会ったのは、実は3年ほど前に遡ります。FATF(金融活動作業部会)の国際会議に出席した際に同氏と名刺交換、交流が始まりました。
その後、双方のシステム統合を試みる話もあり、作業に着手した経緯もあったのです。
事情があって統合の取り組みは一度据置となりましたが、昨秋以降に状況が変化し、同社によるSygna事業買収の検討が開始されました。2026年2月以降にさまざまな調査・査定が行われ、4月16日に正式に契約書を交わしました。
編集部:VerifyVASPとしては、どのような狙いがあったのでしょうか。
斉藤:ズバリ日本市場へのアクセスです。
VerifyVASPはシンガポール企業なのでAPAC(アジア太平洋)市場を中心に事業展開しておりますが、最近はヨーロッパ市場へのアクセスも増加してきました。
またSygnaと比較してネットワークが広範で、お客様のカバー範囲も充実しています。
そのような状況下で唯一アクセス出来ていなかったのが、日本市場だったのです。Sygnaは多くの国内暗号資産取引所にご利用いただいておりますので、日本市場へのアクセスを目的にSygnaを買収した形です。
トラベルルールネットワークの統合
編集部:今回の買収で、今までのお客様(国内暗号資産取引所)にとっても利便性がかなり上がるというイメージでしょうか。例えば、さまざまな海外取引所に送れるようになるということですね。
斉藤:それを目指しての今回の買収ということになります。
もともと、当社でもアライアンス内でのトラベルルールの情報送信は問題なくできていましたし、複数のトラベルルールソリューション提供者(同業他社)との相互運用も実現しておりました。
しかし、今回の買収を機に、大手の海外取引所も含めたVerifyVASPのネットワークに送出人・受取人の情報通知を直接送れるのは、日本のお客様にとって非常に大きなメリットになります。
編集部:トラベルルールに関して、TRUST(Coinbaseなどが主導)やGTR(Binanceが主導)など、現状では複数の情報共有ネットワーク・ソリューションが共存しています。
将来的には統合が進み、1〜2種類に統合されるイメージでしょうか。
斉藤:そこは何とも言えませんが、AML/CFTの観点で当局がトラベルルール・ソリューションを一つの核として見なしているのは事実であると思われます。
その一方で、技術的な問題以外にもハードルが存在し、「すべてのVASP(暗号資産交換業者)と情報共有できるわけではない」という現状を当局も認識しています。
そうしたハードルを乗り越えて、組織が合併等を含めて大きくなり、法令で定められた情報共有が効率的に行われれば、当局もこうした動きを歓迎するのではないかと思われます。
今後の事業戦略について
編集部:VerifyVASP傘下に入ったことで、直近の事業戦略は変更されるのでしょうか。
斉藤:Sygnaの親会社であるCoolBitX(台湾)は、以下の2つの事業を展開していました。
- Sygnaとしてのトラベルルールプロトコル事業
- CoolWalletというハードウォレット事業
今回、Sygna事業を売却することで、CoolBitXでは今後はもう一つの事業であるCoolWalletに経営資源を集中させることになります。
編集部:Sygnaとしては、日本国内において数多くの暗号資産取引所との契約があります。
今後の国内取引所に対するフォロー体制は、どのようになりますか。
斉藤:今後はSygnaもVerifyVASPの一員となるため、最終的にはVerifyVASPのシステムへ移行する流れになると想定されます。
とはいえ、システム移行には相当の時間を要しますし、そもそも現在Sygnaをご契約いただいている国内取引所各社様に拙速なシステム仕様変更をご依頼する訳には参りません。
従って、当面は現状を継続させつつ、お客様のタイミングやご意見を伺いながら、VerifyVASPのシステムとの統合を進めていくことになると推察しております。
編集部:統合にも時間がかかりますし、お客様にご迷惑をかけない形で進めていくということですね。
斉藤:はい。当面は今までの体制でサービスを続け、その後は本格的に連携や移行作業をしていくことになると思います。
国内取引所の現状と今後の展望
編集部:国内の暗号資産取引所について、どのように見ていますか。
斉藤:各社様とも財務諸表も開示されておりますが、大手取引所を中心に事業は堅調に推移しているようです。
ステーキングも充実してきており、ビジネスが多様化していると実感しています。一方で、現在国会で審議されている暗号資産の金商法適用が実現されれば、業界の再編や外資系大手取引所の新規参入等、新たな展開が予想されます。何れにしても、トラベルルールを含むAML/CFT対応が益々重要になるのではないでしょうか。
編集部:その意味では、VerifyVASPによる今回の買収も業界にとって非常に大きなインパクトがありますね。
斉藤:私自身も期待しています。一つの大きな流れになる可能性があると個人的には考えております。
編集部:本日は貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
トラベルルールは、暗号資産業界が健全に発展していく上で避けては通れない重要なコンプライアンス要件である。今回のVerifyVASPによるSygnaの買収は、単なる一企業のM&Aにとどまらず、グローバルにおけるトラベルルール対応のネットワーク統合を意味する大きなターニングポイントと言えるだろう。
国内の暗号資産交換業者にとっては、より広範なグローバルネットワークへのアクセスが容易になり、利便性の向上が期待される。法令遵守を大前提としつつ、いかに新しいビジネスモデルを構築していくか。暗号資産業界は今、大きな転換期を迎えている。
- Sygna 公式サイト:https://www.sygna.io/jp/
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