陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米利上げサイクル入りで新興国が不穏に? ウォール街で意見が割れている=安心感!? ブログ

米利上げサイクル入りで新興国が不穏に? ウォール街で意見が割れている=安心感!?

■9年半ぶりの米利上げで「一件落着」 市場の予想どおり、米利上げが行われた。9年半ぶりであるが、だいぶ時間をかけて市場に浸透してきただけに、無風通過というか、利上げ直後の米国株上昇に見られるように、「一件落着」ということで、マーケットに歓迎されたと言える。 

NYダウ 日足(クリックで拡大)(出所:CQG)

 米国は利上げサイクルに入り、影響はむしろこれからであるが、市場における反応は短期、中期、そして、長期でそれぞれ異なってくるだろう。

 換言すれば、マクロ経済要素として最高序列に位置する米利上げサイクル入り、その重要さはいくら強調してもしすぎではないから、安易に片づけらるものではない。したがって、現時点で米利上げを云々する性急な評論とは、結論はどうあれ、距離を置いたほうがよいかと思う。

■短期スパンでは、米ドルを売る理由がない ただし、短期スパンに限ると、先週(12月11日)のコラムで指摘したとおり、ユーロ安がみられ、そして、米利上げ前にユーロ/米ドルはもう1回高値をつけたのだから、そこが売り好機であったことは明らかだ。

【参考記事】

●なぜ、市場は問題児の発言に過剰反応したのか?ユーロ高なら絶好の売り好機!(2015年12月11日、陳満咲杜)

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

 言い換えれば、米利上げに伴って、米ドル全面高が想定されやすく、また、そのとおりになっているから、短期スパン、つまり、年末年始においては米ドル高の継続が有力視される。

 何らかの特別な材料がない限り、米利上げ後に米ドル高の基調が修正される可能性は小さく、年末年始において米ドル売りポジションを持つ理由も見つからないだろう。

 さらに、米利上げ前にECB(欧州中央銀行)の金融政策決定があり、周知のとおり、今回は「ドラギ・マジック」の不発でユーロのショートポジションが大幅に買い戻された経緯があった。

 これにより、ユーロ/米ドルにおけるバランス(ポジションの状況)は正常に戻っていたから、ユーロ売りが再燃しても行きすぎ感がなく、むしろ健全な値動きだと受け止められる。したがって、当面、ユーロ安・米ドル高が継続されやすいとみる。

■今後1年で米利上げは0.25%×4回あると予想される これからの米利上げサイクルについて、今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)声明文を読むと、17名のFOMCメンバーの中間予想から、来年(2016年)年末までに米金利は1.375%まで上昇する余地がある。これが実現すると、来年(2016年)は4回の利上げがあり、毎回0.25%の利上げが予想されることになる。

 ただ、現在のマーケットのレートがそこまでの利上げ余地を織り込んでいるかどうかは不透明だ。というのは、来年(2016年)の利上げ余地自体が不透明で、状況は流動的だと思われるからだ。

 また、利上げサイクル入りとはいえ、米ドル高が継続…
なぜ、市場は問題児の発言に過剰反応 したのか?ユーロ高なら絶好の売り好機! ブログ

なぜ、市場は問題児の発言に過剰反応 したのか?ユーロ高なら絶好の売り好機!

■ECBメンバーの発言により米ドル反落! 米ドル全体の反落が続いている。 

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 12月9日(水)には、ドルインデックスが97.22の安値にトライし、50日移動平均線にも再度トライした。 

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:CQG)

 ドルインデックスは8月や9月に50日移動平均線に頭を押さえられ、高値をつけていただけに、50日移動平均線のサポート機能の有無が注目された。

 足元では米ドル全体が回復している様子を見せているが、短期スパンではなお油断できない見通しだ。

世界の通貨VS米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)

 もっとも、テクニカルの視点では、9日(水)の安値打診は、先週(12月3日)のECB(欧州中央銀行)金利決定後の米ドル安の延長線上にあり、特筆する必要もない。

 しかし、見逃せないのは、同日の米ドル急落は、実はあの方の発言が引き金を引いたものだったからだ。

 あの方とは、ECB政策委員会メンバーのノボトニー氏(オーストリア中銀総裁)である。9日(水)、ノボトニー氏は「マイナスの中銀預金金利に関するドラギECB総裁のコメントを、市場は過剰に解釈した」と発言、「市場が誤った行動をするとすれば、それはこういった過剰期待を膨らませたアナリストたちのせいだ」と指摘した。

 こういった「八つ当たり」とも受け取られかねない発言は、マーケットの神経を尖らせ、ユーロの買い戻しを一層うながした。

 ちなみに、ドラギ総裁はマイナス金利についてECBは予断を持たず、検討すると述べていたから、氏の発言はECB内部の微妙なズレも暗示していると思われた。

■ノボトニー氏の発言に対し、市場は過剰に反応 しかし、ノボトニー氏の発言が過激かどうかは別にして、本来一メンバーにすぎない同氏の発言に市場はここまで大きく反応する必要はなかった。なぜなら、ECB政策委員会メンバーの数は多く、また政策に関してはドラギECB総裁主導の構造が明確であるから、政策委員個人の発言は必ずしもインパクトを持つとは限らないからだ。

 もう1つ重要なのは、そもそもノボトニー氏はECBの「問題児」と見なされており、氏の過去の発言から考えても、今回の発言を特にサプライズ扱いしなくてもよいはずということだ。 

ECBの「問題児」と見なされているというノボトニー・オーストリア中銀総裁。元々、過激な発言が多いから、ちょっと過激なことを言ってもサプライズ扱いしなくてもよい?  (C)Bloomberg

 たとえば、ノボトニー氏は9月25日(金)には「ECBは政策金利を引き下げる必要はない」と主張し、10月28日(水)には、ESM(欧州安定化メカニズム)の必要に応じた迅速な対応能力に疑問を呈した。

 そして、5月においても、「預金金利の引き下げ計画は、近い将来にない」と言い切り、どちらかというと「常に」ドラギさんの意見と相違した見方を示してきた。ゆえに本来、ノボトニー氏の発言は「当然」といえば当然だから、マーケットが神経を使うほどではなかった。

 しかし、12月9日(水)の同氏の発言で、ユーロ/米ドルは再度急騰して1.1042ドルまで買われ、米ドル全面安を促した。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 米ドル全面安ということで、米ドル/円も121円の節目割れ寸前まで売られた。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 マーケットは神経質すぎるほど、ノボトニー氏の発言に敏感に反応したと言える。 

 では、米ドル高トレンドは終焉した… 
ドラギ・ショックでユーロ爆上げ! しかし、 米ドル高トレンドは終わらず、押し目の好機 ブログ

ドラギ・ショックでユーロ爆上げ! しかし、 米ドル高トレンドは終わらず、押し目の好機

■饒舌すぎたドラギ総裁、市場はショックでユーロ急騰 中国には「言多必失」という諺がある。文字どおり、「言葉が多ければ必ず失うものがある」ということを言い表す。

 昨日(12月3日)のユーロの急反騰をみて、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁は自分の饒舌さに後悔しているのではないかと推測される。

市場を失望させたECBの決定。ドラギECB総裁は以前の発言について、今、後悔しているのだろうか? (C)Bloomberg

 何しろ、昨日(12月3日)、ユーロ/米ドルは1.05ドルの節目手前から何と一気に1.0981ドルまで急騰、ECBが望むユーロ安と逆行する方向に大きく突っ込んだ。 

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

 ネコも杓子もユーロを売っていたから、ECBの決定をみて皆が一斉に手仕舞いし、ユーロの急騰がもたらされたわけだ。

 ネコも杓子もユーロを売っていた状況を作り出したのは、ほかならぬドラギ総裁を始めとするECBのメンバーたちだ。

 特にドラギ総裁は、「何度もやる」、「すべての政策手段を尽くす」といった発言を繰り返し、ECBが事前にマスコミに「大幅利下げ」といったリークをもらしたのかと疑われるほど、市場はECBの行動、それも大胆な行動に期待を膨らませていた。

■過剰なサプライズを期待した結果、“予想どおり=失望”に ウォール街もあおっていた。あのGS(ゴールドマン・サックス)はECB理事会前にユーロ/米ドルが1.05ドルの節目に迫ることを予想(これは当てた)、さらにECBの発表後に200~300pips下落する見込みありと予想していた。

 GSがユーロ安予測の最右翼とはいえ、ドラギ総裁の話を聞く限り、ユーロ安の観測に異議を唱える者はいなかった。ネコも杓子もユーロ安に賭け、違いは程度の差のみだった。

 何を隠そう、筆者もその1人だった(せめてネコにしておこうか…)。ドラギさんがあんなに言っていたのだから、サプライズがあるとすれば、ユーロ高ではなく、さらなるユーロ安に作用する材料があるのではないか、と思っていた。

 しかし、一抹の不安もあったため、ECBの金利決定直前、このようにつぶやいた。 

 結局、こういった不安が現実になった。心配したとおり、マーケットの事前予測と同じ政策が発表されても、ユーロはさらに売られるのではなく、逆にショート筋の総踏み上げが展開された。何しろ、マーケットは大きなサプライズを期待していたから、予想どおりの政策は物足りないばかりか、かえってマーケットの失望を誘ったわけだ。

 もっとも、ドラギ・マジックという言葉があったように、ドラギ総裁は市場の予想範囲を超えた行動を起こし、サプライズを演出するのに長けていた。が、今回は明らかに失敗だった。

 強いていえば、今回は予想範囲を超えるどころか、予想よりも見劣りのある内容だったと言える。あんなに「何でもやる」と言い切ったドラギ総裁の言葉を思い出せば、市場関係者は多少であれ、ドラギ・ショックを受けたに違いない。

 というのは、ECBは量的緩和(QE)を6カ月延長して…
ユーロ安+中国人民元切り下げ=円高!? 中国ショック再来? 年末休暇返上も覚悟 ブログ

ユーロ安+中国人民元切り下げ=円高!? 中国ショック再来? 年末休暇返上も覚悟

■米ドル/円の足踏みが目立つ 米ドル高が続く中、米ドル/円の足踏みが目立ってきた。ドルインデックスは一時、100.17まで上昇、4月高値を再度ブレイクしたが、米ドル/円は先週(11月16日~)、高値123.75円を突破できず、やや軟調に推移している。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 このような「背離」は、ユーロ/円をみれば一目瞭然であろう。ユーロ/円は一時130円の節目割れを果たし、ベア(下落)トレンドを加速しているように見え、必然的に米ドル/円にも円高圧力を与えている。

ユーロ/円 日足 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 たびたび指摘してきたように、米ドル高の受け皿として、主にユーロがその役割を果たしているならば、対米ドルのみでなく、対円でも結局、ユーロ安が進行しやすい。よって結果的に、円の買戻しが促進されたからだ。

 来週、12月3日(木)にECB(欧州中央銀行)の重要決定を控え、ウォール街はさらにECBの利下げ余地拡大を予想している。ドラギECB総裁がどのような政策を打ち出すか、市場関係者が固唾をのんで見守っている中、ユーロ売りポジションの買戻し(利益確定)はあっても、ユーロロングまでには動けないだろう。

 したがって、ユーロ/円も130円の節目割れをもってベアトレンドの底打ちとみるのではなく、むしろ本格的なベアトレンドはこれからだと認識しておいた無難だろう。

■円売りより、ユーロ売りの方が安心感がある ファンダメンタルズにおいても、円よりユーロのほうが売られやすいかと思われる。何しろ、QE(量的緩和策)拡大やマイナス金利のさらなる拡大の可能性がもっとも確実視されるのがECBだからだ。対照的に日銀のスタンスは比較的曖昧になってきた。

 政策の確実性、また、政策の中身に照らして考えると、円売りより、ユーロ売りの方が安心感がある。

 ちなみに、日本はマイナス金利を導入できないだろう。こういった政策は、日本では「政治判断」の範疇になるから、いくら強気の黒田日銀総裁といえども、タブーには触れないと思う。この意味では、通貨戦争にたとえるなら、BOJ(日本銀行)はECBに勝てない。

 さらに、パリのテロ以降、ユーロはリスク回避先からリスク資産そのものと見なされるようになり、伝統的にリスク回避先としてみられている円の地位はさらに高まったとみる。

 究極のリスク回避先として米ドルの価値と地位には及ばないものの、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)に採用される通貨のうち、有事の時、円が米ドルに続き、2番目の地位を有するだろう。

■中国人民元がSDRに採用されると他通貨への影響は? 来週月曜日(11月30日)、中国人民元がSDRに採用されるかどうかについてIMFが決定する。中国の悲願が来週達成される公算は大きいが、従来の想定より、中国人民元のシェアが小さくなるといった見通しも多い。

 ただし、新米の中国人民元がSDRに参加してくると、必然的にほかの通貨の比率を下げなければならない。また、IMFの決定に関わらず、市場は自らが調整に動くだろう。

 最も弱い通貨が売られ、もっとも強い通貨が買われるのが市場の常だから、中国人民元のSDR入りがもたらす衝撃は、間違いなくユーロへのものが一番大きいだろう。場合によっては、長期に渡るユーロの地盤沈下につながっていく可能性も否定できない。

 もっとも、中国人民元のSDR入り自体は…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>パリのテロと9.11、為替への影響はどう違う?</i> パリティ割れまでユーロ安はまだ進む! ブログ

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■パリで起きたテロに金融市場が冷静に反応 パリのテロでリスクオフの動きは広がらなかったが、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公開された後、逆に米ドル/円は反落した。相場は、「理外の理」と言われるから、今さら驚くものではなかろう。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 もっとも、「フランス版9.11」と言われる今回のパリのテロに、金融市場が学習機能を働かせて、冷静に反応していること自体、納得できるところが多い。

 まず、たしかに犠牲者の人数は多かったが、9.11に匹敵するほど金融、経済にたちまち大きなダメージを与えたかというと、そうではないといった判断ができる。

 次に、もしも、テロにより景気が悪化する兆しがあれば、すでにQE拡大や、さらなる利下げの余地を表明したECB(欧州中央銀行)が早期に行動するといった可能性も浮上する。これがユーロ安に作用する上、株式市場の支えになる。

 結局、リスクオフかどうかは株式市場次第だが、こういった思惑があったのか、テロ以降、フランス株式市場をはじめ、EU(欧州連合)の株式市場は総じて堅調に推移してきた。

仏CAC40指数 1時間足(出所:CQG)

 従って、リスクオフの円買いにつながらなかったことも自然の成り行きで、ユーロ安にのみ反応したこともよく納得できる。基軸通貨ではないユーロが、ECBの政策以外で、自身の悲劇から「恩恵」を受けるとは考えにくいからだ。

■ユーロ安が続く公算が大きい理由は? こういった話は、9.11後の米ドルのパフォーマンスと比較しないとわからない。2001年の9.11当日、ドルインデックスは1.6%安を記録したが、その後反発し、2002年1月まで上昇した。

 言ってみれば、少なくとも3~4カ月間、米ドルは、真のリスク回避先とみなされ、テロを受けたにも関わらず、こういったパフォーマンスを発揮できたのだ。これは、米ドルが、他ならぬ基軸通貨だからこそ持つ力の表れだ。

 当然のように、ユーロは基軸通貨ではないから、こういった力を持たない。テロ事件やこれからのリスクを考えると、ユーロは安全資産どころか、リスク資産に転落したと言えるだろう。

 ゆえに、ユーロ安が続く公算が大きいとみる。

ユーロVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)

■ユーロ/米ドルのリバウンド余地は大きくなさそうだ 一方、FOMC議事録が発表されたあと、ユーロ/米ドルの切り返しが見られたように、目先、米ドル高のスピード調整は見られる。

 そもそも、FOMC議事録がタカ派だったのに、なぜこのような値動きになったのか? その見方は十人十色だ。

 テクニカル的なスピード調整といった見方がもっとも多い。

 米ドル高トレンドがはっきりしている場合、統計上の確率として、ユーロ/米ドルのリバウンドは2~3日の取引日しか続かず、また、値幅も150pips程度に留まることが多い。

 今回もそれが当てはまるのであれば、目先、ユーロ/米ドルのリバウンド余地は、そう大きくなかろう。ドルインデックスが100の心理的な大台に接近する中、スピード調整自体が、より大きなモメンタムにつながるといった思惑もある。

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 もう1つの見方は、市場焦点が…
ダマシほど重要なシグナルはない! <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル上昇トレンド継続を示唆するダマシとは?</i> ブログ

ダマシほど重要なシグナルはない! <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル上昇トレンド継続を示唆するダマシとは?</i>

■米ドル高トレンド定着ならず、その原因は? 米ドル高トレンドが定着したかと思いきや、米ドル全体の上昇モメンタムが低下し、昨日(11月12日)はドルインデックスが下落してきた。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 米ドルロング筋の苛立ちを刺激する市況になっていると言ってもおかしくなかろう。

 何しろ、金融政策の相違に基づくユーロ売りといった「鉄板トレード」が1.07ドルの節目に拒まれたようにみえるからだ。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 昨日(11月12日)、ドイツなど主要国の株価指数は軒並み1%を超えて下落、NYダウは1.4%安で約1カ月半ぶりの下落幅を記録した。 

独DAX指数 日足(出所:CQG)

NYダウ 日足(出所:CQG)

 これは原油先物相場をはじめ、金、銅など商品相場の大波乱がエネルギー関連大手企業業績への懸念を強め、株価指数を押し下げた側面が指摘できるだろう。また、FRB(米連邦準備制度理事会)幹部のハト派発言が相次ぐ中、株式相場が改めて2015年年内利上げの可能性に反応したとも解釈される。 

NY原油 日足 (出所:CQG)

 となると、目下の米ドルの伸び悩みは自然の成り行きかと思われる。何しろ、利上げ観測が株売りをもたらし、株安に伴うリスクオフがユーロ買い・円買いにつながるといった構造は、いつか来た道でもある。

■米ドル高の行方を相場のシグナルから推測 ドルインデックスについては8月相場の大混乱の前例もあるが、果たして今回の米ドル高も短命に終わるのだろうか。

 相場のことを相場に聞くなら、あれこれ考えるより、相場自体のシグナルを観察した方がよほど効果的であろう。

 結論を先に言うと、現在、相場が発したシグナルを見る限り、今回の米ドル高は「ホンモノ」の可能性が高まっており、3月高値を再打診するまで、試練を受けながらも、8月のような大反落は回避できるのではと思う。

 換言すれば、これから商品相場の反乱や株安局面が引き続き想定されるが、これらの試練を乗り越えてこそ、ホンモノの米ドル高と言えるので、ドルインデックスのシグナルを丹念に点検しておきたい。

 3月高値からドルインデックスは頭打ちとなり、反落して、大型保ち合いを形成した。 

ドルインデックス 週足 (出所:CQG)

 この保ち合いのフォーメーションはチャート上に表示されているとおり、シンメトリカル・トライアングルと見なす場合、8月24日(月)の週の週足が「邪魔」になってくる。何が邪魔かというと、やはり、その長い「ヒゲ」、つまり週足の実体部分を除いた値幅の部分だ。これがトライアングルの「枠」からはみだしているのである。

 当然のように、8月24日(月)の週以降の… 
“頼りにならない彼氏”の裏切りに英ポンド 怒りの急落! 続く米雇用統計は果たして!? ブログ

“頼りにならない彼氏”の裏切りに英ポンド 怒りの急落! 続く米雇用統計は果たして!?

■米12月利上げは今晩の雇用統計次第か 米国の2015年年内利上げ観測が高まっている。

 イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は2015年年内利上げの可能性を示唆した上、状況次第とも強調しているので、本日(11月6日)夜リリースされる米10月雇用統計が重要になってこよう。市場関係者なら、誰もが固唾を飲んで待っている、と言っても過言ではない。 

12月利上げを示唆したイエレンFRB議長だが、状況次第ということもあわせて強調している。10月米雇用統計の結果は利上げを占う上で重要だ。(C)Anadolu Agency

 11月4日(水)、イエレン議長のほか、副議長のスタンレー・フィッシャー氏やNY連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏の発言も2015年年内利上げを支持する基調だったので、マーケットは米ドルロングに傾いており、今晩(11月6日)の指標でお墨付きを得られれば、米ドルの一段上昇がみられるだろう。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 シカゴフェデラル・ファンド金利先物市場の値動きでみると、市場は米12月利上げの確率を56%程度と織り込んでいる。マーケットの予想(非農業部門雇用者数17万~18万人増)を超えるなら、この確率が一段と上昇し、60%を超えることが予想される。

■米利上げは実に10年ぶり、金融市場の混乱は避けたい ところで、なぜ60%という市場予想が重要かというと、実はイエレン議長が市場の安定を一番気にしており、市場の顔色をうかがいすぎているといった批判が出るほど、慎重なスタンスを取っているからだ。

 マーケットがイエレンさんの発言に敏感に反応する一方、イエレン女史をはじめ、FRBは市場の反応を見極めているといったやや奇妙な光景だが、マーケットの波乱を招くような判断を避けたいという立場からは、イエレンさんの慎重姿勢が理にかなっている。

 何しろ、リーマンショックの前例があったように、金融相場の崩壊や波乱は実体経済に多大な打撃を与える。そこから回復するのに何年もかかり、また、大きな犠牲を強いられたことは、FRBにとっても世界にとっても記憶に新しいところだ。

 単純に経済状況のみを考慮し、市場の反応に配慮しない政策判断は、今ではどこの中央銀行もできなくなっているだろう。ましてや10年ぶりの利上げだから、金融政策の大転換は金融市場の安定なしにはあり得ない。

米国の対円レート(月足Bid終値) & 政策金利(%)の推移(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)

 この意味では最近の世界的な株式市場の回復は、米早期利上げに追い風だと言える。

 ただし、こういった確信は、9月米雇用統計のような事態があれば、再び崩れかねない。10月2日(金)に発表された米9月雇用統計の数字が、予想より遥かに悪かったことが、米ドルの失望売りを誘ったことも市場関係者にとっては、ついこの間の出来事だ。

■9月指標の修正も、利上げ後押しには必須 実際、10月のデータ以外に、9月指標がどれぐらい修正されるかも非常に重要だと思う。10月指標がかなり市場予想に近い結果となっても、9月指標が修正されない限り、FRBの慎重さを崩すには力不足と思われ、米ドルの急伸につながるとは限らないだろう。もちろん、9月のようなショックが出れば、反動が非常に大きいので、マーケットの波乱を注意しておきたい。

 なぜなら、いつものように、期待が大きければ大きいほど失望も大きいからだ。9月米雇用統計が発表される前も、指標を楽観視するムードだったことからすると、前例が繰り返されないとは限らない。

 「失望市況」といえば、昨日(11月5日)の英中銀…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>日銀は追加緩和を最後のカードとして温存。</i> なのに米ドル高・円安に振れた理由とは? ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>日銀は追加緩和を最後のカードとして温存。</i> なのに米ドル高・円安に振れた理由とは?

■日銀は追加緩和を最後のカードとして温存 本日(10月30日)、日銀は追加緩和を見送った。それはサプライズではなく、むしろ当然の成り行きだ。

 何しろ、今までQQE(量的・質的金融緩和策)が効かなかったのだから、さらに追加実施しても効く保証はどこにもない。よって、追加緩和自体の意味合いは、もはや緊急時の保険ということしかなく、たびたび強調してきたように、日銀はそれを最後のカードとして温存するしか選択肢はない。

■「ある指標」が本日の「見送り」を示唆していた ところで、あまり良い数字が出てこない足元では、昨日(10月29日)だけが違っていた。昨日(10月29日)、発表された「ある指標」は、本日(10月30日)、日銀の黒田総裁が動かないことを一層示唆していたと思った。

 実際、昨日(10月29日)FOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文がリリースされた後の市況において、その「ある指標」がもたらした変動は、一層目立つものだった。

 FOMCのタカ派スタンスを受け、ドルインデックスは昨日(10月29日)未明に2カ月半ぶりの高値を記録した。昨日(10月29日)の午前中、米ドル全般が堅調に推移する中、米ドル/円のみ一時急落した。 

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 これは、「ある指標」が市場予想より良かったことが、米ドル売り・円買いを招いたからだ。これは指標が良いから円買いといった単純なロジックではなく、日銀の金融政策決定会合を控えて、日銀追加緩和の思惑後退につながったために円買いとなったわけだ。

 その「ある指標」とは、経済産業省が昨日(10月29日)、8時50分に発表した9月の鉱工業生産指数(速報値、2010年=100、季節調整済み)だ。

 鉱工業生産指数は前月より1.0%高い97.3となり、3カ月ぶりに上昇した。マーケットの予想は-0.6%だったから、ちょっとしたサプライズだった。 

日本鉱工業生産(前月比)(詳しくはこちら → 経済指標/金利:その他地域主要経済指標の推移)

 同指標を受け、第3四半期マイナス成長の心配はやわらげられ、日銀追加緩和の必要性も小さくなっているとマーケットは受け止め、敏感に反応したというわけだ。

 こういった「前兆」もあって、日銀政策の据え置きは一層当然とみなされており、マーケットが極めて冷静に受け止めていることにも納得がいくだろう。

■黒田日銀の資産購入総額はGDPの69%相当まで膨張 そもそも2013年4月から、黒田日銀総裁が主導したQQE政策では、計366.6兆円の資産が購入されており、日本のGDP(国内総生産)の69%に相当するという、とんでもない規模に膨らんでいる。

 どこまで巨大化されたかというと、単純に比較した場合、日銀のQQE総額は、米FRB(連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)、英BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の量的緩和金額を足した総額よりも大きい。このまま政策が継続されていった場合、それはGDPの100%を超え、日銀の負債も前記中銀三行の負債総額の2倍まで膨らむ見通しだ。

 ちなみに、日銀以外では米FRBがもっとも大規模な量的緩和を実施してきたが、それでもGDPの25%にすぎなかった。

 その意味では、これ以上の追加緩和は必要ないばかりか、現在の政策自体、いずれ見直さないといけないだろう。

 何しろ、国債市場は、ほぼ日銀に「買占め」られ、株式ETFの3分の1以上も日銀が直接買っている状況だ。これは明らかに異常であり、また、いずれその反動が出てくる。国債市場の硬直化は確実に進んでおり、将来の「出口なし」のリスクを考えると、さらなる追加緩和は、やはり正気の沙汰とは思えない。

 したがって、今回の日銀の決定は正しく、マーケットは行くべきところまで行っていると思われる。

 となると、執筆中の現時点で再び米ドル高・円安の…
ドラギ・マジックがブラックスワンを招く!? ECB追加緩和前に第二のスイスショックも! ブログ

ドラギ・マジックがブラックスワンを招く!? ECB追加緩和前に第二のスイスショックも!

■ドラギ・マジックで市場騒然、ユーロは暴落 昨日(10月22日)、為替マーケットは大きく揺れた。ユーロの暴落を引き起こすドラギ・マジックの再来は、一応、想定内とはいえ、やはり値幅が大きかったので、にわかにドラギ・ショックの様相を呈している。 

ユーロVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)

 昨日(10月22日)のドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言を受け、ユーロ/米ドルは2%も下げた。

 ユーロキラーとして名を馳せているドラギ総裁だけに、この値動きよりも議長の発言自体がサプライズだったかもしれない。言い換えれば、マーケットは総裁のハト派姿勢を想定していたが、総裁のハト派スタンスは市場の想定のさらに上をいくものだった。 

ドラギECB総裁のハト派スタンスは、市場関係者の予想以上だった。(C)Bloomberg

 議長はECBの12月の行動、すなわち緩和政策の規模拡大を明言し、利下げ余地ありともはっきり指摘した。その上、今回のECB理事会で3名の理事がすぐ行動を…と主張したことを暗示し、12月の行動がほぼ確実であることを強調した。

■なぜ、ECBはこれほどまでに「何でもやる姿勢」なのか? 利下げも辞さない姿勢はもっとも衝撃的だ。ドラギ氏は1年前、さらなるマイナス金利導入の意向がないことを表明していたが、立場の転換が示された。

 金利先物の動向でみると、マーケットは今年(2015年)12月利下げの可能性を50%程度、来年(2016年)4月までに利下げする可能性をほぼ100%織り込もうとし、これが昨日(10月22日)のユーロ暴落をもたらした。

 要するに、ECBは何でもやる姿勢だ。ここまで追い込まれているのは、極端に言うと、今までの量的緩和やマイナス金利政策に、期待されたほど成果がなかったためだ。景気状況も物価水準も、緩和政策の目標にほど遠く、ECBの苦悩はどこかの国の中銀と共通しているように見える。

 言うまでもないが、ユーロはさらなる売り圧力にさらされ、これからも下値ターゲットを打診する余地があるとみる。ただし、ユーロ安が3月安値を割り込むまで進むかどうかについては、目下のマーケットの主流の見方とは距離をおいたほうが無難だと思う。

■独国債の利回り低下に限度、ユーロの下値余地も限定的 なぜなら、基本的にユーロの値動きは、ドイツ国債利回りとの連動性が高いと思われるからだ。量的緩和やマイナス金利の導入で、ここまでドイツ国債はだいぶ買われ、バブルの様相を呈していたが、それが限界に近づいていた。

 いわば過剰流動性が債券市場の硬直化をもたらし、さらなる量的緩和や利下げがあっても、債券価格の上昇につながるとは限らない状態になっている。利回りの低下に限度があるなら、ユーロの下値余地も限られるはずだ。

 その上、重要なのはECBの「激ハト派」スタンス自体が何を意味するかだ。結論から申し上げると、これは他ならぬ、EU(欧州連合)圏経済の深刻な落ち込みというほかあるまい。

 ECBの何でもやる姿勢は、裏を返すと背水の陣で臨んでいるとも言える。

 となると、ECBの緩和姿勢に対し、目先は歓迎一色で… 
市場からの「倍返し」を警戒。甘い認識は 捨てよ!ドル/円は115.89円へ向け始動!? ブログ

市場からの「倍返し」を警戒。甘い認識は 捨てよ!ドル/円は115.89円へ向け始動!?

■米ドル/円は115.89円に向けて動き始めた? 米ドル安が一段と進んでいる。

 昨日(10月15日)の市況でいうと、ドルインデックスは一時94の節目を割り込み、米ドル/円は118円の節目割れ寸前だった。

ドルインデックス 日足  (出所:CQG)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 米ドル/円に関して、昨日(10月15日)の値動きは、前回のコラムで指摘した中期スパンにおける115.89円のターゲットへ向けての始動とも言える。

【参考記事】

●日銀追加緩和は「最後の一手」として封印、米ドル/円は115.89円をめざして下落か 

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 もっとも、115.89円は米ドル/円の8月24日(月)安値にすぎず、同安値の打診自体はサプライズとは言えなくなっている。ただし、8月24日(月)の暴落はあまりにも強烈だったので、同安値の再打診があれば、米ドル/円がより本格的な反落を加速していく公算が高いと見なされ、ひとつの目安にはなると思われる。

 米ドル/円の反落が、ドルインデックスの反落とリンクする値動きが強まっていることから考えると、米ドル全体のトレンドがより鮮明にとらえられる。

 米ドル全体の一段安の警戒サインとして、目先、ドルインデックス日足の50日移動平均線が、200日移動平均線を下回っていることに注意が必要だ。何しろ、これは2014年7月以来の出来事であり、米ドルがさらに一段調整することを暗示、米ドル/円と同じく、8月24日(月)安値92.62の再打診があれば、一段と反落の余地を拡大する公算が大きい。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

■ファンダメンタルズが脆弱なのにユーロの堅調さが目立つ 2015年年内の米利上げ観測が急速に後退している中、米ドル高を支えてきた材料の剥落がメインシナリオとなり、いわゆるリスクオフの恩恵が見られなくなってきたことが、6月以来の為替マーケットの基調だと思う。

 対照的に、ファンダメンタルズが脆弱でQE(量的緩和)の拡大もあり得るというのにユーロは堅調さが目立ち、よりいっそう米ドルの軟調が浮き彫りになっている。 

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 EU(欧州連合)サイドの問題は、従来の構造問題以外にもっとも気になるのが、やはり大規模なQEがあっても物価水準がECB(欧州中央銀行)のターゲットに届いていないということだ。

 このような頭痛の種について、ドラギECB総裁以外で、もっとも共感できる人は黒田日銀総裁というほかあるまい。日銀がQEの先発組だっただけに、黒田さんの悩みはもっと深いと言えるのではないかと思う。

 ところで、前回のコラムで述べたように、日銀が…