西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

12月雇用統計の翌営業日に高値をつけて 反落…昨年と今年のドル/円は超似ている ブログ

12月雇用統計の翌営業日に高値をつけて 反落…昨年と今年のドル/円は超似ている

■2015年はECBのQEに始まり追加緩和で終わる… みなさん、こんにちは。

 先週、12月3日(木)、2015年年内最後のビッグイベントであるECB(欧州中央銀行)理事会が終了。

 振り返ってみれば、今年(2015年)は、年初のECBのQE(量的緩和策)に始まり、12月のECBの追加緩和で終了となりました。

 2015年1月に発表され、3月に開始されたECBのQEでは15年来のユーロ/米ドルのサポートが抜けずに反発。

【参考記事】

●ドラギマジック炸裂! ECBが予想以上のオープンエンドQEを決定してユーロ急落!(1月29日、西原宏一)

●すさまじいECBのQE開始でユーロ急落!ユーロ/円は120円に向けて続落か(3月12日、西原宏一)

ユーロ/米ドル 月足(出所:CQG)

 その後、8カ月の調整を経て、10月にドラギ総裁の事前の追加緩和予告もあり、12月のECB理事会へのマーケットの期待値が高まります。

【参考記事】

●欧米2大中銀の金融政策が逆行する中、ユーロ/米ドルはパリティ割れも視野に!?(11月26日、西原宏一)

 マーケットが勝手に追加緩和期待を高めたわけではなく、ECB関係者筋からとされる多くの追加緩和報道で期待を上げざるをえないという相場展開。

【参考記事】

●ドラギの失敗は欧州各国にどう影響する? ユーロは長期サポート抜けられず上昇へ(12月8日、西原宏一&松崎美子)

 そのため、ユーロ/米ドルの1.0600ドル、1.0550ドル、1.0500ドルには多くの巨大なオプションが設定され、ECB理事会を迎えます。

【参考記事】

●欧米2大中銀の金融政策が逆行する中、ユーロ/米ドルはパリティ割れも視野に!?(11月26日、西原宏一)

 これだけマーケットがECBの追加緩和を織り込んでいたため、想定以上の緩和策に加え、ドラギ総裁が、かなりハト派なコメントをしなければ前述の長期サポートラインを抜くのは難しいだろうというのが多くのマーケット参加者の見解でした…。

ユーロ/米ドル 月足(出所:CQG)

 ただ、ECB関係者からのコメントでは、想定以上の緩和策を出すのであろうというのがコンセンサスでした。

■ECB理事会は想定以下の内容で、相場は逆流… ECB理事会の結果は読者のみなさんもご存知のとおり、マーケットの想定以下の内容…。

 そのため、前回に続き、今回もユーロ/米ドルは15年来のサポートラインを抜けずに急反発して、2015年年内最後のビッグイベントは終了。

 このECB理事会の結果は、ユーロのみならず、他市場に大きな影響を与えます。

 ECBの追加緩和期待に連れ、マーケットの流れは「追加緩和による株高、ユーロ安、米ドル高、円安、資源国通貨高」でした。

【参考記事】

●鉄鉱石価格を筆頭に商品市況は低迷…。でも、なぜ豪ドルは底堅く推移しているのか(12月3日、西原宏一)

 失望のECB理事会の結果を受け、マーケットのその流れは逆流し、「株安、ユーロ高、米ドル安、円高、資源国通貨安」という調整相場へ。

 その文脈どおり、今週(12月7日~)のNYダウ、日経平均ともに反落。

NYダウ 日足(出所:CQG)

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 12月11日(金)は「メジャーSQ(※)」。今回は買い残が最高水準に積み上がっていることもあり、今週(12月7日~)、日経平均もNYダウも、調整が懸念されていましたが、それも下落に大きな影響を与えた模様。

(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている。12月の第2金曜日のように株価指数先物とオプション取引のSQが重なる日は「メジャーSQ」と呼ばれる)

  そして、米ドル/円もその調整の影響を大きく…
鉄鉱石価格を筆頭に商品市況は低迷…。 でも、なぜ豪ドルは底堅く推移しているのか ブログ

鉄鉱石価格を筆頭に商品市況は低迷…。 でも、なぜ豪ドルは底堅く推移しているのか

■12月はビッグイベントを多数控える みなさん、こんにちは。

 年末も押し迫った12月は、来年(2016年)の相場展開にも大きな影響を及ぼす、ビッグイベントが控えています。

12月3日 ECB(欧州中央銀行)理事会

12月4日 米雇用統計

12月15日~16日 FOMC(米連邦公開市場委員会)

 そして、本日(12月3日)、最初のビッグイベントであるECB理事会が行われます。

 追加緩和を明言した、10月22日(木)のドラギ総裁の発言内容から考えると、マーケットが想定している以上の緩和策が出てくる可能性が高まっています。ユーロ/米ドルの行方は前回のコラムを参照してください。

【参考記事】

●欧米2大中銀の金融政策が逆行する中、ユーロ/米ドルはパリティ割れも視野に!?(11月26日、西原宏一)

■総じて米ドル高の中、堅調に推移する豪ドル 一方、12月15日~16日に開催されるFOMCで利上げが織り込まれつつある中、ユーロ/米ドルを中心に為替市場は総じて米ドル高に。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 そんな中、米ドル同様、堅調さを保っているのが豪ドル。

 豪ドルの中期の流れを振り返ってみると、鉄鉱石価格を筆頭に商品相場が低迷する中、9月初旬まで豪ドルは軟調な展開が続いていました。

NYMEXの鉄鉱石価格 日足(出所:CQG)

豪ドル/円 日足(出所:CQG)

 豪ドル/円は200週移動平均線を何度か割り込むものの、終値ベースでは割り込めない展開が続いていましたが、チャイナショックをきっかけに、このサポートが決壊。

 一気に81.93円まで急落します。

豪ドル/円 週足(出所:CQG)

 しかし、チャイナショック以降、中国当局の対策もあり、上海株が反発するのを横目に豪ドル/円も上昇開始。

【参考記事】

●上海株暴落で中国警察当局が動いた! ビル・グロス氏もビビる驚きの対応とは?(7月9日、西原宏一)

 豪ドル/円は、75日移動平均線が何度も上値を抑えていましたが、11月12日(木)にこのレジスタンスを上抜けると上昇が加速しました。

豪ドル/円 日足(出所:CQG)

 NYダウ、日経平均が堅調に推移していることもサポートとなり、一時、90.49円まで上昇しました。

 豪ドルは対円のみならず、対米ドルでも値を上げていますが、注目は…
欧米2大中銀の金融政策が逆行する中、 ユーロ/米ドルはパリティ割れも視野に!? ブログ

欧米2大中銀の金融政策が逆行する中、 ユーロ/米ドルはパリティ割れも視野に!?

■米ドル/円は122.00~123.50円での膠着状態 みなさん、こんにちは。

 米ドル資金がタイト化する中、総じて米ドルは底堅く推移しているものの、本日(11月26日)から米国が感謝祭入りすることもあり、米ドル/円は122.00~123.50円水準での膠着状態が続いています。

【参考記事】

●年末に向けてドル需要急増の可能性大!? 米ドル/円は上昇トレンド継続で125円へ(11月12日、西原宏一)

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 日銀も動かず、円の材料が不足気味なため、米ドル/円は、まず来月(12月)利上げがスタートする公算の高い米国の動向、加えて、日経平均が2万円台を回復するかどうかが重要なポイント。

【参考記事】

●テロ発生も強靭な耐性見せた金融市場。ドル/円124円台、日経平均2万円台回復へ(11月19日、西原宏一)

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 その日経平均ですが、本稿執筆時点で1万9960円と2万円台回復目前で推移しています。

■欧米の金融政策逆行でユーロ/米ドルはじり安 一方、米ドル/円が膠着する中、じりじりと値を下げているのがユーロ/米ドル。

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

 12月3日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会で、追加緩和が既定路線となっているユーロ。

 そして来月(12月)、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げをスタートする公算の高い米ドル。

 2大中央銀行の金融政策が逆行する中、ユーロ/米ドルはじり安の展開。

 加えて、11月25日(水)には関係者筋として以下の報道が流れ、ユーロ/米ドルは一時、1.0600ドルを割り込んで急落しました。

ECB、2段階の中銀預金金利や資産購入対象の拡大検討

欧州中央銀行(ECB)当局者は、12月の理事会に向けた準備会合で、2段階の中銀預金金利を設定することや、資産買い入れの対象を拡大して都市・州発行債を含めることなどあらゆる選択肢について検討を重ねている。関係者が25日、匿名を条件にロイターに対して語った。

ECBのドラギ総裁はすでに、ECBに資金に預ける銀行への一種のペナルティーにあたる、中銀預金金利のマイナス幅拡大に前向きな姿勢を示している。関係筋によると、銀行への影響を緩和するため、ECBに預ける資金の額に応じて異なる金利を課すことが議論されている。

関係者の1人は「預金の額がある一定の水準を超えると、それ以降はより大きなマイナス金利が課せられる、という仕組みだ」と述べた。

預金金利を2段階にすれば、マイナス幅を一律に拡大するよりも、銀行への影響は抑えられる。銀行は、ECBに合わせて1700億ユーロ程度を預けており、特にドイツとフランスの銀行の預金額が大きい。

出所:ロイター

 この報道により、ドイツ2年国債利回りは一時、マイナス0.43%台と最安値を更新。

ドイツ2年国債利回り(出所:CQG)

 ユーロ/米ドルは一時、巨大なオプションが設定されていると言われている、1.0566ドルまで急落しています。

ユーロ/米ドル 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 30分足)

  2015年10月にドラギ総裁が、次回(12月)のECB理事会で…
テロ発生も強靭な耐性見せた金融市場。 ドル/円124円台、日経平均2万円台回復へ ブログ

テロ発生も強靭な耐性見せた金融市場。 ドル/円124円台、日経平均2万円台回復へ

 はじめに、先週末(11月14日)に発生した、予期せぬ「パリ同時多発テロ」という悲報に心よりお悔やみ申しあげます。

■パリ同時多発テロ発生も金融市場は冷静 先週末、日本時間11月14日(土)の朝に発生した「パリ同時多発テロ」という報道に、週明け、11月16日(月)の東京市場では一時、株価が急落し、マーケット全般がリスクオフに傾斜することが懸念されましたが、金融市場は冷静な展開。

 仏CAC40指数も下げ幅を縮小し、混乱は収束。懸念されたNYダウは1万7050ドルをサポートに反発。

仏CAC40指数 1時間足(出所:CQG)

 グローバルな金融市場は「地政学的リスク」に対して耐性を見せ、株価は反発に転じ、逆にリスクオンの展開となります。

 NYダウは8月24日の週にチャイナショックで急落するも、200週移動平均線が位置していた、1万5300ドル水準でサポートされて反発したのは以前のコラムで紹介したとおり。

【参考記事】

●弱い米雇用統計に日銀の追加緩和もナシ!でも米ドル/円が急落しなかったワケとは?(10月8日、西原宏一)

●NYダウは節目到達、調整あって仕方なし。日本生命が豪ドル/円相場を下支え!?(10月15日、西原宏一)

 その後は順調に回復。10月は毎週陽線を出して高値をうかがう展開でしたが、先週(11月9日~)、調整により反落し、再び、週足一目均衡表の雲の中へ突入しました。

 パリ同時多発テロにより、1万7000ドル(8月の急落を誘引したサポート)割れの再現が警戒されましたが、前述のようにNYダウは耐性を見せ反発。再び、雲の上限をうかがう展開。

NYダウ 週足(出所:CQG)

 パリ同時多発テロという悲報が金融市場を覆いましたが、今週(11月16日~)の金融市場は強靭な耐性を見せ、NYダウのみならず、グローバルに株価は堅調。

【参考記事】

●同時多発テロ発生もリスクオフは限定的!? 「有事の円買い」が軽微だった理由とは?(11月17日、西原宏一&松崎美子)

 通貨に目を向ければ、リスクアセットの豪ドル/円も久しぶりに88円台を回復しており、リスク許容度は低下していません。

豪ドル/円 日足(出所:ヒロセ通商)

  本丸であるNYダウの急落がなければ、チャイナショック以前の…
年末に向けてドル需要急増の可能性大!? 米ドル/円は上昇トレンド継続で125円へ ブログ

年末に向けてドル需要急増の可能性大!? 米ドル/円は上昇トレンド継続で125円へ

■底固めした米ドル/円の上昇トレンドは変わらず みなさん、こんにちは。

 10月15日(木)という日柄、118.06円という価格、ともに重要なポイントで底固めした米ドル/円の上昇トレンドは変わらず(前回のコラム参照)。

【参考記事】

●郵政グループ3社上場成功で日本株活況! 12月米利上げに向けてドル高トレンド不変(11月5日、西原宏一)

 懸念された10月の米雇用統計ですが、非農業部門雇用者数が予想を大幅に上回るプラス27万1000人と驚きの結果に。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)

 失業率、平均時給という側面から見ても、しっかりした内容です。

■12月の米利上げ確率は70%近くまで急騰 これを受けて、12月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げが実施される確率は70%近くまで急騰。

 呼応して、米ドル/円は一時、123.61円まで急騰しました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 好調な米雇用統計を受け、急騰した米ドル/円ですが、今週(11月9日~)は前述の123.61円を攻めあぐねて、いったん122円台後半まで反落しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 それは、この水準が前述した118.06円からのターゲットであったからです。

 米ドル/円の123.61円というレベルは、10月15日(木)の安値118.05円から1カ月弱で約5.50円上昇した水準になります。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 まず、黒田バズーカなどの特殊な要因のない通常のボラティリティ環境下での米ドル/円は、5~6円の上昇がいったんのメドであるということ。

 そして米ドル/円は、上海ショックの安値と8月31日(月)の高値、それに米ドルが対ユーロと対円で同時に安値をつけた10月15日(木)の3点で引いたフィボナッチ・エクスパンションが123.52円。

【フィボナッチ・エクスパンションに関する参考記事】

●3回に分けて利益確定する時の目安は? ひろぴーの実践トレード塾 第3講(4)

米ドル/円 日足(出所:ヒロセ通商)

 11月9日(月)にはこの水準を達成しましたので、今週(11月9日~)は調整期間入り。

【参考記事】

●ドラギ講演は追加緩和の核心に迫るか? 今週の大穴はハト派講演のある英ポンド!(11月10日、西原宏一&松崎美子)

 ただ、12月に米利上げを控えて、米ドル高トレンドは…
郵政グループ3社上場成功で日本株活況! 12月米利上げに向けてドル高トレンド不変 ブログ

郵政グループ3社上場成功で日本株活況! 12月米利上げに向けてドル高トレンド不変

■日銀は追加緩和に動かず…。郵政3社上場は活況! みなさん、こんにちは。

 多くのマーケット参加者が予想していたとおり、10月30日(金)の金融政策決定会合で日銀は動かず…。

【参考記事】

●黒田バズーカ3はまだ出ず。日銀追加緩和見送りで米ドル/円急落も短時間で反発!

 ただ、日銀のこうした動きにもかかわらず、郵政グループ3社上場に向け、クジラと想定される公的年金の買いが日本株、米ドル/円を下支えるのではないかというのがマーケットのコンセンサスでした。

 その思惑どおり、日本株、米ドル/円ともに底堅く推移。

 そして、11月4日(水)に郵政グループ3社の上場を迎えましたが、結果は活況。

11月4日(水)郵政グループ3社が上場。3社ともに初値が公開価格を大きく上回る活況だった。

(C)The Asahi Shimbun

 以下は、郵政グループ3社の公開価格と、上場初日、11月4日(水)の初値、終値をまとめたものです。

 SBI証券やカブドットコム証券によれば、今回、初めて株を買ったという参加者が40%程度になったとのことで、個人投資家からの新規マネーが株式市場に流れ込んだことになります。

 郵政グループ3社上場は成功裏に終わり、日経平均も活況。11月4日(水)の売買代金は3兆3000億円と膨らみました。

 結果、日経平均は1万9000円台、米ドル/円は121円台を回復。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

米ドル/円 2時間足(出所:ヒロセ通商)

  ここで、前回のコラムで紹介したチャートポイントを…
日銀会合はゼロ回答との予測が浸透。 ドル/円はなぜ、118.06円で下げ止まった? ブログ

日銀会合はゼロ回答との予測が浸透。 ドル/円はなぜ、118.06円で下げ止まった?

■10月30日に黒田日銀は追加緩和に動かない… みなさん、こんにちは。

 10月30日(金)には、注目の日銀金融政策決定会合が予定されています。

 しかし、8月に急落を演じた後の日本株は、本稿執筆時点で1万8500円近辺で底堅く推移していることもあり、黒田日銀総裁は追加緩和に動かないだろうというのがマーケットのコンセンサスになりつつあります。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 これは下記の麻生財務相のコメントにも示唆されています。

今すぐ日銀が追加緩和という状況ではない=麻生財務相

麻生太郎財務相は16日夜放送されたNHKとのインタビューで、景気対策としての追加緩和について「たぶん日銀も、今すぐさらに金融緩和というのではない。今、カネは余っているのであって、むしろ需要が足りない」と述べた。

出所:ロイター

 ただ、10月30日(金)の日銀会合はゼロ回答ではないかとの予測が浸透してきているにもかかわらず、米ドル/円と日経平均は底堅く推移しています。

 その要因のひとつとして、11月4日(水)に迫った郵政3社のIPO(新規上場)があると言われています。

 政府としては、日本郵政のIPOを失敗させるわけにはいきません。そのため、11月までは「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」や「3共済(国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済)」を筆頭とした「クジラ」がマーケットに参入し、株価を支え、上場成功へと導くとマーケットではウワサされています。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 懸念された上海株も、10月26日(月)から開催される五中全会を控え、急落懸念は後退しています。

上海総合指数 日足(出所:CQG)

■10月15日の米ドル/円安値が118.06円である意味とは? 直近の米ドル/円の動向に目を向けると、先週、10月15日(木)に、米ドル/円は118.06円まで下落するも、そこをボトムに反発しています。

米ドル/円 8時間足(出所:ヒロセ通商)

 この「118.06円」とその安値をつけたタイミングには2つの意味があります。

 振り返ると、2014年10月15日(水)に米ドル/円はいきなり105.19円まで急落した後、反発。10月31日(金)には、黒田日銀による「バズーカ2」が発表されたこともあり、12月には一気に121.85円まで急騰しました。

【参考記事】

●「黒田バズーカ2」が炸裂! 米ドル/円は短期でも中期でも買い! サポートは110円(2014年11月4日、西原宏一&松崎美子)

●ザイFX!で2014年を振り返ろう!(2)【相場:後編】黒田バズーカで円安進む!

 米ドル/円は2カ月弱で、約16円の大暴騰という大相場を演じました。

米ドル/円 週足(出所:ヒロセ通商)

 一方、前述のように、今年(2015年)の10月15日(木)に、米ドル/円は118.06円の安値に到達すると、その後は昨年(2014年)と同様に、じわじわと円安に戻しています。

 本稿執筆時点までの米ドル/円の動向では、今年(2015年)も、10月15日には時間的な意味があると言えます。

 もう一点、米ドル/円の10月15日(木)につけた118.06円という安値は時間軸の観点からだけでなく…
NYダウは節目到達、調整あって仕方なし。 日本生命が豪ドル/円相場を下支え!? ブログ

NYダウは節目到達、調整あって仕方なし。 日本生命が豪ドル/円相場を下支え!?

■NYダウが1万7000ドルの大台回復 みなさん、こんにちは。

 10月2日(金)の米雇用統計の悪化をきっかけに、米国の利上げ予想が大きく後退。

【参考記事】

●弱い米雇用統計に日銀の追加緩和もナシ! でも米ドル/円が急落しなかったワケとは?(10月8日、西原宏一)

 連れて、NYダウは7日続伸。10月2日(金)に1万6013ドルで底入れしたNYダウは10月13日(火)には1万7172ドルに到達。1万7000ドルの大台を回復しました。

【参考記事】

●NYダウが1万7000ドルの節目を回復して、リスク資産全般が上昇!ドル/円の今後は?(西原宏一&松崎美子)

NYダウ 日足(出所:CQG)

 これに呼応して、急速に値を戻したのが豪ドル/円。10月2日(金)に83.27円の安値に到達して以降、NYダウの回復に歩調を合わせ7日続伸し、10月12日(月)に88.63円の高値に到達。

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

 豪ドル/円は株のプロキシー(代替)として動くことは知られていますが、今回もNYダウと歩調を合わせ、急回復を見せています。

■日本生命のM&A絡みの報道が豪ドル/円の支えに もうひとつ、NYダウの続伸に加え、豪ドル/円のサポートとなる要因があります。それがM&Aに関する報道です。

日本生命:豪銀の保険事業買収で合意へ 10月内にも

日本生命保険がオーストラリアのナショナル・オーストラリア銀行の保険事業を買収する方向で最終調整に入ったことが13日、分かった。買収額は2000億~3000億円程度となる見通し。月内にも合意し、来年3月末までに手続きを完了したい考え。実現すれば日本生命の海外M&A(企業の合併・買収)としては最大規模となる。

第一生命保険に国内首位の座を奪われた同社だが、9月に発表した三井生命保険の買収に続いて、成長する海外市場で大規模なM&Aに踏み切ることで首位奪還を目指す。今年度の決算にナショナル・オーストラリア銀行の収益を反映させる方針だ。

ナショナル・オーストラリア銀行はオーストラリアの主要銀行のひとつ。保険事業については、国際的な規制強化や低金利で運用益を確保しにくい中で、売却先を探していた。日生は人口減少で市場が縮小する国内だけでは高い成長を確保できないと判断。買収を通じて海外事業を強化する。

出所:毎日新聞

 報道のとおり、人口減少で市場が縮小する国内だけでは高い成長を確保できないと判断した企業の買収案件が再び注目されています。こうした報道が中期的に豪ドル/円をサポートする可能性が濃厚。

豪ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 週足)

  豪ドル/円は、NYダウと連動する傾向があるのは前述のとおり…
弱い米雇用統計に日銀の追加緩和もナシ! でも米ドル/円が急落しなかったワケとは? ブログ

弱い米雇用統計に日銀の追加緩和もナシ! でも米ドル/円が急落しなかったワケとは?

■米雇用統計後に急落したNYダウが急反発 みなさん、こんにちは。

 先週(9月28日~)後半からリスク許容度を低下させる報道が目立ちました。

 まず、先週、10月2日(金)の米雇用統計。大方の予想を裏切り、9月は大幅悪化…。さらに、7月、8月分まで大幅下方修正されました。

 これを受けて、米ドル/円は、一時、118.68円まで急落。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 ただ、この米雇用統計を受け「米国の利上げが遅れる」との発想で、急落していたNYダウが急反発しています。

NYダウ 1時間足(出所:CQG)

 連れて、米ドル/円も急速に値を戻し、終わってみれば119.90円と全戻し。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■日銀会合後の米ドル/円の下落は限定的 そして、今週、10月6日(火)~7日(水)に開催された日銀金融政策決定会合ですが、こちらもコンセンサスどおり、金融政策は据え置き。

【参考記事】

●出るか、黒田バズーカ3!? カギとなる 日銀会合の結果で、米ドル/円はどう動く?(10月6日、西原宏一&松崎美子)

 5%程度ですが、追加緩和期待が残っていたため、発表後の米ドル/円は反落するとの予測が大勢を占めていましたが、日銀発表後も米ドル/円の下落は極めて限定的でした。

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

 こうしたリスク許容度が大幅に低下するイベントがありながら、米ドル/円の下落が限定的だった要因はNYダウが堅調であったことが背景にあります。

 当コラムで何度かご紹介させていただきましたが…
10月7日発表のウワサも!? 日銀が異次元 緩和第3弾を実施したらドル/円はどう動く? ブログ

10月7日発表のウワサも!? 日銀が異次元 緩和第3弾を実施したらドル/円はどう動く?

■「アベノミクス2」が走り出したが前途多難… みなさん、こんにちは。

 紛糾した安全保障法案に絡んだ騒動は一段落。日本政府が想像した以上に混迷を深めた安保法案により、安倍政権は大きく支持率を低下させています。

 これまでの歴代内閣の変遷をたどってみると、安保問題がひと段落した後は、経済へと大きく視点を変えています。

 今回の内閣も同様で、安倍総理はGDP600兆円を目標にすると表明しました。

【参考記事】

●スペインからの独立賛成派が選挙で勝ってもユーロがあまり下がらなかったワケは?(9月29日、西原宏一&松崎美子)

安倍首相「GDP600兆円」表明へ、介護離職ゼロ目標も=政府筋

安倍晋三首相は、24日夕に開かれる自民党の両院議員総会後に記者会見を開き、名目国内総生産(GDP)を600兆円にする目標を打ち出す。

総裁再選が正式に決まるのを機に、経済最優先の姿勢をあらためて強調し、「介護離職ゼロ」の実現など社会保障制度改革にも力を入れる姿を示す。

出所:ロイター

 これは目標を打ち出しただけで、具体策はこれから。

 ただ、走り出したアベノミクス2ですが、前途は多難。9月30日(水)に発表された8月の鉱工業生産(速報値)は前月比0.5%低下と2カ月連続のマイナス。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利: その他地域主要経済指標の推移)

 生産の基調判断は「一進一退で推移している」から「弱含んでいる」に変更。結果、7-9月期のGDPがマイナス成長となる可能性が高まることに…。仮に2期連続のマイナス成長となれば、景気後退局面入りを意味します。

 そこで、マーケットでは、4~5兆円程度の補正予算を要望する声が挙がっています。加えて、以前のコラムでも取り上げていますが、呼応して、日銀の追加緩和期待が高まってきました。

【参考記事】

●日銀の追加緩和期待が高まるワケとは? ドル/円は底固め後に124円へ上昇濃厚!(9月17日、西原宏一)

 つい先日まで可能性は限りなく低いと…