ドル/円は一時、122円台半ばへ急反落! ドル高をけん制した米当局の目的とは? ブログ

ドル/円は一時、122円台半ばへ急反落! ドル高をけん制した米当局の目的とは?

■ドル/円は一時、125円台後半まで上昇も伸び悩む みなさん、こんにちは。

 6月5日(金)の米雇用統計は好結果に終わり、米ドル/円は、一時、125.86円まで上昇しました。

 ただ、米雇用統計の発表直後に米ドル/円は1円急伸しましたが、それ以降は、上値を伸ばせない展開に。

 その理由は、前回のコラムでご紹介した125.00円のオプション(※)から供給される米ドル売りが上値を抑えていることがまず挙げられます。

 そして、もうひとつは、日米当局からの米ドル高や円安けん制コメントに対する警戒感。

(※編集部注:オプションには「バニラ」と「エキゾチック」の2種類のオプションがあります。為替のニュースなどでよく出てくる「バリアオプション」は、エキゾチックオプションのひとつで、権利行使価格に一度でも到達してしまえば、そのオプションは消えてしまうというような特殊なルールが加えられています。一方、バニラオプションは通常のオプションになるので権利行使価格に到達しても消えてしまうようなことはありません。上記の125.00円のオプションは「バニラオプション」であるため、米ドル/円が125.00円を上抜けても、消えてしまうようなことはないというのが西原さんの見解です)

【参考記事】

●ドル/円は125円到達も調整は長引きそう。中国株下落でなぜユーロは上昇するのか?(6月4日、西原宏一)

 今週、6月9日(火)に公開した「FXほっとLINEで作戦会議」でご紹介したとおり、米経済指標が好結果に終わると、マーケットでは、米ドル高けん制コメントに対する警戒感が高まります。

【参考記事】

●好調な米雇用統計で9月利上げ期待上昇! 米経済指標が好調なほど、ドル安に注意?(6月9日、西原宏一)

■米経済指標が好調なほど、米ドル高けん制発言を警戒 なぜ、米ドル高けん制コメントが高まるのかを最初からまとめていくと、今月、6月5日(金)に発表された米雇用統計の数字が極めて好調だったことから、FRB(米連邦準備制度理事会)による、2015年9月利上げへの期待感が高まりました。

 ただ、現状は、米国の利上げとは違う要因で、米ドル高が進んでいます。

 それは、日本では、日銀による異次元緩和と、「くじら」と称される公的機関からの「米ドル買い・円売り」。そして、欧州ではECB(欧州中央銀行)のQE(量的緩和策)による「ユーロ売り・米ドル買い」ということです。

 このマーケット環境に、米国の9月利上げの材料が重なると、米ドル高が加速することが予想されます。

米ドルVS世界の通貨 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 週足)

 これを放置しておくと、米ドル高の加速が米企業の業績を悪化させ、好調を維持している米国経済に暗い影を落とす懸念が出てきます。

 そのため、6月5日(金)の米雇用統計の好結果が、米当局からの米ドル高けん制コメントに対する警戒感を高めることになったのです。

 そして、マーケットの懸念どおり、まず、週明け、6月8日(月)には、「オバマ大統領は強いドルは問題だと言った-フランス当局者」とさっそく米ドル高けん制コメント。

 もちろん、このコメントは米国の当局者から否定されましたが、多くのマーケット参加者が懸念したとおり、米ドル高けん制コメントがいきなり飛び出したことから、米ドル/円は124円台に沈みました。

米ドル/円 2時間足(出所:米国FXCM)

  「オバマショック」で124円台に押し戻された米ドル/円ですが…
本音ポロリ!? 黒田総裁発言の真意とは? 一時的な影響で再びドル高・円安に戻るか ブログ

本音ポロリ!? 黒田総裁発言の真意とは? 一時的な影響で再びドル高・円安に戻るか

■強い雇用統計で早期利上げ期待高まるも、調整入りへ 6月5日(金)、米国で発表された雇用統計5月分に関して、NFP(非農業部門就業者数変化)が前月比28万人の増加と、予想値を大きく上回ったことで、米国の利上げ時期が早まるのではないか? との観測が広がりました。

 その結果、米ドル全面高の展開となり、米ドル/円も、一時125.86円まで米ドル高・円安が進行しました。

 そして週明け(6月8日~)、一部マスコミが、フランスの当局者が、「オバマ米大統領が米ドル高は問題であると発言していたと話していた」と報じると、さすがに米ドル高のスピードが速かったこともあり、調整が入りました。

米ドルVS世界の通貨4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨4時間足)

■市場に衝撃! 6月10日の黒田日銀総裁発言 その後、6月10日(水)には、市場に衝撃が走りました。

 衆議院の財務金融委員会で、民主党の前原誠司委員からの質疑で、日銀の黒田総裁が、「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れていくことは普通に考えると、なかなかありそうにない」という発言をしました。

 これを受けて、一気に円高が進み、米ドル/円も122円台半ばまで急落する展開となりました。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

■黒田日銀総裁の発言が極めて異例な理由 ここでひとつ、確認しておきたいのですが、もともと日本では為替政策は政府が所管することになっています。具体的に言えば、財務大臣です。

 そのため、たとえば、為替介入をするときも財務省が方針を決め、その執行を日銀に委託するという形で行われます。

 つまり、日銀には為替政策を決める決定権がないということです。

 ちなみに、米国も日本と同じ体系になっていますが、欧州やオセアニア諸国では、中央銀行が為替政策の決定権を持っており、制度に違いがあります。

 今、お話ししたように、日本では為替政策の決定は、財務大臣の権限であるので、「日銀は為替レートに関して発言しない」というのが一般的な慣習となっています。

 つまり、今回、黒田日銀総裁が為替レートに関して発言したのは極めて異例だということです。

為替レートについて、日銀総裁としては異例の踏み込んだ発言をした黒田総裁。果たして、その真意とは…? 写真は、2015年4月30日に行われた日銀金融政策決定会合後の記者会見時のもの(C)Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

 さて、そこで黒田日銀総裁の…
5月中旬に本来の下落トレンドへ復帰した 豪ドル/米ドル、目先の再反発はある? ブログ

5月中旬に本来の下落トレンドへ復帰した 豪ドル/米ドル、目先の再反発はある?

■月足の「高値圏での乱高下」が後々の下落を示唆 今回は豪ドル/米ドルの分析を行なう。まず、月足チャートからご覧いただきたい。

 月足チャートを見ると、豪ドル/米ドルは一番右の中長期のサポート・ライン「太い緑の破線」を割り込み、その時点で「売りシグナル」を発したと考える。 

豪ドル/米ドル 月足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 上のチャートでは、一番右の中長期のサポート・ライン「太い緑の破線」の傾きを緩やかにして、実際の相場に合わせ調整している。

 豪ドル/米ドルは高値圏で「紫の破線」で示した「下値0.9400ドル近辺-上値1.1100ドル近辺のボックス相場」を形成していたと考える。

 そして、ボックス相場「紫の破線」の下限を割り込み、さらなる「売りシグナル」を発したと考える。「紫の破線」で示した「下値0.9400ドル近辺-上値1.1100ドル近辺のボックス相場」は、「高値圏での乱高下」と考えることができる。

 「高値圏での乱高下」は、後々の下落を示唆するケースが多々ある。

このボックス相場「紫の破線」の下限を割り込んだことで、大きく下落する可能性を示唆していると考える。

■ボックス相場下抜け後も乱高下を続ける 豪ドル/米ドルは0.9400ドルを割り込み発せられた「売りシグナル」に従い、0.88ドル台にまで下落したが、0.88ドル台から急反発して、0.97ドル台にまでリバウンド(反転上昇)した。 

豪ドル/米ドル 月足(再掲載、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 しかし、2013年12月18日(木)のFOMCで、「テーパリング(量的緩和策の縮小)実施」が発表されたことを材料に、豪ドルは再度大きく下落し、0.86ドル台の安値をつけている。

 しかし、0.86ドル台の安値から今度は大きく急騰し、戻り高値は0.9500ドル近辺(0.9500-05ドルレベル)をつけている。

 戻り高値の0.9500ドル近辺(0.9500-05ドルレベル)から、再び大きく下落している。

 豪ドル/米ドルは、「ピンクの破線」で示した「上値0.9800ドル程度-下値0.8600ドル程度」のボックス相場を形成していた、と考える。 

豪ドル/米ドル 月足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 このボックス相場「ピンクの破線」の下限を割り込み、「売りシグナル」を発した、と考える。

 この「売りシグナル」に従い、豪ドル/米ドルは、大きく下落した。それで、一番右のレジスタンス・ライン「緑の破線」を表示した。

 月足チャートには、ボックス相場「赤の破線」とボックス相場「ピンクの破線」を表示している。これは、後で掲載する週足チャートに表示したボックス相場と同じものだ。

 0.8600ドル近辺を下に抜けたことで、ボックス相場「ピンクの破線」下限を割り込み、「売りシグナル」を発した、と考える。

 ボックス相場「ピンクの破線」下限を割り込んだ時点で、新安値を更新したので、「売りシグナル」を発した、と考えることもできる。

 この「売りシグナル」に従い、相場は下落して今のところ、0.75ドル台の安値をつけている。

 すでに大きく下落したが、まだ底打ちしたとは言えない、と考えている。

 安値を更新する場合は、その時点で、さらなる「売りシグナル」点灯になる状況が続いている、と考える。

■週足では、ボックス相場を上抜けし、ターゲットを達成 次に、週足チャートをご覧いただきたい。

 豪ドル/米ドルは、0.6000ドル近辺から、1.1000ドル近辺に大きく上昇したが、その上昇過程では、サポート・ライン「緑の破線」に従っていたと考える。  

豪ドル/米ドル 週足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 豪ドル/米ドルは、「赤の破線」で示した「下値0.8000ドル-上値0.9400ドルのボックス相場」を上に抜けたことで、「買いシグナル」を発して上昇した。

 そして、ボックス相場のセオリーどおりに、ボックスの値幅分(1400ポイント)上昇してターゲットを達成したと考える。

 「赤の破線」で示したボックス相場を上抜けしてからは…
ドル/円は126~127円への上昇も。しかし、 一気の130円超えは難しいとみる理由とは? ブログ

ドル/円は126~127円への上昇も。しかし、 一気の130円超えは難しいとみる理由とは?

■米ドル高ではなく円安、米ドル/円は125円にトライ 米ドル高ではなく円安、といった感が強まったのは先週(5月25日~)からの市況だ。米ドル/円は、一時125円の大台にトライしてから保ち合いが続いているものの、ユーロ/円は2015年年初来高値を更新し、英ポンド/円の高値更新に追随した。

米ドル/円 4時間足(出所:米国FXCM)

ユーロ/円 4時間足(出所:米国FXCM)

 以前のコラムでも述べたように、米ドル全体がブル(上昇)基調をキープしながら、スピード調整を行っている間は、総じてクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上値追いしやすい時期でもある。

【参考記事】

●ドル全体の調整はしばし続く可能性大だがドル/円は118円台死守ならやがて上放れ(2015年5月15日、陳満咲杜)

 先週(5月25日~)のドルインデックスの反落は、ユーロ、英ポンドなどの外貨が対ドルで切り返したことを意味するから、ユーロ/円、英ポンド/円の上値追いは当然の成り行きでもある。

 ドルインデックスでみると、5月安値を起点とした切返しは、いったん3月高値を起点とした全下落幅の61.8%反騰位置に抑えられて、再反落してきたので、昨日(6月4日)まで外貨の反騰につながった。  

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 対極としてユーロ/米ドルの反騰が一番大きく、昨日(6月4日)一時1.14ドルの節目に迫ったことが、ユーロ/円の141円の節目打診をもたらした。 

ユーロ/米ドル 4時間足(出所:米国FXCM)

■125.7円まで押し目なしで、126~127円台の上値余地も 当然のように、ユーロ/円の高値打診は、米ドル/円の堅調ともリンクしているから、米ドル/円の底固さが目立つ。

 6月2日(火)に125円の大台を打診した後、米ドル/円は上昇スピードを緩めたものの、現執筆時点まで同日安値(123.73円)を下回っていない一方、昨日(6月4日)は米ドル全体が一時大幅反落したことから考えて、円売りのモメンタムが維持されていることが明らかだ。 

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 前回のコラムでも指摘したように、基本的には米ドル/円は3月高値を更新したあと、上昇モメンタムを維持できる公算が大きく、125.70円前後の高値をトライするまで、大した押し目がない可能性が大きい。

【参考記事】

●上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ(2015年5月29日、陳満咲杜)

 「押し目待ちに押し目なし」といったリスクを覚悟しておいたほうが良いのは、5月中旬まで続いた長い保ち合いがあったからだ。

 換言すれば、保ち合いの長さに比例して、ブレイク後のモメンタムは強いわけだから、目先の米ドル/円が堅調なのは自然の成り行きだ。

 本日(6月5日)の米雇用統計次第でまた一波乱が想定されるが、指標次第で変動幅が大きくなる可能性はあるものの、米ドル/円の高値トライは、なお途中といった見方は不変。再度高値更新を果たした上に、場合によっては126~127円台の上値余地も視野に入れておくべきだろう。

 反面、早くも浮上してきた130円、あるいは132…
ドル/円は125円到達も調整は長引きそう。 中国株下落でなぜユーロは上昇するのか? ブログ

ドル/円は125円到達も調整は長引きそう。 中国株下落でなぜユーロは上昇するのか?

■米ドル/円は125円にあっさり到達 みなさん、こんにちは。

 このコラムで何回かに渡ってご紹介してきた米ドル/円は、先週(5月25日~)から上昇に弾みがつき、6月2日(火)には125円台にあっさり到達。高値は125.05円。

【参考記事】

●「子くじら」の出現で、米ドル/円は122.50円への上昇濃厚! 上抜ければ125円も視野に(5月21日、西原宏一)

●125円に急接近のドル/円は128円も視野に! なぜ、ドル高・円安は突然加速したのか?(5月28日、西原宏一)

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 その後、米ドル/円はもみ合いに入っていますが、中期の流れは変わらず、「米ドル高・円安」。

 ただ、その調整が少し長引きそうな要因が出てきています。その要因のひとつが、オプション。

 米ドル/円の125.00円は、オプションデスクからガンマ(※)の影響で、大量の米ドル売りが供給されるということがあります。

(※編集部注:「ガンマ」とはオプションの指標の1つ)

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 そして、もうひとつがユーロ/米ドルの反発です。

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

■ドイツ国債利回りが再び上昇 2015年4月の英ポンド/円に続き、5月14日(木)のコラムでご紹介したユーロ/円は、上げ幅を拡大してきており、6月3日(水)にあっさりと140円台を回復。

【参考記事】

●ドイツ国債利回り再上昇でユーロ高継続。反発中のユーロ/円に注目する理由とは?(5月14日、西原宏一)

 その要因は、以前のコラムでもご紹介したドイツ10年物国債利回りが急騰したこと。

【参考記事】

●人生最大の売りチャンスで独国債急落! 独国債利回り急騰でユーロは上値追いか(5月7日、西原宏一)

 ドイツ10年物国債利回りは、前回、2015年5月に上昇した際は、0.80%近くまで急騰して、いったん沈静化しました。

 そして、今週(6月1日~)になって上昇を再開。6月3日(水)には0.88%まで急騰し、1.00%を回復しそうな勢いとなっています。

ドイツ10年物国債利回り(ドイツ長期金利) 日足(出所:CQG)

 ECB(欧州中央銀行)のQE(量的緩和策)にも関わらず、ドイツ国債の利回りが急騰している背景は、以前のコラムでご紹介しているので、そちらを参照してください。

【参考記事】

●ドイツ国債利回り再上昇でユーロ高継続。反発中のユーロ/円に注目する理由とは?(5月14日、西原宏一)

  このコラムでもご紹介しましたが、日銀の異次元緩和の局面同様…
95年の榊原ブルドーザー介入と似ている? ドル/円は史上最安値から60円の円安も! ブログ

95年の榊原ブルドーザー介入と似ている? ドル/円は史上最安値から60円の円安も!

■一時、125円台に達した米ドル/円! その後は… 前回のコラム執筆時から見ても、米ドル/円はさらに上昇(米ドル高・円安に)。

 一時的ではありましたが、とうとう125円台に達しています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 その後は、達成感が出たことや、ユーロ/米ドルでユーロ高・米ドル安が進んだことの影響を受け、少し落ち着いています。

■米ドル/円上昇の背景は「米ドル高」よりも「円安」 今回の米ドル/円の上昇は、確かに、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が年内に利上げを示唆するような発言をしたことで、米ドルが買われ、米ドル/円も米ドル高・円安になった局面もありましたが、その後の動きを見ていると、どうも「米ドル高」ではなく「円安」という要因で動いています。

 それはユーロ/米ドルの動きを見ればよくわかります。ユーロ/米ドルでは、EU(欧州連合)諸国の景気が予想以上に良さそうだということなどから、むしろユーロ高・米ドル安が進んでいます。

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

 当コラムでよく例に挙げている、IMM(国際通貨先物市場)ポジションを見ても、かなりユーロ/米ドルのショートポジションが積み上がったままの状態だったので、その巻き返しが起きています。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 その結果として、ユーロ/円でユーロ高・円安が進み、6月に入ってとうとう140円の大台に乗ってきました。少し、局面が変わってきたなという印象です。

■米ドル/円の次の目標は、135.20円水準か さて、今度の相場ですが、30年ぐらいの長期のチャートを見てみると、2007年の高値124.14円を上抜けてきているので、そうなると次の目標は2002年の高値である135.20円という水準が視野に入ってきます。

【参考記事】

●買いが買いを呼び、ドル/円は125円目前! 相場上昇の裏に外国人投資家の存在あり(5月27日、今井雅人)

 もし、そんなことが起きれば、2011年につけた史上最安値の75.311円から始まっている上昇相場であるので、60円も円安が進むことになり、それはないだろうと思われる方がいるかもしれません。

米ドル/円 月足(出所:米国FXCM)

 しかし、かつてそのようなことが実際にありました。

 それは、1995年に79.75円の安値をつけてから、1998年に147.64円の高値をつけるまで、実に68円近く円安が進行した局面です。

 このときも、米ドル/円は1米ドル=50円ぐらいまで円高になってしまうのではないかという声が高まっていた時、当時、国際金融局長だった榊原英資さんが、ブルドーザー介入と言われた大量の米ドル買い介入をしながら、国内の機関投資家の海外への投資規制を緩和して、どんどん海外に投資するように仕向けるとともに、海外のヘッジファンド、国家ファンドなども巻き込んで円安相場への大転換をさせました。

当時、国際金融局長だった「ミスター円」こと、榊原英資氏。財務官その後、財務官などを歴任

(C)Haruyoshi Yamaguchi/Bloomberg via Getty Images

 今回はどうでしょう…
「買いシグナル」点灯のユーロ/円だが 戻り売りのタイミングを待つのが賢明! ブログ

「買いシグナル」点灯のユーロ/円だが 戻り売りのタイミングを待つのが賢明!

■ユーロ/円は月足で上昇・下落トレンドを繰り返している 今回はユーロ/円の分析を行なう。まずは、月足チャートからご覧いただきたい。

 ユーロ/円は、2008年に約170円(正確には、169.95円)の高値をつけてから、下落に転じた。 

ユーロ/円 月足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 そして、月足チャートで見ると、2012年3月に2008年の高値を起点としたレジスタンス・ライン「ピンクの破線(細線)」を上に抜けたのだ が、この時点では、結局、トレンド転換が起こらなかった、と判断したので、2012年4月の高値に合わせて、新たなレジスタンス・ライン「緑の破線」を表 示した。

 つまり、レジスタンス・ライン「ピンクの破線」を上に抜けた時には、ユーロ/円は、下落トレンドのままで、上昇トレンドに転換していない、と判断した。

 しかし、改めて引き直した一番右の中長期のレジスタンス・ライン「緑の破線」を明確に上に抜ける場合は、「買いシグナル」なので、要注意と考えていた。

 2012年の11月に、中長期のレジスタンス・ライン「緑の破線」を、明確に上に抜け、「買いシグナル」を発した、と考える。 

ユーロ/円 月足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 安値94.00円近辺からの上昇で、中長期のサポート・ライン「紫の破線」を表示した。

 このサポート・ライン「紫の破線」を割り込み、「売りシグナル」を発した、と考える。

 詳しくは、後出の週足チャートをご覧いただきたい。

■2015年1月に下落トレンドに転換した可能性あり 昨年(2014年)の10月31日(金)に、日銀が追加の金融緩和策を発表したことを材料に、ユーロ/円が急騰した。

 それで、その時点での直前の安値(134円台前半)に合わせて、サポート・ライン「赤の破線」を表示した。

 しかし、今年(2015年)の1月中旬(1月15日木曜日)の急落で、このサポート・ライン「赤の破線」を割り込んだ。 「売りシグナル」を発した、と考える。 

ユーロ/円 月足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 このサポート・ライン「赤の破線」を割り込み、「売りシグナル」を発した、と考えると、ユーロ/円はトレンド転換した可能性がある。

 つまり、ユーロ/円の94円台から150円近辺まで上昇した期間が、「上昇トレンド」であり、150円近辺がピーク(最高値)で、すでに「下落トレンド」に転換している可能性がある、ということだ。

■週足ではボックス相場を上抜けして145円台まで上昇 続いて、週足チャートをご覧いただきたい。下の週足チャートに、「94.00円-112.00円のボックス相場」(赤の破線)を表示した。 

ユーロ/円 週足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 ユーロ/円は、この「94.00円-112.00円のボックス相場」の上限を抜けて、「買いシグナル」を発した、と考える。

 いわゆる「ダブル・ボトム」を作り、その上限(ネック・ライン)を上抜けして「買いシグナル」を発した、と言える。

 ユーロ/円の上昇は、大局で見れば、当初はサポート・ライン(1)「ピンクの破線」に従っていた、と考える。

 そしてユーロ/円は、139円台ミドルを上に抜けた時点で、2009年の高値を更新した。2009年の高値を更新したことで、「買いシグナル」を発した、と考える。

 この「買いシグナル」に従い、ユーロ/円は上昇して高値145円台をつけている。

 この高値(145円台)をつけてからの…
上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み 上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ ブログ

上放れ後の逆張りは無謀。ドル/円で踏み 上げられて、血祭りとなったミセスワタナベ

■米ドル全面高! 米ドル/円急伸の理由は? 米ドル全面高が続いている。ドルインデックスは97.75まで切り返し、ユーロ/米ドルは1.08ドルの節目に再接近した。 

ドルインデックス 日足(出所:米国FXCM) 

ユーロ/米ドル 日足(出所:米国FXCM)

 そして、何より注目されるのは米ドル/円だろう。2007年高値124.16円を更新し、2011年安値(戦後最安値)から事実上一本調子の上昇を続けてきただけに、円売りトレンドの雄大さに感心させられたところだ。 

米ドル/円 月足(出所:米国FXCM)

 米ドル/円の上昇スピードが非常に早かったので、日経平均の上昇に伴った外国人投資家の円売りヘッジとか、日本の個人投資家(いわゆるミセスワタナベ)の米ドル売りが踏み上げされた結果だとか、いろんな解釈が聞こえてくる。

 テクニカルの視点では、単純にこの前の保ち合いが長かったので、いったん上放れが確認されると、モメンタムが強まり、相場のスピードが速くなったということだろう。これは自然な成り行きだ。

 こういった長い保ち合いを経てから上放れを果たし、その後、一本調子の上昇をもたらす局面は、今まで何度もあった。単純に言えば、その繰り返しである。

米ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

■逆張りして踏み上げられたミセスワタナベが上昇を加速 この意味では、米ドル/円の上放れとその後のターゲット測定は難しいものではなく、また、少なくとも高値更新後はトレンドフォローを基本的なスタンスにすべきであろう。

 筆者のブログで5月21日(木)に開示したチャートはこの見方を証左し、まだ達成されていない125.70円のターゲットも、これから達成される公算が大きいと思う。 

米ドル/円 日足(5月21日作成、クリックで拡大)(出所:米国FXCM)

 筆者自身、米ドル/円の上放れ自体や上昇スピードにサプライズはないが、気になるのは日本のFX会社の統計に見られる、最近の個人投資家の逆張り傾向だ。米ドル/円の上放れにつれて、ミセスワタナベは全体として順張りではなく、逆張り傾向を強めた模様で、その踏み上げによって米ドル/円の上昇が加速した、といった見方も多い。

 筆者の記憶が正しければ、個人投資家は全体として逆張りの傾向が強いが、米ドル/円に限って言えば、日本の個人投資家が積極的な売りを仕掛けてくるのは珍しい。

 最近の米ドル売り・円買いの仕掛けは、値ごろ感によるところが大きいか、さすがに2007年高値は超えないだろう、あるいは調整なしでは超えないだろうといった「相場観」によるところも大きいのではないだろうか。

 いずれにせよ、上放れが確認された後の逆張りは無謀すぎて、相場の基本に反する行為だから、踏み上げられるのも当然。踏み上げの土台になったこと自体、米ドルの急騰につながった側面を否めないと思う。

【ミセスワタナベに関する参考記事】

●「ミセス・ワタナベ」のルーツを探れ(1) 実は90年代半ばに英国で生まれた言葉?

●「ミセス・ワタナベ」のルーツを探れ(2) なぜ佐藤、鈴木ではなくワタナベなのか?

 ところで、ミセスワタナベによる大規模な米ドル売り…
買いが買いを呼び、ドル/円は125円目前! 相場上昇の裏に外国人投資家の存在あり ブログ

買いが買いを呼び、ドル/円は125円目前! 相場上昇の裏に外国人投資家の存在あり

■予想以上のスピードで米ドル/円はレンジを上抜け! 変化は突然やってくるものです。そういう実感を持った1週間でした。

 私は、米ドル/円の先行きに関して、「当面はレンジ相場が続いて、その後、米ドル高に向かっていく」というイメージを持っていました。

【参考記事】

●ECB理事が一部ヘッジファンドを優遇!?今回のユーロ急落の裏にあった真相とは?(5月21日、今井雅人)

 しかし、予想以上のスピードで米ドル/円は、レンジを上に抜けてしまいました。何が起きたのでしょうか?

 これまでの動きを見ていると、日本の公的年金だけではなく、機関投資家なども120円台に買い注文を入れていました。その一部は成立したのですが、結果的には、そういう買い注文が支えとなって、反転していったようです。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 思ったより、買いたい人が多くいたということになります。

■米ドル/円上昇の裏に外国人投資家の存在も… それに加えて、外国人の動きも見受けられました。

 日経平均が上昇していく中で、外国人投資家も積極的に日本株に投資をしてきているのは周知の事実ですが、外国人の中には、円を借りて日本株を買っている人もいます。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 そういう形であれば、為替レートの影響を受けないので、株が上昇したことによるキャピタルゲインを丸々受け取れることになります。

 一方で、自国の通貨を円に換えて日本株を買っている外国人投資家もいました。こういう人は、円安になると為替で損をしてしまい、せっかく株で儲けても為替の損でかなり利益を失ってしまうということが起きていました。

 こういう人たちも、これ以上の為替での損を防ぐためにヘッジ取引をしてきています。つまり、米ドル/円を買っているということです。

 こうした動きが、相場をジリジリ上げていきました。

■米ドル/円は、「買いが買いを呼ぶ」状況に! そんな中、先週末5月22日(金)の講演で米国のイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、「年内に利上げを始めるのが適切」との発言をしたことによって、「2015年は利上げがないのではないか」という一部の意見が否定され、これも米ドルを買う材料となりました。

 このような状況の中で、米ドル/円はさらに上値を試す動きとなったのですが、5月26日(火)に、年初来高値として重要な目先のメドとなっていた3月10日(火)の122.04円を上抜けてしまうと、一気に「買いが買いを呼ぶ」状況になってしまいました。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

 また、同時に1990年4月17日の高値160.27円と1998年8月11日の高値147.64円を結んだかなり長期のレジスタンスラインが位置していた122円台半ばの水準も一気に上抜ける動きになると、本日5月28日(木)には、これもまた長期チャートでの戻りメドとなっていた2007年6月22日の高値124.14円までも突破。

 一時、124.30円まで米ドル高・円安が進むという展開になっています。

米ドル/円 月足(出所:米国FXCM)

 さて、ここからの展開が問題となって…
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■米ドル/円は年初来高値を越えて124円台まで急騰 みなさん、こんにちは。

 先週のコラムでご紹介したとおり、118円台でボトムアウトした米ドル/円は、今週(5月25日~)、円安に加速がつき、年初来高値をあっさり超えて、124円台まで急騰しています。

【参考記事】

●「子くじら」の出現で、米ドル/円は122.50円への上昇濃厚! 上抜ければ125円も視野に(5月21日、西原宏一)

米ドル/円 1時間足(出所:米国FXCM)

 米ドル/円上昇の背景にあるのが、まず当コラムでも何度かご紹介させていただいた、本邦公的機関からの「円売り・株買い」。

【参考記事】

●ドル/円は122円超、日経平均は2万2000円へ上昇するのが濃厚と考える理由とは?(4月23日、西原宏一)

●「子くじら」の出現で、米ドル/円は122.50円への上昇濃厚! 上抜ければ125円も視野に(5月21日、西原宏一)

 彼らからの「米ドル買い・円売り」は変わらず、コンスタントにマーケットに持ち込まれており、米ドル/円を下支えする展開。

■なぜ、米ドル高・円安は急速に進んだのか? 加えて、今回の米ドル高・円安を演出したのは、ファンドの日本株購入に伴うヘッジとしての円売りでした(※)。

(※編集部注:日本株を単純に買うだけでなく、同時に円売りを行って、円安に対するヘッジをかけようとすることを指している)

 まず、以下のチャートをご覧ください。 

日経平均 週足(出所:米国FXCM)

 これは日経平均の週足ですが、ファンド勢の来日がウワサされるたびに、日本株は急騰しています。

 今回も、2015年4月にファンド勢の来日がウワサされ、5月の日本株の反騰がウワサされていました。

 有名なところでは、テレビ東京の取材を受けて、地上波でも報道された資産運用会社のブラックロック。

 そのブラックロックを率いるのが、「全能の神」といわれる、会長兼CEOのラリー・フィンク氏。彼のインタビューによると、

「日本株は割高ではない」

「5%上昇は視野にある」

「アベノミクス成功なら長期上昇へ」

 と日本株に対して強気のコメント。

 そして、今週(5月25日~)に入って、ブラックロックの日本株大量保有が判明。

 ブラックロックは実際に日本株への投資を進めている模様。これは他のファンドも追随する可能性があることを示唆し、今週(5月25日~)も日本株は堅調に推移。

日経平均 日足(出所:米国FXCM)

 そして、海外勢が日本株に投資すると、為替でもヘッジの円売りが出るのが一般的。

米ドル/円 日足(出所:米国FXCM)

 ただ、先月(4月)は、米ドル/円が120円台に乗せると、浜田宏一内閣官房参与を筆頭に、本邦当局から円安牽制コメントが頻繁に出されたため、欧米のファンド勢は為替のヘッジが遅れていました。

 しかし、今週(5月25日~)は違って…