
この記事の要点
- SECが「イノベーション免除」を正式発令
- 時価総額75兆ドルの米国株にオンチェーン取引の道
まずはをトークン化株式を詳しく
トークン化株式、SECが時限付き免除を発令
米SEC(証券取引委員会)は2026年9月17日、トークン化された米国上場株式のオンチェーン取引を促進する一時的・条件付き措置「イノベーション免除(Innovation Exemption)」を発令しました。
この措置により、「トークン化証券取引所(TSV)」と呼ばれる新たな取引の場が、一定の条件下でトークン化された米国上場株式をブロックチェーン上で扱える仕組みとなっています。
対象となる米国株式市場の時価総額は約75兆ドル(約1京1,700兆円)にのぼり、世界最大規模の株式市場でトークン化株式のオンチェーン取引を進めるための道が開かれたことになります。
ポール・アトキンス委員長は、デジタル資産市場の規制枠組みを定めるCLARITY法案が議会で前進しなかったことに言及したうえで、今回の発令を「米国の資本市場をデジタル時代に引き上げるための、法的権限の範囲内での重要な一歩だ」と述べました。
イノベーション免除は連邦官報への掲載から5年間で失効する時限措置となっており、SECはその間に得られる取引データや市場の運用実績を、恒久的な規則づくりに役立てる方針を示しています。
「議会が止まっても我々は動く」
2免除の設計と急成長するトークン化株式市場
流動性提供者もディーラー登録を免除
声明によれば、イノベーション免除は1934年証券取引所法第36条(a)(1)に基づく一時的・条件付きの措置となっています。
SECはTSVについて、一定の条件を満たす場合に同法上の「取引所」として登録せず、トークン化NMS株を扱うことを認めました。
あわせて、TSVの流動性プールに自己資本で流動性を供給する事業者も「ディーラー」の定義から除外され、SECは対象事業者を「Covered Firms」と位置づけています。
アトキンス委員長は、こうした措置を米国の資本市場をオンチェーン化する規制近代化策「プロジェクト・クリプト」の一環だと説明しています。
トークン株に従来株と同等の株主権を要求
SECはTSVの運営について、米国法人であることやOFAC(外国資産管理局)の制裁プログラムを順守することに加え、参加者を限定する許可制のアクセス基準を設けるよう求めています。
取引対象となるトークン化NMS株についても、従来の株式と同じ配当や議決権を保有者に与えることを条件とし、株価に連動するだけの合成商品は対象から除外しました。
第三者による株式のトークン化には発行企業への事前通知を求めており、企業側が異議を申し立てた場合にはTSVでの取引を拒否できる枠組みとなっています。
技術面では、監査可能で公開されたスマートコントラクトを使用し、パブリックかつパーミッションレスな分散型台帳上で取引を行うことも条件に盛り込まれました。
基礎となるNMS株が主要取引所で売買停止となった場合には、対応するトークン化株式の取引もTSVで停止することが求められています。
銘柄数と取引量に段階的な上限を設定
取引規模にも制限が設けられており、マーク・ウエダ委員は、銘柄数と取引量に値幅制限(リミットアップ・リミットダウン)の階層に応じた上限を設定する「制御された設計」だと説明しました。
TSVには米ドル建ての取引データを定期的に公開する義務も課され、価格、約定サイズ、時刻、プールアドレス、日末時点のプール規模、日次の取引量などが公開対象となっています。
ウエダ委員は、こうしたデータの公開によって情報格差を抑えるとともに、今後の規制づくりに必要な実証データを蓄積できるとの見方を示しています。
同氏はトークン化について、証券の発行や取引、移転、決済、所有権の記録といった市場インフラの中核機能を近代化する可能性があると指摘しました。
トークン化株式、5,000億円規模に到達
制度整備が進む一方、トークン化株式市場そのものも2026年に入って拡大しており、オンチェーンデータを集計するToken Terminalによると、時価総額は32億ドル(約5,000億円)に達しました。
2026年初には10億ドル未満だった市場規模が3倍以上に増えたものの、約75兆ドルにのぼる米国株式市場全体と比べると約0.0043%にとどまっています。
これまではクラーケンの「xStocks」やロビンフッドなどが海外市場を中心にトークン化株式を展開しており、米国内で同様の取引モデルを運用するための規制上の選択肢は限られていました。
アトキンス委員長は、イノベーション免除について、責任ある技術革新が米国内で根づくことを妨げてきた課題に対応しながら、投資家保護と市場の健全性を維持するための措置だと説明しています。
「取引高33倍超」競争軸は発行から流通へ
クラリティ法案停滞を受けSECが恒久規則へ
今回の措置に先立つ2026年9月15日、CLARITY(クラリティ)法案は米上院で審議入りに向けたクローチャー採決にかけられましたが、賛成49・反対50で必要な60票に達せず、審議入りは見送られました。
アトキンス委員長はこの結果に触れたうえで、議会で法案が前進しなかったなかでも、SECが自らの法的権限の範囲内でオンチェーン市場の制度整備を進める考えを示しています。
こうした取り組みには、ヘスター・ピアース委員が率いるクリプトタスクフォースも関わっており、ウエダ委員はSECの市場取引部門や法務部門とともに免除措置の策定を進めたことを明らかにしました。
SECは現在、イノベーション免除について意見を募っており、TSVの実運用データと寄せられた意見をもとに、恒久的な規則制定の必要性を検討する方針となっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.26 円)
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Source:SEC声明 / ポール・アトキンス委員長声明 / マーク・ウエダ委員声明
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用
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