ICHIZEN HOLDINGS 水野氏が語る「HYPE」対応のレンディングとファンド構想

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株式会社ICHIZEN HOLDINGSは、法人向けの暗号資産運用コンサルティングやメディア運営など、幅広いWeb3事業を展開している。

同社は現在、新たに暗号資産レンディングサービス「HyperLending(ハイパーレンディング)」を開始し、国内初となる「Hyperliquid(HYPE)」の対応を発表した。そして資産運用の実績をベースにしつつ、将来的にはファンド組成を見据えた事業展開を推進するそうだ。

今回は、代表取締役の水野倫太郎氏に、新サービスリリースの背景やターゲット層、法人における暗号資産運用のリアルな課題、そして同社が見据えるWeb3ビジネスの今後の展望について、NFTMedia編集部が聞いた。

水野 倫太郎(みずの りんたろう)
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役

2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開。2022年に株式会社ICHIZEN HOLDINGSを創業し、代表に就任。ブロックチェーン・暗号資産を用いた事業活用を中心にコンサルティング・マーケティング・運用支援を展開。

4つの軸で暗号資産の運用をサポートする企業

NFTMedia編集部(以下、編集部):まずは、ICHIZEN HOLDINGSではどのような事業に取り組んでいるのかを教えていただけますでしょうか。

水野倫太郎(以下、水野):ICHIZEN HOLDINGSは、暗号資産の資産運用に特化した会社です。大きく分けると「資産運用」、「コンサルティング」、「プロダクト」、「SEOマーケティング」の4つの軸があります。

編集部:それぞれ、どのようなサービスなのでしょうか。

水野:まず運用領域では、自社での暗号資産運用を中心に、法人が保有する暗号資産を目的やリスク許容度に応じて運用する支援を行っており、今回リリースを発表した暗号資産レンディングサービス「HyperLending」もこの一環です。

コンサルティング領域では、DAT(暗号資産トレジャリー)事業の戦略設計からIR・実務までのトータルサポートのほか、トークンを発行する際の設計や上場の支援も可能です。

編集部:法人顧客に対して、暗号資産の保有や運用を支援しているのですね。
それでは、「プロダクト」とはどのようなサービスなのでしょうか。

水野:プロダクト分野では、企業向けの内部統制ツール「CRYPTO Governance」を提供しています。

企業が暗号資産を保有するにあたって、会計資料の作成や資産管理のガバナンスが欠かせません。そこで暗号資産取引の取引枠管理や承認フローといった内部統制、会計処理まで完結できるように「CRYPTO Governance」を開発しました。

編集部:企業でも暗号資産を適切に管理できるような仕組みも提供されているのですね。

この他にICHIZEN HOLDINGSでは、ブロックチェーン関連のメディアも運営してますよね。

水野:はい。SEOマーケティング領域として、メディア運営も行っています。

以下の3つが自社で運営するサイトですね。

ICHIZEN Capital(Web)・・・暗号資産の運用に関するWebメディア
ICHIZEN Capital(note)・・・クリプト・ゴールド・個別株分析配信の有料マガジン
WEB3地方創生ねっと・・・「Web3×地方創生」のWebメディア

実は、メディア運営には長く取り組んできた実績があります。以前、「CoinPartner(旧CoinOtaku)」という暗号資産メディアを運営していたのですが、共同代表の木田が代表、私がCMOという体制で月間平均150万PVまで成長させ、最終的に上場企業へ売却しました。

この経験で培ったSEOやメディアグロースの知見を活かして、現在は自社メディアの運用に加え、クライアントのSEOメディア運営も支援しています。

編集部:自社メディアであるICHIZEN CAPITALを通じて、資産運用に興味のある企業が集まる仕組みとなっているのですね。

ちなみにWeb3地方創生ねっとのサイト運営では、何をゴールとしているのでしょうか。

水野:Web3地方創生ねっとではマネタイズを狙うというよりは、ブロックチェーン技術が社会でどう使われているかを知ってもらう「エコシステムへの貢献」というスタンスで運営しています。

どちらかと言うと、ライフワーク的に事例を発信するサイトですね。現在は日本全国のWEB3事例を500個以上掲載するまでに至りました。

編集部:自社でプロダクト開発から情報発信までできる点が強みですね。

暗号資産トレジャリーの現在地とは

編集部:暗号資産の資産運用とコンサルティングについて、さらに質問させてください。

2025年には上場企業が暗号資産をトレジャリーとして組み込む動きが注目されました。このようなトレンドによる影響は受けていますか。

水野:問い合わせは増えていますね。

トレジャリー運用とは、企業が保有する現預金の一部を暗号資産に置き換え、インフレによる資本価値の目減りを防ぎながら、企業価値の向上を狙う財務戦略です。2025年頃からこの動きが国内の上場企業にも広がったことで、既存クライアントからのリファラル(紹介)を中心に、新規法人からのお問い合わせが増えています。

主に上場企業からのご相談が多いですね。

編集部:このような暗号資産トレジャリーの活況は、今後も続くと予想されていますか。

水野:2025年のような、いわゆる「とりあえず暗号資産を買えば株価が上がる」といったボーナスステージはすでに終わりつつあります。

「暗号資産を買う」という発表自体が株価の材料として織り込まれにくくなったことに加え、IRの出し方や開示のルール整備も進み、以前のような打ち出し方が通用しなくなってきたからです。市場が「買う」こと自体ではなく、「買った後にどう運用し、どう企業価値につなげるか」を見るフェーズに入ったと感じています。

実際、トレジャリー企業の中でも、時価総額が保有暗号資産の価値を下回る、いわゆるmNAV1倍割れの企業が出てきています。「持っているだけ」では市場に評価されない。ここから先は、運用体制やガバナンス、開示の質で選別される時代です。

編集部:この半年ほどで、だいぶ潮目が変わってきたのですね。

実際に企業がトレジャリー運用に乗り出す上で、どのような点がハードルになっていますか。

水野:一番大きいのは「ガバナンス」の問題です。

例えば、2026年6月時点の市況は調整局面に入っており、個人投資家の目線では仕込み時に映るかもしれません。

しかし法人が暗号資産を購入する場合だと、市況が下がっているからこそ手が出しづらかったり、いざ進めようとしても株主側の承認が下りずに停滞したりするケースが実はかなり多いのです。

編集部:なるほど。SNS上でも、トレジャリー企業の株主が活発に意見を交わしている姿が見られますよね。

トレジャリーへの参入を目指す企業に対して、ICHIZEN HOLDINGSではどのようなサポートを提供しているのでしょうか。

水野:会社によって状況や目標がまったく異なるため、カスタマイズした形で伴走支援をしています。

検討段階から実際の運用まで対応しており、提供できるサービスは以下の15種類です。

戦略設計

  • 戦略設計
  • 中期経営計画の策定
  • KPI・KGI構築
  • 財務戦略立案
  • 売買戦略レポート

運用支援

  • システム運用
  • プロフェッショナル運用
  • マーケットレポート
  • セキュリティ管理
  • データ基盤構築

IR・実務支援

  • IR制作支援
  • 監査法人対応
  • 内部統制ツール
  • メディア・SNS運用
  • WEB3新規事業支援

編集部:これらのメニューの中から、クライアントのニーズに応じて施策を組み合わせているのですね。具体的には、どのような要望が多いですか。

水野:例えば「会計処理や監査法人対応の実務を手伝ってほしい」という要望もあれば、「株主に説明するための資料を整備してほしい」という要望がありますね。

また、暗号資産の管理ツールを提供したりと、企業の課題に合わせてプランを変えています。

日本初の「HYPE」に対応したレンディングサービス

編集部:2026年7月1日に『HyperLending』というサービスが公表されましたね。

※参考 暗号資産レンディング『HyperLending』、2026年7月1日より正式サービス開始

今回の「HyperLending」とは、どのようなサービスなのでしょうか。

水野:今回発表した「HyperLending」は、暗号資産のレンディングサービスです。

仕組みとしてはシンプルで、ユーザーに暗号資産を預けていただき、預け入れる銘柄や期間に応じて貸借料率が変動し、通貨建てで利息を得られる仕組みになっています。

編集部:今回のサービスは、どのような経緯で登場したのでしょうか。

水野:もともとICHIZEN HOLDINGSでは、法人クライアントに向けた資産運用の一環としてレンディングサービスを提供していました。

これをより広く手軽に利用できるようにしたサービスが「HyperLending」です。法人・個人を問わず、登録するだけでレンディングサービスにアクセスできます。

事前登録を開始したばかりの現状では、預け入れの金額規模で見ると法人顧客の方が大きいですが、ユーザー数で見れば圧倒的に個人の方に登録いただいていますね。

編集部:個人ユーザーでも気軽にレンディングサービスを利用できるのですね。

今回のサービスでは、「HYPE(Hyperliquid)」のレンディングに対応している点が大きな特徴だと思います。国内取引所でもまだ扱われていない銘柄ですが、これにはどのような背景があるのでしょうか。

水野:HYPEは単なる投機的なトークンではなく、実際に稼働しているオンチェーンのデリバティブ取引所「Hyperliquid」を支えるアセットです。取引手数料という実需に裏付けられた収益があり、その収益がトークンの買い戻しに充てられている。ファンダメンタルズで評価できる数少ない銘柄だと考えています。

私たち自身、2016〜2017年頃から暗号資産市場を見てきましたが、いま米国を中心に、伝統金融がオンチェーンへ乗り出す動きが本格化しています。

編集部: セキュリティトークンやステーブルコインの潮流は加速していますよね。

水野: そうです。平日の日中しか動かない伝統金融の市場と、24時間365日、世界中の誰もがアクセスできるオンチェーンの市場を比べれば、長期的には金融活動がより便利な後者へ移っていくのは必然だと考えています。

そしてこの流れが続くなら、次の時代の覇権を握るのは、HYPEかどうかは別としても、PerpDEXをはじめとするオンチェーン銘柄である可能性が高いと見ています。

編集部: その有力候補の一つがHYPEだと。ただ、こうしたオンチェーン銘柄は国内ではほとんど流通していませんよね。

水野: そうなんです。日本では規制の関係で、この領域の銘柄にはほぼ触れることができません。それどころか、情報が入ってこないために、一部では詐欺や違法なプロジェクトであるかのように語られてしまうことすらあります。

利用者保護を重視する日本側の事情は理解していますし、規制そのものを批判するつもりはありません。ただ、この構造のままだと、本当に良い銘柄が日本に入ってくるのが世界から2周も3周も遅れてしまう。そこに課題を感じています。

私たちはHYPEに高い将来性を感じています。だからこそ、少しでも早く日本の方々に知ってもらうきっかけをつくりたい。それが、レンディングという形で日本初のHYPE対応に踏み切った理由です。

今後の規制強化を見据えて

編集部:日本で初めてのHYPEに対応したレンディングサービスとのことですが、規制当局への申請などは必要となるのでしょうか。

水野: 現状のレンディング自体は、暗号資産を「モノ」として貸し借りする消費貸借の枠組みであり、暗号資産交換業のような免許を要する類型には該当しません。

とはいえ、お客様の資産をお預かりする事業だからこそ、コンプライアンスには最も慎重であるべきだと考えています。私たちも専門家の助言を受けながら、現行法に抵触しない範囲でスキームを設計・運営しています。

その上で、レンディング事業全体で見れば、今後1〜2年で確実に規制強化が進んでいくだろうと予測しています。

編集部:暗号資産の各領域で法規制が整備されているように、レンディングについても今後は規制が強化される可能性があるのですね。

そのような中で、ICHIZEN HOLDINGSがあえてレンディングに注力する理由は何でしょうか。

水野:理由は大きく2つあります。

ひとつは、最終的な目標として暗号資産のファンド組成を見据えているからです。ファンド組成では機関投資家や企業から出資を募り、ICHIZEN HOLDINGSが運用を行います。レンディング事業は、その前段として運用実績とノウハウを積み上げる位置づけです。

もうひとつは、実際に既存のレンディング事業者から「運用を任せたい」というご依頼をいただく機会が増えてきたことです。事業者の裏側で運用を担える体制があるのなら、自分たちで直接サービスを提供したほうが早い、と考えたのが直接のきっかけですね。

今後の規制強化やそれに伴うコスト上昇も織り込んだ上で、それでも取り組む価値がある領域だと判断しています。

教育コンテンツとメディア展開

編集部:HyperLendingを足がかりとして、将来的にファンド組成を目指しているのですね。レンディングサービスの地位を確立するために、今後はどのようなマーケティングやプロモーション活動を展開する計画ですか。

水野:キャンペーン等も段階的に実施していきますが、直近で一番力を入れたいのは「教育コンテンツの発信」です。

編集部:教育コンテンツですか。

水野:はい。Hyperliquidは非常に優れたプロジェクトであるにもかかわらず、国内ではまだ正確な情報が不足していたり、一部で誤解を招くようなポジショントークが発信されていたりします。

だからこそ、私たちが企業として「本当はこういうものなんだよ」という正確な知識を広めるためのコンテンツを発信したいと考えています。

編集部:自社メディアを通じて発信されるのでしょうか。

水野:はい。自社メディアの「ICHIZEN CAPITAL」や自社のYouTubeチャンネル(ICHIZEN 公式チャンネル)に加えて、Hyperliquidを体系的に学べる教育コンテンツ「ハイリキアカデミー」も展開しています。

さらに、Hyperliquidエコシステムのオンチェーンデータを日本語で確認できる分析ダッシュボード「HyperLending Analytics」も公開しました。HYPEの価格だけでなく、プロトコルが実際に稼いでいる手数料やトークンのバーン量、HYPE現物ETFへの資金流入といったファンダメンタルズのデータを、誰でも無料で見られるようにしています。

先ほどお話しした通り、この領域は「よくわからないから怪しい」と思われてしまっている面が大きい。であれば、雰囲気や又聞きではなく、オンチェーンの一次データをそのまま見てもらうのが一番早いと考えています。その上で、ファンド視点での「運用」や「HYPE」を軸にした発信を強化していく計画です。

事業を拡大し、ファンド組成へ繋げる

編集部:今後の事業展開について、教えてください。

水野:基本的にはHyperLendingなどの事業を拡大し、ファンド運用のための資産を積み上げていくことにフォーカスしています。

内製化して事業を進める方針ですが、パートナーシップの締結には非常に前向きですね。例えば、運用先を探している企業をご紹介いただく(ファンドレイジング)といった連携が考えられます。

編集部:運用を外部委託している企業が多い中、ICHIZEN HOLDINGSのように自社で一貫して対応できるのは強みになりそうですね。

水野:そうですね。国内のレンディング事業者でも、預かった資産をさらに海外の事業者に再貸し出ししているケースが多いのが実情です。

「海外のよくわからない事業者に資産を任せるのは不安だ」と感じる国内企業に対して、私たちが自社で運用機能を内製化し、国内で一貫して運用できる安心感を提供できる点は、非常に大きな価値になると考えています。

編集部:レンディング先の企業の方の顔が見える点は重要ですよね。

最後に、HyperLendingに関心を持っている読者へメッセージをお願いします。

水野:個人の方で、中長期的に暗号資産の未来を信じているものの、短期売買で消耗したくないという方には、保有資産を活用する選択肢の一つとして、ぜひHyperLendingをご検討いただければと思います。

法人の方に関しても、財務戦略の多角化を検討している企業や、過去に購入した暗号資産を持て余している企業がいらっしゃれば、会計処理や監査対応などの初期段階から手厚くサポートできますので、ぜひお気軽にご相談ください。

編集部: 本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えて

暗号資産市場のボラティリティに翻弄されることなく、着実に「運用」と「実需」を見据えるICHIZEN HOLDINGSの姿勢が非常に印象的なインタビューでした。

特に、株主承認の壁や会計処理といった法人のリアルな課題に寄り添い、カスタマイズされた伴走支援を行っている点は、市場が成熟していく過程で必要不可欠なアプローチだと言えます。

また、「とりあえず買えば上がる」時代の終焉を冷静に見据えながら、良質な銘柄が日本に届くまでの構造的な遅れに対して、国内初の「HYPE」対応や教育コンテンツ、オンチェーン分析ツールという形で自ら打ち手を講じている点に、同社の一貫した戦略性が伺えた。

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