ヴィタリック、清算不要の「指数連動型合成資産」設計案を公開

清算不要の合成資産設計を提案

イーサリアム(Ethereum)共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、清算を必要としない新たな合成資産の設計案をイーサリアムリサーチ(Ethereum Research)で6月2日に公開した。

同氏は今回、アルゴリズム型ステーブルコインや合成資産が抱える「清算」と「リアルタイムオラクル」への依存を課題として挙げ、それらを不要にする代替設計を提案している。

ブテリン氏が問題視しているのは、ETHのみを担保として米ドルや消費者物価指数(CPI)などの価格指数に連動する資産を作る際の仕組みだ。

従来の清算ベースの合成資産やアルゴリズム型ステーブルコインでは、利用者がETHなどを担保として預け、その担保を裏付けに価格連動資産を発行する。この仕組みでは、システム内に担保と債務が存在する。しかし、担保として預けられたETHの価格が大きく下落すると、発行済み資産を十分に支えられなくなる可能性がある。そのため、多くのプロトコルでは担保価値が一定水準を下回った際に担保を強制的に売却する「清算」を行っている。

また、こうした清算を行うためには、ETH価格をリアルタイムで取得する価格オラクルが必要になる。オラクルとは、ブロックチェーン外部の価格情報をオンチェーンへ伝える仕組みだ。ブテリン氏は、リアルタイムオラクルへの依存こそが現在の設計の弱点だと指摘した。同氏によると、リアルタイムオラクルは限られた主体による価格監視に依存しやすく、安全性の確保が難しいという。

そこで同氏は、合成資産の基礎構造を「債務」ではなく「オプション」に置き換える案を示した。同提案では、1ETHを2種類の権利に分割する。利用者は将来のETHに対する異なる権利を保有し、満期日に価格指数に応じてETHが配分される仕組みだ。

ブテリン氏は、この構造では権利の合計が常に1ETHとなるため、従来型のような担保不足が発生せず、清算を不要にできると説明している。

また同氏は、この仕組みが既存の予測市場に近い性質を持つ点にも言及した。予測市場向けシステムとオラクルを共有できる可能性があり、結果としてオラクルの安全性向上につながるとの見方を示している。

なお、今回の同氏の提案では、USD/ETH価格だけでなく、消費者物価指数(CPI)や商品価格、賃料指数なども対象例として挙げられている。

ブテリン氏は今年2月にも、予測市場を投機ではなくヘッジ用途へ活用する構想を示していた。その中では、生活費や事業コストに応じた価格指数へのエクスポージャーを保有することで、将来の支出リスクを管理する考え方に言及している。

同氏は2月に示した構想と今回の研究との関係について明示していない。ただし、価格指数へのエクスポージャーをオンチェーンで実現する手法を検討している点では、両者に共通する問題意識が見られる。

従来型の清算ベースの合成資産との違い

ブテリン氏は今回の設計が、通常の会計上のステーブルコインと同じものではないことも説明している。

従来型の清算ベースの合成資産では、担保価値が一定水準を下回るとプロトコルが強制清算を実行する。一方、今回の設計では利用者自身が保有するポジションを調整することで、望ましい価格エクスポージャーを維持することを想定している。

ブテリン氏によると、価格が大きく動いた際には、利用者が保有するオプションを別の条件のオプションへ入れ替える「リバランス」が必要になるという。同氏は、この方式では価格が大きく変動した場合でも突然の強制清算は発生せず、代わりに目指す価格水準から徐々に乖離していく構造になると説明している。

ブテリン氏は、この構造によって利用者自身がリバランスのタイミングを選べるようになると説明している。また、リバランスの判断をプロトコルではなく利用者側に委ねることで、MEV(最大抽出可能価値)リスクの低減や、単一オラクルへの依存緩和につながる可能性があるとも述べている。

一方で、利用者自身がリバランスを行う必要があるため、頻繁にポジションを調整すれば短期的な価格変動の影響を受けやすくなる。また、リバランス時のスリッページによってコストが増加する可能性もあるとのことだ。

なおブテリン氏は、この設計は米ドルのような価値をそのまま再現する「会計上のステーブルコイン」には使いにくい一方、将来の支出に対する価格安定性を得るための仕組みとしては有用になり得るとの見方を示している。

参考:イーサリアムリサーチ
画像:大津賀(あたらしい経済)

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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