
第三者発行モデルに波紋
米証券取引委員会(SEC)が、トークン化株式に関する「イノベーション免除(Innovation Exemption)」フレームワークの公表を延期したと「ブルームバーグ(Bloomberg)」が5月22日に報じた。
SECは、当初5月18日週にも同フレームワークを公表する予定だったとされる。同免除は、上場企業の株式を参照するデジタルトークンを、分散型の暗号資産プラットフォーム上で24時間365日取引できるようにする新たな規制経路を創設するものだ。
特に注目されているのは、アップル(Apple)やエヌビディア(Nvidia)、テスラ(Tesla)といった株式を参照するトークンについて、発行企業自身ではなく第三者による発行・取引を認める方向でSEC内で検討が進められていたと報じられている点だ。つまり、外部事業者が既存株式のデジタル表現としてブロックチェーン上のトークンを発行し、DeFi(分散型金融)プラットフォームに上場できる可能性が浮上していた。
これらのトークンには、議決権や配当といった従来の株主権利が付与されない可能性がある。一方でSECは、プラットフォーム側にそうした権利の提供を求め、応じなければ上場廃止リスクを課す案も検討しているとされる。
同免除は、アトキンス委員長が推進する「プロジェクト・クリプト(Project Crypto)」イニシアティブの一環で、トランプ政権の親暗号資産路線に沿った規制緩和を目指すものだ。
延期の背景には、ナスダックやシーボ(Cboe)、CMEグループなどを会員に持つ世界取引所連合(WFE)をはじめとする伝統的な市場参加者からの強い反発がある。
WFEは2025年11月にSECへ宛てた書簡の中で、こうした免除が投資家保護を希薄化し、伝統的な取引所には認められない規制上の抜け道を暗号資産取引所に与えることで競争を歪めると警告していた。
また、コンプライアンス体制が整う前にトークン化株式へ正当性を与えることは、「米国市場に対して否定的な、場合によっては深刻な影響をもたらすことは疑いない」と強く牽制している。
一方、ナスダックは2026年3月、SECから独自のトークン化証券提案について承認を取得している。同社は米証券保管振替機関(DTCC)のエンタープライズブロックチェーン基盤を活用し、完全な株主権利を維持したまま、取引所内で完結するモデルを追求している。
これに対し、今回のイノベーション免除が想定するモデルは、既存市場と並行して暗号資産ネイティブな市場を公認するものだ。同一株式に対して複数の第三者トークンが流通することで、流動性が分散するリスクも指摘されている。
SEC委員のヘスター・パース(Hester Peirce)氏はX上で、今回の議論について、「検討中の、トークン化されたNMS株式のオンチェーン取引に関するイノベーション免除について関心が集まることは理解できるが、誇張された反応には同意しない。私は当初から、この制度は限定的な範囲にとどまり、投資家が現在の二次市場で購入できる同一の原資産エクイティ証券のデジタル表現のみの取引を促進するものになると想定してきた。合成商品ではない」とコメントした。
パース委員の発言は、一部で懸念されているような合成株式市場ではなく、既存証券のデジタル表現を前提とした制度設計を想定していることを示唆するものとみられる。
SECが最終的にどのような形でフレームワークを公表するかは現時点で不明だ。
I appreciate the interest in–but not the hyperbole about–the contemplated innovation exemption for the onchain trading of tokenized NMS stock. Keep in mind: I’ve always expected that it’d be limited in scope & would facilitate trading only of digital representations of the same…
— Hester Peirce (@HesterPeirce) May 21, 2026
参考:報道
画像:Reuters
関連ニュース
- 米SEC、第三者発行の株式連動トークンの制度整備を検討か=報道
- 暗号資産企業の株式トークン販売巡る米SECの緩和措置案、取引所団体がリスク指摘
- 米国と英国、デジタル資産の国際ルールを再定義するためのタスクフォース結成
- 米SECとCFTC、規制調和に向けた合同円卓会議を開催へ
- 米SECが「プロジェクト・クリプト」開始。現代型規制に転換へ
参照元:ニュース – あたらしい経済

コメント