
原油価格への影響力拡大で警戒感
世界最大の先物取引所であるCMEグループと、ニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange:NYSE)運営のインターコンチネンタル・エクスチェンジ(Intercontinental Exchange:ICE)が、暗号資産(仮想通貨)デリバティブプラットフォーム「ハイパーリキッド(Hyperliquid)」への規制強化を米政府に求めているようだ。「ブルームバーグ(Bloomberg)」が5月15日に報じた。
ハイパーリキッドは、独自のレイヤー1ブロックチェーン上で、パーペチュアルフューチャーズ(無期限先物)と現物取引のオンチェーン・オーダーブックを提供する分散型取引基盤。2023年、元ハドソンリバートレーディング(Hudson River Trading)のクオンツトレーダーであるジェフ・ヤン(Jeff Yan)氏らによって共同創業された。
同プラットフォームが提供する無期限先物は満期日が存在しないため、実物決済やロールオーバーが不要で、投機取引に特化した設計となっている。また、必要証拠金も従来の先物市場より低く設定されており、個人投資家でも参加しやすい点が特徴だ。
CMEとICEが米商品先物取引委員会(CFTC)や議会関係者に対して問題視しているのは、ハイパーリキッドの匿名性だ。ユーザーは暗号資産ウォレットのみで取引が可能で、本人確認(KYC)は不要。両社は、こうした仕組みによりインサイダーによる相場操縦や、制裁逃れを目的とした利用につながる可能性があると主張している。
ICEの先物部門幹部トラビュー・ブランド(Trabue Bland)氏は、市場価格の形成に影響を与え得るものが、誰の監督も受けていない状態にあることを問題視している。ハイパーリキッドのようなプラットフォームが実質的に取引所として機能しており、他の取引所と同様に登録・規制されるべきだと指摘している。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長も5月初旬の会合で、「ハイパーリキッドが登録市場におけるスポット価格や先物価格へ影響を及ぼす可能性がある」と発言しており、規制当局側も注視を強めている。
これに対し、ハイパーリキッド側は透明性の高さを強調している。同プラットフォームのスポークスマンであるジョージ・ゴドサル(George Godsal)氏は、「すべての取引、清算、資金調達支払いはパブリックに検証可能であり、従来型取引所にはない透明性を実現している」と説明している。
またハイパーリキッドは、単なる暗号資産デリバティブ市場にとどまらず、既存金融市場にも影響を与え始めている。
ハイパーリキッドは24時間365日稼働しており、米市場が休場している時間帯でも価格形成が続くため、週明け相場の先行指標として利用されている状況がある。
4月5日には、トランプ大統領によるイラン関連発言を受け、グッドフライデーで米市場が閉鎖されていた中、ハイパーリキッド上のブレント原油価格が109ドル台から111.56ドルまで上昇。その後の月曜日、従来型先物市場の始値は約110ドルとなり、ハイパーリキッドの値動きが先行していた格好となった。
調査会社ブロックワークス(Blockworks)によれば、ハイパーリキッドの最終価格と従来市場の始値との乖離は、一時4.9ベーシスポイント程度にまで縮小していたという。
シカゴの高速取引会社DRW創業者のドン・ウィルソン(Don Wilson)氏は、「従来型取引所は24時間取引へ移行せざるを得なくなるだろう」と指摘。同社では海外拠点の社員を通じてハイパーリキッドを利用しているという。
実際、CMEは5月下旬にも24時間対応の暗号資産先物取引の導入を予定しており、既存取引所側にも変化が広がっている。
またハイパーリキッドは近年、暗号資産以外の伝統金融アセットへの展開も進めている。
今年3月には、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P DJI)が、RWA(実世界資産)関連デリバティブを提供する「trade.xyz」へ「S&P500」指数のライセンスを付与。trade.xyzはハイパーリキッド上で、S&P500に連動する無期限デリバティブ市場の提供を開始した。
このプロダクトは、S&P500を対象とした初の公式ライセンス付き無期限デリバティブとされ、24時間365日オンチェーンで同指数へのエクスポージャーを取得できる点が特徴だ。これにより、分散型プラットフォーム上でS&P500に対するロング・ショート双方のレバレッジ取引が可能となった。
S&P DJIは、この取り組みについて「デジタル取引環境へのベンチマーク提供拡大」と位置付けており、伝統金融で利用されてきた主要指数がオンチェーン市場へ拡張され始めていることを示す事例として注目を集めた。
ヤン氏も当時、「DeFiへのグローバルアクセスと、24時間稼働するパーペチュアル市場による価格発見を示すものだ」とコメントしていた。
なお、ハイパーリキッド関連団体「Hyperliquid Policy Center」は、米規制当局と協議を進めながら、オンチェーンデリバティブ市場向けの規制枠組み整備を求めている。同団体は、CMEやICEによる懸念について「根拠がない」と反論している。
CMEとICEはいずれも年間50億ドル超の収益を誇るが、ハイパーリキッドは年間収益が10億ドル規模に達するペースで成長しているとされる。既存取引所が規制強化を求める一方で、オンチェーン型デリバティブ市場の存在感は急速に高まっているようだ。
参考:報道
画像:PIXTA
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参照元:ニュース – あたらしい経済

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