
この記事の要点
- イーサリアム財団、開発合宿でガスリミット200M引き上げ合意を発表
- 大型アップグレードでL1処理能力拡大、DeFiや決済の処理量増加へ
ETH処理能力大幅拡大へ、ガスリミット200M合意
イーサリアム(ETH)財団は2026年5月2日、北極圏のスバールバル諸島ロングイェールビュンで開催された開発者合宿「ソルドグン・インターオプ」の成果を公式ブログで公開しました。
公式ブログによると、次期大型アップグレード「グラムステルダム」の実装後に、ガスリミット(1ブロックあたりの処理上限)の下限を200Mへ引き上げる水準で合意に達したことが確認されています。
合宿には100名超のコアコントリビューターが参加し、ガスリミット200Mの合意に加え、ePBS(ブロック生成の役割分担を効率化する仕組み)の外部ビルダーを含む安定稼働、EIP-8037(ガス料金の再設定提案)の再価格設定数値の確定という3つの目標がすべて達成されています。
ガスリミット200Mが実現すれば、現在イーサリアムのL1処理がボトルネックとなっているDeFi(分散型金融)・決済・アプリケーションの各領域で、1ブロックあたりのトランザクション処理量が大幅に拡大する見通しです。
3層移行ロードマップを公開
ガスリミット200Mを支える3つの技術
ePBSとEIP-8037で制約を解消
現在のイーサリアムL1では、ガスリミットの引き上げがブロックの肥大化やバリデーターへの負荷増大と常にトレードオフの関係にあり、慎重な設計が求められてきました。
公式ブログによれば、グラムステルダムではこの問題に対し、ブロック構築・ペイロード公開・アテステーション(検証者による承認処理)に明確な締め切りを設けるePBSの導入が進められています。
この仕組みにより、ブロック生成プロセス全体のタイミングが整理され、実行に割り当てられる時間が構造的に確保されることで、ガスリミット引き上げの余裕が生まれるといいます。
今回の合宿では、EIP-8037によるオペコード(処理命令の単位)の再価格設定も最終調整が完了しており、ステート生成コスト(データ書き込みにかかる手数料)がスループット(単位時間あたりの処理量)拡大に応じて制御される仕組みが整備されています。
これらの設計を検証するため、ブロックアクセスリスト(読み書き対象の事前宣言)の仕様を盛り込んだ最新のデブネット(開発用テストネットワーク)が複数クライアント構成で安定稼働し、ガスリミット引き上げの根拠となるベンチマークデータも取得されています。
5日間の集中開発でePBSが安定稼働
こうした設計を実際に動く実装へ落とし込む作業が合宿の中心課題となり、参加チームは初日から4EL×4CL構成(実行層4種×合意層4種のクライアント組み合わせ)のデブネット起動を目標に掲げました。
しかし複数クライアント間の互換性問題が相次ぎ、安定稼働は翌火曜日にずれ込みました。その後もストレステストで顕在化したエッジケース(想定外の境界条件)の修正が継続され、週末まで改善サイクルが続いています。
中盤では全クライアント実装に共通するギャップとして、ビーコンリクエスト(ブロック提案に関わる合意層の処理要求)による無効化処理の問題が新たなテストスイートで発見されたといいます。
最終的に木曜朝にはCL(合意層)チームがePBSの安定稼働を確認し、金曜日にはEL(実行層)側のビッドパスウェイ(ブロック入札の処理経路)のデバッグも完了に至り、主要な技術課題は解消されました。
ただし、「セキュリティ設計」と「インセンティブ構造」に関わる2点は依然として論点が残っており、今後のコア開発者会議(ACD)でなお議論が続く見通しです。
次世代「ヘゴタ」の機能開発も前進
グラムステルダムの開発が佳境を迎えるなか、合宿では次世代アップグレード「ヘゴタ」向けの機能開発も並行して進められました。
ヘゴタで導入が検討されているFOCIL(取引の検閲を防ぐ仕組み)は、トランザクションの検閲耐性を高める仕組みで、ネイティブアカウント抽象化(ウォレット操作を柔軟にする機能)とともに開発が前進しています。
インフラ面では、イーサリアム財団のEthPandaOpsチームがエージェント型ワークフローを支援する「ethIQ」とパンダMCPサーバーを提供しました。
プロトコルサポートチームも全成果物の一元管理サイト「soldogn.xyz」を運営しており、開発体制の整備が同時に進んでいます。
イーサリアムの次の方向性
L1回帰が加速、ENSもL2開発を中止
こうしたL1強化の動きは、イーサリアムのスケーリング戦略の転換と連動しています。
共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は2026年2月、「L2をイーサリアムのシャードとみなす構想は現状に適さない」と表明しており、L1自体の処理能力を高める方向へ議論の重心が移りつつあります。
実際にENS(イーサリアム・ネーム・サービス)は同月、独自L2「Namechain」の開発を中止し、L1上でのサービス展開に回帰する方針を示しました。
グラムステルダムの正式な実装スケジュールはまだ公表されていないものの、今回の合宿で主要技術課題の大半が解決されたことで、開発は次のフェーズへ進む段階に入っています。
RWA(現実資産)トークン化やDeFiの規模が拡大するなか、ガスリミット200Mの実現はエンドユーザーの手数料水準にも影響を与えるとみられ、L1強化の進展に関心が集まっています。
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Source:イーサリアム財団公式ブログ
サムネイル:AIによる生成画像






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