
銀行級の機密性とコンプライアンスを両立
XRPレジャー(XRPL)を支援する非営利団体XRPLコモンズ(XRPL Commons)が、ゼロ知識(ZK)インフラプロバイダーのバウンドレス(Boundless)と共同で開発したZK証明のネイティブ実装をXRPLに導入したと4月14日に発表した。
これによりXRPLは「プログラマブルプライバシーがネイティブに組み込まれた初のパブリックブロックチェーン」となったとのこと。発表はパリ・ブロックチェーンウィーク期間中のXRPL Zone Parisにて行われた。
パブリックブロックチェーン上の取引は誰でも閲覧できる。残高、取引相手、タイミング、運用戦略まですべてがブロックエクスプローラーで確認可能だ。これは実際の資金を動かす銀行や機関投資家にとって、致命的な障壁だった。競合他社に取引戦略が筒抜けになるうえ、クロスボーダー決済やOTC取引では取引相手や金額の機密性が不可欠だからだ。バウンドレスはこれを「透明性の税(Transparency Tax)」と呼んでおり、これがパブリックブロックチェーンへの機関投資家参入を阻む最大の壁となってきた。
バウンドレスのエンジニアリング担当バイスプレジデント(VP of Engineering)であるエミリアーノ・ボナッシ(Emiliano Bonassi)氏によれば、ステーブルコイン決済からDeFi(分散型金融)フローに至るまで、ZK証明と暗号学的アテステーションを用いることで、制裁スクリーニングやKYC/KYT/KYBといったコンプライアンス処理を行いながら、開示先を制御できるという。選択的開示とロールベースのアクセス管理により、必要な相手にのみ情報を示す設計となっている。
想定されるユースケースは幅広い。国際間のB2B決済では金額・取引相手・タイミングを非公開にしたまま決済が可能で、RLUSD・USDC・USDTといった主要ステーブルコインにも対応する。資金・資本管理ではOTCポジションや企業間送金において取引戦略を外部に露出せずに実行できる。DEX(分散型取引所)や貸出活動ではポジションをMEVボットやフロントランナーから保護しながらDeFiプロトコルを利用できる。さらにzkパスポート(zkPassport)を活用し、国名を含む個人情報を一切開示せずに「制裁対象国のパスポートでない」ことを証明するプライベート本人確認も可能になる。
バウンドレスとXRPLコモンズは過去6ヶ月にわたって共同開発を進めてきた。まずバウンドレスがXRPL上にRISC-VベースのZK証明検証機をネイティブデプロイし、続いてプログラマブルな解放条件を持つ「Smart Escrow」トランザクション型を定義。現在は開発者向けツールキット、テストネット環境、オープンソースのサンプルコードが一般公開されている。
今後のロードマップとして、現在開発中の「スマート・エスクロー(Smart Escrow)」では資金移動の前にZK証明の検証を必須とする仕組みの実装を目指す。続く「スマート・ボールト(Smart Vault)」ではKYCや制裁スクリーニングをプロトコルレベルに組み込んだ完全なプライベート金融エコシステムの構築を目指す。信頼できる仲介者やオフチェーンの回避策を一切必要とせず、プライバシーとコンプライアンスをプロトコル層に直接組み込む設計だ。
XRPLにはすでに日本のSBIホールディングス、UAEのザンド・バンク(Zand Bank)、英国のアーカックス(Archax)、米国のグッゲンハイム・トレジャリー・サービシズ(Guggenheim Treasury Services)などの機関が参加している。なおXRPLの主要開発貢献者であるリップルは2017年以降、XRPLエコシステムの発展に向けた施策に累計5億5000万ドル(約873億8,175万円)超を投下してきたとしている。
XRPLコモンズのコーポレートアダプションディレクターであるオデリア・トルテマン(Odelia Torteman)氏は「XRPLは常に機関向け金融のために構築されてきた。バウンドレスにより、これまで不可能だった企業向けユースケースを解放する」と述べている。
パブリックブロックチェーンの機関向けプライバシー競争は各社で加速しており、3月には暗号技術企業ザマ(Zama)が完全準同型暗号(FHE)スタックをトークン化プラットフォームT-REXと統合。zkSyncもイーサリアム上で機関向けプライベート実行環境「Prividium」を展開している。トークン化実物資産(RWA)市場はRWA.xyzのデータによれば、2026年4月時点で292億5000万ドル(約4兆6,475億円)に達し、1ヶ月で7.9%拡大するなか、ブロックチェーンのプライバシー機能はオプションではなく基盤インフラとして位置づけられつつある。
Confidential, compliant finance is now native to XRPL.
— Boundless (@boundless_xyz) April 14, 2026
Public blockchains have always had one problem: all transaction data is visible.
Boundless is launching the first ZK verifier on XRPL with @xrpl_commons, making them the first public blockchain with programmable privacy. pic.twitter.com/IrP5XZroeC
画像:PIXTA
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参照元:ニュース – あたらしい経済


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