
この記事の要点
- FRBが2026年3月19日に銀行資本規制の改革案を公表
- 仮想通貨カストディの資本要件見直しで規制が転換点へ
- 1,250%リスクウェイト前提の見直しで銀行参入障壁に変化
- 大手銀行のBTC保管参入拡大で市場構造に影響の可能性
仮想通貨カストディ規制が転換点、FRBが改革案を公表
FRB(米連邦準備制度理事会)は2026年3月19日、銀行資本規制の枠組みを見直す3つの改革提案を公表しました。
今回の見直しでは、仮想通貨(暗号資産)カストディ業務に適用されてきた厳格な資本要件の前提が再設計される見通しで、これまで大手銀行の参入を阻んできた構造に大きく踏み込む内容となっています。
従来のバーゼルSCO60基準では、一部デジタル資産に1,250%のリスクウェイトが課され、銀行は保有額と同額の自己資本を積む必要がありました。この仕組みが、ビットコイン(BTC)などのカストディ事業の収益性を大きく制限してきたと指摘されています。
提案が採択された場合、カテゴリーIおよびIIに分類される大手銀行のCET1(普通株式等Tier1)資本要件は累積で4.8%引き下げられる見込みで、資本余力を得た大手行がデジタル資産カストディを新たな事業領域として展開できる環境が整うとしています。
FRBは内部モデルに基づく「先進的アプローチ」を廃止し全資産クラスに統一した「拡張リスクベースアプローチ」へ一本化する方向性を示しており、機関投資家向けビットコイン保管サービスの本格普及を左右する政策的分岐点として今後の審議が注目されています。
BTCに課された「1,250%リスク加重」
バーゼルIIIとビットコイン、銀行参入を阻んできた構造
業界が撤廃を求めてきた1,250%ルールの正体
バーゼルIIIは2008年の金融危機を受けて国際決済銀行(BIS)が策定した国際的な銀行規制の枠組みで、米国では「バーゼルIIIエンドゲーム」として2023年以降に段階的な国内実装が検討されてきました。
その過程で、デジタル資産に対する1,250%のリスクウェイト適用が銀行業界から強い批判を集め、規制見直しを求める声は機関投資家側からも継続的に上がっていました。
ビットコイン政策研究所もFRBに対してこの水準の撤廃を正式に要求するなど、大手金融機関を含む幅広い主体から制度的な見直しを求める声が積み重なっていたと指摘されています。
FRBが示した3つの改革案
こうした背景のもと、FRBは今回の改革案を公表しました。ボードメモは14ページにわたり、「オペレーショナルリスクの算定方法」に加え、「ストレステストの修正」や「GSIBサーチャージ(グローバルなシステム上重要な銀行への追加資本賦課)の見直し」も盛り込まれています。
GSIBサーチャージについては経済成長に連動した指数化方式が採用されており、銀行が保有するビットコインの市場価値の上昇のみを理由にサーチャージが引き上げられる「ブラケットクリープ」を防ぐ仕組みとなっています。
こうした設計の根拠として、FRBのスタッフは提案の中で「旧来の枠組みの一部要素が従来型銀行業務に対して過大な要件をもたらしていた」と言及し、カストディサービスをその代表例として名指ししています。
FRBのスタッフは今回の提案を通じて、デジタル資産カストディを一般的な銀行業務の延長として扱う規制体系への移行を明確に示しており、長年業界が求めてきた制度的な合理化が初めて具体案として提示された形となっています。
BTC保管コスト低下、機関投資家が受ける恩恵
資本要件の引き下げが実現すれば、これまで資本上限に近い水準で運営されてきた大手行がデジタル資産カストディを新たな事業ラインとして展開できる余地が生まれます。
参入行が増えることで競争が激化し、機関投資家がカストディサービスを利用する際の手数料が低下するとみられています。
先進的アプローチの廃止により銀行が自社モデルで資本コストを算定する裁量が制限され、拡張リスクベースアプローチへの一本化によって銀行間のコスト計算の透明性が高まり、企業の財務担当者が複数行からの見積もりを比較しやすくなる見通しです。
ただし今回公表されたのはあくまで提案であり、最終規則として効力を持つには正式なパブリックコメント手続きと最終採択を経る必要があります。
今回の提案は、大手銀行がデジタル資産カストディを通常の事業領域として扱える制度的基盤を初めて示したものとして位置づけられており、採択の行方が機関投資家市場の構造変化を左右する分岐点として注目されています。
米国規制関連の注目記事はこちら
Source:FRBメモ
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





コメント