決済業界に迫る変革、ステーブルコインとAIが主要トレンドに|BCGレポート

BCG「ステーブルコインとAIが次の成長を牽引」

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、決済業界に関する最新レポート「Global Payments Report 2025」を公表しました。

BCGはこのレポートで「ステーブルコインやエージェント型AI、リアルタイムのクロスボーダー取引(即時国際送金)などの技術が決済業界を再構築する主要トレンドになる」との見解を示しています。

同社の調査によると、世界の決済収益は2024年時点の1.9兆ドル(約280兆円)から2029年には2兆4,000億ドル(約354兆円)規模に達する見通しです。

規模は拡大する一方で、年平均成長率は従来の約9%から今後は約4%へと減速すると見込まれています。しかし、同社は、「新興テクノロジーの普及により、決済業界は『変革期』に入りつつあり、次の成長フェーズが形成される可能性がある」と指摘しました。

こうした変革期を背景に、BCGはエージェント型AIやデジタル通貨、フィンテック新興企業の台頭が、次の成長フェーズを牽引すると分析しています。

加えて、同レポートでは、決済業界を再定義する5つの構造的要因を提示しており、その中にはエージェント型AIや米ドル連動型ステーブルコインの普及なども含まれています。

こうした要因の台頭は、銀行やノンバンクに新たなビジネス機会をもたらす可能性があるとBCGは指摘しています。

ステーブルコイン利用拡大と金融機関の対応

市場拡大と利用分布が示す課題と可能性

BCGによると、ステーブルコイン市場の年間取引高は26兆ドル(約3,830兆円)に達しています。しかし、その大部分は仮想通貨市場での資金移動に使われており、実社会での支払いに利用される割合はわずか1%にとどまります。

一方で、規制環境の整備が進む中、米ドル連動型ステーブルコインは実需での利用も徐々に拡大しており、2024年時点で市場規模は約2,100億ドル(約30兆円)に達しています。

金融機関に求められるステーブルコイン戦略

このような市場拡大と実需での利用増加を背景に、銀行や決済サービス事業者は、ステーブルコインをどのように事業戦略に組み込むかが課題となっています。

こうした状況を踏まえ、BCGは戦略オプションの一つとして、自社でデジタル資産のカストディ(保管管理)事業に参入することを提案しています。

さらに、ステーブルコインや代替となるデジタル預金の発行、普及促進のためのコンソーシアム形成、あるいは自社の決済インフラを他社に提供するモデルに注力することも提案されています。

民間企業による国際決済の具体事例

すでに民間企業でも国際取引における決済手段としてステーブルコインを活用する動きがみられています。

宇宙開発企業SpaceX(スペースエックス)傘下の衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」は、新興国からの利用料をステーブルコイン経由で受け付けました。

Starlinkは、受け取ったステーブルコインを米ドルに換金することで、為替リスクを低減する仕組みを導入しています。

このほか、米決済大手PayPal(ペイパル)は自社ステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」を発行し、Visaも送金分野でステーブルコインの活用を試験的に導入しています。

決済インフラに浸透するAIエージェントの進化

Googleが公開した決済用AIプロトコル「AP2」

決済領域でもAIエージェント(自律型人工知能システム)の存在感が高まっています。高度なAIはユーザーに代わって複雑な意思決定や計画立案を行い、自動的に支払いを実行することも可能になりつつあります。

米Google(グーグル)は2025年9月、AIエージェント同士が人間の介在なしに安全に支払いを行える共通プロトコル「Agent Payments Protocol(AP2)」を公開しました。

オープンソース型のこの決済基盤には、多くのパートナー企業が参画しており、業界全体での利用拡大が期待されています。

こうしたAI決済技術の普及に伴い、BCGの調査では「米国の消費者の81%が今後ショッピングでAIエージェントを活用する」とされており、数年内には約1兆ドル(約147兆円)規模の消費支出がAIの支援を受けて行われる可能性があると予測しています。

個人から企業まで広がるAIエージェントの活用

エージェント型AIによる自動化は、個人の家計管理や請求支払い、企業の経理処理や不正検知などさまざまな分野で活用が見込まれています。

こうした中、サービス提供者側でも顧客対応や内部管理の効率化にAIを取り入れる動きが進んでいます。

こうした取り組みの拡大について、BCGの決済・フィンテック部門グローバル責任者インダープリート・バトラ氏は次のように述べています。

これは業界にとって転換点です。従来の成長要因は力を失いつつありますが、エージェントシステムやプログラマブルマネー、フィンテックのイノベーションといった新たな原動力が急速に浮上しています。

これらの変化にいま対応するプレイヤーが、今後の10年を牽引するでしょう。

米国主導で広がるステーブルコイン利用基盤

米国連邦政府による法整備と州独自コインの動き

7月には、米連邦政府がステーブルコインの発行・規制枠組みを定めた「米国ステーブルコイン法(GENIUS法)」を成立させ、法整備が進む中で州や企業の取り組みが活発化しています。

これを受けてワイオミング州は、米国初となる州独自ステーブルコイン「フロンティア(FRNT)」をローンチしました。州政府が自らブロックチェーンを活用して決済インフラを構築する画期的な試みとして注目を集めています。

Visa Directを活用した新たな送金スキーム

こうした法整備を背景に、企業によるステーブルコインを活用した国際送金の取り組みも増えています。

米決済大手Visa(ビザ)は9月30日、リアルタイム送金サービス「Visa Direct」を通じてステーブルコインを活用した国際送金の実証実験を開始したと発表しました。

このスキームでは、企業が事前にCircle(サークル)社のステーブルコイン「USDコイン(USDC)」や「Euro Coin(EURC)」を送金原資としてVisaに預託し、即時に資金移動ができる仕組みです。これにより、送金の高速化と資金効率の向上が期待されています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=円)

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Source:BCGレポート
サムネイル:AIによる生成画像

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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