イーサリアム、大型アップグレード「Pectra」のメインネット実装完了

イーサリアムのPectraがメインネットに実装

イーサリアム(Ethereum)の大型アップグレード「ペクトラ(Pectra)」のメインネット実装が、5月7日10:05:11(UTC)、日本時間で同日19:05:11に完了した。

同時刻はエポック番号364032、スロット番号は11,649,024にあたる。

なおエポックとは、イーサリアムで用いられる時間単位のこと。またスロットは12秒ごとに区切られた時間単位のこと。32個のスロットを1つの区切りとする単位をエポックと呼ぶ。各スロットごとにブロックを提案する単一のバリデータが選ばれ、ブロックを1つ生成する。

「ペクトラ」は、イーサリアムの実行レイヤー(execution layer)のハードフォーク「Prague(プラハ)」と合意レイヤー(consensus layer)のアップグレード「Electra(エレクトラ)」を同時に行うもので、2024年3月に実施された「デンクン(Dencun)」に続くアップグレードとなる。

今回のアップグレードでは、過去最大数となる11件のEIP(イーサリアム改善提案)が導入されている(下記参照)。主にユーザーエクスペリエンス(UX)の向上やステーキングの改善、レイヤー2のスケーリング強化などの改修が行われた。

「ペクトラ」の主なアップグレードとして「EIP-7702」と「EIP-7251」の2つの実装がある。

「EIP-7702」は、イーサリアムの共同創業者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が提案したウォレットのユーザー体験を向上させるアップグレードだ。これにより通常のアカウントとして利用されているEOA(外部所有アカウント)を、一時的にスマートコントラクトとして扱える仕組みを導入し、既存のスマートコントラクトに追加の実装を行わずにEOAに様々な機能を導入可能になる。

例としては、ユーザーの通常のアカウントでの複数操作の一括実行(トランザクションのバッチ処理)や、ガス代(ETH)の代替トークン払い、ウォレットのソーシャルリカバリー機能(紛失時の復旧)などが想定されている。

「EIP-7251」は、バリデーターがステークできる最大量を32ETHから2,048ETHに増加させるというものだ。これにより32ETHよりも大きな額をステーキングしたいユーザーが、これまでのように複数のノードに分割せず、1つのノードで行えるようになる。そのため、新しいノードの構成をする必要があり、数週間の待ち時間が必要とされることもあったステーキングの開始がよりスムーズに行えるようになると予想されている。

なお現在イーサリアムコミュニティでは、次期アップグレードとなる「フサカ(Fusaka)」の実装が、今年後半に実施される計画が立てられている。

「ペクトラ」実装の各EIPの概要

  • EIP-2537:BLS12-381曲線操作のプリコンパイル 
    zkSNARKやBLS署名の検証を高速化。プライバシー保護やステーキング関連処理の効率化に貢献

  • EIP-2935:過去のブロックハッシュをステートに保存
    最大8,192ブロック分のハッシュをオンチェーンで参照可能に。ステートレスクライアントや信頼不要な検証処理が実装しやすくなる

  • EIP-6110:バリデータのデポジット情報をオンチェーン供給
    新規バリデータ登録情報を実行レイヤー上で直接処理可能に。バリデータ有効化までの遅延を削減し、クライアント間同期を簡素化

  • EIP-7002:実行レイヤーによるバリデータ退出トリガー
    スマートコントラクトなどからのバリデータ退出操作が可能に。引き出しキーだけでの柔軟な資金管理も実現

  • EIP-7251:最大有効ステーク量の引き上げ
    1バリデータあたりのステーク上限が32ETHから2,048ETHに引き上げられ、ノード運用効率を改善

  • EIP-7549:アテステーションの構造最適化
    委員会番号情報をアテステーション本体から分離。検証データの集約が可能になり、ネットワーク全体の検証コストを削減

  • EIP-7623:calldataガスコストの引き上げ
    データ保存に非効率なcalldataの利用を抑制し、ブロブ(blob:レイヤー2ネットワークなどがステートをブロードキャストする際に使用するデータ領域)ベースの保存方式への移行を促す

  • EIP-7685:EL/CL間の汎用リクエスト形式導入
    実行レイヤーと合意レイヤー間の通信形式を統一。将来の拡張に対応しやすい基盤を整備

  • EIP-7691:ブロブスループットの倍増
    1ブロックあたりのブロブ数を拡張し、L2のスループットとコスト効率を改善

  • EIP-7702:EOAのスマートアカウント化
    EOA(外部所有アカウント)でも一時的にコードを実行可能に。アカウント抽象化に近づく機能でUXが大きく向上

  • EIP-7840:ブロブ設定のEL構成ファイル化
    ブロブ関連のパラメータ(容量など)を構成ファイルで調整可能にし、クライアントの一貫性やテストの柔軟性を向上 

画像:Ethereum

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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