米SEC、「コインベースは証券法違反を知っていた」と指摘、請願への回答期日は明日に迫る

コインベースの書簡にSECが回答

米証券取引委員会(SEC)が、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)の「SECには暗号資産取引所を提訴する管轄権を持たない」という主張に対し回答を行った。SECが7月7日に裁判所へ提出した書簡にて明らかとなった。

SECの書簡

書簡にてSECはコインベースを、「熟練した法律顧問の助言を受けた数十億ドル規模の企業」と表現。

SECによれば、コインベースは業務に連邦証券法が適応される可能性があることを認識していなかったと主張。2021年にSECが同社の登録届出書を承認したことは、SECがコインベースの事業の合法性を認めたからだと唱える一方で、「上場企業になって以来、コインベースは同社のプラットフォームで取引される暗号資産が証券とみなされる可能性があり、そのため同社の行為が連邦証券法に違反する可能性があるというリスクを繰り返し株主に通知しており、同社事業に証券法が適用される可能性があることを理解していた」とSECは指摘している。

またSECはコインベースに対し、「ハウィー判例法(Howey)の下で75年以上にわたって支配的な法律を意図的に無視し」、「1933年以前の青空法(Blue Sky laws)から、投資契約を構成するものについての独自のテストを構築しようとしている」と指摘した。

なおハウィー判例法は、1946年に起きたSEC対W. J. Howey社事件の際に裁判所が「投資契約」の判断基準として定めたもの。後年「ハウィーテスト(Howey test)」と呼ばれるようになった。「ハウィーテスト」は、米国において特定の取引が、証券取引の定義の一つである「投資契約」に該当するかどうかを判定するテストである。

また青空法は、一般市民を詐欺から守るために証券の販売・ブローカー・ディーラーを規制する米国の州法だ。この青空法により全ての州は、全ての証券募集および販売、ならびに証券仲介業者および証券会社の登録が義務付けられている。

また、コインベースの「SECには暗号資産取引所を提訴する管轄権を持たない」という主張に対し、「SECは1934年に民事法執行訴訟を通じて、連邦証券法を執行する権限を連邦議会から与えられている」と主張。「SECはその設立以来、証券法違反を追求するためにその権限を行使しており、コインベース訴訟においても同じ法的執行権限を行使しているだけだ」と続けた。

コインベースの書簡について

今回SECが提出した書簡は、ニューヨーク地裁のキャサリン・ポーク・ファイラ(Katherine Polk Failla)判事にコインベースが6月28日に宛てた書簡に応答するものだ。

コインベースは書簡にて、SECのゲイリー・ゲンスラー委員長が連邦議会で「暗号資産取引所には市場規制が存在しない」と発言し、暗号資産取引所を規制する権限を付与できるのは「連邦議会のみ」だと証言していたことを報告。

またSECによるコインベースへの訴訟は、適正な手続きを踏まない裁量権の乱用だと非難した。

さらにコインベースは、株式公開のタイミングであった2年前にSEC及びユーザーに対して「徹底的に説明済」であった同社の活動に対し、SECが告発を行ったことも指摘している。

今回のSECの書簡に対し、コインベースの最高法務責任者のポール・グレワル(Paul Grewal)氏は7月8日のツイートにて、「(コインベースがSECの回答期限延長に同意したにもかかわらず)悲しいかな、SECは同じことを繰り返している」とコメント。

SECの書簡における複数の矛盾点を指摘しながら、「これらの問題の多くは、法律問題として速やかに解決できるもし、そうされるべきだ」と伝えている。

コインベースとSECの争い

昨年7月21日、コインベースはSECに対し「デジタル資産証券規制に関する規則制定を求める請願書」を提出している。なおこの請願書は、規制対象となるデジタル資産に関するガイドラインを明確に定義するようSECへ要求したものである。

6月6日に裁判所はSECに対し、請願書に応答するよう命令。これに対しSECは同月13日、請願書に応答するため、約120日の猶予を求めていた。

なおコインベースの請願書請求に対するSECの回答は、7月13日14:00(UTC)に行われる予定だ。

ちなみに回答は本来、2023年7月3日に提出される予定であったが、SECは期限延長を申請。この申請をコインベースは受け入れたため、日程が変更となっていた。

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参考:コインベースの書簡SECの書簡SEC回答期限延長申請書
デザイン:一本寿和
images:iStocks/krblokhin

参照元:ニュース – あたらしい経済

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