【NFT×日本の伝統】株式会社ワントゥーテン 代表取締役CEO 澤邊芳明氏へ取材。歌舞伎俳優 市川海老蔵氏NFTの裏側とは

この度、NFT販売プラットフォーム『ENU』を開発『ワントゥーテン NFT STORE』を開設、市川海老蔵氏とのコラボにてNFT作品の展開を行う株式会社ワントゥーテン 代表取締役CEO 澤邊芳明氏にインタビューを実施。
NFT活用事業のきっかけから事業展開する中で感じているNFTの可能性、今後の展望など、ワントゥーテン社の描くNFTへの考えを語っていただきました。

ものは豊かだが心は退屈。現代社会のあり方を問い直す。

Q: 初めに、ワントゥーテンのビジネスの詳細についてお伺いさせてください。

私たちの目的は、クリエイティビティを掛け合わせて文化との接点を作ること。それをAIやXRなどの先端テクノロジーを活用して取り組んでいる会社がワントゥーテンになります。

20世紀は大量生産、大量消費社会で安く良いものをたくさん作ることが求められました。しかし、今の時代はそうではありません。そこで、資本主義のあり方自体を問い直す必要があると考えています。

我々は20世紀の文明発展の中で、非常に快適な暮らしを手に入れました。しかし、自殺する人は依然として多く、精神的に問題を抱えている方も多い世の中ですよね。

古くはパスカルという哲学者が「人間というのはじっとしていられないから不幸を招く」といった趣旨の話をしています。人間は同じことの繰り返しの日々では精神を病んでしまうのです。

今の社会にある閉塞感の中には、「退屈」の蔓延が存在すると僕は思っています。
僕自身が事故にあって入院した際、二年半にわたる病院での生活はとても退屈でした。退屈が続くと人間は建設的なことを考えません。例えば「自分は必要とされてないんじゃないか」といったネガティブな思考に寄ってしまう。

これは一生懸命仕事に取り組んできた人が定年を迎えた時にも起こっているように感じます。僕の父親も、サラリーマンを定年退職してからひとりでパチンコをするくらいでコミュニティにも属さないまま寂しく亡くなっていった。

いま日本人の多くが、そういう状況に進んでいませんか?と思うんです。若い人でも、AIのアルゴリズムがオススメするYouTubeで動画を漁っている人は多いですよね。退屈凌ぎで人生を過ごしているような状態になっていないか?と。

日本の中で脈々と継承されてきた文化を愉しめる目や食の深みなどを味わえる能力が欠如した世の中に向かっていると思います。
ですので、我々は、人々が自分たちでは気づいていない興味の対象に、我々のエンターテインする力やクリエイティビティを掛け合わせて出会える瞬間を増やしたい、と考えています。

歌舞伎俳優 市川海老蔵氏とのコラボの裏側。なぜ歌舞伎伝統芸能とNFTか。

市川海老蔵氏
引用:https://chizaizukan.com/news/6nB2mqG8bO8QHkwEvfMTRM/ 

Q: そうした接点を作るというところで、今回の事業を始められたわけなんですね。
市川海老蔵さんとのNFTのコラボなど展開されていますが、NFT事業を始められたきっかけは何でしょうか?

もともとブロックチェーンの可能性というものに興味を持っていました。ワントゥーテンはこれまで何かを所有するということに関する事業にあまり手をつけていなかったのですが、ずっと何かないのかなと考えていたんです。
その場で消費して終わりではなく、長い時間軸で体験を保存できるものとしてNFTに目をつけました。

Q: 市川海老蔵さんとはもともと繋がりがあったのでしょうか?

私がオリンピック組織委員会のアドバイザーをしていたのですが、海老蔵さんも文化委員をやっていました。それがきっかけで5、6年前に同じイベントに登壇したんです。そこで仲良くなって、歌舞伎座での『源氏物語』のプロジェクションマッピングをワントゥーテンが担当させていただいたんです。

その『源氏物語』が歴代最高のチケット売り上げを叩き出しました。立ち見席も含め、連日完全完売という初の快挙を成し遂げたんです。
そこで、デジタル表現と歌舞伎の相性の良さを実感しましたね。
海老蔵さんと話し、今回はのリアルの舞台がない状態で先端技術を駆使したライブ作品をつくろうと意気投合しました。ライブ配信後は、単に映像配信のプラットフォームに流すのではなくて、何か違う形でこの作品をのこす方法を二人で話す中で、自然とNFT化という流れになりました。

Q: 歌舞伎界や周りからの反応はいかがでしたか?

正直思っていたほどの反響はありませんでしたね。

理由として、我々がチャレンジしていることの意図が伝わりにくいところがあったと思います。昨年の11月時点では、まだまだNFTを理解している人が少ないんだなと感じましたね。

Q: 海老蔵さんと今後の展開についてはお話しされましたか?

はい、よく話しています。今回のNFTはデジタルのライブ作品を二次的にNFT化しているある種作品のスライスなので、今後は何かの転用ではないNFTアートをつくっていきたいと話をしています。歌舞伎の発展に寄与するという視点では『隈取り』もそうですし、『歌舞伎十八番』という市川家が宗家十八の演目を題材にした作品であれば興味を持っていただける接点になるのではないか、など様々な可能性を相談しています。

NFTを使い、歌舞伎を盛り上げながら日本の文化を海外に発信していく。そんな展開にしていきたいと思っています。

『ENU(エヌ)』が提供する価値と目指す未来。

ENU
引用:https://www.1-10.com/project/enu 

Q: 今後のNFT事業の展開としては何か考えられていますか?

ワントゥーテンは現在、『ENU』というアプリを展開していて、伝統工芸を中心にモノづくりをされている方々をご支援しています。

今後、チャレンジしたいのは、伝統工芸×NFTです。
たとえば、伝統的な着物の柄や織物などは高級車の内張やホテルの内装に使われるなどそのデザイン性がいま非常に注目されています。

ゆくゆくは彼らの持つ資産である伝統工芸の技術やデザイン性を抽出して、それをNFTとして世に出してゆくお手伝いができないかと考えています。

また、実在する作品の販売とNFTの発行をペアにすることで転売時における真贋の証明や二次流通時の作家への金銭的還元も可能だと考えています。作品を所有することで、作家へのロイヤリティーを高め創作活動に貢献できるようにすることも必要だと考えています。骨董の抹茶碗などは作家の証明を、箱書で行ないます。器そのものの鑑定も大切ですが、それ以上にそれを入れる箱にどういった情報が記載されているか、誰が記載したのかが重要になります。中身ではなく、箱だけが取引されているという噂もあるぐらいです。まさしくそれはNFTのデータと同じ価値を持つ情報ですので、デジタルに置き換えることは可能だと考えています。

Q:『ENU』についてもう少し詳しく教えていただけますか。

『ENU』は伝統工芸などの価値ある日本文化のつくり手を応援するファンコミュニティコマースで、つくり手は先行販売品などを含めた自身の作品を販売できるプラットフォームです。

新型コロナウイルスの感染が拡大してすぐに始まったプロジェクトなのですが、ファンと作家の縁、作り手とデザイナーの縁など、「縁を生み出すプラットフォーム」になって欲しいという思いが込められています。
ちなみに、この名付け親は海老蔵さんなんです。

『ENU』はSNSという基本機能の中にライブコマースとサブスクリプション機能を備えています。
活用としては、つくり手が創作活動の過程をSNS機能を使って発信、またサブスクリプションに登録している人には商品を先行販売するといった活用が考えられます。

これらの機能を使えば、作品に興味を持っている人にだけ価値を提供することが可能です。

これにより、新型コロナウイルス感染拡大のようなハプニングが起きお店が開けられないといった状況でも、ファンやお店の常連へのリーチが可能になるんです。他にも、今まで作品をギャラリーに並べる年に1回の機会にしか作品が売れなかったアーティストの方も、常に顧客へリーチできるようになります。
これまでもアイドルやライバーのサービスを取り扱うプラットフォームはありましたが、純粋にものづくりをされている方々向けのプラットフォームはなかったんです。そこで、我々で作ってしまおうと始めたプロジェクトが『ENU』です。
今後もオークションの仕組みなど次々と機能を追加していく予定です。

また、『ENU』のサービスをリリースして面白いことに気付きました。日本には細分化された専門技術を持った伝統工芸作家や職人の方々が数多くいるということです。たとえば、一口に漆職人といっても、その中には漆を塗る職人から漆を塗るベースの加工を行う職人、漆を集めて皮を剥ぐ職人もいます。細かくわかれた工程のそれぞれに職人の方がいるんです。

通常は、これらの工程が全て揃って1つの完成品・商品になります。れに加えて、それぞれの工程の職人がもつ専門的な技術にも価値をつけることができる。たとえば、漆を塗る職人なら「あなたのノートパソコンを漆加工して、より耐久性やデザイン性を高めますよ」といった価値を提供することが可能です。

それぞれに素晴らしい技術を持ったクリエイター同士が掛け合わされば、もっと素晴らしい作品ができる。『ENU』をとおしてつくり手に様々な接点を作ることで、このような掛け合わせから価値が生まれるような仕掛けづくりをしていきたいと思っています。

Q: 最後に読者の方に伝えたいことをお願いします。

今はNFTやブロックチェーンのブームの最中にあると考えています。何にしてもブームは長く続かずいずれは去るもので、

その熱狂が去った時こそ本番。投機目的ではなく、日常にNFTが入ってきたときにこそ、我々がNFTをどう生かしていくか、どう社会実装してゆくかが大事になってくるでしょう。
このブロックチェーンの技術やNFTアートは本当に素晴らしいものだと確信しておりますので、ぜひ上手に社会へ生かしていきたいと思います。

〈関連URL〉
▼ワントゥーテンHP
https://www.1-10.com/

▼ENU公式サイト
https://enu.jp/

▼ワントゥーテン NFT STORE
https://nft-store.1-10.com/

▼澤邊芳明氏Twitter

■プロフィール

株式会社ワントゥーテン 代表取締役CEO

澤邊芳明

1973年東京生まれ。京都工芸繊維大学入学後、18歳の時にバイク事故に遭い、手足が一切動かない状態となる。復学後、24歳で創業。XRとAIに強みを持ち、総勢約120名からなる近未来クリエイティブカンパニー1→10(ワントゥーテン)を率いる。

東京五輪では、組織委員会アドバイザーを務め、メダルデザイン審査員や複数のスローガン作成を行った。パラスポーツとデジタルテクノロジーを組み合わせた「CYBER SPORTSプロジェクト」による社会課題解決や、日本の伝統文化をアップデートする「ジャパネスクプロジェクト」を牽引し、市川海老蔵の歌舞伎座でのイマーシブプロジェクションマッピング、元離宮二条城や旧芝離宮恩賜庭園等でのナイトイベントや、伝統工芸作家を支援するソーシャルコマースアプリENUによる地方創生にも取り組んでいる。自身の体験から、現実と仮想空間を横断し、あらゆる人々が自由に知性を拡張できる未来の実現を目指す。

▼株式会社ワントゥーテン/1→10,Inc. について
人間の永遠の課題に挑み、創造力で人類の可能性をひらく、近未来クリエイティブカンパニー。最先端のAI技術を駆使したサービス開発やプロジェクションマッピング・XRを活用した数々のプロジェクトを日本国内及び世界各国で展開する。日本の伝統に創造性とテクノロジーを掛け合わせ日本をアップデートする「ジャパネスクプロジェクト」、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせたスポーツエンタテインメント「CYBER SPORTSプロジェクト」など、先端テクノロジーによる社会課題解決をテーマに世界中の人々の知的好奇心をかき立て続ける。

▼ワントゥーテンの代表的なプロジェクト
「ドバイ万博日本館」デジタルシフト施策の企画・製作、体験型商業施設「羽田出島|DEJIMA by 1→10」、知育エンターテインメント施設「ENNICHI by 1→10」、夜の旧芝離宮恩賜庭園や名古屋城でのライトアップイベント「YAKAI by 1→10」、市川海老蔵「歌舞伎座百三十年 七月大歌舞伎 夜の部 『通し狂言 源氏物語』」でのイマーシブ(没入型)プロジェクション、サイバーパラスポーツ「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)S」・「CYBER WHEEL(サイバーウィル) X」、価値ある日本文化のつくり手を応援するファンコミュニティコマース「ENU(エヌ)」など。

参照元:NFT Media

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