返金機能付きの「次世代型資金調達システム」ダイナミックコインオファリング(DYCO)


暗号資産(仮想通貨)やトークンを発行して資金調達を行う「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」は世界中で大きな話題となりましたが、その仕組み自体は非常に不完全なものであったため、現在は徐々に時代遅れのものとなってきています。この記事では”次世代の資金調達システム”として新たに誕生した”返金機能付きのトークンセールフレームワーク”「ダイナミックコインオファリング(Dynamical Coin Offering/DYCO)」を紹介します。

個人投資家が置かれた現状とその問題点

(画像:Flickr)(画像:Flickr

個人投資家はベンチャーキャピタルのように「プロジェクトの初期段階で投資する機会」を得ることはできません。

ベンチャーキャピタルは個人投資家に投資の機会が回ってくる段階で既に莫大な利益を獲得しており、VCラウンドで参加することによって100倍〜1,000倍の利益を得ていますが、そのような利益が得られるのは「初期段階のVCラウンド」であり、IPO(*1)ではありません。
(*1)IPO:新規公開株・新規上場株式のこと。株を投資家に売り出して、証券取引所に上場し、誰でも株取引ができるようにすることを指す。

「優良企業の初期投資ラウンド」に参加することができない個人投資家に残された投資先は「VCファンド・主要なエンジェル投資家・機関投資家などが参加を拒否した投資ラウンド」となっており、残り物を任されているような状態となっています。

そのような株式は「株式投資型のクラウドファンディングプラットフォーム」などで売りに出されることがありますが、それらの株式は流動性が低い場合もあるため、場合によっては投資金の大半を失ってしまう可能性があるという問題が潜んでしました。

トークンセールがもたらした可能性と課題

2017年以前に実施された最も早い段階のトークンセールでは、多くの個人投資家が100倍〜1,000倍以上の利益を出していました。イニシャル・コイン・オファリング(ICO)として広く知られるようになったこのようなトークンセールの中には「良いもの」の「悪いもの」が存在しますが、このようなトークンセールはそれまで魅力的な投資ラウンドに参加できなかった個人投資家に「莫大な利益を生み出す機会」を与えました。

これにより、個人投資家は「売れ残った株式」と「良いもの・悪いものが混在したトークン」の両方に投資することができるようになりましたが、ここで新たな問題が表面化しました。

ICOが成功したことによって、2017年〜2018年頃には詐欺などを含む「ゴミのようなトークン」が大幅に増加しました。暗号資産やトークンが大幅に増加したことによって、そのようなトークンの中から「良いもの」を見つけ出すのは”干し草の山から1本の針を見つけること”と同じ位難しいものとなりました。

このようなICOでは「詐欺プロジェクト・無意味な製品を提供するプロジェクト・単純に無能なチームによって構成されたプロジェクト」などが資金調達に成功しましたが、当時のトークンセールは投資家への責任義務がゼロであったため、そのような資金調達がまかり通り、今や多くのトークンが”ほぼ無価値”となっています。当然無差別に投資していた個人投資家の手元には何も残っていません。

今の個人投資家に必要なものとは?

2017年〜2018年にかけて続いたICOブームの影響などもあり「トークンセール」による資金調達は今やほとんど注目されていませんが、エクイティクラウドファンディングへの関心はなぜか急上昇し続けています。

この理由の1つとしては「人々がエクイティクラウドファンディングで提供されているエクイティが低品質であるということに気付いていない」ということがあると考えられます。その結果、エクイティクラウドファンディングは新しい犠牲者を生み出し続けることになる可能性がありますが、これは「高品質なトークンオファリングへの投資に対する興味も失ってしまう」という潜在的な悪影響の可能性もはらんでいます。

この問題の原因は「人々が初期段階の投資に対する興味を失った」ということではなく「暗号資産市場に十分な資本が流入していない」ということでもありません。実際にエクイティクラウドファンディングへの関心は高まっており、現在の暗号資産時価総額もトークンセールの月間売り上げが10億ドルを超えた2018年4月の時価総額に近づいてきています。

現在の市場評価は2018年半ばのレベル近くに達しています(画像:Coingecko)現在の市場評価は2018年半ばのレベル近くに達しています(画像:Coingecko)

この問題の原因は「トークンセールが行われている現在のフレームワークが壊れている」という点にあります。
・プロジェクトチームに責任が生じない
・投資家のための安全対策が存在しない
これは、膨大な資金を調達したプロジェクトが成功しようが失敗しようがチームは何ら責任を負うことはなく、投資家に安全対策を施さない「イニシャル・エクスチェンジ・オファリング(IEO)」も同様です。

いずれにせよ、初期段階でのトークン投資欲求は見過ごされるべきではなく、むしろ”個人投資家に投資機会を提供すること”は奨励されるべきであると考えられます。現在のトークンセールフレームワークに対する市場の不満は正当な理解できるものであり合理的です。このような不満を無くすためには、新しいトークンセールフレームワークである「ダイナミックコインオファリング(Dynamical Coin Offering/DYCO)」が必要となると考えられます。

ダイナミックコインオファリング(DYCO)とは

DynamicCoinOffering-DYCO-logo

ダイナミックコインオファリング(Dynamical Coin Offering/DYCO)とは、”プロジェクトが成功しなかった場合にトークン保有者が投資金額の一部を取り戻すことができるシステム”として機能する「初期段階のトークン投資機会」であり、投資家を保護するために流通市場で”トークン価格の下限”を設定している資金調達方法です。

当然”トークン価格の上限”には制限はかけられておらず、”トークン価格の下限”を設定することによって投資家保護を図っています。

DYCOフレームワークは、クラウドファンディングの今後にとって非常に重要な開発でもあります。現在はトークンセール向けに設計されていますが、このメカニズムはエクイティクラウドファンディングなどといった実際のビジネスでも応用・拡張可能です。

ダイナミックコインオファリング(DYCO)の仕組み

ダイナミックコインオファリング(Dynamical Coin Offering/DYCO)では「返金機能付きのユーティリティトークン」が発行されます。

DYCOで調達された資金の80%は投資家の人々が「トークンセール後のプロジェクト進捗」や「将来の展望」などに不満を感じた際にすべての所有者のトークンを買い戻せるように保管されているため、投資家の人々は最悪の場合でもトークンを売却することによって投資金の一部を回収することができるようになっています。

DYCOはこの仕組みを実現させるために、トークン価格の下限を「トークン販売価格の0.8倍」に設定しています。そのため、トークンの投機的価値と効用価値は、この価格の下限の上に追加されることになります。

トークンの買い戻しは、トークン生成イベントの9・12・16か月後に以下のような割合で行われることになっています。
・9か月目:トークンの25%が払い戻し可能
・12か月目:トークンの37.5%が払い戻し可能
・16か月目:トークンの37.5%が払い戻し可能

このタイムラインは、開発の実行可能性を証明するための重要な時間をチームに与える期間として、非常に重要となります。また、保有者にとって各買い戻し日は、プロジェクトのパフォーマンスを評価するマイルストーンとして機能します。

DYCOで投資を行ったトークン保有者は「チームが不誠実であった・ロードマップ通りにプロジェクトが進まなかった・チームの透明性が欠けていて信頼できなかった」などといった場合に”買い戻し権”を行使して払い戻しを請求することが可能です。

DYCOで資金調達を行うプロジェクトはすべての販売済みトークンで「買い戻しを請求される可能性」を抱えていることになるため、結果的に粗悪なプロジェクトの排除にもつながると期待されます。

一方、各マイルストーンに達するまでに、プロジェクトの進捗とチームの活動がうまく機能している場合には当然、所有者は買い戻しを請求する必要がないため、代わりに買い戻し資金の一部をロック解除してプロジェクト開発のスケーリング予算として活用できます。

ダイナミックコインオファリング(DYCO)重要な特性

トークンのバーン

DYCOでは、購入したトークンのみが最後の買い戻し日まで循環しています。これは、プロジェクトが16か月間インフレを経験しないことを意味します。代わりに、買い戻しが行われるたびに、払い戻されたトークンがバーン(焼却)されます。

このメカニズムによって、開発への信頼を欠く人々によるトークンは、最終的に唯一の所有者がプロジェクトの真の信者になるまで、彼らの立場から抜け出すことができます。

これは、DYCOにはデフレの純供給があると予想されることを意味します。また、透明性がなく、ロードマップから外れたチーム、または単に能力不足であることが判明したチームは、循環供給全体を買い戻し、トークンおよびプロジェクトを排除しなければならないことも意味します。

ミラーフリップ(Mirror Flip)

すべてのトークンは、DYCO中に支払われた金額の80%の価格で買い戻しを請求できるため、各トークンは市場において”価格の壁”でサポートされていることになります。

つまり、取引所のトークン価格が0.8倍を下回った場合にはリスク無く利益を得る事が可能となります。これは「ミラーフリップ(Mirror Flip)」と呼ばれるものであり、DYCOの参加者はトークンのアップ・ダウンで利益を上げることができることを意味します。

例:10枚のトークンがそれぞれ1ドルで販売されているとします。これらのトークンがそれぞれ0.5ドルで取引所で取引を開始する場合は、トークンを購入して払い戻しをトークンごとに0.8ドル請求することができ、裁定取引の機会によって、トークンごとに0.3ドルをリスクフリーにすることができます。

ミラーフリップのメカニズムミラーフリップのメカニズム

DYCO参加者のみが有する特権

エクイティクラウドセールが正しく機能した理由の1つとしては「参加者に製品の割引などといった特典が与えられたこと」が挙げられますが、トークンセールの参加者には基本的には特別な利点が与えられることはありませんでした。

しかしDYCOでは、“トークンセール参加者のみ”が「買い戻しを請求する権利」を有しています。つまり、DYCOを通じて発行されたトークンでは「DYCOの参加者のみがトークン価格が最低料金を下回った場合にリスク無く利益を上げることができる」ということになります。

信じられないほどの流通市場

全てのトークンに価格の下限が設定されているため、流通市場の参加者には「このトークンの流動性に参加するインセンティブ」が生まれることになります。

流通市場には次の参加者が存在します。
・アービトラージトレーダー
・FOMOトレーダー
・DYCO参加者
・ファンダメンタルドリヴントレーダー

アービトラージトレーダーはDYCOの参加者がリスク無く利益を上げられることを理解しているため、”価格の下限”を大幅に下回った場合に買い戻し請求権を持っていなかったとしても「利ざやを容易に得られる可能性が高い」と判断して市場に参加すると考えられます。

DYCOでは「トークンの買い戻し」と「バーン日程」があらかじめ決められているため、供給の減少による価値の上昇を見込んだ新鮮な資本が流通市場に流入する可能性が高くなります。そのような出来事は歴史的にFOMO主導のトレーダーの急増をもたらしました。

DYCOの参加者自身は、前述した「ミラーフリップ」によってリスク無く利益を請求する準備ができています。

『プロジェクトに関心はあるが、DYCOのセールに参加できなかった』というファンダメンタルズ主導のトレーダーは、買い戻し日が近づくにつれて予想されるボリュームの急増に便乗するためタイミングを伺いながら参加することが予想されます。

「トークンセールの新時代」到来

ダイナミックコインオファリング(DYCO)という新しいトークンセールフレームワークは「成功によるプロジェクト」と「参加者の利益共有及び買い戻しメカニズム」を柱としています。

個人投資家は、上昇ポテンシャルを期待しつつ、下落プロテクションを備えながら、初期段階のプロジェクト投資に参加することができます。また、それと同時にプロジェクト開発の続行に対する決定権が与えられるため、トークン保有者はチームの活動を監視し、成功をもたらすための責任をプロジェクトチームに負わせる強力な権利を持つことになります。

「ダイナミックコインオファリング(DYCO)」を採用した最初のプロジェクト「ORION」は今年5月に発表されており、6月10日にはトークンセールが開始されたことも発表されています。「DYCO」や「ORION」の詳細は以下のサイトをご覧ください。
>>「DYCO」の詳細はこちら
>>「DAOMakerJapan」の公式Twitterはこちら


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参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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