米ドル/円は116.35円が当面の天井となり、 短期的に下値余地が拡大! 米国の3月利上げ は間違いなく、資産縮小の開始時期に注目
2022-01-13
1月12日(水)に発表された昨年(2021年)12月の米CPI(消費者物価指数)は前年同月比7%上昇と、39年ぶりの高い伸びでした。
早ければ、3月の利上げ開始を米金融当局に迫るほどのインフレ高進があらためて鮮明に。
バークレイズのマイケル・ゲーペン氏は「異常値をもたらすようなイベントが発生しない限り、3月の利上げを止める要因は何も見当たらない」と語った。
出所:Bloomberg
この状況では、3月の利上げはまず間違いのないところ。
もうひとつマーケットが気にしているのが、QT(量的引き締め)はいつか?という問題。
現在のマーケットは、1月25日(火)~26日(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)で、QTへの言及があるかどうかに関心が高まっています。
インフレが止まらない中、利上げを待たずにバランスシート縮小に動くのではないかとの警戒感が強くなっています。
なぜ、QTが始まるとマーケットは動揺するのか?
0.25%程度の小刻みな利上げについては、マーケットは織り込み済み。
ただ、QTの早期開始は株式市場、特にグロース株への影響が極めて大きなものになるのではないかとマーケットは危惧しているためです。
そうした危惧から、年初から、ナスダック総合指数を中心に、米国株は大きく値を下げています。
【参考記事】●豪ドル/円は、下値余地が拡大! バイデン政権とFRBの駆け引きで、米国の金利上昇は当面継続。米国株が崩れ、リスクオフの環境に(1月6日、西原宏一)
ナスダック総合指数 日足(出所:TradingView)
筆者は、このリスクオフから生じるクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の売りが、米ドル/円の上値を抑えると想定していましたが、本稿執筆時点での米ドル/円は 114.60円と反落しており、やっとリスクオフマーケットに米ドル/円が追随してきた展開。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
ただ、他通貨でも米ドル安が進行しているため、現在は、米金利上昇で米ドル/円のみならず、主要通貨に対して米ドル安が進行しているといった相場が展開されています。
今回、この点を考察してみましょう。
米金利上昇が本格化する初動では、米ドル/円は下落する。米ドル/円と米10年債利回りの相関性を確認 現時点で、ほとんどの市場参加者が「インフレに対応して米金利が上昇する」と考えていると思います。それが、マーケットのコンセンサスになっているといえます。
ただ、トレードする時に問題になるのが、米金利の上昇で米ドルは本当に上がるのかという問題。
米ドル/円に関しては、あまり異論はありません。米金利の上昇が急ピッチであれば、グロース株の急落を招き、それが資源国通貨(対円)の売り圧力となり、豪ドル/円を筆頭に、クロス円の急落に連れ、米ドル/円は反落する可能性があるということは、マーケットである程度警戒されています。
これに加え、マーケット参加者の中には、金利上昇が本格化する初動では、株の動向に加え、米ドル/円が下落する傾向があるとの指摘もあります。
これは、米10年債利回りの上昇過程で、債券の投げ売りが持ち込まれることにより、その円転で円買いが出るのではないかと見られています。
チャートで確認したのですが、確かに米10年債利回りの上昇過程で米ドル/円が下がっている局面も多いのですが、一定の期間を置くと再び上昇するという流れ。
このあたりはもう数日、米ドル/円と米10年債利回りの相関性を見たいところです。
米ドル/円&米長期金利 日足(出所:TradingView)
この点に関して本日(1月13日)、ブルームバーグが気になる記事を出していました。
それは、米ドルと米国債利回りの関係に亀裂が生じ始めたというもの。
市場では、今年最大4回の利上げが織り込まれているものの、ブルームバーグ・ドル指数はほぼ2カ月ぶりの水準に低下。モルガン・スタンレーはドル上昇分の大半が織り込み済みだと指摘しており、投資家はドルの軌道を見極める上でFOMCの政策の先を見越す必要があるかもしれない。
出所:Bloomberg
以下は、米2年債利回りとブルームバーグドルインデックスの相関チャートです。
米2年債利回り&ブルームバーグドルインデックス 日足(※筆者提供)
確かに、今年(2022年)に入って米2年債利回りが急騰するのとは逆に、ブルームバーグドルインデックスは下がっています。
この相関が、今後もトレンドとして継続できるかどうかにマーケットは注目しているともいえます。
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米ドル/円は年初に到達した116.35円でトップアウト。当面、下値を探る展開が続くか 結果として、金利上昇が本格化する初動では、米ドル/円は下落する傾向があるということです。金利上昇に連れ、グロース株の急落が円高を誘引するわけです。
最後に、米2年債利回りとブルームバーグドルインデックスの相関から考えれば、米ドル/円は年初に到達した116.35円でトップアウトし、当面下値を探る展開が続くのではないかと想定しています。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
最後に、為替マーケット参加者にとって、嬉しいニュースが報道されていたのでご紹介させていただきます。
ブルームバーグによれば、為替市場でボラティリティーが復活するとの見解のようです。
BNPによれば、市場が織り込むユーロ・米ドルのボラティリティーは1年ベースで9%前後に上昇し、コロナ禍最悪期の水準に戻る見通し。モルガン・スタンレーはJPモルガンのグローバルFXボラティリティー指数が現在の約7.2から、10.5近辺に上昇すると予想している。
出所:Bloomebrg
過去5年間、為替市場は退屈なバリュー株のように低ボラティリティだったため、このような見方は歓迎!
前述したとおり、QTに対する懸念からのグロース株の急落、加えて米金利上昇が本格化する初動では、米ドル/円は下落する傾向があります。このように、米ドル/円を取り巻く環境の悪化から116.35円でトップアウトし、短期的には下値余地が拡大しています。
QTとグロース株の行方、そして下値余地が拡大している米ドル/円の行方に注目です。