テーパリングの恩恵で、カナダドル依然堅調。 米金利上昇すれば、ドル/円は110円突破へ

■テーパリングの恩恵などで、カナダドルは依然堅調 みなさん、こんにちは。
 今週(5月31日~)の為替相場も、テーパリング(※)に先行したBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が率いるカナダドルが堅調に推移。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
 カナダドルが堅調な背景には、原油が堅調なことも挙げられます。
 6月2日(水)のNY市場では、原油が上昇。WTI先物7月限は前日比で1.11ドル(1.6%)高の1バレル=68.83ドルで終了しています。
WTI原油先物 日足(出所:TradingView)
 為替では、原油高を背景にカナダドルやノルウェークローネが堅調。
 カナダドル/円は、91円台を回復し、91.10円レベルで推移。
カナダドル/円 日足(出所:TradingView)
 一方、先週(5月24日~)、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])のテーパリングの話題で盛り上がったニュージーランドドルですが、今週(5月31日~)は上値が重い展開。
【参考記事】
●NZ中銀が、テーパリングに一歩前進。ニュージーランドドル/円は85円へ上昇再開(5月27日、西原宏一)
●テーパリングへと踏み出したNZドルは当面強気! 米国のテーパリング議論開始は6月か(5月31日、西原宏一&大橋ひろこ)
 対円では一時、80.18円まで上昇したものの、本稿執筆時点では79.25円と上値の重い展開が続いています。
ニュージーランドドル/円 日足(出所:TradingView)
 ただこれは、今週(5月31日~)上昇しているカナダドル/円にもいえます。
 4月21日(水)に、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])のテーパリング着手の発表を受けて急騰していたカナダドル/円ですが、91円台が重く、何度も89円台ミドルまで反落。
【参考記事】
●テーパリングに着手したカナダ。カナダドルは全面高! 次は、米国やオセアニア?(4月22日、西原宏一)
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■短期筋の調整終われば、ニュージーランドドルも上昇へ この調整の要因は短期筋。
 このところの為替マーケットは、なかなかボラティリティが上がってこないため、ひとつのテーマに参加者のポジションが集中しがち。
 そのため、テーパリングなどの話題にマーケット参加者の視点が集中することで、ポジションも片寄ってしまうため、一度、振り落としがあることが目立つようになってきました。
 BOCのテーパリングを受けてのカナダドルは、短期筋が一斉に買いに走るため、一度ポジション調整が起きてから再び反発。
 ニュージーランドドルも同様、RBNZの発表を受けて、対円は一時、節目の80円台を回復するものの、大台を維持できず、80.18円を高値に反落しています。
 ニュージーランドドルがカナダドルと同様の推移を辿るとすれば、短期筋のポジション調整さえ終われば、ニューランドドル/円もじわじわと値を上げてくると想定しています。
ニュージーランドドル/円 日足(出所:TradingView)
■米ドル/円のレンジ相場脱却に必要なものとは? では、商品市況の活況も、テーパリングの話題もない米ドル/円は、いつ狭いレンジを抜けられるのでしょうか?
 米ドル/円の上昇に足りないものは、やはり米金利の上昇。
 本稿執筆時点の米10年債利回りは1.59%と、1.60%を割り込んでおり、この利回りの上昇がなければ、なかなか米ドル/円も反発してきません。
 この米ドル/円と米10年債利回りの相関性を確認するため、米ドル/円と米10年債利回りの日足チャートを見てみましょう。
米ドル/円&米長期金利 日足(出所:TradingView)
 今年(2021年)の米ドル/円は、1月6日(水)につけた安値の102.59円からスタートしています。そして、米10年債利回りの安値も1月4日(月)の0.9265%とほぼ同じタイミング。
 一方、今年(2021年)の米ドル/円の高値は、3月31日(水)の110.97円。今年(2021年)の米10年債利回りの高値は3月30日の1.7742%で、こちらもほぼ同じタイミングです。
 次に、米ドル/円が反発したタイミングは5月13日(木)の109.79円。このときも、米10年債利回りは、1.7035%と反発しており、同じタイミングで高値をつけています。
 しかし、5月28日(金)に、米ドル/円が110.20円の高値に到達したときは、10年債利回りは追随しておらず、6月1日(火)にやっと1.6369%に上昇しているのみです。
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■米金利が上昇すれば、米ドル/円は110円上抜ける公算 この局面の米ドル/円の反発は、米10年債利回りの後押しがなくても110円台まで上昇したともいえますが、金利の支えがなければ、米ドル/円は110円台を維持できず反落しています。
 そして、本稿執筆時点の米10年債利回りは1.59%と、1.60%を割り込んでおり、米ドル/円も110円台に定着できず、現在109.65円で推移しています。
 次のテーパリングは米国では(?)という、マーケットの憶測は高まっているのですが、なかなか10年債利回りが上昇してきません。
 先週(5月24日~)、FRB(米連邦準備制度理事会)のクラリダ副議長が、テーパリングの可能性を示唆したにも関わらず、米金利の上昇は限定的な状況が続いています。
 個人的には、今年(2021年)の2月~3月に、マーケットの想定以上のはやさで、米金利が1.7742%まで急騰したことへの反動で、4月~5月の米金利の調整をもたらしているのではないかと考えています。
 ただ、ワクチン接種が順調に進行し、景気が急回復している米国で、この10年債利回りが1.50%を割り込んで急落するという展開も考えにくいため、米ドル/円は押し目待ちという展開でしょうか?
 2月~3月の急騰の反動で調整に入った米金利同様、107~110円でもみ合いに入っている米ドル/円相場。
 米金利の調整も早晩終わり、米金利が上昇にさえ向かえば、米ドル/円も節目の110円を越えてくる公算が高まると考えています。
米ドル/円 日足 (出所:TradingView)
 米10年債利回りと米ドル/円の動向に注目です。

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

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