年初から暴騰していた英ポンドは急失速! 英金融街・シティの地位低下も影響か
2021-03-25
今週(3月22日~)のマーケットは、トルコリラショックからスタート!
トルコリラ暴落の要因は、エルドアン大統領が、トルコ中銀のアーバル総裁を更迭したことでした。
3月20日(土)未明に、エルドアン大統領は、トルコ中銀のアーバル総裁の更迭を発表。後任に、「利下げ派」といわれるシャハプ・カブジュオール氏を指名しました。
【参考記事】
●中銀総裁更迭でトルコリラ/円が大暴落! ドル/円はいずれ120円との見通し変わらず(3月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
●トルコリラが15%超の暴落! なぜ、トルコ中銀総裁は突然更迭された?(3月23日、エミン・ユルマズ)
アーバル総裁は、3月18日(木)の金融政策委員会で、市場予想を上回る2%の利上げに踏み切りました(19.00%)。
(出所:トルコ中銀のデータを基にザイFX!編集部が作成)
この、トルコ中銀の大幅利上げ発表を受け、トルコリラは対米ドルで、7.50リラ近辺の水準から買いが強まる展開に。先週(3月15日~)の引け前までに、7.21リラ前後までトルコリラ高が進みました。
しかし、今回のトルコ中銀総裁の更迭を経て、週明け(3月22日)の為替市場では、一時8.4700リラ水準(※ブルームバーグのレートに基づく)という、とんでもない暴落(トルコリラ安)を演じています。
米ドル/トルコリラ 日足(出所:IG証券)
■エルドアン大統領とカブジュオール新総裁の次の一手は? そして問題は、エルドアン大統領とカブジュオール新総裁が、次の一手として何を考えているかです。
まず、考えられるのが、緊急金融政策委員会を開催して、大幅な利下げをする、ということ。
その場合、通貨(トルコリラ)は続落しますが、外貨準備が十分ではないため、為替介入によるトルコリラ安阻止は難しいかもしれません。
そうなったら、資本規制などを行うのかどうか…?
どちらにせよ、週明け(3月22日)のトルコリラ/円は、一時13.00円を割り込んでおり、先週(3月15日~)末の15.00円レベルから13%も暴落。トルコリラは法定通貨ではなく、暗号資産(仮想通貨)なのか(?)と思わせるほどの暴落劇となりました。
トルコリラ/円 日足(出所:IG証券)
ちなみに、トルコリラが、一時13%も急落し、日本株も大きく下落した一方で、今週(3月22日~)の米ドル/円の下落は、108.41円までと限定的なものに留まっています。
米ドル/円 4時間足(出所:IG証券)
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■IMMの円ショート転換は、米ドル/円に好材料 そして、今週(3月22日~)、マーケットが円高に触れたもうひとつの要因が、IMM(国際通貨先物市場)のポジション動向です。
円の持ち高1年ぶりに売り越し転換、日米金利差の拡大で
出所:Bloomberg
前回は円ロングだったものが、一気に円ショートに変わっています。
IMMポジション動向(米ドル/円)(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
この急変動によって、米ドル/円は一気に買われすぎとなったことから、急落するとの見方もあります。
しかし、IMMのポジションは、かなり経験豊富な参加者の動向を反映しているともいえ、この変化を、私は米ドル/円にとってポジティブではないか?と考えています。
前回のコラムでも触れましたが、米ドル/円の109円台は、テクニカル上、重要なレジスタンスが密集しているため、ブレイクするには一定の時間がかかるのでしょうが、米ドル/円の上昇トレンドは変わらずと見ています。
【関連記事】
●85円突破の豪ドル/円、90円に向けて上昇! ハト派なFOMC。2023年末までゼロ金利維持か(3月18日、西原宏一)
■年初から2月末まで、英ポンドが暴騰していた理由 視点を他通貨に移すと、今週(3月22日~)マーケットで注目を集めた通貨が英ポンドです。
以下は、年初から2月末までの主要通貨の対米ドルの騰落率。
(出所:BloombergのデータよりザイFX!編集部が作成)
他通貨と比較すると、対米ドルで英ポンドが圧倒的に値を上げているのがわかります。次に、当コラムで注目しているオセアニア通貨のニューランドドルと豪ドルが続きます。
この2月末までの、英ポンド/米ドルの上昇要因は、ブレグジット(英国のEU離脱)の移行期間終了の影響が、驚くほど限定的だったことが挙げられます。
英ポンド/米ドル 日足(出所:IG証券)
あれほど懸念された、物流の混乱もありませんでした。
そして、新型コロナウイルスワクチンの供給も迅速。
ロンドン在住の友人も、アストラゼネカ製のワクチン接種の1回目をすでに済ませたとのことです。
こうした環境下、ブレグジットの移行期間終了後の混乱に備えてヘッジしていた英ポンド(=英ポンドショート)を買い戻さなければいけない参加者が続出したことが、英ポンド上昇の要因になっています。
私も年初からの豪ドルの上昇はイメージどおりでしたが、新型コロナウイルスの新規感染者が増大している国の通貨である英ポンドが暴騰しているのは、いまひとつピンときませんでした。
このあたりが、FXの難しいところともいえます。
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■英ポンド急失速! 金融街・シティの地位低下が影響か しかし、3月に入って英ポンドは急失速。英ポンド/米ドルは、一時1.4237ドルまで急騰していましたが、3月24日(木)には1.3674ドルまで、563pipsも急落しています。
英ポンド/米ドル 日足(出所:IG証券)
その要因は、ブレグジット移行後の混乱は、これから始まることが懸念されること、そして、トルコリラショックの影響なども指摘されています。
たしかにそうした要素もありますが、私が懸念しているのが、英国の金融街・シティ(ロンドン金融市場)の地位低下。ロンドン金融市場の取引シェアは、想定以上に急落しています。
英金融、取引シェア急落 EU離脱でマネー移動
取引所運営のCBOEヨーロッパの集計では、欧州株の売買占有率でロンドンは20年12月には44%と、2位の独フランクフルト(14%)を引き離していた。だが完全離脱後の21年1月には22%と半減し、代わって4位だったオランダのアムステルダムが7%から23%に上げ、首位に躍り出た。
出所:日経新聞
この英国の金融街・シティの地位低下が、英国経済の先行きに大きな影を落とし、英ポンド下落の要因になるのではないか?と考えています。
マーケットでは、対米ドルでの反落が報道されていますが、ユーロ/英ポンドや英ポンド/豪ドルなどでの、英ポンド下落を警戒しています。
ユーロ/英ポンド 日足(出所:IG証券)
英ポンド/豪ドル 日足(出所:IG証券)
レジスタンスが密集している109円台を目前にして、いったん調整に入っていますが、上昇トレンドを維持している米ドル/円。
そして、英国の金融街・シティの地位低下が経済の先行きに大きな影響を与えることが懸念され、反落しはじめた英ポンドの行方に注目です。