米ドル/円の切り返しは、ドル買いと連動! 105円台半ばの打診も当然の成り行きと見る

■ドルインデックスが切り返し。「株高・米ドル安」は一服 S&P500が、また史上最高値を更新している間に、ドルインデックスも切り返しを果たしている。
S&P500 日足(出所:TradingView)
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 にわかに「株高・米ドル高」の様相を呈しているが、米ドル全体の状況で言えば、まだまだ大幅下落後の一服にすぎない。よって、「株高・米ドル安一服」という表現の方が適切であろう。
 しかし、今まで「セット」になっていた「株高・米ドル安」という連動に終止符が打たれたことは確かだ。これは看過できない兆しであり、為替相場における流れが変わってきたことを意識させられる。
 巷でもてはやされている「米ドル安宿命論」が、相場に検証される時期が来たと思う。
 もっとも、理屈において米ドルがさらに下落していくだろうといった視点自体は、大した問題ではない。コロナ禍によってもたらされた米史上最大規模の金融・財政緩和や米ドルのバラ撒き自体が大きな問題で、理論上は米ドルの先安観が正しいかもしれない。
 しかし、相場は「理外の理」。2008年リーマンショック時、理屈上、米ドル安が当然視されたが、結果的には歴史的な底打ちを果たした米ドル相場に照らして考えると、今回も安易に巷の論理に流されない方が賢明だ。
■米ドル売りポジションが「危険」なレベルに膨らんでいる このあたりの理屈は、本コラムではすでに取り上げているので、ここでは復唱しないが、今回は、相場におけるバランスの観点で検証しておきたい。
【参考記事】
●金余りによる米ドル悲観論一辺倒に異論!を踏む(2021年1月8日、陳満咲杜)
 それはほかならぬ、ロング筋とショート筋の力構造である。
 そもそも為替は相対取引、かつインターバンク市場が取引を主導しているから、正確な統計が難しいと言われる。
 そのため、一般的に米シカゴ先物市場のポジションの状況をもって相場全体を推測する方法があり、また、実際、その方法はこれまでも役に立ってきたので、最近の統計を確認してみたい。

 報道によると、直近まで主要外貨に対する米ドルのネットショートポジション(ロングとショートのポジションを相殺して余った分)が20年ぶりの高い水準(金額にして約350億ドル)に達したということだ。
 米ドル先安観に主導された米ドル売りポジションの積み上げが、「危険」なレベルまで膨らんできたことがうかがえる。
【参考コンテンツ】
●シカゴIMM通貨先物ポジションの推移
 なぜ「危険」かというと、猫も杓子も米ドル安に賭けているから、米ドル安が進む場合は問題ないが、米ドル安一服、また、一転して切り返しを果たす場合は、損失覚悟のショート筋の買い戻しが誘因される。そして、買い戻しが活発になって、一段と米ドル高がもたらされ、一段とショートポジションが踏み上げられていく、といった「逆循環」が形成される可能性があるからだ。
 結局、相場におけるトレンドは、理屈ではなく、ロング筋とショート筋の力関係やバランス構造によって形成されるもので、そのバランスが大きく崩れた時は、理屈と真逆の方向に展開する場合も多々ある。「相場は理外の理」と言われるゆえんである。
 足元の状況は、米ドルの売られすぎに対する初歩的な修正局面にすぎないから、米ドルのショート筋が過大とはいえ、大きく「踏み上げられ」ていくかどうかは不透明で、判断自体は、なお時期尚早だと思う。
 しかし、米ドル安一服という判断はできるから、米ドル安一服が確認され、また、当面維持される場合、ショート筋の「動揺」も早晩見られるはずた。米ドル安派の試練は、むしろこれからだと思う。
■テクニカル的にも、米ドル安一服を示す根拠がある 実際、米ドル安一服を証左するテクニカルの根拠は、単純明快である。
 まず、昨年(2020年)3月高値を起点とした下落波は、2021年年初安値まで続き、また、大型「下落ウェッジ」を形成していただけに、足元で同フォーメーションに対する上放れを果たしていることは重要だ。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 何しろ、「下落ウェッジ」というフォーメーション自体が上放れの可能性を示唆するものと言われ、レジスタンスラインに対する突破があれば、どちらかというと「ホンモノ」の可能性が高い。ここから米ドル全体が再度売られても、当面、安易な安値更新はなかろう。
 米ドル安一服さえあれば、紆余曲折があっても米ドル高(米ドルショートポジションの買い戻し)の方向にシフトしていくとも推測される。
 さらに、底打ちのパターンとして、ドルインデックスが91の節目をブレイク、また、その上に定着しているところが重要なシグナルと見る。
 2021年年初の安値を「ヘッド」とみなした場合、日足では明らかに複合型「ヘッド&ショルダーズ・ボトム(※)」というフォーメーションを形成。91の節目のブレイクで、同フォーメーションにおける「ネックライン」を突破したから、目先、なお切り返しの途中とみなせる。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」とはチャートのパターンの1つで、大底を示す典型的な形とされている。「三尊底」とも呼ばれる。また、「三尊底」の逆で、天井を示す典型的な形が「ヘッド&ショルダーズ」(三尊型))
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 さらに、「ソーサーボトム」とも言える、2020年12月から形成された底打ちのパターンもあって、その可能性が一層高まっている。
 プライスアクションの視点では、「ネックライン」を規定した2020年12月21日(月)のサイン(スパイクハイ)も大きかったから、同日高値を上回ったことで、前述のフォーメーションの視点が強化されることとなり、米ドルの切り返しが、より有力される。
■米ドル/円の105円台半ば打診は、当然の成り行き こういった米ドル全般の視点をもって、米ドル/円をフォローすれば、先週(1月29日)の本コラムの指摘どおり、米ドル/円の105円台半ばの打診を当然の成り行きと結論できる。
【参考記事】
●目先、米ドル/円は105.50円前後まで上昇か。押し目買いスタンスも、しばらくは維持(2021年1月29日、陳満咲杜)
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
 度々強調してきたように、円は「蚊帳の外」で、昨年(2020年)のコロナショック以来、もっぱら米ドル次第の性質を露呈してきたから、米ドルが買われても円の主体性はあまりなく、円高・円安云々すべきではないと思う。
 つまるところ、米ドル/円の切り返しも米ドル買いであって、米ドル全体と連動する形なので、まったく当然の値動きと見る。
■主要クロス円の押し目買いスタンスは、なお有効 一方、米ドル全体の切り返しが加速してくると、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における頭の重さが気になる。
 米ドル買いの受け皿として、今まで円が主要な役割を果たしてきたが、これはユーロにシフトされるのではないか、という思惑がある。
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 このあたりの考えは、また次回検証するが、主要外貨のうち、比較的強い英ポンド/円の高値再更新に注目すればわかるように、主要クロス円における上昇波は、なおメイン基調を保てるはずだ。
 したがって、押し目買いのスタンスは、なお有効であり、円高云々も相変わらず杞憂だと思う。市況はいかに。

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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