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電子決済手段であるJPYCがさまざまな環境で普及し始めている。そんな中、このJPYCに特化して、決済手数料1%という驚異的な条件で運営されるECプラットフォームがある。
それが、「JPYCで買い物ができるECショップ」だ。
開発者であるmameta氏は、元小学校教員という異色の経歴を持ち、現在は育休中の時間を活かして個人でこのプラットフォームを開発・運営している。出店者は農家からデジタルコンテンツ販売者まで幅広く、リリースからわずか約4ヶ月での売上は約70万円を記録(※2026年7月時点)。
一方で、ガス代の高騰やブロックチェーンならではの難しさといった課題にも直面しているようだ。果たして、ステーブルコインで決済できるECサイトの現在地はどのようなものなのか。
今回は、プラットフォーム立ち上げの経緯や手数料1%への強いこだわり、そして今後のAI連携の展望について、NFTMedia編集部が聞いた。
【プロフィール】
mameta
「JPYCで買い物ができるECショップ」運営者
元小学校教員。海外への自転車旅を経てIT業界へ転身。
ブロックチェーン領域に参入後、個人開発でJPYC決済に特化したECプラットフォームを立ち上げる。「手数料1%」を掲げ、生産者やクリエイターが利益を確保できる新しい経済圏の構築を目指している。
2026年6月に開催されたMicrosoft Agent Hackatonにおいて、個人部門 最優秀賞を獲得
X:https://x.com/mameta_zk
JPYC決済ができるECサイトとは

編集部:まず、「JPYCで買い物ができるECショップ」の基本的な仕組みをご説明いただけますか。一言で言うと、どんなサービスなのでしょうか。
mameta:ひとことで言えば、電子決済手段である「JPYC」だけで買い物が完結するECサイトです。
JPYCは1JPYC=1円で法定通貨と価値が連動するので、暗号資産にありがちな値動きを気にせず、いつものネット通販と同じ感覚で商品を購入できます。会員登録は不要で、ウォレットを接続するだけで購入も出店も始められるのが特徴です。
編集部:OpenSeaでNFTを買うような感覚で、ECサイトでの買い物ができるのですね。どのような商品を購入できるのでしょうか。
mameta:滋賀県産の近江米から、コーヒーやぬか炊きといった郷土料理、化粧品、さらにはソフトウェアのようなデジタル商品まで本当に幅広いです。

この他にも、サブスクでの決済にも対応可能です。
編集部:さまざまな商品を購入できるのですね。在庫の管理や商品の発送もmametaさんが担当されているのでしょうか。
mameta:いいえ。Amazonの仕組みとは異なり、これらの商品は在庫の管理や商品の発送などは各出店者が担当します。
編集部:出店者から直接商品が届くのですね。
ブロックチェーンでの決済というと、ガス代(ネットワーク手数料)の負担がネックになりがちですよね。このガス代は購入者側が負担するのでしょうか。
mameta:そこが一番こだわっている点で、購入者のガス代は完全にゼロにしています。ブロックチェーンのネットワーク手数料は運営側が肩代わりするので、購入者に追加の負担は一切かかりません。
対応チェーンもEthereum、Polygon、Avalanche、Kaiaのマルチチェーン構成にしているので、自分が持っているJPYCのチェーンに合わせて使えます。
編集部:「ガスレス決済」というわけですね。出店する側のメリットはどうでしょう。
mameta:メリットは出店手数料の圧倒的な安さです。
出店手数料は、一律で売上の1%だけしかかかりません。既存のECサービスだと10%近く取られることもある中で、仲介コストを徹底的に抑えて、生産者やクリエイターの取り分を最大化することを狙っています。
手数料1%へのこだわり
編集部:プラットフォームの出店手数料を1%に抑えているのには、どのような思いがあるのでしょうか。
mameta:個人で経営している生産者は大きな収益を上げているわけではないのに、既存のECプラットフォームに出店すると決済手数料とプラットフォーム手数料で10%~20%近く取られてしまったり、さらには月額固定で数万円の費用がかかるという話を聞いたんです。これは重いですよね。
編集部:確かに、利益率を考えると10%は非常に大きいです。
mameta:だからこそ、少ない手数料でなるべく生産者のもとに利益が残る仕組みを作りたいという思いがありました。このような理由から出店手数料を1%に抑えています。
加えて、ガス代も運営側での負担としています。
編集部:出店手数料が1%だけでガス代まで運営側で負担する場合、収支の面でかなり厳しいのではないですか。
ネットワークのガス代が高騰すると、逆ザヤになってしまいますよね。
mameta:そうなんです。出店手数料が1%なので、1,000円を売り上げるとやっと10円の利益が得られます。
しかし、Ethereumにおいてはネットワークが混み合っているときにはガス代だけで100円くらい発生する場合もありますよね。こうなると赤字になってしまうケースがあるなど、自分の首を絞めることになりかねません。
編集部:出店手数料が1%だと、かなりギリギリになりますよね。収益を維持するための対策などは行っているのでしょうか。
mameta:スタートアップ支援をする組織に相談しつつ、次の展開を考えているところです。
解決策の一つとして、今回開発したJPYCの決済機能をプラグインとして独立させて、他社に有償提供するアイデアも検討しています。
このように、収益源の多角化は一つの方法として考えているところです。
ブロックチェーンならではの顧客体験とは
編集部:「JPYCで買い物ができるECショップ」では、Web3ならではの要素も組み込まれていると伺いました。
mameta:はい。プラットフォームではオプションでNFT/SBTの発行ができる機能もあるので、購入証明としてSBTを配布しているショップもありますね。
たとえばお米のショップの場合、ブロックチェーン上に購入履歴が証明として残るので、新米の先行予約といった特典につなげることもできます。
単なる決済手段にとどまらず、買った証明書がデジタル資産として手元に残り、生産者と購入者が継続的につながっていく──出店されているショップによっては、そういう体験を目指されています。
編集部:JPYCを初めて使う人には少しハードルが高そうにも感じますが、「いきなり買うのは不安」という人向けの導線はありますか。
mameta:「ウォレット操作がよくわからなくて決済が怖い」という方のために、0JPYCのサンプル商品で決済の練習できるお試しショップを運営側で用意しています。
もちろん一切お金はかからないので、まずはそこで一度体験してみてほしいです。「思ったより簡単だな」と感じてもらえればうれしいですね。
広がるエコシステム──Xでの拡散と多様な出店者たち
編集部:出店者を増やすための営業活動はどのようにされているのですか。
mameta:地道な営業活動を展開しています。
実は営業メールを2,000通くらい送ってみたんですが、返信は20件程度と厳しい反応でした。やはり「ステーブルコイン」や「JPYC」と言われても、ピンと来ないのだと思います。
編集部:ステーブルコインの認知度はまだまだ低いですよね。では、今集まっている出店者はどのように集まってきたのでしょうか。
mameta:Xでの発信が大きかったです。
ECショップを立ち上げた際にポストしたら、10万インプレッション規模で拡散されたんです。そこから「出店したい」という声をいただき、オーナーが自発的に申請できるページを用意しました。
編集部:やはり、ブロックチェーンに精通した出店者が多かったのでしょうか。
mameta:いいえ、Web3を知らない方からの申請もいただきました。
「既存のECサイト手数料が高すぎてやっていけない」という方にとって、手数料1%が魅力として捉えられたようです。
編集部:手数料の安さが響いたのですね。サービスローンチ後の規模は、どのくらいなのでしょうか。
mameta:2026年3月のローンチから約4ヶ月で、累計70万円ほどの売り上げがありました。
ユニークウォレット数で言うと100人くらいの方に使っていただいています。
編集部:ステーブルコインの黎明期において、それだけの割合を占めているのは素晴らしい実績だと思います。
小学校教員からITエンジニアへ──異色のキャリアと開発のきっかけ
NFTMedia編集部:ECサイトを始めた経緯を伺えればと思うのですが、そもそもmametaさんはどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。
mameta:もともとは子供が好きで、小学校の教員をやっていました。
ただ、一度海外に行きたくて自転車でいろいろな国を旅して回ったんです。その時に、教員として学校の中に閉じている世界って実は結構狭いなと感じまして。色々な業界を知りたいと思い、ITの道へ転職しました。
編集部:プログラミングは転職してから学んだのでしょうか。
mameta:そうですね。教員時代はエクセルの使い方も隣の先生に教えてもらうくらいでパソコンに全く触れなかったのですが、IT業界に入ってから自分で勉強しました。
その中でブロックチェーンという面白そうな技術に気づき、もう4、5年くらい経ちましたね。
編集部:そこから、JPYC決済のECサイトを立ち上げたのにはどんな経緯があったのでしょうか。
mameta:最初は、QRコードでJPYC決済ができる仕組みを開発して、Xに動画を上げたんです。
そうしたら、アゼミチさんというお米の農家の方を紹介していただきました。当時、アゼミチさんはGoogleフォームで注文を取り、手動でお客さんにウォレットアドレスを教えて送金してもらうという非常に手間のかかる方法で決済をされていたんです。
編集部:それは大変ですね。
mameta:そこで「ちょっと開発しますよ」と、本当にボランティア精神でシステムを作り始めたのがきっかけです。
最初は「アゼミチさんに使ってもらえればいいや」という程度のものだったのですが、フィードバックをもらって機能を追加したところ、ECサイトとして成り立つものが完成しました。それをXで投稿したところ、ぜひ使いたいという他の方から声が集まっています。
そこで横展開をした結果、現在では40店舗を超える方達が出店してくださっています。
AIエージェントとの連携と今後の展望
編集部:JPYCで買い物ができるECショップについて、今後の展開を教えてください。
mameta:直近のアップデートにより、AIエージェント経由で商品を購入できるようになる予定です。

ユーザーがチャットボットに「お米を買ってきて」と頼むと、AIが代わりに決済してくれるような購買体験を提供します。
編集部:まさに未来の買い物体験ですね。
ECサイトを普及させるにあたって、他社と提携する計画はありますか。
mameta:今は育休中で時間があるために開発に時間を充てられているだけで、本業に戻るとその時間がなくなります。
ですから、ECサイトとタッグを組んだり、条件次第で事業提携の形は検討の余地がありますね。ただ、どんな形になっても「決済手数料1%」というポリシーだけは絶対に譲りたくないんです。
編集部:手数料を上げてしまえば、既存のプラットフォームと同じになってしまいますもんね。
mameta:はい。出店者さんや購入者さんとはDiscordで直接やり取りをしていて、すごく近い距離でコミュニケーションを取って機能改善を続けています。
彼らを高い手数料から守りたいという思いがあるので、そこは変えたくありません。プラットフォームとしても、中央集権化しない設計思想を維持していきたいです。
編集部:今後の展開が楽しみですね。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
mameta:JPYCで買い物ができるECショップでは、お米やお肉、コーヒーなどの農産物だけでなく、デジタル商品やコンサル、占い、電子書籍、コスプレ関連など幅広い商品が買えます。
JPYC決済がどういうものか分からない方のために、0円で決済体験ができるデモ導線も用意していますので、ぜひ一度サイトを見に来て体験してみてください。
また、JPYCを使った受託開発・コンサルも積極的にやっているので、何かあればお声がけください。
編集部:本日は貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
ステーブルコインを用いた決済の社会実装が進む中、mameta氏が個人で開発したECプラットフォームは、手数料1%という強烈な武器で既存のECビジネスに一石を投じている。
ボランティア精神から始めた開発が、今やJPYCエコシステムの一角を担うまでに成長している事実に驚かされた。一方で、ガス代高騰時の赤字というWeb3特有の課題にも直面している。手数料を上げれば既存のプラットフォームとの差別化が薄れ、維持すれば運営が圧迫されるというジレンマの中で、AIエージェントとの連携やプラグイン化による横展開など、次々と新しい一手を打つ姿勢が印象的だった。
「1%のポリシーは絶対に譲らない」という強い信念が、今後どのようなエコシステムを築き上げていくのか、引き続き注目していきたい。
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