
この記事の要点
- BIS年次報告、ステーブルコインの金融政策リスクを警告
- 準備資産の売却圧力が米短期国債市場に波及する可能性を指摘
まずはステーブルコインを詳しく
ステーブルコインが金融政策に波及と警告
国際決済銀行(BIS)は2026年6月23日に公表した年次経済報告書で、ステーブルコインの準備資産フローが米国短期国債(T-bill)市場を通じて金融政策の波及経路を変えつつあると警告しました。
報告書は、これまで民間決済インフラの一部として扱われてきたステーブルコインを、中央銀行の政策運営にも影響を及ぼし得る存在として再評価し、金融システム全体への波及を踏まえた制度設計の重要性を指摘しています。
BISの調査論文によると、35億ドル(約5,660億円)規模の資金流入が3カ月物米国短期国債の利回りを最大約4bp(ベーシスポイント)押し下げる可能性があるとされています。
こうした影響の背景には、主要なドル建てステーブルコインの準備資産の多くが米国短期国債で運用されている構造があり、大規模な償還時には準備資産の売却圧力が短期金融市場へ波及する可能性があると報告書は説明しています。
BISはあわせて、現行のステーブルコイン設計が抱える課題を整理し、準備資産規制の見直しと、中央銀行マネーを基軸とした二層型通貨体制への技術統合という二つの方向性を提示しています。
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準備資産が短期金融市場に及ぼす波及
BISは、ステーブルコインが金融政策へ影響を及ぼす要因として、準備資産と米国短期国債市場との結びつきを挙げており、大手のドル建てステーブルコインは発行残高の大半を短期国債で裏付けていると指摘しました。
このため発行や償還に伴う資金の流出入が短期金融市場へ直接波及し、発行残高が拡大するほど市場への影響も大きくなるとしています。
なかでも警戒されているのは資金流出の局面で、BISの調査論文では、流出時の利回りへの影響が流入時の2〜3倍に達するとの推計が示されています。
加えて、市場が混乱する局面やステーブルコイン市場の拡大とともに価格変動は一段と大きくなる可能性があり、現在の試算を上回る影響が生じる余地もあると同論文はみています。
通貨の単一性と流動性供給を脅かす構造
こうした短期金融市場への影響に加え、BISは通貨制度そのものが抱える課題にも踏み込んでいます。
共通の計算単位と通貨の単一性を健全な通貨秩序の基盤と位置づけるとともに、それを平時からストレス時まで維持する流動性供給の重要性を示しています。
一方で、現在のステーブルコインは誰でも取引を検証できるパーミッションレス型ブロックチェーン上で民間が発行する仕組みであるため、こうした条件を十分に満たすには課題が残ると指摘しました。
さらに海外での利用が広がれば、発行国以外の金融政策にも影響が及ぶ可能性があり、準備資産の構成だけでなく海外需要の拡大も政策運営を複雑にする要因になると報告書は記しています。
中央銀行マネーを基軸にトークン化を活用
こうした課題を踏まえ、BISは二つの対応策を提示しており、一つは準備資産の構成基準や償還制度を見直し、現行のステーブルコイン設計が抱える弱点を補う方向性です。
もう一つは、トークン化と分散台帳技術(DLT)が持つ技術的な利点を、中央銀行マネーを基軸とする既存の二層型通貨体制へ取り込む構想で、BISはこれをより本質的な解決策と位置づけています。
この仕組みが実現すれば、所有権の細分化やリアルタイム処理を活用しながら、越境決済の非効率や仲介機関間の相互運用性の不足を改善できると説明しています。
その一方で、接続されるネットワークが増えるほど新たな相互運用性の課題も生じるため、制度全体を支えるガバナンスの整備が不可欠であると強調しました。
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CBDC・ステーブルコイン規制、各国で方向性に差
BISが国際的な協調の必要性を訴える一方で、ステーブルコインやデジタル通貨を巡る制度設計は各国で異なる方向へ進み始めています。
日本では日本銀行がデジタル円の制度設計を検討する場で議論を重ね、二層型通貨体制を維持する前提のもとで詰めの作業を積み上げています。
中国では、人民元建てCBDC(中央銀行デジタル通貨)を軸とする決済網「Mbridge(エムブリッジ)」の商業化を進めており、多国間協調を軸とするBISの構想とは異なるアプローチが具体化しています。
民間でもChainlink(チェーンリンク)が外国為替の即時決済を目指す「Project Pangea(プロジェクト・パンゲア)」を立ち上げ、欧州・韓国の銀行連合と連携したトークン化決済の実証を進めています。
制度面では米国が先行しており、すでに成立したステーブルコイン規制「GENIUS法」は、短期国債を中心とする準備資産の保有を義務づける内容として、BISも各国比較のなかで取り上げています。
市場規模が2030年に2兆〜4兆ドル(約320〜645兆円)へ拡大するとの業界予測も示されており、各国の制度設計を巡る議論は今後も続く見通しです。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=161.70 円)
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Source:BIS年次経済報告書2026
サムネイル:AIによる生成画像







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