
サトシコイン再配分で物議
ビットコイン開発者のポール・シュトルク(Paul Sztorc)氏が、ビットコインの新たなハードフォーク「eCash」を2026年8月に実施する計画を、Xで4月24日に発表した。
シュトルク氏は、ビットコインのサイドチェーン技術「ドライブチェーン(Drivechain)」を定めたBIP300/301の著者として知られ、レイヤーツー・ラボ(LayerTwo Labs)の共同創業者兼CEOも務める人物だ。
同氏による今回の計画は、既存のビットコインとは別の新たなブロックチェーンを立ち上げるもの。しかし、その資金調達手法をめぐりコミュニティ内で議論が広がっている。
ハードフォークとは、ブロックチェーンのルールを変更し、既存のチェーンから分岐して新しいチェーンを作る仕組みを指す。分岐が起きるまでは同じ取引履歴を共有しているが、その後は異なるルールのもとで別々に動作していく。
このような事例は過去にも起きており、2017年にはブロックサイズをめぐる議論を背景に、ビットコインからビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)が分岐し誕生している。
今回のフォークは、ビットコインのブロック高964,000に到達する2026年8月ごろに実施される計画とのこと。フォーク時点でビットコインを保有しているユーザーには、保有量と同じ数量のeCashが新チェーン上で付与される見込みだ。たとえば、4.19BTCを保有している場合は、4.19eCashが割り当てられることになる。
付与されたeCashについては、売却するか保有するか、あるいは無視するかをユーザー自身が自由に選択できる。また、ビットコインとeCashを安全に分離するためのコイン分割ツールも提供される予定だとされている。なお、これらはあくまでeCash側の仕組みであり、既存のビットコインのプロトコル自体に影響を与えるものではないという。
eCashの基盤となるレイヤー1(L1)は、ビットコインの主要ソフトウェアであるビットコインコア(Bitcoin Core)をほぼそのままコピーした設計になるとされている。マイニング方式もビットコインと同じSHA-256dが採用される見込みだ。
フォークの実行時には、マイニング難易度が一度だけ最小値にリセットされる計画であり、そのため立ち上げ直後はマイニング環境が不安定になる可能性がある。ネットワーク名やシードノードなどは変更されるが、コードベースとしてはビットコインコアとの互換性を維持し、今後もその変更を取り込んでいく方針が示されている。
また、ドライブチェーンを有効化するためには「CUSF(Core Untouched Soft Fork)」と呼ばれる仕組みが用いられ、L1のコード自体には変更を加えない設計が採用されるとされている。
今回の構想の中核にあるのがドライブチェーンと呼ばれる技術だ。これは、メインのブロックチェーンとは別に複数のサイドチェーンを接続し、それぞれ異なる機能を持たせる仕組みとされている。こうした設計によって、ビットコイン本体のルールを変更せずに新しい機能を追加できる点が特徴だ。
シュトルク氏によれば、現在すでに7つのL2チェーンが開発中であり、予測市場の「Truthcoin」、分散型取引所の「CoinShift」、NFTなどを扱う「BitAssets」、分散型IDの「BitNames」、量子耐性を目指す「Photon」、そしてZcashに似たプライバシー機能を持つチェーンなどが含まれているという。これらのチェーンはいずれもマージドマイニングに対応しており、同氏はマイナーが追加収益を得られる可能性があると説明している。
今回の計画の中でも特に議論を呼んでいるのが、サトシ・ナカモトに関連すると推定されるコインの扱いだ。ハードフォークではビットコインの全取引履歴が新チェーンにコピーされるため、長期間動いていないアドレスに保管されている約110万BTC相当も、新チェーン上では同量のeCashとして存在することになる。
シュトルク氏は、このうち半数未満を投資家に割り当てる計画を示している。ただし、その具体的な仕組みについては現時点で明らかになっておらず、フォーク後に付与されることを前提とした形になる可能性があるとみられている。同氏は、この仕組みによってプロジェクトへの早期参加を促し、開発を加速させる狙いがあると説明している。
この計画に対しては、コミュニティから批判の声も上がっている。ビットコイン支持者のピーター・マコーマック(Peter McCormack)氏は、サトシのコインを再配分することは盗みであり敬意を欠く行為だと指摘。
また、ピクセレーテッド・インク(Pixelated Ink)のCTOであるジョシュ・エリソープ(Josh Ellithorpe)氏は、今回のような措置が前例となれば、将来的に他のユーザーの資産にも影響が及ぶ可能性があると懸念を表明。「ポールは理性的だと思っていたが、そうではないと今日知った」と述べた。
このほかにも、「eCash」という名称がすでに他のプロジェクトで使われている点や、リプレイプロテクションが明確でない点についても懸念が指摘されている。
シュトルク氏は、今回の構想について2017年のビットコインキャッシュとは異なる点を強調している。具体的には、「Bitcoin」という名称を使用しない新しいブランドであることや、事前に約4か月の告知期間を設けていること、さらにビットコインの課題に対する恒久的な解決策を目指すものだと説明している。ただし、これらはあくまで同氏の見解であり、評価は分かれている。
ドライブチェーンは2015年ごろから提案されてきた技術だが、これまでビットコイン本体には採用されていない。今回のeCash構想は、そのアイデアを独立したチェーンとして実装しようとする試みともいえる。
一方で、その設計や資金配分のあり方をめぐっては賛否が分かれており、今後も議論が続く見通しだ。
BREAKING: New Bitcoin Fork
— Paul Sztorc (@Truthcoin) April 24, 2026
I am helping create a **new Bitcoin Hardfork** — dropping this August, called “eCash”.
– Your coins will split. For example, if you have 4.19 BTC, then you will get 4.19 eCash.
– You may sell your eCash — or keep it. Or ignore it!
Vegas:
– Yes, I…
Outside of whatever drama may unfold:
— Peter McCormack
1. Taking Satoshi coins is theft and disrespectful.
2. eCash is already used for Lightning payments with Cashu and Fedi.
Those are poor choices.(@PeterMcCormack) April 24, 2026
eCash, setting the precedent that they can and will steal coins. Now it’s Satoshi, but it could be anyone later.
— Josh Ellithorpe (@zquestz) April 24, 2026
Also misrepresenting the BCH fork, stealing another project’s name, and not having replay protection.
I always thought Paul was reasonable. TIL otherwise. https://t.co/uf2xdl78pN
画像:PIXTA
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参照元:ニュース – あたらしい経済


(@PeterMcCormack) 

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