
仮想通貨普及の現在地を示す国別ランキング
2025年12月12日、仮想通貨取引所Bybit(バイビット)とリサーチ企業DL Research(DLリサーチ)は、世界79か国の仮想通貨採用状況を分析した「2025年仮想通貨ランキング(World Crypto Rankings 2025)」を共同で発表しました。
このレポートによると、総合ランキング1位はシンガポール、2位は米国で、以下リトアニア、スイス、アラブ首長国連邦(UAE)の順に続いています。
また同レポートは、ステーブルコインが世界で最も広く利用されている仮想通貨となっている点を示すとともに、RWA(現実資産のトークン化)やオンチェーン給与の分野でも実利用が急速に広がっていることを明らかにしました。
Chainalysis採用ランキング
世界79か国の仮想通貨普及を4指標で可視化
BybitとDL Researchが公表した本ランキングは、利用実態や制度環境など複数の観点を総合的に評価することで、世界79か国における仮想通貨(暗号資産)採用状況を可視化しています。
世界ランキング上位国の特徴
レポートによれば、先進国では明確な規制環境やインフラ整備、機関投資家の参加によって採用が促進される一方、インフレや資本規制、銀行アクセスの欠如に直面する国々では必要に迫られて仮想通貨の利用が拡大しており、先進市場と新興市場の双方が上位に名を連ねる結果となりました。
実際、総合1位のシンガポールは仮想通貨に関する規制の明確さやライセンス制度、グローバルな機関投資家の存在がリード要因となっており、2位の米国は巨大な資本市場、高い個人利用率、そして文化面での高い認知度が強みとなっています。
また、3位のリトアニアは欧州仮想通貨規制(MiCA法)の下でライセンスハブとして機能し欧州市場への玄関口となっている点が評価され、ベトナムは取引利用度とユーザー数の高さによる草の根的な普及が高スコアに繋がりました。
さらにウクライナやナイジェリアといった国々もトップ層に位置しており、送金・決済手段としてのステーブルコイン利用や自国通貨不安から日常的に仮想通貨に依存する必然性が高いことが、高ランキングを支える要因と分析されています。
グローバルに広がるステーブルコイン利用
これら一連の動きの背景には、国境や経済水準を問わず、ステーブルコインが仮想通貨普及の基盤として機能している点があると指摘されています。
不安定な経済状況下での安全な避難先、銀行規制を回避する手段、安価な国際送金手段、さらにはDeFi(分散型金融)やトークン化市場へのゲートウェイとして、各国でステーブルコインの役割が定着しつつあります。
実際、仮想通貨取引所でのニッチな決済手段だったステーブルコインは急速に一般層へと浸透し、送金・商取引・クロスボーダー決済・給与支払いに至るまでデジタル金融の基盤要素として定着しました。
同レポートは、2023〜24年にテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といったドル連動型ステーブルコインが市場を席巻していた一方で、2025年は「ステーブルコイン普及2.0」の段階に入りつつあると指摘しています。
豪州金融インフラの中核に
拡大するRWA(現実資産トークン化)の動き
RWAで変わる決済と資産流通の構造
ステーブルコインの台頭と並行して、決済や価値移転の基盤が整う中で、RWA(現実資産トークン化)も加速しています。
シンガポールや香港など金融先進地域では、債券・株式・不動産といった伝統的資産のブロックチェーン上での証券化がパイロット段階から規制された市場へと移行し始めており、ブロックチェーン上での分割所有やリアルタイム決済が現実のものとなりつつあります。
トークン化によって市場の効率性・透明性が向上するだけでなく、グローバル資本を呼び込み、アジア太平洋地域が次世代金融のリーダーとして台頭する契機になっていると分析されています。
資産トークン化を加速させる政策要因
実際、2025年に入りステーブルコインを除くオンチェーン上のトークン化資産総額は、約158億ドル(約2.5兆円)から約257億ドル(約4兆円)へと63%以上増加しました。
この顕著な成長は短期的な熱狂以上に構造的な変化を示すものであり、既存の資本市場がトークン化資産を日常業務に組み入れ始めたことを意味します。
このような資産トークン化の進展において、特に恩恵を受けているのが、制度整備や市場インフラが整った国々と指摘されています。
実際、Institutional Readiness(制度準備度)指標で上位にある米国、カナダ、リトアニア、ポーランド、フィリピンなどは大規模な資産トークン化を支える土壌があり、レポートは「2025年はトークン化が実証からスケール段階へ移行する年」であると位置付けています。
ETFとRWAの台頭
普及進むオンチェーン給与
給与支払いの仮想通貨化が進む背景
こうした実世界での活用拡大を背景に、2025年の仮想通貨業界では、オンチェーン給与(仮想通貨による給与支払い)の正式な普及も注目されています。
これまでフリーランサーや一部の仮想通貨業界に限定されていた仮想通貨での報酬支払いが、規制の枠組みの中でスケーラブルなグローバル給与システムへと変貌し始めました。
実際、報告書によると給与の一部を仮想通貨で受け取っているプロフェッショナルの割合は、前年(2024年)の3%から今年は9.6%に急拡大しており、その支払いの90%以上はボラティリティの低いステーブルコインで行われています。
特に出稼ぎ送金が盛んな国やリモートワーク人材の多い国でこの傾向が顕著です。
UAEやフィリピンでは、従来型の国際送金に伴う遅延や高額手数料を回避できる手段として、企業やフリーランサーが安定価値を持つステーブルコイン建てで給与を支給・受領する事例が増えていると指摘しています。
安定送金需要が促す給与のオンチェーン化
こうした現状を踏まえ、レポートはオンチェーン給与の普及が今後二つの軸で加速すると予測しています。
一つはUAE・米国・シンガポール・香港といった金融・ITハブで、法的な明確性や高度なフィンテック基盤、高付加価値産業を背景に仮想通貨での給与支給が現実解として広がるケースです。
もう一つはフィリピン・ケニア・ブラジルなどリモート勤務者が多く安定した送金手段への需要が高い新興国で、オンチェーン給与がコルレス銀行網に頼らない迅速な支払い手段として定着していくケースです。
各国で労働法や税制に沿った形で給与支払いに仮想通貨を組み込む動きが進めば、ソフトウェア開発やデジタルデザインなど国境を越えた業種を中心に、オンチェーン給与が「ニッチな福利厚生」から「一般的な選択肢」へと移行していく可能性が高いと指摘されています。
普及率は世界人口の半分に
仮想通貨規制が転換点を迎えた2025年の国際動向
ステーブルコイン規制が切り開いた制度的普及
2025年は、各国の実利用拡大を受けて、仮想通貨規制が明確な転換点を迎えた年となりました。
米国では7月、ステーブルコインに初めて連邦の明確な規制枠組みを設ける「GENIUS法」が成立し、ドル連動型トークンを日常の決済や送金に利用する道が開かれています。
この法律は仮想通貨業界にとって画期的なマイルストーンとなり、業界内では「取り組みに対する大きな正当性の証」と評価する声も上がりました。
一方で、こうした先進国の動きと並行して、新興市場でも前向きな動きが見られます。
アフリカのケニアでは10月、仮想通貨の包括的規制法が議会を通過し、中央銀行がステーブルコイン発行者にライセンスを付与する仕組みや、仮想通貨交換業者の登録制度などが盛り込まれました。
金融統合が進む中での仮想通貨の位置付け
こうした各国の規制整備や企業参入の進展を背景に、仮想通貨は2025年末時点で既存の金融システムへの統合を一段と加速させており、Bybitのレポートが示したような普及トレンドは今後も継続するとみられています。
各国政府や企業がイノベーションと保護のバランスを取りつつ明確な方針を打ち出せるかが、2026年以降の仮想通貨採用の方向性を決定づける要因となります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=155.71 円)
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Source:Bybit・DL Researchレポート
サムネイル:AIによる生成画像







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