陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

麻生財務相に当コラムを読んでほしい! 介入しなければ円高、すればもっと円高に!! ブログ

麻生財務相に当コラムを読んでほしい! 介入しなければ円高、すればもっと円高に!!

■米雇用統計は悪かったが米ドル全体は上昇 先週(2016年5月6日)のコラムの予想どおり、米4月雇用統計は市場予想より、だいぶ悪い結果となったにもかかわらず、米ドル全体(ドルインデックス)は上昇してきた。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 あらかじめ想定していた5つの市況のうち、結果的に(4)の「米雇用統計が悪く、ドルインデックスが上昇」というのが一番合っていたと思う。

【参考記事】

●米雇用統計の結果に関わらず、なぜドルは反転上昇すると推測できるのか?(2016年5月6日、陳満咲杜)

想定していた5つの市況(2016年5月6日のコラムより抜粋) 言うまでもないが、筆者はこの間、米ドル全体の上昇に賭け、米ドル/円も含め、短期スパンに限っては米ドルロングのスタンスで相場に臨んでいた。

 最近、米ドル/円とドルインデックスの連動性も高まってきたので、米ドル/円のメインストラテジー、すなわち戻り売りをいったん休み、短期スパンにおける米ドル買いを繰り返している(執筆中の時点も)。 

ドルインデックス&米ドル/円 日足(出所:CQG)

 たびたび強調してきたように、結局、ファンダメンタルズは市場の内部構造を証左、また、強化するための存在だ。だから、前回(5月6日)コラムの指摘どおり、ドルインデックスがテクニカルの視点ですでにいったん底打ちした公算が大きかった以上、米雇用統計云々で同構造を安易に修正はできないから、先週末(5月6日)の結論を得られたというわけだ。

【参考記事】

●米雇用統計の結果に関わらず、なぜドルは反転上昇すると推測できるのか?(2016年5月6日、陳満咲杜)

 この意味では、これは本来、誰でも得られる結論であり、風見鶏風の「米雇用統計次第」といったセンセイたちの解釈を聞かない方が、より市況をつかめるのではないかと思う。

■米追加利上げの有無と米ドル全体のリバウンドの関係は? とはいえ、ファンダメンタルズのすべてを無視するわけにはいかない。米追加利上げの有無がマーケットの焦点である以上、我々は同焦点について考える必要がある。これに関して、筆者が5月7日(土)に書いた文章が参考になるかと思う。本文は以下のとおり:

 今週コラム(ザイFX!)にて米雇用統計がどうであれ、ドル全体(ドルインデックス)が堅調に推移するだろうとの予測を書かせていただいた。実際、同指標が市場予想よりかなり悪く、市場関係者を失望させたが、ドルインデックスは一時93.29まで落ちたものの、また93.90へ回復し、筆者の予想通り強かった。

 こういった予想が当たる背景に、もっとも大きかったのがドルの「売られすぎ」だと思う。言い換えれば、指標が悪くてもドル全体が下げなかったのは他ならぬ、ドルインデックスが昨年8月安値を一時更新していたので、随分「悪い状況」を織り込んでいたからだ。

 但し、指標自体の悪化に鑑み、FRBの追加利上げが一段と後ずれになる公算が高まっていることも事実だ。4月米雇用統計を受け、FRBが再び待機せざるを得ないだろうという認識が広がっている。ウォール街では、BNPパリバのような、「年内利上げなし」と主張する機関投資家も増えており、2017年さえできないだろう、といった「過激」な予想も出始めている模様だ。

 とは言え、ドル全体のトレンドについて、FRB政策ほど弱くないといった感触が多いと思われる。豪州中銀の利下げを受け、ドイツ銀行を始め、機関投資家は更なる利下げ余地を指摘、豪ドル高が主因であることを強調しており、ユーロ高はもう頭打ちになったと読む流れもウォール街の主流のようだ。米国は当面(来年も?!)追加利上げなしと主張するBNPパリバさえ、計量モデルではユーロの「割高」を指摘、ユーロ売りを再開すべきだと主張している。来週からの市況、こういったセンチメントを織り込んでいくかどうかは見所であろう。

 ということで、米ドル全体のリバウンドを、この前の「売られすぎ」の視点からとらえると、やはり追加利上げの有無との関係が薄まっている感じがする。ユーロが「割高」であれば、必然的に米ドルの買い戻しにつながっていくので、自然な成り行きだと思う。

 この意味では、目先の米ドル高について、過大評価も禁物かと思う。換言すれば、米ドル高にしても、米ドル安にしても、目先テクニカル調整の段階にあり、本格的なトレンドの発生は期待しにくい。

 前述のように、ドルインデックスと米ドル/円の連動性からみると…
米雇用統計の結果に関わらず、なぜドルは 反転上昇すると推測できるのか? ブログ

米雇用統計の結果に関わらず、なぜドルは 反転上昇すると推測できるのか?

■ドルインデックスに出た相場反転の2つのサインとは? 相場は一進一退を続けている。ドルインデックスは5月2日(月)に2015年8月安値92.62を割り込み、5月3日(火)には91.91の安値を記録したものの、同日中に大きく反騰、93の節目以上の終値となって、下落一服の兆しを見せ始めた。

 この見方は2つのシグナルをもって判断できる。

 まず、5月3日(火)のチャートは「たくり線」(※1)の形を示している。

 そして、同日安値は2015年1月以来の安値だったが、そこから一転上昇して大引けとなり、前日(2日)の高値を上回ったので、「リバーサル・ロー」(※)、つまり、安値をもって反転したというサインも点灯していた。

(※1編集部注:「たくり線」とはざっくり言えば、相場の下落局面が続いたあとに出た下ヒゲの長いローソク足のこと。陰線が続いたあとに出ること、下窓を開けて寄りつくことなどを条件とする場合もある)

(※2編集部注:「リバーサル・ロー」とは下落局面において、新安値をつけたあと反転し、前日の終値または高値より高く引けること) 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 次に、2015年8月の安値がドルインデックスにとって重要なサポートポイントとなっている。今回は同ポイントをいったん割り込み、そこからまた回復してきたから、今後もこれが守られれば、今週の安値打診自体が「フォールス・ブレイクアウト」(※)、すなわち、下放れがダマシであった可能性を示唆している。

(※編集部注:「フォールス・ブレイクアウト」とは重要なサポートラインもしくはレジスタランスラインをいったんは突破したものの、結局は元に戻って、ブレイクが失敗に終わったことを意味する) 

ドルインデックス 週足(出所:CQG)

■米雇用統計の結果とドルインデックス、5つのパターン これらのサインが正しければ、今晩(5月6日)の米雇用統計が米ドルの反転をもたらすことが推測される。

 実際、事前に米雇用統計を予測できる方はこの世にいないから、米雇用統計自体の良し悪しは推測できない。しかし、相場の反応はあらかじめ予想でき、それは大まかに以下のパターンが想定される。

(1)米雇用統計が良く、ドルインデックスが上昇

(2)米雇用統計が悪く、ドルインデックスが反落してくるが、安値を更新せずにすむ

(3)米雇用統計が良く、ドルインデックスが下落

(4)米雇用統計が悪く、ドルインデックスが上昇

(5)米雇用統計が悪く、ドルインデックスが安値更新

 もっとも想定されやすいのが、(1)と(2)のパターンではないかと思う。(3)と(4)のパターンはいわゆる完全な逆行だが、可能性は低い気がする。

 なぜなら、米追加利上げ観測がなおくすぶるなかにあって、FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派でも利上げは経済指標次第と強調しているからだ。米雇用統計の良し悪しが結果的に追加利上げの有無を決定できなくても、目先の市場センチメントを左右する効果は十分発揮できる。

 そして、(5)の可能性は否定できないものの、前述のテクニカルのシグナルに鑑み、確率は低下しているのでは…と思う。

■豪州の利下げは市場にとってサプライズだったようだが… 米ドル全体の底打ちは、外貨ごとに違うサインとなって現れているが、そのなかで足元では、豪ドル/米ドルの反転サインがもっとも強烈であろう。豪州の「予想外」の利下げにマーケットはややサプライズをもって反応した様子で、目先、豪ドルの反落トレンドが鮮明である。

 豪ドル利下げの可能性を筆者はずっと指摘してきた。

 その理由はほかならぬ、豪ドルの大幅リバウンドが進行していたからだ。RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は豪ドル安を隠さず強く志向してきたから、豪ドル高の進行だけでも利下げの根拠になるわけで、わかりやすかったとも言える。

【参考記事】

●豪中銀は秘かにチャイナショックを警戒!?米利上げ=米ドル/円上昇とは限らない!(2015年8月7日、陳満咲杜)

 では、豪ドルの頭打ちのサイン、どう見るべきか。現執筆時点、すでに0.74ドルの節目割れまで豪ドル安が進行しているから、解釈の後づけにならないよう、5月3日(火)のレポートを公開しておきたい。原文は以下のとおり。 

豪ドル/米ドル 日足(出所:CQG)

豪ドルの反騰、終焉したのか

豪州の利下げ、我々の想定通りである。もっとも、豪ドル高が豪州利下げにつながるといったロジックだったので、利上げが豪ドル高に終止符を打ってもおかしくなかろう。

但し、検証する場合、ファンダ上の材料だけでは不十分だ。テクニカルの視点では、日足を見る限り、そろそろ条件が揃える可能性が出ているから、要注意だ。

上のチャートが示すように、本日の罫線、このまま大引けした場合、リバーサル&フェイクセットアップのサインを点灯しよう。また、1-2-3の法則で測る場合、4月27日安値0.7546割れがあれば、条件3を満たすと思われ、基準を厳しくしても、同7日安値0.7490割れがあれば、条件を成立させるでしょう。つまり、トレンドが反転される、ということである。この場合、日足における「三尊型」の成立も明白になってこよう。

オシレーター系の多くはブル変動レンジからベア変動レンジにシフトしているところも気になるポイントだ。いずれにせよ、利下げという材料よりもテクニカルのポイントに注意すれば、豪ドルの動きをより解明できるでしょう。

 上記のように、0.7490ドルは5月3日(火)の執筆時点で、まだ割れていなかったが、同日すぐに割り込んだので、これが豪ドルの反転を決定づけた。

 その他の主要通貨ペアでは、英ポンド/米ドルは…
日銀の「情報漏れ作戦」が裏目に?市場の 報復を受け、ドル/円は100円まで下落も! ブログ

日銀の「情報漏れ作戦」が裏目に?市場の 報復を受け、ドル/円は100円まで下落も!

■FOMC結果は予想どおりで、市場の反応も落ち着いていた FOMC(米連邦公開市場委員会)は今回も追加利上げを見送り、また、6月利上げの可能性を残す一方、急がない姿勢を示している。ほぼ市場の予想どおりなので、現在のところ、マーケットの反応も落ち着いているようにみえる。

 いつものように、今回のFRB(米連邦準備制度理事会)の声明文に関して、専門家の解釈が分かれている。次の利上げ(6月)が確実とか、いや、6月も見送られるだろうといった具合だ。

 その上、米経済の評価に関して前向きの見方が示されたという方がいる一方、前回の文言と見比べると厳しくなったという先生もいる。このあたりはいつものとおりだから、特に気にすることはなかろう。

■FRBはチャイナリスク警戒。上海総合指数は安値更新か ところで、前回利上げを見送った理由には、はっきりチャイナリスクが挙げられており、今回は「海外情勢を注視」といった表現程度に留まってはいるが、引き続きチャイナリスクの存在が追加利上げの障害になっているのでは…と推測される。

 何しろ前回、市場の状況も理由の1つと指摘されていたから、米国株がかなりリバウンドしてきた今なら、本来なら追加利上げがあってもよいはずだ。

NYダウ 日足(出所:CQG)

 となると、FRBは再度言いにくいかもしれないが、いわゆるチャイナリスクをなお慎重に見ているのではないかと思われる。

 では、肝心の中国経済、またチャイナリスクはどうなっているのだろうか。もっとも直接的な指標として、中国株の動向が気になるところだ。

 中国株はすでに暴落してきたとはいえ、これから安値トライをしないという保証はどこにもない。株価動向は中国の場合、必ずしも景気動向とリンクしていないが、大きな指針として無視できない存在だ。

 上海総合指数を見る限り、楽観視できないかと思われる。

 下のチャートが示しているように、上海株は50取引日のサイクルを示しており、今月(2016年4月)高値をトップに、これから再度下落トレンドに復帰する公算が高いからだ。この変動リズムから考えると、6月後半まで強気になれないばかりか、安値を大きく更新していってもおかしくなかろう。

上海総合指数 日足(出所:CQG)

■昨年夏のような世界的ショックもあり得るが、その前に… このような推測が正しければ、昨年(2015年)夏以降のように、上海株の波乱が世界金融市場に多大な影響を与えるだろう。利上げするにはハードルが高く、FRBの慎重姿勢も簡単に崩れないことも納得できる。ゆえに、6月でも利上げできないのでは…と筆者は思う。

 一方、マーケットは一直線に動かず、また、市場センチメントも常に変化しているから、上海株が暴落しない限り、いったん6月利上げの観測が高まってもおかしくない。

 だから、米ドル全体に関しては、いったん切り返していくとみている。

 それゆえ、ユーロ/米ドルはいったん反落していく公算が高いのでは…と推測される。何しろ、ユーロは米ドルの対極との位置付けであり、米ドルのリバウンドがあれば、ユーロは必然的に売られるから、ECB(欧州中央銀行)政策の見通し云々はあまり関係なくなるだろう。

 米ドル/円に関しては、本日(4月28日)日銀政策の据え置きで…
本日のドル/円急上昇は戻り売りの好機! 107.83円割れなら下落トレンド再開と認定 ブログ

本日のドル/円急上昇は戻り売りの好機! 107.83円割れなら下落トレンド再開と認定

■米ドル/円の下落トレンドには変化なし! 米ドル/円のリバウンドは、本稿冒頭執筆中の現時点(4月22日午前)では110円以下どまりとなっており、筆者の想定どおりと言える。 

米ドル/円 2時間足(4月22日(金)午前の時点)(出所:ヒロセ通商)

 すなわち、米ドルのリバウンドを予想していたロング筋が揃ってショートのスタンスに転じてきたから、米ドル/円はかえって安値を更新せず、いったん反騰してくるものの、その値幅は限定され、ベア(下落)トレンド自体はまったく修正されず、これからもベアトレンドを推進する公算が高い、ということである。

 換言すれば、米ドル/円は目下スピード調整の途上にあるが、下落トレンドは確実視される。

■ポイントは米ドル/円107.83円割れの有無 ところで、いろいろな評論を見ていくと、米ドル/円の下げ一服もあって、来週4月27日(水)、28日(木)の日銀会合にて、追加量的緩和、あるいはマイナス金利のさらなる拡大がなされるといった観測が高まっていた。そして、この前ショートスタンスに転じてきた「元ロング派」の再転向が見られた。

 つまり、米ドル/円が上昇するとみる評論家の方々がまた増えてきたから、また1つのサインが点灯したのだと思う。

 要するに、前回の彼らの転向が米ドル/円の下げ一服をもたらしたとするならば、今回の彼らの再転向が米ドル/円の下落再開を暗示するサインと受け取れる。

 このサインの正式な確認は、日銀会合後になる見通しだが、米ドル/円の弱いリバウンドから考えると、日銀会合を待たずに確認される可能性もある。そのサインは他ならぬ、米ドル/円の107.83円割れだとみる。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 この安値は今週(4月18日~)の安値であり、4月18日(月)につけた安値であったが、この安値は重要な意味合いを持つ。

 何しろ、この安値は、4月18日(月)に窓を開けて下落した際に形成され、また、G20(20カ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議)において米サイドが日本の相場介入を牽制したと伝わったあと、マーケットが驚きをもって形成した安値だったからだ。

 この安値を割ることがあれば、米ドル/円の下落再開が認定されるだろう。

■一時、105円の節目割れもあり得る 下値ターゲットについて、たびたび指摘してきた105~106円といったメインターゲットは据え置くが、場合によっては一時、105円の節目割れもあり得るだろう。何しろ、足元のリバウンドは、スピード調整として次の下落モメンタムを蓄えている状態だ。次のターゲットはオーバーしていってもおかしくない。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 筆者がもっとも大事にしてきたロジックとして、「市場が材料の先に動き、材料はあとからついてくる」というものが挙げられる。この意味では、相場の値動きから、あとの材料を予知する場合もある。

 したがって、仮に米ドル/円が日銀会合を待たずに安値トライする値動きになった場合は、日銀会合自体、大した成果を出せないことが暗示されるかと思う。

 ということは、一部市場関係者の思惑、すなわち今回は熊本地震もあったから、日銀がより機敏に動き、マイナス金利を拡大させるだろうといった思惑が裏切られる可能性が大きいと思う。何しろ、熊本地震があったからこそ、日銀が動かないのではないかと考えられるからだ。

 実際、マイナス金利が導入されたあと… 
2016年内の黒田ライン打診は妄想!? <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル/円リバウンドは強くても111円前後まで</i> ブログ

2016年内の黒田ライン打診は妄想!? <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル/円リバウンドは強くても111円前後まで</i>

■米ドル/円はスピード調整、105~106円到達はおあずけ 米ドル/円は下げ一服、またリバウンドしている。前回のコラムの指摘どおり、105~106円のメインターゲット達成はいったん後ずれとなり、目先はスピード調整の段階にあることが明らかだ。

【参考記事】

●ドル/円下落はアベクロ失敗を宣言するもの。2016年中に100円の大台割れもあり得る!(2016年4月8日、陳満咲杜) 

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 先週末(4月8日)の時点で、こういった結論を得られたのは、ほかならぬ、多くの米ドルロング派が先週(4月4日~)後半転向していたことにヒントを得られた側面が大きかった。

 経験則では、メイントレンドを間違った方が焦って転向し始めるのは、往々にしてトレンドの進行がもっとも激しい時と重なる。だから、トレンド自体は維持されるとしても、そのような時はスピード調整のタイミングが近付いているケースが多かった。

 先週(4月4日~)後半に入り、米ドルの押し目買いを勧めた方や、ヘッジファンドの円高戦略転向といった「内部情報」をほのめかした方が、さすがに堪えられず転向したことで、米ドル安・円高一服のサインが点灯したと言えるなら、よく揶揄される“風見鶏”も、たやすくなれるものではないと思う。

 なぜなら、風見をしようにも、そのタイミングを間違えれば、ただの鶏になるリスクが高いからだ。

■米ドル/円とドルインデックスの連動性が高まっている ところで、米ドル/円とドルインデックスは、その連動性が昨年(2015年)12月以降、高まっていた。したがって、米ドル/円の下げ一服を、ドルインデックスの下げ一服とリンクした視点で見ると、よりおわかりいただけるかと思う。

米ドル/円(ローソク足)&ドルインデックス(ライン) 日足(出所:CQG)

 2015年12月高値から、ドルインデックスは大型「下落ウェッジ」型というフォーメーションを形成して下落してきた。ドルインデックスの安値は切り下がってきたものの、日足におけるRSIの安値水準はほぼ同等だったので、足元の反騰は、この「下落ウェッジ型」がすでに完成し、また、上放れしたことによるもの、という可能性が強まっている。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 下落ウェッジととらえる場合、2015年12月安値(a)から2016年2月安値(b)を連結するサポートラインが、この前の安値(4月11日、12日安値c)と合致していたことがもっとも大きなヒントであった。

 その上、2015年10月安値93.96をいったん割り込んだものの、急落せず反騰してきたことに照らして考えると、目先、米ドル安トレンドの一服がより鮮明化されてきたと言える。

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

■「米利上げ観測後退」の後退がドルインデックス上昇の要因 ドルインデックスの上昇は、「米利上げ観測後退」の後退が大きな要因であると思う。

 イエレンFRB議長のハト派スタンスと違い、地区連銀総裁たちは繰り返しタカ派のスタンスを表明。4月利上げの可能性はほぼないものの、これから利上げを加速してくるのでは…といった市場関係者の疑心暗鬼を誘った。

 もっとも、イエレンFRB議長が利上げの延期理由に…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル/円下落はアベクロ失敗を宣言するもの。</i> 2016年中に100円の大台割れもあり得る! ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル/円下落はアベクロ失敗を宣言するもの。</i> 2016年中に100円の大台割れもあり得る!

■円高は既定路線、米ドル/円は107円台に一時突入! 桜が散り始め、米ドル/円も一時、107円台に突入してきた。 

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 円高は既定路線なので、今さら驚き、また後解釈を繰り返す者の多くは、市場の本質をわかっていないと言わざるを得ない。円高が既定路線とわかっていたとしても、円高のスピードが速い云々と言うのも的外れである。

 こういった見方の多くは、潜在的な先入感、すなわち、「日本政府は米ドル/円の110円の大台割れを阻止する用意があり、また、マーケットはそれを危惧するので、110円以下のレベルに米ドル/円を推し進められないのでは」といった、根拠の薄い憶測に基づいていたからだ。

 つまるところ、マーケット自体の内部構造に専念できれば、巷の俗論やいわゆる市場関係者たちの憶測に流されずにすむ。その上、最近の米ドル/円の内部構造や値動きは、どちらかというとわかりやすいものだと思われ、トレンドフォローをやっていけば、利益を得やすい時期だと考えられる。

■円高を予測できた市場の内部構造の見方とは? 市場の内部構造を測るには、別に複雑なアプローチをする必要はなく、ごく基本的な見方さえ身につければ、本来、誰でも結論を出せるはずだ。以下は筆者が月曜日朝(4月4日)に書いたレポートだが、今週(4月4日~)の値動きをシンプルな見方でとらえられたのでは…と思う。

 同レポートをもって説明したいことは以下の2点に集約される。

1.円高の構造がしっかりしており、また、円高トレンドにおける途中のスピード調整は長かったものの、モメンタムが弱かったので、円高トレンドが強く推進される公算が大きかった。

2.110円の節目における政府の防衛はあり得ず、この節目を割れれば、トレンドが一段と強まる予想が得られやすかったこと。

米ドル/円 日足(出所:CQG)

アナリシス:先週反落、2月安値から形成された円高トレンドにおけるスピード調整、すでに終盤に入っていることを示唆。米イエレン議長のハト派発言が材料視され、米雇用統計が好調でも利上げ後ずれの観測が強まり、先週ドル売りの基調を強めた。従って、円高トレンドへの復帰、何等かの材料なしでは更に後ずれの可能性が低下しており、今週も続落の公算が大きいでしょう。もっとも、昨年8月安値115.90割れをもって日足における「ヘッド&ショルダーズ」といったフォーメーション成立をもたらし、同ターゲットの105/106円台へ進む、といったメイントレンドは不変、従って、先々週安値の111.20割れがあれば、保ち合い状況の打破が見られ、一段と下値余地を拓きやすいでしょう。更に、中期スパンにおいてのメインレジスタンスゾーン、115関門~115円後半に位置、2月安値を起点とした保ち合い、同メイン抵抗をタッチできずにいったことに鑑み、スピード調整とはいえ、実に弱かったことが示唆される。3月29日罫線は「リバーサル」のサインを点灯、足許の安値打診につながり、同日高値113.80も2月安値をから引かれたトライアングルの抵抗ラインと合致しただけに、ベアトレンドへ復帰した、といった判断の蓋然性も一段と高まる。先週の指摘通り、再度ドル売り/円買い好機だったことに鑑み、出遅れるショート筋が今週参入してこよう。110円台後半~111円台前半におけるサポートゾーン、2月~3月にかけて形成され、同サポートゾーンを割り込むまでなお保ち合いの可能性が示唆されるものの、割り込めば下落トレンドの加速につながる。110は心理大台、また日銀介入云々の思惑もあるが、國際協議なしでは介入があっても更なる円買いを招くだけで、現時点あり得ないと見る。従って、今週110大台割れを覚悟、105/106といったメインターゲットへ一段と近づく公算。

予想レンジ:107.60~112.00、           メインストラテジー:戻り売り

 日本ほど自国通貨安を渇望している国はない。しかし…
桜は咲いたが、米ドル/円はまだ112円台。 そのこと自体がエイプリルフールだ ブログ

桜は咲いたが、米ドル/円はまだ112円台。 そのこと自体がエイプリルフールだ

■FRB議長のハト派発言でドルインデックスのリバウンド終了 前回のコラムでは、FRB(米連邦準備制度理事会)幹部の発言は信用できない側面が大きいことを指摘した。

【参考記事】

●NYダウ、原油、中国株反騰は限界に近い。105~106円へのドル/円下落は時間の問題(2016年3月25日、陳満咲杜)

 実際、イエレンFRB議長の今週(3月29日)の発言は明らかにハト派だったので、ドルインデックスのリバウンドを終焉させた。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 そもそも、「この前のFRB幹部のタカ派発言は何だったのだろうか」と思うほど、FRB内部の分裂が目立っている。

 前回のコラムでも指摘したように、FRBといえども、最近幹部たちの発言が「軽く」なっており、中にはたった4週間程度でスタンスを180度チェンジし、マーケットを困惑させた方もいるほどだ。対照的に、イエレン議長の話はあまりブレていないので、マーケットに安心感を与えている。

【参考記事】

●NYダウ、原油、中国株反騰は限界に近い。105~106円へのドル/円下落は時間の問題(2016年3月25日、陳満咲杜)

 ゆえにイエレン発言後、米国株、債券や金相場は共に上昇した。4月利上げの可能性がなくなったことに安堵し、また、その前にあったFRB幹部たちのタカ派発言に対する反動とも思われる。

■テクニカルでもドルインデックスの下落を示唆 ドルインデックスについては、3月24日(木)の96前半までの反騰も、彼らの発言につられた側面が大きかったから、昨日(3月31日)94.30まで下落し、3月17日(木)の安値94.65割れを果たしたことも、当然の成り行きだ。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 テクニカルの視点では、前回のコラムでドルインデックスの「ダブル・フェイク セットアップ」のサインを指摘し、ブル(上昇)基調への回復はハードルが高いことを強調した。

【参考記事】

●NYダウ、原油、中国株反騰は限界に近い。105~106円へのドル/円下落は時間の問題(2016年3月25日、陳満咲杜)

【フェイク セットアップの参考記事】

●「■フェイク セットアップとは?」 (「ユーロのトップアウトがもたらす全面円高。杞憂ではなく相場の「天」は時に落ちる!」(2015年5月9日、陳満咲杜)より)

 この意味では、この前のFRB幹部発言などの攪乱要素があったものの、テクニカルの視点において、その影響はたいしたものではなかった。彼らの発言をもって米ドルのブル基調を予想する方の多くは、マーケットの値動きをよく観察していなかったと言える。

 なぜなら、前述の「フェイク セットアップ」のサイン以外に値幅と日柄の関係からみても、ドルインデックスがブル基調にはほど遠い状況がわかるからだ。

 3月16日(水)~17日(木)の2日間の下落幅に対して、3月28日(月)までのリバウンドは、連続7日を数えてからやっと頭打ちになったが、3月16日(水)高値にはほど遠く、この2日間の下落に比べ、リバウンドはより長い日数と小さい値幅に留まった。

 このことに照らして考えると、明らかにドルインデックスはベア(下落)基調にあることがわかる。

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 FRB幹部の強気発言とは裏腹に、米ドル全体のリバウンドは弱いモメンタムに留まっていたから、早晩ベアトレンドへ復帰するだろうといった推測に至るのも、難しくはなかったはずだ。

 要するに、日柄と日数の関係から強弱感を測るのは、比較さえすればわかりやすいもので、目先の安値更新は当然の成り行きだと思われる。

 そうなると、米ドル全体の反落トレンドがこれからも続き…
NYダウ、原油、中国株反騰は限界に近い。 <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>105~106円へのドル/円下落は時間の問題</i> ブログ

NYダウ、原油、中国株反騰は限界に近い。 <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>105~106円へのドル/円下落は時間の問題</i>

■休暇前のポジション調整もあり、米ドルの反騰が拡大 米ドル全体が切り返しの基調を強めている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)幹部は、タカ派発言を繰り返し、市場関係者たちに「年内最低2回利上げ、来月利上げに踏み切る」といった警戒心を抱かせた。

 その上、本日(3月25日)からのイースター休暇を控えたポジション調整も見られ、米ドルの反騰を拡大させていると思われる。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 ただし、FRB幹部の発言、明らかにこの前の声明文と異なる基調だ。

 3月FOMC(米連邦公開市場委員会)では、慎重な言い回しに終始していたから、市場は2016年内の利上げは、せいぜい2回、場合によっては1回しかないと織り込んでいたところ、ややサプライズを受けている模様。

【参考記事】

●米株上昇と金&円上昇、ニセモノはどっち?桜満開のころ、ドル/円は105~106円へ!(3月18日、陳満咲杜)

 ベルギーのテロが安全資産、あるいはリスク回避先である金や円、スイスフランの上昇をもたらせなかったことも米ドル上昇を加速させた一因として挙げられるかと思う。

■米ドルのブル基調への回復はハードルが高い ところで、ドルインデックスを見る限り、17日(木)の安値94.65を起点とした切り返しが継続されてきたものの、その値幅は大きいとは言えず、またブル基調へ回復するにはハードルが高いとみる。

 なにしろ、100.51を起点とした下落波、大型ジグザグの変動パターンを示し、また、98.58を起点とした下落が進行していることがはっきり見えるから、この構造が否定されるまでは性急な判断を避けたい。

 その上、明白なサインとして見逃せないのが、3月10日(木)と16日(水)のチャートの意味合いであった。

 両日はともに、上ヒゲ大陰線を形成したのみでなく、「フェイク セットアップ」のサインを灯していたからだ。

【フェイク セットアップの参考記事】

●「■フェイク セットアップとは?」 (「ユーロのトップアウトがもたらす全面円高。杞憂ではなく相場の「天」は時に落ちる!」(2015年5月9日、陳満咲杜)より)

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 要するに、ザラ場の高値は、過去数日の高値よりも高かったものの、終値をもって安値を更新したから、強力な売り線として解釈され、また、その役割を果たしたからこそ、ドルインデックスの安値打診につながったわけだ。

 したがって、こういった「ダブル・フェイク」が存在している以上、米ドルのブル基調回復が、少なくとも一気にできるという余地は小さいだろう。

 現実的な見方として、3月16日(水)の高値を更新できない限り、目先のリバウンドを過大評価せず、さらなる下値打診を警戒といったスタンスが望ましいだろう。同日高値が97.06だったことに鑑み、容易なブレイクは想定されにくい。

 ゆえに、米ドル全体の調整波はなお進行中で、目先スピード調整の段階にあり、スピード調整の拡大があってもポジション調整の範疇に留まるだろう。

 さらに、ファンダメンタルズ上の理由から見ても、米ドル全体のブル基調回復には、時間がかかる公算が大きいかと思う。

 米利上げ観測に左右されるドルインデックスの強弱だが、年内2回の利上げがあっても、米ドル全体を押し上げていくには力不足だ。


 なにしろ、2015年末の時点では2016年に4回の利上げが想定されていたわけだから、4回未満の利上げ回数では物足りない感が強いからだ。

■FRB幹部の発言は信用できない側面が大きい その上、何よりもFRB幹部たちの発言には、信用できない側面が大きい。

 近年、彼らは言いたい放題の傾向にあり、また、お互いに矛盾した見方を披露していることもある。これがマーケットに混乱をもたらしたり、中銀の信頼性を損なうといった懸念を引き起こしたりして、市場関係者のひんしゅくを買ったこともしばしばあった。

 マーケットは、ときどき彼らの発言に振り回されるが、結局は中銀自体のスタンスにしたがった値動きになりやすい。

 3月FOMC声明文を見る限り、FRBは「経済指標次第」よりも「市場次第」のスタンスに転換しており、現在は市場が落ち着いているとはいえ、これから波乱が起こらないという保証はどこにもない。

 したがって、「市場次第」なら、結局、相場のことは相場に聞くしかない。

■NYダウのリバウンドは限界に近い NYダウは、たしかに2016年1月の安値から大きく反騰して、再度1万7515ドルの高値を打診しているから、目先の相場に安心感はある。

 しかし、よくよく見ると、2015年11月高値1万7977ドルを超えない限り、NYダウの反騰はあくまでリバウンドという位置づけであり、むしろ、リバウンドの限界に近いことがわかる。

NYダウ 日足(出所:CQG)

 落ち着いた相場はあくまで目先の現象で、いつ波乱が起きてもおかしくないといった感触が得られる。

 もっとも2015年からの相場の急変は…
米株上昇と金&円上昇、ニセモノはどっち? 桜満開のころ、ドル/円は105~106円へ! ブログ

米株上昇と金&円上昇、ニセモノはどっち? 桜満開のころ、ドル/円は105~106円へ!

■米ドル全面安、なお強い下落モメンタムを維持 米ドル全面安の市況が進行している。ドルインデックスは2月安値95.45割れを果たしてから急落、昨日(3月17日)、94.45まで安値をトライし、目先なお強い下落モメンタムを維持しているように見える。 

ドルインデックス 5分足(出所:CQG)

 実際、95.45を割り込む前に、同指数がわずか11分足らずで1%安を記録し、米ドルロング筋の総撤退が示唆されていたから、足元の安値打診はその延長線上にあると思われる。

 言うまでもないが、米ドルロング筋の総崩れは今回、FRB(米連邦準備制度理事会)声明文の基調がもたらした結果だ。

 金利据え置きは市場の想定どおりだが、ハト派声明が市場にとってサプライズだった。

 FRBは「経済指標次第」で追加利上げを実施、といった論調を繰り返していたが、今回の声明文を読む限り、「市場次第」の色合いが濃厚になり、スタンスの大転換と指摘するエコノミストが多い。

■今後の米国利上げのゆくえは「問題児」次第 米利上げの見通しは、「2016年中に4回の利上げ」といったメインシナリオが、足元、「2016年中に2回」と修正されているから、「市場次第」なら利上げ見送りもあり得る、といった疑心暗鬼が市場関係者にあってもおかしくなかろう。

 何しろ、欧米株が反騰しているものの、この先どうなるかは定かでなく、また、あの「問題児」のパフォーマンス次第では世界金融相場が再び荒れるかもしれない。こういった懸念が払拭されない限り、米利上げの見通しは不良のままだ。

 昨年(2015年)、世界金融市場の大荒れを作った「問題児」は、何と言っても中国人民元と中国株だっただろう。ゆえに、中国人民元と中国株の見通しが不透明なら、米FRB利上げの見通しも不透明だ。

 市場次第という言い方は、つまるところ中国次第、ということである。

 中国の問題は根深く、数年のスパンで解決できるなら上等だと思われる。だから、チャイナリスクが収まったという安易な考え方はやめたほうがよい。

 したがって、米国が2016年年内に追加利上げできるかどうかは実に未知数で、市場のコンセンサスはこれからも揺れていくから、世界金融市場におけるボラティリティは、これからも高まっていくだろう。

■なぜ、今の株のリバウンドは「ニセモノ」なのか? こういった懸念が共有されているせいか、マーケットの値動きに、従来のパターンをもって測れない特徴が出ている。米国株のリバウンドが順調に進んでいると見える一方、金と円が買われ、リスクオフ的な値動きにもみえている。 

NYダウ 日足(出所:CQG)

 

金価格 日足

 

(出所:CQG)

 

米ドル/円 日足

 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 従来、米国株高はリスクオンムードの反映で、リスクオンなら金と円は売られるはずだが、米ドル全面安に流される形で、円と金が上昇していること自体がマーケットの不安を反映していると思う。

 つまるところ、株のリバウンドは「ニセモノ」、円と金の強気変動は「ホンモノ」というマーケットの本音の表れではないだろうか。

 換言すれば、

「株のリバウンドはあくまでスピード調整と見られ、これから株安のメイントレンドに早晩復帰するから、今すぐにでも円と金を買っておかないといけない」

 こういった思惑が透けて見える。表は米ドル全面安、裏は安全志向、相場の表と裏を理解すれば、戸惑いも少なくなるだろう。

 ところで、円高の進行は米ドル全面安と相俟って…
ドラギ・バズーカ失敗で黒田氏意気消沈!? 「中銀の裏に道あり」説、またまた的中! ブログ

ドラギ・バズーカ失敗で黒田氏意気消沈!? 「中銀の裏に道あり」説、またまた的中!

■ドラギ・バズーカどころか、ドラギ・核爆弾炸裂! 昨日(3月10日)、「ドラギ・バズーカ」は炸裂した。ECB(欧州中央銀行)は主要3金利の利下げを実行し、QE(量的緩和策)規模と買い入れ範囲の拡大も同時に実施した。

 ここまで踏み込むと、いつもの「ドラギ・マジック」はもとより、「ドラギ・バズーカ」という言い方でも軽く感じるほどだ。緩和戦争の最終兵器、つまり核爆弾が持ち出されたという市場関係者がいるくらいである。

 この決定に反応し、ユーロは取りあえず暴落し、たった数分でユーロ/米ドルは120pipsの下落を記録、東京時間22時40分前後に1.0820ドルの安値に達した。ユーロの下落と相俟って、金は1236ドルの安値をつけ、ユーロ/円も100pipsを超える下落を記録した。

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足) 

ユーロ/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 1時間足)

 ウォール街は総じてECBの利下げを想定していたものの、3つの金利(リファイナンス金利、上限金利の限界貸出金利、下限金利の中銀預金金利)の同時利下げをビッグサプライズととらえ、シティバンクは緊急ストラテジーを出し、ユーロ売りを推薦したほどだった。同ストラテジーは以下のとおりだった。

●1.0879ドル前後ショート、ターゲットは1.0400~1.0500ドル、ストップは1.1080ドル

 しかし、このストラテジーを見て、筆者は違和感を覚えた。

 なぜなら、ユーロは急落したものの、マーケットが本当にECB政策をもってユーロ売りを仕掛けるにしては、なお物足りないと感じていたからだ。

 また、少なくとも1.08ドルの節目を割らない限り、ユーロ安一辺倒とは言えず、また、実際、1.08ドルの節目はなかなか割れなかったから、言われるほどマーケットにはユーロの安値を追う勢いが感じられなかった。

 何しろ、1.08ドルの節目は心理的大台であるほか、マーケットのサポート密集エリアであるから、この節目を下回ることが先決条件であった。

■ドラギ氏の「余計」な一言で相場は大逆転! その上、筆者は今年(2016年)の為替の動向が中央銀行の思惑の逆に動く(2016年2月19日コラムをご参照)と考えているから、ドラギさんの会見で何らかのメッセージが発信され、相場の逆転をもたらすのでは…と期待していた。そのとおり、ドラギさんは期待を裏切らず、「余計」な一言で相場の大逆転を引き起こした。

【参考記事】

●2016年は「中銀の裏に道あり、花の山」。為替は中央銀行の思惑と逆に動く!(2016年2月19日、陳満咲杜)

 氏は「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」と言い、日銀が導入している預金金利の階層構造の可能性も否定した。

ドラギ総裁の「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」という余計な一言で、相場は大逆転した (C) Bloomberg

 これ受け、マーケットは一斉にユーロショートポジションを手仕舞い、今度は逆に壮大なショートポジションの踏み上げが見られた。状況は昨年(2015年)12月のECB会合後とそっくりであった。

 シティバンクさんのストラテジーが…