陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

英ポンドの底はまだまだ下だが、もはや 「早期」でない米利上げでドル高はムリ!? ブログ

英ポンドの底はまだまだ下だが、もはや 「早期」でない米利上げでドル高はムリ!?

■FOMC議事録を受け、米ドル高が一段と進む 9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公開された後、米ドル高が一段と進み、米ドル/円も昨日(10月13日)高値104.64円まで切り返した。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 要するに、「早期利上げが適切」といったFOMCの議事要旨にマーケットが反応したわけだ。

 一方、ここまで来ると「早期利上げ」自体の意味が薄くなっているというか、やや滑稽に聞こえる。何しろ、昨年(2015年)年末の時点では、2016年にはFOMCが4回利上げすると予想されていたし、その後「最低2回」と修正された経緯がある。

 が、いつの間にか「2016年年内利上げの有無」の論争となり、いくら早期と言っても結局12月にあるかないかの問題で、はたして早期と言えるかどうかと違和感を覚える方も多いかと思う。

 このせいか、「FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ詐欺」をしていると激しく批判する者も出たほど、イエレンFRB議長をはじめ、FRBに対する厳しい意見が散見される。

■FRBが利上げに踏み切れないこと自体が示すものは? こういったリスクを承知した上で、FRBが利上げに踏み切れないこと自体、「経済成長や雇用環境の改善にFRBが確信をもって判断できずにいる」というほかない。だから、いくら「早期利上げ」と主張しても、利上げ自体がなお流動的で、たとえ今年(2016年)12月の利上げ可能性が大きくなっているとしても、現時点では確実視すべきではないかと思う。

 最大の障害は、景気や雇用よりも米大統領選の結果であろう。確かにトランプ氏は現在苦戦している模様だが、クリントン女史がそれでも圧倒的な支持率を獲得していないので、結果がどうなるかは油断できない情勢だ。

 10年前とはいえ、トランプ氏の猥褻話は下品すぎて、普通ならとっくに退選に追い込まれてもおかしくないが、それでも彼が一定の支持率をキープしていること自体、クリントン氏への逆風と読むべきかと思われる。

 いずにせよ、米大統領選自体が流動的で、6月の英EU離脱投票と同様、市場のコンセンサスが「裏切られる」リスクが大きいから、現時点では慎重なスタンスを保つべきだと思う。

■米大統領選決着まで断定的な見方は避けるべき もっとも、政治的な要素を配慮しないことはFRBがずっと表明してきたスタンスであり、米大統領選自体よりも、金融市場の動向が障害としてあり得る。

 言うまでもないが、「問題児」のトランプ氏が米大統領に選出される場合、一時的にせよ、世界金融市場の動揺が避けられず、状況次第ではFRBが利上げできなくなるといった可能性も十分想定される。

 トランプ氏が苦戦と伝われば伝われるほど、このような「サプライズ」が発生しやすく、また影響力(破壊力とも言うべきか)も強くなるから、米大統領選の結果が出るまで、米「早期利上げ」に関する断定的な見方を取らないほうが無難だ。

■米ドル/円が直ちに円安方向に進むという確信は持てない 米ドル/円に関しては、要するに円高方向に動くモメンタムが大分低下しているものの、直ちに円安方向に進むかと聞かれると、確信を持てない。 

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 目先、市場は「米早期利上げ」云々で米ドル買い・円売りを仕掛けているが、前述のように、もはや「早期」などと、とても言えない現時点では、単に材料の蒸し返しにすぎない、といった感じが強いから、継続力には疑問がある。

もっとも、2012年末から昨年(2015年)夏場までの… 
英ポンドが突然の大暴落! その理由は? 暴落が示唆する米ドル/円相場の今後 ブログ

英ポンドが突然の大暴落! その理由は? 暴落が示唆する米ドル/円相場の今後

■米雇用統計前に異変! 英ポンド/米ドル突然の暴落 FRB(米連邦準備制度理事会)の幹部たちは相変わらず「言いたい放題」であり、市場参加者は今晩(10月7日)の米雇用統計を待っている。その間に、マーケットに異変が生じた。今朝(10月7日)の英ポンドの急落だ。

 2016年10月7日(金)午前8時4分から、英ポンド/米ドルが突然暴落し、数秒のうちに6.1%の下落幅を達成した。 

英ポンド/米ドル 5分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 5分足)

 ブルームバーグによると、ザラバの安値は1.1841ドルを記録し、1985年3月26日(火)以来、最低レベルだという。 

英ポンド/米ドル 月足(出所:CQG)

 同社は英国のEU(欧州連合)離脱が決定した6月24日(金)を含めても、本日の下落が最大幅を記録した、と主張しているが、ロイター社は6月24日(金)は10%の下げ幅があったと言い、まだ、その記録は更新されていないとしている。

 もっとも、暴落があったこと自体に、異論の余地はない。

■英ポンド暴落の理由は仏大統領の発言が引き金? では、英ポンドはなぜ、このような暴落を引き起こしたのだろうか。

 強いベア(下落)トレンドが進行中であることについては承知しているが、あのEU離脱といったショッキングな決定に比べ、今回は大した材料はなく、かつ東京オープン前にこのような値動きになるとは…「納得できない」市場関係者が多いのではないだろうか。

 いろいろな憶測(誤発注とか、アルゴリズム取引の連鎖的な反応とか)があったが、どうやら「英国はEU離脱の報いを受ける必要がある」というフランスのオランド大統領の発言が報じられたことに起因しているようだ。

 オランド氏の真意はどうであれ、英EU離脱決定のインパクトが今も続いていることは確かであり、また、グローバリズムの終焉が氏の発言をもって強く印象づけられたに違いない。今さらではあるが、マーケットがそれに再度驚き、また、反応したのではないかと思う。この意味では、このままではEU自体の解体もそう遠くないかもしれない、というマーケットの懸念が表れたとみる。

 ゆえに、ユーロ/英ポンドは急伸しているが、ユーロ/米ドルは続落しており、やや強引かもしれないが、リスクオフの米ドル買い、といった側面があるという解釈もできるかと思う。

 英ポンド/米ドルの暴落は、当然のように… 
円高進行に警戒を!ドイツ銀行倒産危機や 大統領選挙などリスクオン妨げる材料満載 ブログ

円高進行に警戒を!ドイツ銀行倒産危機や 大統領選挙などリスクオン妨げる材料満載

■「普通」の日銀会合の背景に、何が? 海外出張の間に日米金利決定があり、とりわけ日銀の政策決定が注目された。いわゆる「新QQE(量的・質的緩和策)」については賛否両論となっているが、日銀が「量」から「質」へ舵取りを取った、といった見方が共有されているようだ。

 具体的な政策の中身やそれに関する解釈はエコノミストにお任せしたいが、為替市場に対する影響については、円安方向にもっていかれなかったことが観察された。一方、2016年1月末の日銀会合後のような急激な円高にもつながっていないから、「普通」の日銀会合であった、といった印象が強い。 

米ドル/円 日足(出所:CQG)

 その背景には、やはり「黒田路線」の修正があったのではないだろうか。「戦力の逐次投入はしない」や「2年2%の目標達成」と公言してきた黒田日銀総裁が、ここに来て「長期戦」にシフトしてきたとみられ、必然的にお得意の「サプライズ演出」もできなくなった。

 もう日銀は「普通」の中央銀行に戻ったわけで、1月末の日銀会合を最後に、これから「日銀会合相場」、すなわち日銀政策がもたらす大相場は、もうないと悟るべきだと思う。

■政策は出尽くし、テーパリングへ向かう下準備か 「普通の中央銀行」に戻った日銀、そして、「普通の総裁」に戻った黒田さんが、政策の出尽くしを物語っている。だから、今回日銀の決定に国債買い入れ額減額(※)があったこと自体、いわゆる「テーパリング」(QE縮小)へ向かう下準備とみるべきだ。

 この意味では、為替面においても、これから日銀政策に依存する円安傾向は限られ、日銀政策への過度な期待自体も次第になくなっていくだろう。

(※編集部注:これまで日銀は「長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」としてきた。それが2016年9月21日(水)の発表では(長期国債の)「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ…」という表現に変わっている。「年間約80兆円」という数値自体は変わっていないものの、今回はこれが「めど」にすぎないということになった)

■円高・円安の決め手は、日銀政策よりもリスクオン・オフ もっとも、円高・円安の決め手は、日銀政策よりもリスクオン・オフの環境が、より重要だった。換言すれば、アベノミクス構造が打ち出されて以来、大幅に円安が進行したが、これには日銀政策のほか、リスクオンの外部環境が不可欠な要素だった。

 アベノミクスがもたらした唯一の結果、すなわち円安は、世界的なリスクオンの環境が長く続いてきた結果だった。しかし、昨年(2015年)より人民元ショックを皮切りに、外部環境が不安定になってきたから、円安トレンドが修正され、足元まで円高傾向が強まってきたわけだ。

 要するに、これから円高傾向が修正されるかどうかは日銀云々よりも外部環境のほうがカギを握る。

 確かに、最近中国絡みのネガティブな材料が… 
円高終焉予想は一旦撤回!日米両会合は 織り込み済みで、次はトランプショック!? ブログ

円高終焉予想は一旦撤回!日米両会合は 織り込み済みで、次はトランプショック!?

■日米金利決定待ちで、為替市場は一進一退 来週(2016年9月21日)の日米金利決定待ちで、為替市場は一進一退を繰り返し、やや神経質な値動きを見せている。 

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 FRB(米連邦準備制度理事会)にしろ、日銀にしろ、「関係者」の発言に振り回されてきた市場参加者たちは、さすがにここにきて疲れたようで、あまり反応しなくなったというか、鈍くなってきた感じだ。

 経済指標への反応も然り。昨日(9月15日)、米8月小売売上高が発表されたあとの変動もゴールド(金)の方が目立つほど、為替市場の反応は限定的だった。

■米ドルは「年内2回利上げは難しい」を織り込んだ展開に とはいえ、米ドル全体は頭が重い展開になっているのが確認できる。 

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 米9月利上げの可能性が低下しているから、積極的な上値追いは見られない。もっとも、ウォール街の一部ではなお「9月利上げあり、サプライズ的な米ドル高があり得る」と主張している。しかし、市場センチメントでみると、やはり、それは主流ではないようだ。

 ドルインデックスで見ると、1月高値の99.60に比べ、現在は約4.3%安の水準に留まっている。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 これは明らかに、2016年年内2回利上げが難しいといった市場センチメントを織り込んだ結果だ。一部アナリストは「FRBが9月に利上げしなくても、2016年年内利上げありと暗示すれば、米ドルは買われるだろう」といった指摘をしているが、それさえ難しいかと思われる。



 何しろ、FRBは「最低2回」と言わんばかりのスタンスを示唆していたから、仮に9月利上げができずに「年内利上げあり」と言ったところで、やはり米ドルロング派を失望させることはあっても、興奮させることはないだろう。

 場合によっては、「結局2016年年内は利上げをできないのでは」といった疑心暗鬼を招きかねない。

 何しろ、11月の米大統領選の結果次第では、マーケットがまた荒れる可能性が大きいから、FRBは結局、市場の顔色をうかがい、行動できない恐れがある。

 米大統領選は、ここにきて急に、民主党クリントンさんの…
米ドル/円反落、その「本音と建前」とは? 浜田教授発言は市場にどんな効果あり? ブログ

米ドル/円反落、その「本音と建前」とは? 浜田教授発言は市場にどんな効果あり?

■米ドル/円反落、その本音と建前とは? 前回のコラムの指摘どおり、米ドル/円は反落してきた。

【参考記事】

●「ヘリマネ相場」再来!? 目先の円安はややオーバー、しばらくは波乱含みの展開に!(2016年9月2日、陳満咲杜)

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 たびたび強調してきたように、思惑に依存する値動きは長続きしないから、米ドル/円の反落は自然な成り行きかと思う。

 ただし、相場には人間と同様、建前と本音があり、建前は表で本音は裏だから、なかなか区別できない。なぜなら、表のほうがわかりやすいから、本質的な認識を邪魔してくることもよくある。

 今回の米ドル/円の下落は、9月6日(火)の米経済指標が芳しくなかったことで大きく進行したので、理由として「米利上げ観測後退云々」が挙げられた。しかし、よく考えれば、それは建前にすぎず、マーケットの本音はやはり、日銀政策に対する失望感にあるのではないだろうか。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 実際、米指標の良し悪しは事前に予想できないから、いわゆる「サプライズ」になりやすく、相場の建前に該当する。

 これに対して、市場センチメントの方は、繰り返されているうちにパターン化されるとするならば、事前にその変化や相場に対する影響が推測できるから、本音の部分を露呈させることが多い。

 今回も然り。9月6日(火)の米ISM非製造業景況指数など米経済指標をまったく予測できなかったとしても、先週(9月2日)のコラムで予測できたように、市場センチメントの変化から米ドル/円の切り返しがいったん頭打ちとなり、また反落してくることは予想できる。

【参考記事】

●「ヘリマネ相場」再来!? 目先の円安はややオーバー、しばらくは波乱含みの展開に!(2016年9月2日、陳満咲杜)

 言い換えれば、米ドル/円はもともと反落してくる構造にあった。だから、米指標が芳しくなかったことがきっかけとなり、また、それにより強く反応しただけの話だ。

 相場の本音、また、値動きに対する影響に関して、今週月曜日(9月5日)に下記の文章をもって補足していた。本文は以下のとおり:

市場センチメントは風邪のように厄介でまた流行りやすいものだ。最近ドル/円の値動き、市場センチメントに支配される側面が大きく、また変動率を高めてきたと思う。


6月安値98.95は英EU離脱がもたらした過度なリスクオフだったと言えば、7月高値107.50までの反騰、所謂「ヘリマネ」へ過度な期待だったことと解釈される。その延長線で、8月安値99.44までの下落、「日銀政策限界論」がもたらした反動と見れば、足元の「日銀外債購入」観測もかなり怪しい。

そもそも先週末米雇用統計、9月利上げを示唆する内容ではなかったが、ドル/円はその後高値更新、日銀に対する期待が主導しているところが大きいのでは。マーケットはいつも行き過ぎで、市場関係者らはいつも思惑ばかりを膨らませるなら、少なくとも目先またオーバーシュートしている疑いが濃厚だ。


黒田日銀総裁、本日の講演にて、金融政策の限界論に対しては「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」など否定的な考えを改めて示し、「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能とした。また「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」と述べたものの、従来の延長線で政策を維持していきたい考えを明らかにしている。だから、今回もサプライズを期待できないかと思う。


何しろ、マーケットは従来の政策の延長だけでは満足しない。円売りを仕掛けていたのがあくまで「それ以外のアイデア」に対する期待だった。だから、今回サプライズばかりか、政策総括後かえって失望させられる公算が大きいでしょう。何しろ、最早黒田氏以外、誰も従来の政策のみで日銀のターゲットを達成できると思っていないから、「押し目買い」というスタンスが再度「戻り売り」スタンスへ途転されてもおかしくなかろう。


その上、従来の政策を延長されても、黒田さんが言うほど「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大する余地が大きくない。マイナス金利にしても、国債購入にしても、副作用を認めた黒田総裁がもう二度とサプライズ演出をできなくなるでしょう。切れるカードのすべてを切れたからだ・・・・・・皮肉にも、氏はかねてから「戦力の逐次投入」を強調していたから、ここで拡大する余地を言ってマーケットに相手にされず、また余計に政策の限界を露呈させる。


ゆえに、市場センチメントと距離を置き、今週だからこそ「日銀政策限界」を警戒しておきたい。市況はいかに。

 このように、日銀が9月20日(火)、21日(水)の…
「ヘリマネ相場」再来!?目先の円安はやや オーバー、しばらくは波乱含みの展開に! ブログ

「ヘリマネ相場」再来!?目先の円安はやや オーバー、しばらくは波乱含みの展開に!

■戻り売りから一転押し目買い!の理由とは? 市場センチメントほど移り変わるものはないだろう。前回本コラムを書いた時点(8月26日午後)では、市場関係者の多くが米ドル/円の戻り売りを狙っていたが、今(9月2日午後)は一転して押し目買いに変わっている。

【参考記事】

●ジャクソンホールでは、イエレン議長より黒田総裁に注目すべし! その理由は?(2016年8月26日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足 このようなセンチメントの変化は割とわかりやすいから、今週月曜朝(8月29日)に書いた文章を開示し、説明したいと思う。本文は以下のとおり。

 「戻り売り」から「押し目買い」へ

 市場はいつも行き過ぎる、この習性を分かれば、ドル/円が7月高値107.49の打診や今月16日99.44までの下落があっても、別にサプライズなどをしなかったでしょう。何しろ、市場関係者の多くが目先流行る材料しか反応しないから、市場センチメントに支配され、過度な値動きになったのも当然の成り行きだ。

 振り返してみれば分かるように、6月24日英EU離脱決定で円が急騰、一日6円超の値幅をもって円高の行き過ぎを暗示したものの、その後7月高値107.49までの急騰が決して「スピード調整」といった位置づけではなく、安倍政権の財政出動や日銀「ヘリマネ」の可能性に対する期待のほうが大きな原動力だったことが分かる。

 勿論、このような過大、過激な期待自体が行き過ぎであった。だから、その材料が剥落していくと、今度は一転して「日銀政策限界論」が台頭し、また市場センチメントを支配していた。ゆえに、再度99.44まで安値をトライ、「底割れ」の様子を強めたわけだ。

 しかし、巷の俗論に流されず、しっかり自分の頭で考えれば分かるように、「ヘリマネ」も「日銀限界論」も行き過ぎた観測で、もたらした市況自体も「ダマシ」の公算が大きかった。だから、7月高値時と反対に、先週は「逆張り」の発想を持たないといけなかった。イエレンさんの話を待ってから判断してもよかったが、問題の核心はイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言ではなく、市場自体の内部構造だ。この意味では、先週末イエレンさんがどう言うかと関係なく、ドル/円の「行き過ぎ」、即ち「売られすぎ」が修正されやすい時期にあったから、反騰してくるのが当然の結果だと思う。

 最後に、市場センチメントは所詮常に変わるものである。一夜にして、従来の「戻り売り」から「押し目買い」に大きく変換しても別にサプライズにならないというか、当たり前のことだと悟らないと市場に付いていけない。この意味でも、市場センチメントとお付き合いしてもよいか、流されてはいけないことを肝に銘じたい。

■テクニカルの視点で市場センチメントの変化を分析 では、テクニカルの視点はどうなっただろうか。同じく今週月曜朝(8月29日)のレポートをもって説明したい。チャートと本文は以下のとおり。

米ドル/円 日足(2016年8月29日) アナリシス:先週反騰、イエレンFRB議長による利上げ示唆で101.26をブレイク、日足における「二番底」を証左したと見る。もっとも、先週指摘した通り、6月24日一時99割れまでの急落、昨年高値を起点とした大型反落波の終点として想定されやすく、先々週100関門割れがあったものの、安値更新できず、「二番底」の蓋然性が示されたから、先週の値動きは当然の成り行き。もっとも、7月高値107.49までのリバウンド、底打ちを示唆する最初の値動きと受け取れ、7月高値を起点とした下落、そのリバウンドの行き過ぎに対するスピード調整と位置づけ、先々週一時99.50割れをもってその役割を果たしたと見る。所謂「二番底」の測定だが、そもそも6月安値100まで進行したドル安・円高の流れ、基本的には1月29日(日銀マイナス金利導入を決定)高値121.69を起点とした下落波の一環とみなし、また同高値を起点とした下落波を大型ジグザグ変動と見做した場合、5月30日高値111.45を起点とした下落が最終子波に当たるから、99割れをもって同子波が十分延長された、というシナリオに基づいていたので、先週の値動きをその一環と見做す。その上、英国民投票日の6月24日だけではなく、その前日の6月23日高値のブレイクが確認され、同日罫線の「アウトサイト」の意味合いに鑑み、7月高値までの切り返しを軽視すべきではないことも既述の通り、大きな値幅を示していた6月24日に続き、6月23日高値のブレイク自体、ひとつのサインと見做され、ドル安・円高の一服のみではなく、トレンド自体の終焉、といった可能性が示唆された公算が大きいから、先週の反騰がむしろ「出遅れた」と言える。先々週まで、日銀政策限界論による円買いや夏場の商い薄で8月2日陰線に包まれる形の「インサイド」を一旦下放れしたが、安値更新をできなかったことに鑑み、先週の反騰、同下値打診が「ダマシ」であったことを示唆、ドル/円の「二番底」がすでに確認された以上、今週続伸しよう。先週末の罫線自体が強気「リバーサル」のサインを点灯、ベアトレンドの再開、同日安値割れが前提条件となるだけに、ハードルは高い。ロングスタンスを維持。

 このように、今週(8月29日~)の米ドル/円の切り返し継続自体は自然の成り行きであるから、これからも続伸していくと思われるかもしれないが、ここで筆者は再び「ちょっと待って」と言いたい。

 換言すれば、月曜朝(8月29日)に書いた文章どおり…
ジャクソンホールでは、イエレン議長より 黒田総裁に注目すべし! その理由は? ブログ

ジャクソンホールでは、イエレン議長より 黒田総裁に注目すべし! その理由は?

■動意薄で、静かな状況が続くマーケット 今週(8月22日~)の為替マーケットは、総じて動意薄。ショートカバーが観察された英ポンド/米ドルの切り返しが、やや目立つぐらいで、比較的、静かな市況だ。

 今晩(8月26日)のジャクソンホールにおけるイエレン議長の講演を待ち、FRB(米連邦準備制度理事会)のシグナルを待っているというところか。

英ポンド/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)

■イエレン講演で利上げの明白なサインは出ないだろう 一方、ジャクソンホールでの会合の重要性は否定しないものの、イエレン議長に金融政策に関する明白なメッセージを期待するのは現実的ではない、といった指摘も聞こえる。

 そもそも、ジャクソンホールでの会合自体は、各国金融当局の水面下での意見交換、政策連携や調整といった色合いが強かったと言われている。現在のようにあまりにも注目され、まるで公のイベントのように報道されるのは、本来の目的からかけ離れたものとの印象がある。

 そのためか、2015年は、イエレン議長がジャクソンホールでの会合に参加していなかったし、2016年も講演のみで質疑応答はないという。

 おしゃべりな一部米連銀総裁と違い、慎重派とされるイエレン議長のことであるから、終始曖昧、あるいはバランスが取れた講演になりそうだ。米早期利上げの有無に関して明白なサインは出さず、政策の余地をしっかりと残す可能性が大きいと推測される。

 何しろ、カードは温存した方が得策だ。米景気は良いとはいえ、利上げを急ぐ段階にきているとは思わない。

■ジャクソンホールで、もっとも警戒したいのは黒田総裁! その反面、金融当局のなかで手持ちカードが少ない者は思い切って発言し、マーケットを刺激しようという思惑があってもおかしくないと思われる。

 言うまでもないが、もっとも警戒すべきなのは、実はイエレン議長ではなく、黒田日銀総裁ではないかと思う。

ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムに参加する黒田日銀総裁。市場関係者の注目はFRBのイエレン議長の講演だが、実は、もっとも警戒すべきなのは、黒田日銀総裁かも?(C)Bloomberg/Getty Images

 サプライズ演出に長けた黒田総裁が、世界中から注目されているジャクソンホールの場を借りて、マーケットに震撼を与えようと「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」を連想させる発言をしても、そのこと自体はむしろサプライズではない。

【参考記事】

●ハイパーインフレもたらすヘリマネの恐怖。もしかしたら「悪い円安」がすでに進行中!?(7月22日、陳満咲杜)

 この意味では、今晩のジャクソンホールでの会合は、イエレン議長よりも、黒田総裁を警戒した方が良いと思う。

■日銀政策限界論は、ヘリマネ観測が剥落した結果 もっとも、最近、「日銀政策限界論からくる円高加速」といったシナリオが多く聞こえてくるが、その根拠は薄いと思われる。

【参考記事】

●日銀政策限界で円高になるってホント? 夏バテ相場打破の鍵は8月2日の高値・安値(8月12日、陳満咲杜)

 市場関係者たちは、一時の材料を煽る傾向が強いので、2016年7月後半まで煽られた「財政出動+ヘリマネ観測」のように、目下の日銀政策限界論自体も大袈裟であり、また、それ単独でとらえるべきではない。

 言い換えれば、それ以前に、いわゆる「ヘリマネ」観測があったからこそ、今の日銀政策限界論が存在しているワケだ。

 要するに、現在の限界論は、「ヘリマネ」観測が剥落した結果であり、過激な見方が修正され、違う方向の過激論が出ただけの話であろう。マーケットにおけるコンセンサスや観測は、いつも行き過ぎるから、今回の変調は決して珍しいケースではないと思う。

■7月までの切り返しこそがメインの動きか だから、足元の円高を、2016年7月までの行き過ぎた円安に対する修正と位置づければ、トレンドはよく理解できる。もっとも、修正という言葉自体、メインの動きでないことを暗示しており、足元で進行している円高もメインの動きではないということだ。

 となると、7月高値107.49円までの切り返しこそがメインの値動きになる可能性があり、修正はここまでだいぶ進んできたからこそ、そろそろ限界に突き当たり、反騰してくることだろう。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 米ドル/円は、6月安値を割り込まない限り、すでに「二番底」をつけたか、これからつけることになるだろう。

【参考記事】

●円高のクライマックスは英EU離脱時? 円高トレンド加速説に懐疑的な理由とは?(2016年8月19日、陳満咲杜)

 2015年の夏相場とは反対に、足元は「行き過ぎた」円高に対する修正段階にあり、7月高値もいずれ更新される蓋然性が高いのではないかと考えている。

 また、米ドル全体については、ドルインデックスの…
円高のクライマックスは英EU離脱時? 円高トレンド加速説に懐疑的な理由とは? ブログ

円高のクライマックスは英EU離脱時? 円高トレンド加速説に懐疑的な理由とは?

■米ドル/円に無視できないベアトレンド再開のサイン 米ドル/円が下値トライしている。前回のコラムで指摘した8月2日(火)の安値を割り込み、「インサイド」の下放れを果たしただけでなく、7月8日(金)の安値99.99円も一時、割り込んだので、ベア(下落)トレンド再開のサインとして無視できないと思う。

【参考記事】

●日銀政策限界で円高になるってホント? 夏バテ相場打破の鍵は8月2日の高値・安値(8月12日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 巷では、円高トレンドの加速といった見通しが圧倒的に多いが、米ドル/円の「節目破り」により、こういった見通しの勢いが増したと思う。

■円高トレンドには警戒しつつも、なお懐疑的な理由は? しかし、現時点において筆者は、円高トレンドを警戒しつつも、6月安値割れに至るという見方にはなお懐疑的であり、市場コンセンサスが合致すればするほど、実はトレンドが修正されやすいのでは?と疑っている。

 ちなみに、FX会社によって6月安値(6月24日英国民投票日)のレートは違ってくるが、大まかに言えば、98.95円~99.02円前後が同日安値の記録であり、現時点ではまだこの安値を下回っていない。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 筆者が円高トレンドの加速に懐疑的な、その根拠は極めてシンプルだ。

 8月2日(火)の安値100.68円を割り込んだ時点で、同日のローソク足を「母線」とした「インサイド」(ハラミ)の下放れは確認された。そうなれば、このケースで算出される目標レート、98.53円前後を早く打診しないと、下落モメンタムの加速が見られたとは言い切れないからだ。

 なにしろ7月8日(金)の安値99.99円も、いったん割り込んだのだから、本来、6月安値を割り込むのもたやすいことだったのだが、現時点まで割り込んでいないため、どちらかと言うと、「理屈通り」の値動きになっていないとみる。

 換言すれば、テクニカル上の重要な節目を割り込んだにもかかわらず、それと比例したトレンドの進行とモメンタムの加速が見られないのならば、性急な判断は避けた方が良いということだ。

 相場における天井や底は、往々にしてあとにならなければ、はっきりわからないとされている以上、積極的な逆張りはできないものの、高値や安値を追えるかどうかの判断については、慎重なスタンスをとりたい。

■英EU離脱が円高のクライマックスだった可能性 もっとも、2015年以来、筆者は一貫して円高トレンドの可能性を指摘してきたが、6月24日(金)に英EU離脱が決定した日をもって、米ドル/円の下値打診はすでに目標を達成した公算が高いのでは?と思うようになった。

【参考記事】

●英国のEU離脱でポンド暴落もこれ以上の下落には別材料が必要か。ドル/円も然り(6月24日、陳満咲杜)

 何しろ、相場の転換点は、往々にして大きなサプライズを伴った場合が多い。英EU離脱が大きなサプライズであった以上、円高のクライマックスを果たした可能性も大きいと思う。

 その上、筆者が円高トレンドの進行を一貫して指摘してきた理由は、他ならぬ、2015年6月までの円安トレンドの進行が「行き過ぎ」であったからだ。

 言い換えれば、足元で進行している円高は、本質的に2011年10月の安値を起点とした円安トレンドに対する修正であり、大局で見れば、今の円高トレンド自体がいわゆる「推進波」ではなく、「修正波」であるわけだ。したがって、そこにはおのずと限度がある。

米ドル/円 週足 (出所:ヒロセ通商)

 円高の限度を見極めるのは決してたやすいことではないが、手掛かりはある。円の実効レートを見ると、その5年移動平均が、6月安値とほぼ合致しているのだ。ここから、円は均衡状態にあることがわかる。

(出所:日銀のデータより、ザイFX!編集部が作成)

 2015年には5年移動平均から20%以上かい離していた状態がだいぶ解消してきたので、このあたりで円高の一服があってもおかしくなかろう。

 強調しておきたいのは、米ドル/円の値動きは…
日銀政策限界で円高になるってホント? <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>夏バテ相場打破の鍵は8月2日の高値・安値</i> ブログ

日銀政策限界で円高になるってホント? <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>夏バテ相場打破の鍵は8月2日の高値・安値</i>

■相場も夏バテ(?)で一進一退、米ドルの勢いがいまいち 夏バテの如く、為替市場は一進一退を続け、トレンドレスの状態を示している。ドルインデックスは95の節目をキープしているものの、上値も96半ばに制限され、中段保ち合いの様相を呈している。 

ドルインデックス 日足(出所:CQG)

 先週末(2016年8月5日)の米雇用統計が予想より良かったにもかかわらず、米ドル全体の勢いはいまいちだ。

 なにしろ、あの「最弱」とされる英ポンドがなお安値更新しておらず、ユーロは200日線以上をキープ、利下げされた豪ドルに至っては、一昨日(8月10日)までリバウンドし、高値を更新していた。 

英ポンド/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足) 

ユーロ/米ドル 日足(出所:CQG) 

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)

 トレンドレスの状況は、米ドル/円の値動きでもしっかり観察される。

 先週末(8月5日)米雇用統計の改善を受け、100.87円から切り返し、今週月曜日(8月8日)の高値102.66円へとつなげたが、一昨日(8月10日)、再度100.90円まで押して、昨日(8月11日)、また反騰してきた。

 足元102円の節目回復をもって、今週(8月8日~)の高値102.66円を再打診する勢いを示し、底割れを回避できた模様だ。 

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■米ドル/円の底割れを予想する声が多いが、果たして!? ウォール街では、モルガンスタンレーを中心に、米ドル/円の底割れを予想する声がなお多い。主な根拠は日銀が量的緩和やマイナス金利政策を推進しきれず、そろそろ政策変更の時期に差し掛かるといった推測にあるようだ。

 EU(欧州連合)も日本も、量的緩和政策が続いても効果が表れないから、ECB(欧州中央銀行)もBOJ(日本銀行)もそろそろ軌道修正しなければならない、といった理屈だ。

 結論から申し上げると、理屈が正しいとしても、為替相場の反応は別として考えたほうがよいかと思う。何しろ、政策変更=円買いといったロジックを検証するのに、過去の相場がよいヒントを出してくれているから、見逃せない。

 米ドル/円の好例は、何といっても2016年1月末に日銀がマイナス金利に踏み切った後の値動きだろう。2月から猛烈な円高トレンドが推進されたわけで、日銀政策がいわゆる「逆噴射」の市況をもたらした。

 したがって、仮に日銀が政策の効果が限定されると認め、また、これからの政策推進の余地が限定的と示唆するとしても、それによって円買いの方向に進むといった保証はまったくないはずだ。

 場合によっては前回のように「逆噴射」、つまり、日銀が白旗を揚げた時点でかえって円安の方向に動く、といった場合も想定される。相場は理外の理だ。

 要するに、「逆噴射」があったからこそ、相場のトレンドがどこにあるか、そして、どちらがホンモノかを一目瞭然で判断できる。この意味では、前回のコラムで指摘したように、本来、米ドル/円底割れの有無は、米雇用統計が改善された場合ではなく、芳しくなかった場合にこそ、より信頼できるシグナルが得られたはずだ。

【参考記事】

●雇用統計の結果が悪い方がいいワケは? 中銀不信により上昇中の究極の通貨って?(2016年8月5日、陳満咲杜)

 この意味では、日銀が政策をさらに推進していく場合よりも、日銀が敗北を認め、また政策の変更を図る場合こそ、円高の限界を計る好機になると思う。

 とはいえ、日銀の敗北云々は時期尚早で… 
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雇用統計の結果が悪い方がいいワケは? 中銀不信により上昇中の究極の通貨って?

■7年ぶり利下げ、英ポンドの金利がたった0.25%に! 昨日(2016年8月4日)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は2009年以来、7年ぶりの利下げを実施した。

英国の政策金利の推移(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)

 0.25%の切り下げで英国金利も過去最低の水準を更新した。あの英ポンドに、たった0.25%しか金利がつかないと思うと、なんとなく円のマイナス金利を容認してしまう気がする…。

■英国のマイナス金利を懸念して、英ポンド下落! ところで、今回の英利下げは予想どおりであり、また、国債買い入れ規模の拡大はやや市場コンセンサスと違ったものの、基本的には許容範囲内で、別にサプライズではなかった。

 なのに、英ポンドは大幅に下落してきた。発表直前まで英ポンドの上昇が見られたように、マーケットは利下げに反応したのではなく、カーニーBOE総裁の話やMPC(英金融政策委員会)議事録の基調に反応したと思われる。

英ポンド/米ドル 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 15分足)

 カーニー氏は「必要とされるあらゆる行動をとる」と強調、公開されたMPC議事要旨では「過半数のメンバーは2016年年末までに0%付近まで金利を引き下げると予想」と書かれていた。それにより、これから英国がEU(欧州連合)、日本のあとを追う形でマイナス金利の世界に入ってもおかしくない、といった連想が生まれ、英ポンドの売りが膨らんだ。

 実際、現段階では英国のマイナス金利予想自体はかなり飛躍したシナリオとなるが、EU離脱に伴うリスクが増大した結果、英中銀が景気後退を阻止するために全力で何でもやるといった姿勢が明確化されていたから、英ポンド売りの方が優勢になるのも自然な成り行きだった。

 MPCメンバー全員(9名)が利下げと量的緩和拡大を支持していたのは、英中銀の危機感の表れだと思われる。

■EU離脱で金融政策大転換を強いられた英国 以前は、米利上げ周期入りに続いて利上げを開始する国としてもっとも注目されていたのは英国だった。ところがEU離脱で利上げどころか、一転して利下げ、それにゼロ金利になりかねない情勢となると、英国経済の苦境が浮かび上がってくる。

 IMF(国際通貨基金)の予測では、今後3年間、英国のGDPは累計1.4%の減速となり、極端な場合、5.6%の減速もあり得る。経済見通しの急変が、英金融政策の大転換をもたらしたわけだ。

 英中銀の決定や示唆は米国の金融政策にも影響を及ぼす。世界的規模での量的緩和の流れが広がっていく中、米国のみ利上げを加速していくのもなかなかハードルが高い。

 米国が今年(2016年)、1~2回利上げするといった観測は一段と不確実になり、それは今晩(8月5日)の米雇用統計などの経済指標をもって検証されるものの、基本的には不透明さが増していくだろう。

■米ドルが今いち、強くなりきれない とはいえ、米国が仮に今年(2016年)、まったく利上げできなくても、世界主要国においては唯一利上げ周期に入っているから、米ドルは基本的に強くなるはずだ。しかし、現状を見る限り、米ドルの強さには、今いち、モメンタムが足りない。

 マイナス金利や量的緩和の最右翼、あのユーロでさえ、中段保ち合いを維持し、昨日(8月4日)、英ポンドが大きく下げたとはいえ、英ポンド/米ドルはそれでもまだ1.31ドル台をキープ、対円では再度102円の節目を割り込み、7月安値を再打診する勢いだ。

 豪ドルに至っては、今週(8月2日)、利下げしたものの、対米ドルではむしろ上昇しており、その結果、ドルインデックスは今週(8月1日~)かろうじて95の節目を維持しただけで、どちらかというと、弱さが目立つほどだった。

ドルインデックス 1時間足(出所:CQG)

 こういった市況を証左するように…