陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

金融市場における恐怖のピークは過ぎた? ドル/円は下がっても週足終値105円前後まで ブログ

金融市場における恐怖のピークは過ぎた? ドル/円は下がっても週足終値105円前後まで

■NYダウは切り返し、最悪な事態を織り込んだとみる トイレットペーパー買い占め騒動が続くなか、米国株は変動率を極端に拡大させながらも切り返しを果たし、前回コラムのタイトルのとおり、最悪な事態を織り込んだ、という見方が一段と証左されたと思う。

【参考記事】

●NYダウ暴落! 最悪の事態は織り込んだか。トイレットペーパー買い占めより安値を拾え!(2020年2月28日、陳満咲杜)

 もっとも、3月2日(月)のNYダウは1293.96ドルという過去最大の上昇幅を記録、2月27日(木)の1190.95ドルの過去最大下落幅の「汚名」を返上した。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 そして3月3日(火)にFRB(米連邦準備制度理事会)の緊急利下げがあっても上昇できず、反落したことで利下げショック云々と言われたが、翌日の4日(水)はまた切り返し、過度な悲観論をいったん退けたように見えた。

 しかし、昨日(3月5日)の反落もあって現状では悲観論の方がなお主流であり、リーマンショックの再来を危惧する声が大勢を占め、目先、米ドル/円の106円の節目割れもあって、マーケット心理が極端に悲観的になっていることも確かだ。

米ドル/円 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■サブプライム問題がリーマンショックを引き起こしたように… かなり手遅れとなったが、日本政府はやっと中韓などの国からの入国制限や強制隔離の政策を打ち出し、そのことが目先、マーケットの心理を一段と悪化させた可能性もある。状況の一段悪化も当然視されるだろう。

 そもそもFRBの緊急かつ大幅な利下げ自体、大きなサインとして警戒される節がある。

 緊急利下げは2008年以来と久々のことであり、事態の一段悪化が避けられないからFRBはあわてたのだろう、と多くの市場関係者がFRBの判断と行動を逆にリスクのサインと受け止めてしまった。そのため、利下げがあっても、株売りに走ったわけだ。

 無理もない、前例に照らして考えると、0.5%の緊急利下げがあった場合、その後も利下げが続き、まだ利下げが続くわけなので、状況の一段悪化を伴った過去の記憶が蘇る。

 2007年のサブプライム問題が2008年のリーマンショックを引き起こしたように、今回のコロナショックでより大規模かつ深刻なショックを引き起こしてしまう、いった連想は、どちらかというと目先ごく普通に正しいと思われる考え方である。

 とはいえ、マーケットにおける主流の考え方が正しいとは限らない上、往々にして広く受けいれられる考え方ほど、その後、裏切られるから、筆者は現時点では前回のコラムで述べた見方を維持する。

【参考記事】

●NYダウ暴落! 最悪の事態は織り込んだか。トイレットペーパー買い占めより安値を拾え!(2020年2月28日、陳満咲杜)

 コロナウイルスの世界的な蔓延は、なお進行中である目下において…
NYダウ暴落! 最悪の事態は織り込んだか。 トイレットペーパー買い占めより安値を拾え! ブログ

NYダウ暴落! 最悪の事態は織り込んだか。 トイレットペーパー買い占めより安値を拾え!

■米国株の大暴落は「慢心に対する代償」 パニックが広がっている。

 昨日(2020年2月27日)、NYダウは1200ドル近い続落となり、今週週明け(2月24日)以降、約3200ドルも下落、史上最大記録を更新した模様だ。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 原因はもちろん、コロナウイルスの蔓延がもたらした恐怖心、さらにHFT(High Frequency Trading)など、高頻度プログラム取引が主導する最近の相場の構造も一因になったかと思われる。

 AIなどの自動取引が介在すると、往々にして一方通行の相場になりやすい。売りが売りを呼ぶ現象が起こりやすいため、目先、相場は行き過ぎとなっている感を否定できない。

 もっとも、日本と同様、欧米も中国発生の大疫災を油断してきた経緯があった。NYダウは2月12日(水)でも高値更新していたから、武漢封鎖が1月23日(木)だったこと、そして、中国共産党の情報統制があったにもかかわらず、連日悲惨な事情が報道されていたことから考えても、日本を含め、政府もマーケットもいかに慢心し、あくまで「対岸の火事」と見ていたかがおわかりいただけるだろう。

 換言すれば、目先の暴落は、こういった慢心に対する代償を払った、という意味合いもあったかと思われる。

■WHOの「パンデミック」警告で市場の恐怖がピークに マーケットの恐怖は、WHO(世界保健機関)の「パンデミックになる可能性」の警告でピークに達し、昨日(2月27日)の大幅続落をもたらしたとみる。

 WHOに関しては、筆者の個人的な「独断と偏見」で言えば、最初から中国寄りの誤った情報を配信し、西側諸国を慢心させた張本人なので、もはや信用できず、「今さら何を言うのか、また、なぜ、今さら彼らの言葉に振り回されなければならないか」と思うが、やはりそれなりのインパクトがあり、皆さんの恐怖心が一気に煽られた結果、NYダウ史上最大の下落幅が作られたわけだ。

■トイレットペーパーを買い占めるなら安値を拾った方が得!? このような現象は、日常生活にも見られる。テレビを毎日見たり、新聞を読んだり、ツイッターなどで情報収集したり、マスクを買えなくなったりしても、皆さんはあくまで冷静だった(冷静というか、鈍感あるいは慢心の方がよりふさわしいかも)。

 しかし、安倍首相がいったん公立小中学校の早期休校を要請すると、一夜で一転してトイレットペーパーの買い占め騒動が発生し、フェイクニュースかと思われるほどの騒ぎとなった。

 言ってみれば、それまでの慢心や油断があったからこそ、今は一転してパニックとなり、その度合いも一層増していくのだ。

 マーケットも庶民の反応も、行き過ぎていることは間違いない。ゆえに、株式市場は本日(2月28日)にでも自立反発があると思われ、トイレットペーパーを買い占める時間があったら、マーケットを注意深くフォローして安値を拾った方が得だと思う。

■相場は最悪の状況を想定して一気に動く習性がある テクニカル上の検証はまだ性急かもしれないが、あえて言うなら、NYダウは連日ボリンジャーバンド下限の3σを打診、短期スパンにおけるオーバーシュート感が非常に強いと思われ、いつ自立反発があってもおかしくなかろう。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 重要なのは、良い見通しにしても、悪い見通しにしても、相場は最高、あるいは最悪の状況を想定して一気に動く習性があるということだ。だから、史上最大記録の下落をもって、米国株は最悪の状況の大半を織り込んだ可能性が大きい。

 さらに、値幅にしても市場心理にしても、もうリーマンショック級の衝撃なので、FRB(米連邦準備制度理事会)の緊急利下げは必至と思う。

 実際、FRBは9月まで75bp(0.75%)の利下げを実施するのではないかといった観測がすでに高まり、早ければ最初の措置が来週(3月2日~)にでも発動されるのでは…という見方さえある。

 いずれにせよ、利下げは必至なので、目先のパニック的な状況を緩和することは間違いない。中長期スパンの見通しはともかく、目先、米国株のリバウンドの可能性が大きいことは、テクニカルとファンダメンタルズの両方から測れるかとみる。

 日本株について、米ドル/円と同様、単純に値幅ではなく…
新型コロナの初動対応に失敗した日本政府。 円安は「日本売りそのもの」だと認識すべき ブログ

新型コロナの初動対応に失敗した日本政府。 円安は「日本売りそのもの」だと認識すべき

■現在進行中の円安は「悪い円安」 米ドル/円は一時、112円の大台を突破し、昨年(2019年)4月高値112.41円に迫っている。筆者は一貫して構造的な円安傾向を指摘してきたが、うれしい気持ちはまったくない。なぜなら、その背景にあるマーケットのセンチメントは歓迎できるようなものではないからだ。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 もっとも、円安にしても円高にしても、単にレートの変動なので良し悪しをつけるのが適切とは言い切れない側面もあるが、一国の通貨なので、やはり、通貨の強さはファンダメンタルズ上の属性を表すという考え方があり、それが今でも主流である。

 たとえば、戦後からバブル崩壊までの円高は「良い円高」、すなわち日本国力の増強に伴う円高と解釈され、その一方、バブル崩壊後、デフレ環境に陥った円高傾向は「悪い円高」(デフレの通貨は上昇傾向になるのが経済学の常識)と見るのが一般的である。

 では、円安の場合はどうだろう。筆者が円安傾向を指摘できた根拠は相場の内部構造に基づくものなので、ファンダメンタルズ上のロジックを必ずしも必要としないが、あえて言うなら、「デフレ脱出の円安」、すなわち「良い円安」を想定していた。

 しかし、現在進行中の円安は、ロジックやセンチメントで説明するならば、明らかに「不安の円安」、「リスクオフの円安」、すなわち「悪い円安」だと思う。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

■円安は「日本売り」そのものだと認識すべき 消費増税の失敗で、日本の2019年10月-12月期GDP(速報値)が年率換算で6.3%減と5四半期ぶりにマイナスとなったことを、今回の円安の背景として解釈する向きもあるが、それは明らかに間違っていると思う。

日本のGDP(年率換算)(出所:Bloomberg)

 従来のパターンなら、お決まりの株安・円高だったので、日本の成長率の低下や景気後退の懸念は円安ではなく円高を招くはずだ。要するに、よく語られる「リスクオフの円高」そのものである。

 そうなると、今回の円安は明らかに違う。その背景や市場センチメントをあえてロジック的に解釈するなら、日本政府の危機意識や危機対応能力に対する疑問や懸念というほかあるまい。

【参考記事】

●新型肺炎は「中国のチェルノブイリ事故」に!? 上半期の中国経済、ゼロ成長のシナリオも(2月14日、陳満咲杜)

 今回、新型肺炎の防疫に対する日本政府の慢心や不作為、あるいは手際の悪さは、度を越したといえるほどずさんなものなので、円安は「日本売り」そのものだと認識すべきだと思う。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 この部分に関して、もっとたくさん書きたいが、筆者は政治評論家でもない上、「反政府、反安倍」と思われたらいけないので、我慢することにした。

 もっとも、政府のみでなく、日本社会全体に危機感が足りないところも大きく、すべて政府の責任とは言い切れない側面もあるかと思う。

 中国で発生、また、進行中の悲劇を毎日テレビのニュースで見ても、また、新聞で読んでも、あくまで「対岸の火事」とみる風潮があり、一部専門家が流した「インフルエンザみたいなもの」といった誤った認識に安心させられ、政府も民間も慢心していたところも大きかったのではないかと思う。

■後手でも日本政府は新型コロナ対策を打つべきだった… 筆者は、最初からそのような事態に深い懸念を抱いてきた。筆者のツイッター(@chinmasato)では新型肺炎の危険性を繰り返し警告してきたから、ご覧いただければ筆者の主張をおおむねわかっていただけると思う。

 政府関係者の危機意識の欠如、そして、初動対応の失敗や防疫体制の不備は誰の目にも明らかなので、今さら説明する必要もなかろう。

 武漢封鎖(1月23日)以前の4日間だけでも、武漢から訪日した人は6000人弱と推計される。その全員がまったくコントロールされず、一部は日本を周遊してから中国に戻った突端に隔離された。

 そのことを自身のツイッターでも書いたので、その日付は1月29日(水)であったことを覚えている。その時点でも、もうすでに手遅れ感が強かったが、まだ挽回の余地はあったはずだ。

名古屋から帰国した武漢の方19名、上海到着途端隔離された。日本政府の脇甘さを嘲笑するような出来事。 pic.twitter.com/UiasDs04Jw

— 陳 満咲杜@ブルベアFX (@chinmasato) January 29, 2020 このような事態を見ればわかるように、日本政府の防疫意識は明らかにどこかおかしい。そして、後手でもいいから、政府が対策を打つべきだったが、まったく改善されず、本日(2月21日)に至った。

(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)

 ダイヤモンド・プリンセス号に…
新型肺炎は「中国のチェルノブイリ事故」に!? 上半期の中国経済、ゼロ成長のシナリオも ブログ

新型肺炎は「中国のチェルノブイリ事故」に!? 上半期の中国経済、ゼロ成長のシナリオも

■中国新型肺炎が広がる中、金融市場は驚くほど冷静 中国新型肺炎の広がりは悪化する一方だ。もともと信用できない中国政府公表の死者数でさえ急上昇の傾向を示し、日本でも死者が出始めた深刻な状況にも関わらず、株式市場や為替市場は驚くほど冷静な値動きを見せている。

 米国株の三大指数は、また揃って高値更新、米ドル/円は本稿執筆時点で110円の大台目前に迫り、日経平均は2万4000円の手前で推移している。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 中国の工業生産が大打撃を受け、世界のサプライチェーンがすでに深刻な問題に直面しているにもかかわらず、である。

 正直に申し上げると、筆者のような「強気一貫」な「楽天家」でさえ、今回の相場の反応に驚く。

 さらに、新型肺炎自体に関して、筆者は悲観的に考えているから、サプライズなしと言えばウソになる。

 それにしても、いろんな材料、いろんな見方、また、いろんな思惑を織り込んだか、今織り込んでいるのが相場であるから、相場のことを相場に愚直に聞くしかない。

 繰り返し指摘してきたように、悪材料が満ちる環境でも株高が維持され、さらに高値トライし続ける場合に、「相場が間違った」といった考え方をするのは危険なことであり、自分勝手なふるまいというほかあるまい。

 深刻な状況に直面しても、米国株をはじめとしてブル基調を維持できているのはほかならぬ、相場の内部構造がブルトレンドを指示、また、支えているからだ。

 悪材料を無視する相場は、バブルだの危険だのと言いやすいが、それに沿って行動すると(逆バリ)、大きな損失を招き、また、その損失に比例して相場がさらに上昇していく、という現象もよく観察されてきた。

 俗にいう「踏み上げ」の現象も、ブルトレンドが加速する重要な一因であることは見逃せない。

 ただし、いくら強気相場とはいえ、事態がさらに深刻化する場合は、やはり、途中のスピード調整を引き起こすだろう。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■中国新型肺炎は「中国のチェルノブイリ事故」に? 今回の新型肺炎の場合、いろんなウワサが飛び交い、真相がなかなかつかめないが、とにかくヤバいことだけは間違いない。下手すると、今回の件は「中国のチェルノブイリ事故」となり、中国共産党の統制を終焉させるきっかけになる可能性さえあると思う。

 あまり公に書けない部分もあるが、中国に最初に国境封鎖を申し入れたのが北朝鮮だったことは興味深い。表面上、北朝鮮は医療レベルが低いから恐れているといわれるが、本当は金正恩氏が他国よりいち早く情報を入手でき、また、その情報に基づいて決断せざるを得なかったのだとウワサされている。

 中国共産党の…
危の中に機あり。新型肺炎の危機感が強い ほど、米ドル/円の上昇につながる! ブログ

危の中に機あり。新型肺炎の危機感が強い ほど、米ドル/円の上昇につながる!

■「危の中に機あり」、株高・円安のトレンドに変化なし! 「肺炎自体のピークはこれからだが、マーケットに対する影響はもうピークを過ぎたか、近々ピークを越えていくと思う」、前回のコラムでは、このような記述をもって、2つの基本的な判断を強調した。

【参考記事】

●新型肺炎によるリスクオフは収まるとみる!ドル/円は近々高値更新か。120円も達成可能(2020年1月31日、陳満咲杜)

 1つは中国新型肺炎の広がりが続くこと、もう1つはそれがあっても株高・円安のトレンドが変わらないことだ。

 実際、米国株の主要3指数はそろって高値更新し、米ドル/円も110円の節目に再度接近、「打たれ弱い」とされる日経平均も2万4000円の大台に再トライするほど急反発した。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 渦中の上海総合指数でさえ、一時、昨年(2019年)8月安値を割り込んだものの、その後、切り返し、「底割れ」を回避した模様だ。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 相場は「理外の理」とされるが、「危の中に機あり」といったロジックは、実はその理外の理の中に常に含まれている。

 前回のコラムでも強調したように、今回の危機は逆に「出遅れたロング筋に参入の好機を提供してくれる」ことになったから、押し目買いのスタンスで臨んだのが正解だったと思う。

【参考記事】

●新型肺炎によるリスクオフは収まるとみる! ドル/円は近々高値更新か。120円も達成可能(2020年1月31日、陳満咲杜)

■ファンダメンタルズに振り回されての安易な逆張りは危険 もっとも、いわゆるファンダメンタルズ上の材料をもって、相場の高安を判断するのは極めてリスキーな考え方だ。

 そして、危機時においては、「相場が間違っている」と自分勝手な思い込みが一層強まり、相場におけるメイントレンドを見失うばかりか、往々にして逆張りに走る結果になりやすい。

 そして、なにより危険なのは、一見して「リスクオフの売り」とか、「過大評価の是正」といった「正当な論理」は「わかりやすい、また理解されやすい」から、安易な逆張りに走った結果、ショート筋の総踏み上げで逆に相場が一層上がる、という皮肉な状況につながりやすいことだ。

 株も為替も、こういった市場心理や価格形成のメカニズムが常にバランスを取って動いているから、「相場が間違った」といった思考ロジックは百害あって一利なしと言える。

 ここ2、3年の米国株はその典型であろう。散々「バブル」だの、「崩壊」だのと言われても高値更新し続け、今回の、深刻化の様相を呈している新型肺炎の蔓延があっても高値更新を果たした背景には、決してロング筋のみの力ではなく、多くの投機筋、すなわちショート筋の「功績」があったことも、容易に推測される。

 個別株では、最近の米テスラは最も典型的な好例…
新型肺炎によるリスクオフは収まるとみる! ドル/円は近々高値更新か。120円も達成可能 ブログ

新型肺炎によるリスクオフは収まるとみる! ドル/円は近々高値更新か。120円も達成可能

■WHOは緊急事態宣言もマーケットは冷静 中国新型肺炎が広がりを見せるなか、WHO(世界保健機関)はついに緊急事態を宣言した。

 一方、貿易や渡航を制限する必要はないとWHOは繰り返し強調。記事執筆時点で、マーケットも冷静にその決定を受け止めているように見える。

 米国株をはじめ、為替など金融市場は保ち合いに留まり、パニック的な反応がないばかりか、米国株の底堅さが改めて認識されるほど落ち着いている。

【参考記事】

●中国の新型肺炎では株高・円安のトレンドは変わらない! 押し目買いの好機到来!(1月24日、陳満咲杜)

 「WHOの見解には中国政府の工作が効いた」といった陰謀論も浮上してきたが、中国政府がWHOに圧力をかけたことに異議はないものの、WHOの言い分が間違っているとも思わない。

 なにしろ、世界のサプライチェーンにおける中国の役割を考えれば、仮にWHOが貿易制限を言い出しても意味はないと思われるからだ。

 工業生産活動は、今や中国なしでは世界が動かないと言っても過言ではないから、それがWHOの決定に左右されるはずはない。

 だから、米国が中国への渡航中止勧告(警戒レベル最高、事実上の禁止)を出しても、マーケットは冷静に受け止めている。

■新型肺炎のマーケットに対する影響はもうピークか 新型肺炎の蔓延はこれからピークに向かっていくと思われるが、認識された危険度に収まるなら、大きなパニックにはならないだろう。

 マーケットはいつも将来のことを予測し、また、その予測を織り込む形で価格を形成しているから、危機や危険そのものではなく、その度合いが認識された範囲に収まるかどうかを重要な物差しとして測るべきであろう。

 この意味では、肺炎自体のピークはこれからだが、マーケットに対する影響はもうピークを過ぎたか、近々ピークを越えていくと思う。

■押し目買いの最高のチャンスがくる可能性が高い 記事執筆時点で米ドル/円は109円前後を保ち、日経平均は2万3000円台を維持している。

 結論を言うのがまだ早いと思いつつ、あえて言うなら、筆者は今回の中国新型肺炎がもたらしたリスクオフの動きはこの程度で収まるのではないかと見ている。

 また、やや不謹慎な言い方をすれば、今回の肺炎の件自体は災難というほかあるまいが、逆に危機の文字どおり、危は機となり、出遅れたロング筋に参入の好機を提供してくれているのではないかと思う。

 こうした見方との整合性という意味合いにおいて、米ドル/円も日経平均も現時点で押し目買いの好機に恵まれるか、近々最高のチャンスがやってくる可能性が高いとみる。

■イラン危機時の安値に迫れない米ドル/円は依然強気 米ドル/円に関して、テクニカル上の視点から以下の2点を取り上げてみたい。

 まず、昨日(1月30日)の安値(108.58円前後)が200日移動平均線以上に留まったこと。

 次に、新型肺炎の危機が広がるなかで、1月8日安値(107.64円前後)にほど遠かったことだ。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 1月8日(水)といえば、イラン危機時だったから、今回との比較の意味合いにおいて絶好な対象となる。要するに、本質はいっしょである。

 1月8日(水)のイラン危機発生で米ドル/円は安値トライしたものの、一転して当日は高く引け、日足において強気「リバーサル」や「アウトサイド」のサインを点灯したことは本コラムで既述のとおり。

【参考記事】

●イラン戦争の心配はイランかった!? 出た~! 米ドル/円に調整完了のサイン!(1月10日、陳満咲杜)

 その延長線上で目下の危機を考えれば、よりわかりやすいと思うが、今回の危機があっても1月8日安値に迫れないなら、同日の強気サインがなお有効ということだ。それが意味することは、米ドル/円の昨年(2019年)8月安値(104.45円前後)を起点としたメイントレンド、すなわち上昇波がなお継続される、ということに尽きる。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 イラン危機にしても、今回の新型肺炎にしても、材料面の危機度は視点によってまったく違ってくるが、市場参加者の予測や思惑の集大成と言えるマーケットの値動きのほうが正しいはずなので、メイントレンドはかえって証左されたと思う。

 もっとも、本コラムで指摘したように、米ドル/円は今年(2020年)において…
中国の新型肺炎では株高・円安のトレンド は変わらない! 押し目買いの好機到来! ブログ

中国の新型肺炎では株高・円安のトレンド は変わらない! 押し目買いの好機到来!

■中国の新型肺炎深刻化でリスクオフムードだが… 中国の新型肺炎の深刻化を受け、いくぶんリスクオフの動きが出てきた。案の定、「打たれ弱い」日経平均と米ドル/円はともに反落し、短期スパンにおける円高の進行はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)でも確認されている。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 もちろん、「打たれ弱い」かどうかは比較しないと言えないが、日経平均と米ドル/円がリスク要素により敏感であることは、過去の相場で検証され、また周知されている。

 実際、昨日(2020年1月23日)、米ナスダック総合指数やS&P500はまた高値更新していたから、米国株において同じようなリスクオフの動きがあったとは言えない。

 NYダウの調整があっても、そもそも連日高値を更新したあとの正常な調整の範囲に留まっているように見えるから、リスクオフ云々にはほど遠い。

 となると、日経平均も米ドル/円も、いくぶんリスクオフの動きが見られたとしても、過度な深読みは要らないだろう。中国の新型肺炎の拡がりを根拠にリスクオフの株売りや円買いを仕掛けるのは短絡的な行為であり、継続した値動きになるとは思わない。

 本格的なリスクオフなのに、その反応が日本株や米ドル/円だけに出る、ということは絶対にないから、米国株の基調が維持される限り、杞憂というか、必要以上の懸念や行動は要らない。

■今回の円高は出遅れたロング筋にとって好機! そもそも株高・円安のトレンドがホンモノであれば、これぐらいの材料でトレンドが終焉するはずもない。

 この視点では、目下の材料があったからこそ、出遅れたロング筋にとっては参入の好機ではないかと思う。少なくとも現時点では、日経平均も米ドル/円や主要クロス円も日足におけるブル基調を維持しているから、円高トレンドへ転換するサインが点灯されない限り、先走りの仕掛け(ショート)は避けるべきであろう。

 材料があるからと、その材料から勝手に連想し、また、思惑を膨らませて性急な逆張りを仕掛けたりして結果的に大負け、といった事例は投資の世界では枚挙に暇がない。

 最近の好例はイラン危機であろう。イランによる米軍基地攻撃でイラン戦争を連想し、米国株を含めた株売りや円買いを仕掛けた投機筋はその後の上昇に踏み上げられ、大損したことは記憶に新しい。つまるところ、相場より自分が賢いと思わず、相場より先走りしないのが一番賢いかもしれない。

■株価2割高を期待できるサインが出現! もっとも、米ドル/円にしても日経平均にしても、いくぶんリスクオフの傾向を示したものの、値幅は限定的で、スピード調整の範囲に留まっているから、市場参加者の多くはロングポジションの決済は行ったとしても、本格的なショートポジションは建てていないことが暗示されている。

 やはり、ブル(上昇)基調が維持される相場において、逆張りできるテクニカルの根拠があまりないから、性急な行動は取れないと判断する向きは多いだろう。

 実際、日経平均は米国株に大きく出遅れたものの、堅調な基調を保ち、また、歴史的なシグナルを形成しようとしている。

 本日(1月24日)のブルームバーグの報道によると、日経平均の月足では12カ月移動平均線と24カ月移動平均線のゴールデンクロスが完成間近であり、同クロスは過去40年で4回出現、そのうち3回大幅高をもたらした経緯があったから、今回も現在の株価から2割高を期待できるという。

日経平均 月足(出所:Bloomberg)

 こういったサインの有効性や、今回当たるかどうかの検証問題はともかく、大事なのは、今はブル基調にあり、また、ブル基調は修正されるどころか、ますます強化される可能性が大きいことだ。

 ゆえに、一時的な材料の浮上でリスクオフの動きがあっても、スピード調整の範疇に考えるべきで、メイントレンドをしっかり見据え、また、徹底的にトレンド・フォローするのが、本当の賢いやり方だと言える。

 「徹底的」と強調するのも理由が…
2020年は相場が動く! ドル/円は1月中にも 111円へ。でも円高ならターゲットは90円!? ブログ

2020年は相場が動く! ドル/円は1月中にも 111円へ。でも円高ならターゲットは90円!?

■リスクオンの流れが一段と鮮明に 米中貿易協定は第一段階の合意で一件落着、米国株は当然のようにまた史上最高値を更新、米ドル/円も昨年(2019年)年末高値の更新を果たしている。前回のコラムで指摘したとおり、イラン戦争が杞憂に終わった以上、リスクオンの流れが一段と鮮明になったわけだ。

【参考記事】

●イラン戦争の心配はイランかった!?出た~! 米ドル/円に調整完了のサイン!(2020年1月10日、陳満咲杜)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 もっとも、米中合意があっても、あくまで最終協議ではない上、中国側が合意内容を実行できるかどうかはわからない。あくまで私見であるが、共産党政府のロジックや今までやってきた経緯から考えると、筆者は合意遵守の可能性に悲観的見方を持つ。

 この話題を展開するのは大変なので、ここでは結論のみを申し上げておくが、言いたいことは1つ。米中対立は歴史的なテーマであるだけに、軋轢がこれでなくなるという考えは幼稚すぎる。

 とはいえ、相場に対する影響はまた別だ。2018年からだいぶ猛威を発揮してきた分、目先は形式的といえども一件落着なので、ほぼ完全に織り込まれただろう。

■米国株は長期スパンで強気変動にあることを重視すべき また、より重要なのは、米中対立は深刻化したものの、米国株をはじめとして相場はブル(上昇)基調を保ってきたから、相場の内部構造がより長いスパンにおける雄大な強気変動にあることが示唆されているということだ。この点だけは繰り返し強調する価値があり、また、大局観として何よりも重視しなければならないと思う。

 相場というものは、そもそも事前どころか、途中でもなかなかメイントレンドの在り方がわからないものだ。「2008年のリーマンショックを経て、2009年の底から米景気が11年もの間拡大し、また、株価は雄大なブルトレンドを維持でき、さらに史上最高値を更新し続ける」ということを、ウォール街の王者を含め、誰が想定できただろうか。

NYダウ 月足(出所:Bloomberg)

 事前にはもちろん、途中でも懐疑論が一杯出てきて、米国株の頭打ちやベア(下落)レンド転換といった予測は耳にタコができるほど聞かされてきた。2018年から、米中対立もあって、機関投資家でさえ総弱気となり、米国株の暴落が叫ばれてきた経緯からして、トレンドフォローというロジックや行為は、まさに言うのはたやすいが、実行するのは不可能に近いほど至難ということがわかる。

 さて、為替相場は米国株ほど明確なトレンドが出ていない…
イラン戦争の心配はイランかった!? 出た~! 米ドル/円に調整完了のサイン! ブログ

イラン戦争の心配はイランかった!? 出た~! 米ドル/円に調整完了のサイン!

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

■年末年始のクラッシュ期待は裏切られた 年末年始の薄商いで危惧された「クラッシュ」は来なかった。円高傾向で、また想定外のイラン危機があったものの、米ドル/円は2円程度の振れ幅しかなく、クラッシュと呼ぶには程遠かった。

【参考記事】

●なぜ、フラッシュ・クラッシュは心配ない? 2020年の米ドル/円は120円へ上昇!(2019年12月26日、陳満咲杜)

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView)

 そして、散々「割高」とか、「危ない」とかと言われる米国株は昨日(1月9日)、また主要3指数が揃って高値(もちろん史上最高値)を更新。イラン危機でリスクオフの再来を祈った一部の市場参加者を嘲笑うような値動きを見せた。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 株も為替も、「落ちてほしい」と祈る方が多いようだ。

 評論家タイプは自分の仮説(米国株バブルの破裂など)を証明したい、すでにショートポジションを建てている投機筋は踏み上げられるのが怖い、また、ロングポジションを持たずに深い押しを期待している方も多いなど、立場はそれぞれだが、イラン危機だから、今度こそ落ちてくるに違いないと思ったところ、今度も見事に裏切られた。

■イラン戦争など杞憂。心配はイランかった イラン危機に関する報道はたくさんあるので、ここでは省略するが、結論から申し上げると、そもそもイラン危機はともかく、イラン戦争などは杞憂で、最初からその心配は「要らん」であった。

 常識をもって考えれば、イラン危機があったからこそ、押し目買いのチャンスであった。

 なぜなら、イランは長年、米国の制裁を喰らい、戦闘機などの国防技術は前世紀後半の水準を維持するのが精いっぱいで、対米正面衝突に耐えられないのが、もはや世界の常識。その後ろに控えるロシアも、自らが出てきて米国と戦うほどイランを支援できるとは考えられない。

 中東の情勢はかなり複雑だが、政治と宗教が一体化しているイラン政権は、同じく政教一致のサウジアラビアを宿敵としていること、また、イランは中東でさえ孤立していることも広く知られる常識だから、もし、米国と開戦すれば、イラクのフセイン政権の二の舞になる運命は明らかだ。

 ゆえに、テロ作戦の指揮官が米国に殺害されたぐらいで対米開戦のシナリオを立てる方の多くは、前記の常識が足りないか、冷静に考えていなかったのでしょう。また、相場が「落ちてくる」と祈る一心で、材料を過大評価した側面も大きかったと思う。

【参考記事】

●2020年の注目材料とトレード戦略はコレ! オリンピック後の景気後退は都市伝説!?(1月9日、今井雅人)

●イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?(1月9日、西原宏一)

●米ドル/円は、新たなレンジで戻り売り! 中東情勢緊迫化は、短期で決着がつきそう(1月7日、バカラ村)

■相場は詭道なり。「危」は「機」だった いずにせよ、その後の米軍基地の攻撃は、イラン側が事前通告したか、入念に攻撃目標をわざと選んだ結果、米国軍人の死傷者がゼロという展開となった。そのあたりから一転してリスクオンのムードとなり、これが米国株の最高値更新につながったわけだ。

 言うまでもないが、高値更新できたのはロング筋の動きのみでなく、ショート筋(イラン危機で新規参入も多かったと推測される)の踏み上げによる側面も大きかっただろう。

 相場は詭道なり(※)。詭とは、危ないと言う「騙し」となり。

(※編集部注:「相場は詭道なり」とは、相場に勝つためには、買い手と売り手がお互い可能な限り、手段を選ばず行動するといった意味の相場格言。孫氏の名言「兵は詭道なり」をもじったもの)

 今回の一件で、改めて相場の真実を勉強できたのではないかと思う。まさに、日々是勉強、そして「危」は「機」となり、である。

■米ドル/円に調整完了のサイン! 米ドル/円におけるサインも鮮明である。1月8日(水)に一時、107.64円をトライしたものの、その後は一転して、109円超えの大引けをもって大陽線を形成。プライスアクションの視点では、いくつかのサインを同時点灯した。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●特徴的なローソク足の見方【前編】 1本でも相場の先行きを教えてくれる!?

●特徴的なローソク足の見方【後編】 売り買い拮抗は相場の転換を示唆!?

 まず、直近の値動きで言えば、値幅が大きかったので、大陽線をもって前日(7日)の罫線を「かぶせ」、強気アウトサイドのサインを点灯した。同時に、安値をトライしてからの反発だったので、強気リバーサルのサインでもあり、これらが調整完了の可能性を強く示唆している。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 さらに、見逃せないのは、昨年(2019年)11月安値の一時的な下放れが、結果的に「ダマシ」であった可能性が大きいことだ。

 これから2019年末の高値の更新があれば、典型的な「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯、一段と上値余地が拡大するでしょう。

 本日(1月10日)は米雇用統計があり、また一波乱も想定されるが、仮にこのままキープできれば、週足でも強気リバーサル、またはアウトサイドのサインが確認され、やはり上値打診の可能性が高いとみる。

米ドル/円 週足(出所:TradingView)

 もう1つの注目点はやはり…
なぜ、フラッシュ・クラッシュは心配ない? 2020年の米ドル/円は120円へ上昇! ブログ

なぜ、フラッシュ・クラッシュは心配ない? 2020年の米ドル/円は120円へ上昇!

■懸念されるフラッシュ・クラッシュは心配ない 年末が近づき、為替相場における関心事は「クラッシュ」の懸念ではないかと思う。

 今年(2019年)年初のフラッシュ・クラッシュはまだ記憶に新しく、トレーダーが神経をとがらせているのも納得できる。なにしろ、米ドル/円は2019年年明けから急落、1月3日(木)には一時105円の節目割れを果たし、1日で4円ほどの下落幅を記録したわけなので、ロング筋なら戦々恐々とするのも理解できる。

【フラッシュ・クラッシュに関する参考記事】

●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(2019年1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)

●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?(2019年1月17日、高城泰)

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 とはいえ、結論から申し上げると、今回は、年末年始における変動リスクはあるものの、2019年年初のようなクラッシュを繰り返すリスクは小さいと思う。理屈はシンプル、環境が変わったからだ。

 円の急騰はリスクオフの値動きと解釈すれば、2019年年初のクラッシュはほかならぬ、2018年年末の日米株の急落を受けた結果であり、また、リスクオフの一環と理解できる。

【2018年年末の日米株急落に関する参考記事】

●2019年 謹賀新年:大暴落と大暴騰に波乱の予感!? 三億円事件193回分の騒動はもうご免(2019年1月1日)

 しかし、2018年12月末のNYダウは2万1712ドル、同時に日経平均は1万8948円の安値を記録したのに対し、今は、NYダウを含め、米主要3指数は歴史的な高値圏をキープしており、日経平均も2018年10月高値に迫るまで上昇してきたから、明らかにリスクオンである。

 リスクオンの環境におけるフラッシュ・クラッシュは想定しにくい上、年末年始の薄商いの状況における変動率の拡大はあったとしても、それが円高とは限らない。言い換えれば、2018年年末や2019年年初の環境とまったく違っているから、今回はクラッシュをあまり心配しなくてもよいかと思う。

■フラッシュ・クラッシュは「買い」の好機だった もっとも、2018年年末株の急落や2019年年初の為替市場におけるクラッシュは、ともに逆張りの好機であったことは見逃せない。

 米国株の方がより良いタイミングだったのに対して、米ドル/円の方はその後も波乱となったものの、1月安値から4月高値まで6円超の値幅があったから、逆張りのポジションは、利益確定の余地が十分あったはずだ。

 この意味では、米ドル/円の本当のロング筋なら、むしろクラッシュの再来を歓迎するのではないかと思う。なぜなら、米ドル/円はこれから上放れする可能性が高いから、一時的な急落があれば、それは絶好の押し目を提供してくれることになるからだ。

 が、前記のように、今回はこのようなチャンスは期待できない可能性が大きいから、あくまでたとえ話であることを記しておきたい。

■2020年はリスクオン相場の継続、変動率も高まる! 当然のように、2020年の相場見通しに関して、筆者の見方は一貫しており、変わっていない。

 基本的にはリスクオン相場が継続するとみており、株高・円安といったメインシナリオが引き続き有力視される。また、株のパフォーマンスに比べ、米ドル/円の方がだいぶ「遅れている」ように見えるから、2020年こそ米ドル/円が「追ってくる」のではないかと思う。

 言い換えれば、来年(2020年)こそは変動率が高まり、米ドルの上値余地も拡大するだろう。

 「来年こそ」と強調するのには、理由がある。

 2018年の米ドル/円の変動幅は10円程度とずいぶん小さかったので、2018年年末には「2019年こそ」と思っていたところ、見事に裏切られた。今年(2019年)の米ドル/円の変動幅は8円程度なので、「史上」最低水準に落ち込み、もっとも「動かない」年となった。この米ドル/円の膠着状況はやはり「異例」である。

 だからこそ、その反動で来年(2020年)は比較的大きく動くのではないかと思う。比較的と言っても「正常」の15円~20円程度の変動で考えてみたいところなので、執筆中の現時点の109.50円前後を基準にして2020年相場のターゲットを探ってみたい。やや乱暴な測り方だが、円安なら124.50円前後、円高なら94.50円前後の目標が得られる。

米ドル/円 週足(出所:TradingView)

 相場は一直線に進むとは限らないから、このような一直線な測り方ではおかしいだろう、というお叱りが聞こえてきそうだが、来年(2020年)は今年(2019年)のような動かない相場の継続か、一方通行の相場になるかと聞かれるなら、「一方通行」とまでは言わなくても、比較的トレンドがはっきりした相場になりやすいと思う。

 つまり、歴史的な、「異常」に低い変動率が2年連続続いたから、3年連続の可能性は小さいと思う。そして、ブレイクする方向があれば、下(円高)より上(円安)の確率が高いから、2020年こそ米ドルの上値を追いたい。

 円安トレンドが展開されるとする根拠は、ごくシンプル…