西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

豪ドルはなぜ、急落しているのか? <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>豪州はゼロ金利へ向かっているとの予想も!?</i> ブログ

豪ドルはなぜ、急落しているのか? <i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>豪州はゼロ金利へ向かっているとの予想も!?</i>

■米ドル/円は105円台到達で調整局面入り みなさん、こんにちは。

 「上海合意」(※)による米ドル高是正がウワサされる中、日本のゴールデンウィーク中に米ドル/円は一時、105.54円まで急落しました。

(※編集部注:「上海合意」とは2月に開催されたG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)において交わされたとマーケットでウワサされていること)

【参考記事】

●新年度に入りドル/円はすでに5円下落! 安倍首相は消極的も介入はあり得るのか?(4月12日、西原宏一&松崎美子)

●上海合意で「株高・資源高・米ドル安」が進行中だが今後の狙いはユーロ/円の上昇(4月21日、西原宏一)

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 このコラムでご紹介してきたとおり、米ドル/円は105円が最初のターゲットであったため、いったん調整局面入り。確認になりますが、米ドル/円の105~106円がいったんのサポートになる背景は下記のとおり。

【参考記事】

●行き詰まったアベノミクス。ヘッド&ショルダー完成のドル/円は105円台へ下落の公算(2月12日、西原宏一)

●4月以降、国内は円安材料満載。それでもドル/円が105円へ下落する展開はある?(3月31日、西原宏一)

 まず、米ドル/円の115円はヘッド・アンド・ショルダーのネックライン。2015年6月高値125円から115円の値幅は10円です。

 米ドル/円は115円のネックラインが決壊しているため、下値のメドとしては、115円から10円下げて105円になります。

米ドル/円 月足(出所:CQG)

 そして、上海合意で米ドル高是正が決められたと仮定すると、調整幅としては最低15%。米ドル/円は2015年6月高値水準となる125円からの15%は106円。20%だと100円となり、まず最初のターゲットである106円に到達しました。

米ドル/円 月足 (出所:CQG)

 さらに、アベノミクス以降、米ドル/円をサポートしてきたのが200週移動平均線。

 この200週移動平均線は現時点で105.38円に位置しており、今回の局面でもこの200週移動平均線が米ドル/円をサポートした形です。

米ドル/円 週足(出所:CQG)

 上記のように、米ドル/円は105円台という最初のターゲットに到達。結果、米ドル/円は調整局面入りとなり、当面105~110円でのレンジ圏内でのもみ合いとなる公算が高まっています。

米ドル/円 日足(出所:CQG)

 ただ、中期の円高傾向は変わらず、調整が終了すると再び円高の流れに戻ると想定しています。

米ドル/円 週足(出所:CQG)

  一方、今月(5月)に入って下げ足を速めて来たのが豪ドル…
日銀ゼロ回答&初の為替監視リスト入り!  米ドル/円は106円台到達で目標は100円に ブログ

日銀ゼロ回答&初の為替監視リスト入り! 米ドル/円は106円台到達で目標は100円に

■日銀のゼロ回答をきっかけに、米ドル/円は急落 前回コラムでご紹介したように4月上旬、5円弱暴落した後の米ドル/円は4月末に向けて調整局面入り。

【参考記事】

●上海合意で「株高・資源高・米ドル安」が進行中だが今後の狙いはユーロ/円の上昇(4月21日、西原宏一)

 4月22日(金)には、ブルームバーグの日高記者による「日銀が銀行への貸出金利にもマイナス金利を適用することを検討する」との報道が出たことも影響し、米ドル/円の調整は加速、一気に111.91円まで急騰。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 そして、世界中の注目を集めた日銀金融政策決定会合ですが、日銀の発表はサプライズのゼロ回答、つまり「据え置き」。

【参考記事】

●日銀追加緩和見送りで円全面高に! ドル/円は一時、108円台後半まで急落!

 マーケットの期待を大きく裏切った形になった日銀の決定を受け、米ドル/円はメイントレンドに回帰。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 つまり、上海合意のもと、米ドル/円はメイントレンドである米ドル安に回帰しました。

【参考記事】

●上海合意で「株高・資源高・米ドル安」が進行中だが今後の狙いはユーロ/円の上昇(4月21日、西原宏一)

■日本が初の「為替監視リスト入り」で介入の可能性低下 日本のゴールデンウイーク前日(4月28日)の為替市場では「日銀のゼロ回答」というサプライズで急激に円高が進行。

 加えて、その翌日(4月29日)には、日本の「為替監視リスト入り」という驚愕の報道で米ドル/円は一気に106円台前半まで急落。

米為替報告、日中独など大幅な黒字国5カ国を監視リストに

米財務省は29日、半年ごとに議会に提出する為替報告書のなかで、日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5カ国・地域の経済政策に懸念を示し、大幅な黒字を抱えていることを主な理由に、新たに設けた監視リストに載せた。

米議会では不公平な外国為替慣行への対処に関する条項を盛り込んだ法律が今年に入り成立しているが、財務省は今回初めて同条項を利用した。

5カ国は一段と厳しい監視となるすべての基準は満たさなかったものの、財務省は5カ国の経済トレンドと外国為替政策を注意深く監視するとしている。今回の為替報告でも為替操作国の認定はなかった。

日本に関連しては、ドル/円市場は秩序立っていると指摘。すべての20カ国・地域(G20)、主要7カ国(G7)参加国・地域は為替政策をめぐるコミットメントを順守する必要があるとの立場をあらためて強調した。

中国については、ここ数カ月は外国為替市場に大規模な介入を行なっていると指摘。為替相場の目標をより明確に示せば、市場の安定化につながるとした。また、人民元相場は中期的に実質的に上昇するとの見方も示した。

また、中国、ドイツ、台湾、韓国では原油安により国庫が潤ったと指摘。ドイツについては、経常黒字が世界で第2位の規模に拡大しているとし、同国は内需押し上げにこれを振り向けられるとの見方を示した。

台湾については、前年にかけて持続的に外為市場への介入を行なったとし、介入を特別な状況のみにとどめるよう呼びかけるとともに、透明性の向上も訴えた。韓国に対しても、外為市場への介入を控えるよう呼びかけた。

出所:ロイター

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

 日本がこの監視リストに入ったのは、初めて。この報道が「日本の介入の可能性」を急激に低下させることになりました。

 ただ、この報道に対して、麻生財務相が下記のように反論…
上海合意で「株高・資源高・米ドル安」が 進行中だが今後の狙いはユーロ/円の上昇 ブログ

上海合意で「株高・資源高・米ドル安」が 進行中だが今後の狙いはユーロ/円の上昇

■中期的に円高変わらずも、米ドル/円は調整局面が継続 みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでご紹介したように、今月(4月)上旬、一気に5円弱急落したあとの米ドル/円は調整局面を継続しています。

【参考記事】

●パナマ文書が安倍政権の爆弾になる!? 原油本格反発のカギ握るドーハ会合に注目(4月14日、西原宏一)

 ドーハ会合の決定を受け、今週(4月18日~)も再び米ドル/円は107円台に突入しましたが、今回も107円台後半をブレイクできず反発…。

 中期の円高の流れは変わらずも、当面、米ドル/円は調整局面が継続。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■上海合意のもと、「株高・資源高・米ドル安」進行中 米ドル/円での米ドル安はいったん沈静化しましたが、上海合意のもと、「株高・資源高・米ドル安」は進行中…。

【参考記事】

●安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(4月7日、西原宏一)

 NYダウはついに1万8000ドルを回復、ドーハ会合での失敗にも関わらず原油は反発。鉄鉱石を始めとする商品市況は上昇。

NYダウ 日足(出所:CQG)

WTI原油先物 日足(出所:CQG)

鉄鉱石 日足(出所:CQG)

 資源国通貨である豪ドル/米ドルは0.78ドル台を回復、節目の0.8000ドルをうかがう展開で米ドル安へ。

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)

 また、前述のように、米ドル/円は107円台まで急落する米ドル安となっています。

  しかし、こうした環境下、米ドル安が進んでいないのが…
パナマ文書が安倍政権の爆弾になる!? 原油本格反発のカギ握るドーハ会合に注目 ブログ

パナマ文書が安倍政権の爆弾になる!? 原油本格反発のカギ握るドーハ会合に注目

■米ドル/円はダブルボトムを確認して調整局面入り 本邦の新年度が始まった4月の為替相場ですが、わずか1週間超で米ドル/円は5円急落と円高が進行。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 通常のボラティリティでの米ドル/円は4円程度で流れを切り返すことも多いのですが、今回は戻しもなく、一気に5円急落しています。

 そして、今週(4月11日~)前半に107.65円レベルでダブルボトムを確認してようやく調整局面入り…。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 この流れが継続するのかどうかのカギを握る重要なイベント「ドーハ会合」が今週末、4月17日(日)に開催されます。

【参考記事】

●新年度に入りドル/円はすでに5円下落! 安倍首相は消極的も介入はあり得るのか?(4月12日、西原宏一&松崎美子)

■原油本格反発のカギを握る「ドーハ会合」 今週(4月11日~)、グローバルに株式が回復し、米ドル/円が回復したことの背景には原油の反発があります。

 今週(4月11日~)の原油相場は、200日移動平均線に向けて反発。これがグローバルなリスク許容度の改善に大きな影響を及ぼしています。

WTI原油先物 日足(出所:CQG)

 そして、原油の反発が本格化するかどうかのカギを握るのがドーハ会合。

 今週末、4月17日(日)にドーハで開催されるOPEC(石油輸出国機構)加盟13カ国+4カ国(ロシア、オマーン、バハレーン、メキシコ)の会議で、増産凍結の合意がなされるのかどうかが大きなカギを握っています。

 ドーハ会合に加えて注目が集まっているのが「パナマ文書」…
安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に! ブログ

安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!

■上海合意の信ぴょう性増し、米ドル安要因に… 新年度入りした為替マーケットでは、米ドル/円が続落。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 その背景には、前回コラムでご紹介した原油が200日移動平均線で上値を抑えられ、反落したこともありますが、さらなる米ドル安要因は、上海合意。

【参考記事】

●4月以降、国内は円安材料満載。それでもドル/円が105円へ下落する展開はある?(3月31日、西原宏一)

 上海合意とは、2月26日~27日に上海で開催されたG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)において、非公式ではあるのものの為替市場でのゲームチェンジとなる合意が交わされたのではないか?というマーケットの憶測。

 その内容は以下の2点。

・FRB(米連邦準備制度理事会)は資源国の通貨や株の暴落をさけるために利上げを急がないという国際公約をした

・中国人民元の切り下げを含め、各国の通貨安戦争を回避する

 当初、この上海合意は、1985年のプラザ合意と同様の文脈で報道されたこともあり、一部のマーケット参加者の憶測にしか過ぎなかったのですが、信ぴょう性を増したのが、まず、3月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)でなされた、イエレン議長の声明でした。

■イエレン議長のハト派声明を受けて米ドル下落 3月は多くの米地区連銀総裁がタカ派なコメントを繰り返し、米国では2015年12月に続き、FRBの利上げ期待が高まっていました。

 その状況下、3月末に開催されたFOMCで、イエレン議長が想定以上にハト派的なコメントをしたことが報道されます。

 この報道は、前述の「FRBは利上げを急がないという国際公約をした」とのマーケットの憶測と合致します。

3月末に開催されたFOMCでイエレン議長は想定以上にハト派的なコメントをした。これは上海合意によるマーケットの憶測と一致する (C)Bloomberg

 マーケットでは、米国の連続利上げを織り込みつつあったため、このコメントにより、米ドルは反落。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 米利上げ予測の後退により、米国株は続伸。

NYダウ 日足(出所:CQG)

 ここまではリスクオンの流れですが、一方、日本株は反落。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 イエレン議長のハト派コメントを受け、対円でも米ドル安が進行。

 日本株は「米ドル安・円高」への耐久性がなく、円高により日経平均はあっさり反落。

 この日本株の円高への耐久性のなさは、4月1日(金)に発表された日銀短観も大きく影響しています。

 4月1日(金)に発表された日銀短観で大企業・製造業の経常利益見通しは、2016年度はマイナス1.9%と減益見通し…。さらに、この業績見通しの前提として使われている為替レートは117円。

 発表された時の米ドル/円の為替レートは111円台でしたので、乖離幅は6円。仮にさらなる円高となると企業の減益幅が大きくなることから、この局面では通常以上に、日本株は円高に対する耐久性がなかった状態とも言えます。

 急激な為替の変動に対しては、当局が「介入」という手段をとるとも言われていますが、こちらも後述の安倍首相へのインタビューにより否定され、4月6日(水)の欧米市場で、米ドル/円は110円の大台をあっさり割り込んでしまいます。

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

  急速な円高のきっかけは、次のとおり、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が安倍首相へ…
4月以降、国内は円安材料満載。それでも ドル/円が105円へ下落する展開はある? ブログ

4月以降、国内は円安材料満載。それでも ドル/円が105円へ下落する展開はある?

■2016年前半の為替相場を振り返ると… みなさん、こんにちは。

 ここでは、今年(2016年)のこれまでの為替の動向をチェックしてみたいと思います。

 今年(2016年)は、米ドル/円と英ポンド/円の急落がコンセンサスとなっていました。

【参考記事】

●イースターに向けて調整相場入り。通貨高牽制など売り材料多い豪ドルは急落警戒!(3月24日、西原宏一)

 まず、以前もご紹介させていただいたとおり、米ドル/円の今年(2016年)の目標値は、110円程度でした。

【参考記事】

●2016年のドル/円は110円程度まで下落も。Brexit巡る国民投票に向け英ポンドは…!?(西原宏一&松崎美子)

 その米ドル/円ですが、2月11日(木)のSQ(※)ショック時に目標値に早々に到達。

(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている)

【参考記事】

●行き詰まったアベノミクス。ヘッド&ショルダー完成のドル/円は105円台へ下落の公算(2月12日、西原宏一)

●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)

米ドル/円 日足 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 次にBrexit(英国のEU離脱)を背景に英ポンド/米ドルの暴落というのもテーマになっていました。

【参考記事】

●月足終値で1.40ドル割れなら31年ぶり! 英ポンドを暴落させたボリスショックとは?(2月25日、西原宏一)

●NYダウ崩れずリスクオフは徐々に沈静化。英ポンド下落の背景には中東と中国あり(3月3日、西原宏一)

 通貨ペアとしては、円高予想も相まって、英ポンド/円の急落が取り上げられていました。その英ポンド/円ですが、昨年(2015年)末から続落し、2月後半には154.73円という安値まで急落しました。

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 つまり、今年(2016年)注目された米ドル/円と英ポンド/円は、2月早々に目標値まで到達してしまったのです。

 そして、その後は調整で、方向感なく乱高下する展開が続いています…。こうした動きは昨年(2015年)も同様でした。

 昨年(2015年)はユーロ/米ドルと豪ドル/米ドルの下落がテーマとなっていましたが、第1四半期にどちらも目標値へ早々に到達しています。

【参考記事】

●ザイFX!で2015年を振り返ろう!(1)2つのショックの背後に大きなテーマあり

●ザイFX!で2015年を振り返ろう!(2)「黒田ライン」意識で伸び悩んだ米ドル/円

■4月以降はNYダウと原油が相場を見極めるカギに 前述のように、今年(2016年)のテーマである米ドル/円と英ポンド/円が第1四半期で早々に目標値に到達した今、4月以降のマーケットは新たなテーマを探ることになります。

 そのテーマ探しですが、注目されるプロダクツ(Products)は2つあります。

 まず、ひとつは原油相場。

 原油下落がリスクオフマーケットを演出し、米ドル/円と英ポンド/円の下落を誘引した側面もあるため、重要となります。

 その原油ですが、3月に入って反発しています。

WTI原油先物 日足(出所:CQG)

 この原油の反発は大きく、Brexitの報道が目立ち、続落していた英ポンドは原油の反発とともに大きく値を戻しています。

英ポンド/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)

 今年(2016年)前半、原油相場は200日移動平均線にずっと上値を抑えられて続落してきました。

 現在も200日移動平均線に上値を抑えられていますが、仮に200日移動平均線を上抜くと、株高、そして、リスクオンのマーケットを誘引することになります。よって、原油相場の動きに注目です。

WTI原油先物 日足(出所:CQG)

 次に注目すべきなのがNYダウの動向。 2月のSQショック時は…
イースターに向けて調整相場入り。通貨高 牽制など売り材料多い豪ドルは急落警戒! ブログ

イースターに向けて調整相場入り。通貨高 牽制など売り材料多い豪ドルは急落警戒!

■イースター休暇前で調整が入りやすい地合い みなさん、こんにちは。

 今週(3月21日~)末から、欧州勢はイースター休暇に入ります。休暇前の為替相場は、今年(2016年)前半トレンドを明確に形成していた相場の調整が入りがち。

 その通貨の筆頭は、前回コラムでもご紹介した豪ドル/米ドル。

【参考記事】

●鉄鉱石価格が急上昇後に急落!その影響受ける豪ドルの反落を警戒!(3月17日、西原宏一)

 豪ドル/米ドルは今年(2016年)1月15日(金)に0.6827ドルの安値をつけてから、ほぼ一方的に上昇。3月18日(木)には0.7681ドルの高値まで到達しています。

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)

 この要因は、前回のコラムでもご紹介したように、オーストラリアの底堅い雇用環境を背景とした堅調なオーストラリア経済、そして、米国株の反発、原油を筆頭とした商品相場の一時的な反発などが挙げられます。

【参考記事】

●鉄鉱石価格が急上昇後に急落! その影響受ける豪ドルの反落を警戒!(3月17日、西原宏一)

 鉄鉱石などの商品価格が堅調さを維持できれば、オーストラリアはある程度の通貨高(豪ドル高)を許容できます。

 しかし、鉄鉱石価格は上げ止まり。

 そして、石炭が反落している状況での通貨高(豪ドル高)進行は好調なオーストラリア経済の足を引っ張ることになります。

■豪中銀が通貨高けん制コメントを頻繁に出すと… そこで、前回のコラムでも紹介したように、まずRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])のデベル総裁補佐が通貨高に関してけん制コメントを表明しています。

【参考記事】

●鉄鉱石価格が急上昇後に急落! その影響受ける豪ドルの反落を警戒!(3月17日、西原宏一)

RBA's Debelle: Says would like a lower AUD (豪ドルはより低い水準が望ましい)

 日本・米国・欧州が通貨に関してのコメントを控えている中、RBAは通貨(豪ドル)に関するコメントを頻発します。

 このスタンスに米国側が批判しているという報道も目立ってきました。

オーストラリア準備銀行(中央銀行)が豪ドル安の誘導とも受け取れる表現を昨年用いたことをめぐり、米国が懸念を示していたことが分かった。米側は自由に変動する為替相場へのコミットメントにあらためて言及し、豪当局に注意を促した。

21日の米財務省の議会報告書によれば、国際通貨基金(IMF)の米国代表事務所は昨年9月の段階で豪州について、「為替レートの望ましい方向に関する当局の公式なステートメントに関する懸念」を表明した。

豪中銀のスティーブンス総裁は7月の政策決定会合後の声明で、豪ドルの「下落の可能性は高く、必要と思われる」との認識を示したが、8月の会合後の声明では「豪ドルは主要商品価格の大幅な値下がりに順応しつつある」と表現を修正した。

出所:Bloomberg

 ただ、オーストラリア当局は米国側に対して周到に根回しが済んでいるのか、今週(3月21日~)は総裁補佐ではなく、総裁であるスティーブンス氏が通貨高(豪ドル高)けん制コメントを表明しています。

「深刻な景気悪化なら他の大半の国々より緩和余地大きい」

「地域経済は改善しており、金融システムはより回復している」

「為替相場の動きが行き過ぎとなっている多少のリスクある」

「通貨高を好む中銀を探すのは難しい」

 RBAは為替市場に介入しているわけではありませんが、RBAからの通貨高(豪ドル高)けん制コメントが頻繁に出るような局面では、マーケットに過熱感が出ていることが多く、時間を置いて、RBAが指摘するとおり、豪ドルは反落する傾向があります。

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)

■豪ドル/米ドルはテクニカル的にも調整を示唆 豪ドル/米ドルに次のようなA、B、Cの3点を取ってみます。

・今年(2016年)の安値である1月15日(金)安値の0.6827ドルをA点

・2月4日(木)高値の0.7244ドルをB点

・2月9日(火)安値の0.6973ドルをC点

 これに対して、フィボナッチ・エクステンションを用いたとき、目標値のひとつとなる161.8%(1.6180)は0.7648ドルになります。

 3月18日(金)高値は0.7681ドルですから、豪ドル/米ドルの上昇相場はいったん調整を演じることが示唆されています。

豪ドル/米ドル 日足(出所:CQG)

 加えて、3月23日(水)には、3DMA(※)を割り込み、テクニカル的には調整相場入りが徐々に濃厚となっています。

(※編集部注:DMAとはDiaplaced Moving Averageのことで、ずらした移動平均線を意味する。たとえば日足の3*3DMAとは、3日単純移動平均線を3日先行させたものになる)

 また、3月23日(水)には原油相場も反落しており、豪ドル/米ドルの調整での急落に注目。

NY原油先物 日足(出所:CQG)

豪ドル/米ドル 日足(出所:CQG)

  豪ドル/米ドル以外に、2016年の第1四半期に注目された通貨ペアと…
鉄鉱石価格が急上昇後に急落! その影響受ける豪ドルの反落を警戒! ブログ

鉄鉱石価格が急上昇後に急落! その影響受ける豪ドルの反落を警戒!

■豪州は資源産業一辺倒から「教育や観光」にシフト みなさん、こんにちは。

 オーストラリアは資源国とも言われ、コモディティ産業の影響を大きく受けています。

 しかし、「商品の時代」とも言われ、好調を維持していたコモディティ産業も中国経済の減速とともに衰退…。

 こうした事態を早期から予測していたオーストラリアは国家をあげて、資源産業一辺倒の国家から「教育や観光」といった産業にシフトする努力を続けてきました。

 その成果が徐々に現れ、オーストラリア経済は改善、雇用は堅調。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利: その他地域主要経済指標の推移)

 この点が中国経済の減速に比例して、経済が下降気味のシンガポールや台湾と違うところ…。

 ただ依然として、通貨としての豪ドルはコモディティ、とくに鉄鉱石価格の推移に大きな影響を受けます。

豪ドル/米ドル 日足(出所:CQG)

■鉄鉱石の調整とともに、豪ドルに反落余地 2016年年初に日経平均を筆頭として、グローバルに株が急落した局面では、リスクアセットである豪ドルも急落しました。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

NYダウ 日足(出所:CQG)

 豪ドル/円は一時77円台、豪ドル/米ドルは0.68ドル台まで急落しましたが、その後、豪ドル/円は86円台、豪ドル/米ドルは0.76ドル台まで急反発しています。

豪ドル/円 日足(出所:CQG)

豪ドル/米ドル 日足(出所:CQG)

 それは、NYダウを筆頭としたグローバルな株の回復もありますが、最大の要因は鉄鉱石。

 40ドルを割り込んでいた鉄鉱石価格が一気に60ドル台まで回復し、それに連れて、豪ドルも急騰しています。

 しかし、一時的に急騰していた鉄鉱石も徐々に値を下げ、現在、50ドル台前半レベルで推移しています。

  鉄鉱石の反落と比較すると、現状の豪ドルは調整が…
原油上昇で市場のリスク環境が好転! 3月期末に向けて「株高・円安」となるか ブログ

原油上昇で市場のリスク環境が好転! 3月期末に向けて「株高・円安」となるか

■原油相場が上昇し、リスク環境が改善 みなさん、こんにちは。

 明日(3月11日)は、メジャーSQ(※)です。

(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている。株価指数先物とオプション取引のSQが重なる日は「メジャーSQ」と呼ばれる)

【参考記事】

●ドラギ総裁公言でECBの追加金融緩和はほぼ確実! ユーロは急落するのか?(3月8日、西原宏一&松崎美子)

 先月(2月)のSQ時は、多くのヘッジファンドが大規模な売り仕掛けを持ち込んだことから、日経平均と米ドル/円が急落したことは記憶に新しいところ…。

【参考記事】

●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)

 ちょうど1カ月前と比較すると、リスク環境はずいぶん改善してきました。

 先月(2月)のG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)、そして中国の全国人民代表大会(全人代)を経て、まず原油相場が値を戻し、3月9日(水)のNY市場では、NY原油先物4月限が前日比4.90%も高い1バレル=38.29ドルで終了。

NY原油先物 8時間足(出所:CQG)

 原油相場が急激に値を戻していることもあり、米国株も堅調で、3月9日(水)のNYダウは36.26ドル(0.2%)高い、1万7000.36ドルでクローズ。

NYダウ 日足(出所:CQG)

 リスク環境を圧迫していた原油相場が急激に値を戻していることから、日経平均、米ドル/円、資源国通貨である豪ドル/円なども値を戻してきています。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

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■ブラック・ロックが米ドル/円の方針を大きく転換 こうした環境下、1月~2月は米ドル/円のダウンサイドに賭けていたヘッジファンド勢のスタンスにも変化が見られます。

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 たとえば、世界最大の資産運用会社、ブラック・ロック。

ドル売り・円買いトレードを「転換」=ブラッロックのリーダー氏

米資産運用会社ブラックロック のグローバル・フィクストインカム担当の最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏は9日、同氏の運用チームが2月に保有していた米ドル売り・円買いのポジションを縮小したことを明らかにした。

リーダー氏は「われわれは逆方向に転換した」と述べ、現在はドルに前向きだと発言した。

リーダー氏は米国株が「完全に」割安とは考えてはいないとの見方を示した上で、前日の会合での「もしかしたら」株式が年内に5─10%上昇するとの自身の発言は予言ではなく、そういうことが起きたらサプライズだと付け加えた。

実際にリーダー氏によると、企業のキャッシュフローの伸びが減速し、自社株買いなど資金調達コストは大きくなって、「株式の上値余地は限られている」ため、リーダー氏が「歴史上最大のアービトラージ(裁定取引)の機会」と呼ぶ期間は終わろうとしているという。

ブラックロックが8日に公表した報告では、リーダー氏が運用責任者を務めるブラックロックの投資信託、ストラテジック・インカム・オポチュニティーズ・ファンド は2月にユーロ、円、ポンドの純持ち高を全て解消した。

リーダー氏は債券市場の利回りが低下して一部ではマイナスになっているため、ハイイールド債と新興国市場への投資配分を増やしたことを明らかにした。

ブラックロックの運用資産額は昨年12月31日時点で4兆6000億ドルに上り、このうち3分の1は債券で保有している。

出所:ロイター

  加えて、多くの米ヘッジファンドは、中国人民元安を見込んだ…
NYダウ崩れずリスクオフは徐々に沈静化。 英ポンド下落の背景には中東と中国あり ブログ

NYダウ崩れずリスクオフは徐々に沈静化。 英ポンド下落の背景には中東と中国あり

■本丸のNYダウ崩れず、センチメントは徐々に改善 みなさん、こんにちは。

 先月(2月)のSQ(※)ショックはマーケットに大きな影響を与え、多くの投資家が日本株への投資にためらいがちとなり、2月後半の日本株と米ドル/円のマーケットは方向感なく、乱高下が続いていました。

(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている)

【参考記事】

●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)

 しかし、今月(3月)に入ってセンチメントは徐々に改善。

 これは「日銀の追加緩和期待と政府の大規模補正予算期待」が背景にあるのですが、もっとも重要なことは先月(2月)にNYダウが崩れなかったこと。

 先月(2月)、ヘッジファンドが日経225オプションのSQをうまく利用して「日経平均と米ドル/円」の暴落劇を演出した後、リスクオフ相場が継続しなかったのは、本丸のNYダウが底堅く推移していたためです。

NYダウ 日足(出所:CQG)

■NYダウは2月SQショックにまったく追随せず… 以前コラムでも何度かご紹介しましたが、金融市場の本丸は米国株であり、昨年(2015年)8月のチャイナショック同様、仮にNYダウが崩れれば、日経平均と米ドル/円は暴落する公算が高かったのですが、NYダウは今回の2月SQショックにはまったく追随しませんでした。

【参考記事】

●ソロスも警告! リーマンショックが再来!? 株安・円高の行方占う2つのポイントとは?(1月14日、西原宏一)

 NYダウはザラ場では、注目の200週移動平均線を下抜けましたが、週の終値ベースではサポートされています。

NYダウ 週足(出所:CQG)

 NYダウは、昨年(2015年)8月のチャイナショックの安値である1万5370ドルにも届かず、反発しています。

 本丸のNYダウが値を戻す中、日経平均もマジノ線(※)である1万6500円をやっと回復し、2月のSQショックは徐々に沈静化しつつあります。

(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 日経平均の回復につれて、米ドル/円もやっと114円台まで値を戻しています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 2月のSQショックでもNYダウが相場の大きなカギを握っていたことを再確認した格好です。

  一方、2016年年初から続落しているのが英ポンド。前回のコラムでご紹介した…