西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

EU離脱で再国民投票実施の可能性浮上! 英ポンド/円は節目の150円突破も視野に!? ブログ

EU離脱で再国民投票実施の可能性浮上! 英ポンド/円は節目の150円突破も視野に!?

■米ドル買い需要高まり、米ドル/円は110円が妙に底堅い みなさん、こんにちは。

 このところの米中通商協議の改善を背景に、上海株、米国株が牽引する形で、グローバルに株は堅調ですが、リスクオフに傾斜する局面も多く見られます。

【参考記事】

●日経平均は買えないが、短期的にドル/円は買ってもいいと考えるワケは?(2月25日、西原宏一&大橋ひろこ)

 たとえば、昨日(2月27日)の相場では、インドとパキスタンの緊張の高まりから、マーケットは一時リスクオフへ。

 米ドル/円は、一時110.36円まで下落しました。

米ドル/円 1時間(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 同日(2月27日)のNY市場では、ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表が「中国の経済モデルに『著しい構造的変化』をもたらす合意を米国は求めている」と議会で証言。

 彼の中国に対する強硬なコメントを受けて、米国株は、やや売りが優勢な展開に。こちらも「リスクオフ要因」で、米ドル/円の売り材料です。

 ただ、このところの米ドル/円は、110円台前半が妙に底堅く、リスクオフに傾斜する報道が相次いでも米ドル買いが引かずに、再び110円台後半に押し上げられています。

 これは、前回のコラムでもご紹介させていただいた、本邦機関投資家と思われる米ドル買い需要の高まりが影響していると想定しています。

【参考記事】

●米中協議進展でリスク環境は徐々に好転。中国人民元安定化が豪ドル反発を後押し!?(2月21日、西原宏一)

■本邦勢の手当て遅れ、米ドル/円は早晩111円回復へ 米ドル/円は、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュで急落したときの安値が104.87円。

 それ以降、反発を続けているのですが、反発を支えた形になっているのが、本邦機関投資家からの米ドル買いです。

 フラッシュ・クラッシュからの反発過程の中で、彼らが米ドル買いを持ち込んだとウワサされ、そのレベルは107.50円、108.50円と徐々に切り上がっています。

 それにしたがって、米ドル/円の下落幅も限定的に。

 ただ、彼らは上値を追うことはなく、あくまでも米ドル/円の反落局面を待っていたのですが、先週(2月18日~)から、その米ドル買い注文が110円台前半まで上がってきており、本稿執筆時点では110.00円がかなり底堅い展開となっています。

 マーケットの憶測では、彼らが米ドル買い注文のレベルを110円台まで押し上げてきたのは、3月期末が近くなったためだとされています。

 既報のように、年初の米ドル/円は、104.87円までの暴落からスタートしています。

 よって多くの機関投資家は、米ドルの反落局面を待つというスタンスをとっていたのですが、そうした思惑とは相違し、米ドル/円は大きな押し目もなく、110円台まで反発。

 結果、多くの本邦機関投資家の米ドルの手当が遅れていることから、3月の期末に向けて米ドル/円は底堅い動きを続け、早晩111円を回復してくるのではないかと想定しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 一方、今週(2月25日~)の…
米中協議進展でリスク環境は徐々に好転。 中国人民元安定化が豪ドル反発を後押し!? ブログ

米中協議進展でリスク環境は徐々に好転。 中国人民元安定化が豪ドル反発を後押し!?

■米中貿易協議進展でリスク環境も徐々に好転へ みなさん、こんにちは。

 北京での協議では米中ともに「進展した」との認識を示したものの、詳細は明らかにはなっていない米中通商協議。

 ただ、トランプ大統領によれば、協議は「極めて順調に進んでいる」とのこと。

 こうした中、不透明感は残るものの「リスク環境」は徐々に好転し、米国株、日本株とも堅調な動き。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 そして注目は、上海総合指数。

 2018年は米国の攻勢の前に好転する見込みもなく、一方的に下落していた上海総合指数ですが、今年(2019年)は続伸しています。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

■米中関係の好転報道で豪ドルは底堅く推移 そして、米中関係の好転の報道に呼応して、底堅く推移している「通貨」が豪ドルです。

 豪ドルは、今年(2019年)1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュでいきなり暴落。

【参考記事】

●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)

 豪ドル/円は70.64円、豪ドル/米ドルは0.6741ドルという極端な安値に到達しましたが、それ以降は、上海総合指数の上昇を横目に反発開始。

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)

 しかし、豪ドルは上海総合指数のように一方的に上昇しているわけではありません。

 2月6日(水)のRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])ロウ総裁の「金利見通しは均衡している」とのハト派コメントで、豪ドルは一時急反落。

【参考記事】

●利上げ予測が霧散した豪ドルは反落開始! 呼応して、米ドル/円もじわじわと下落か(2月7日、西原宏一)

 ところが、現在の豪ドルは、上海総合指数の反発の影響力のほうが大きいようで、上昇を再開しています。

 この豪ドルの反発を後押しした形に…
NYダウ急騰を横目に、米ドル/円も上昇。 米中貿易協議次第でNYダウは急反落も!? ブログ

NYダウ急騰を横目に、米ドル/円も上昇。 米中貿易協議次第でNYダウは急反落も!?

■NYダウは8週連続の陽線引けの勢い みなさん、こんにちは。

 今週(2月11日~)に入っての注目は、米国株の急伸。

 NYダウは、今週(2月11日~)も含めると8週連続の陽線で終了する勢いで、まったく戻しのない急騰を演じています。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 きっかけとなったのは、トランプ政権の株価対策。これが功を奏している模様です。

 振り返ってみれば、NYダウは、昨年(2018年)10月3日(水)に2万6951ドルの高値に到達して以来、急反落。

 12月26日(水)には、2万1712ドルまで急落。

 わずか3カ月弱で5239ドルも急落しています。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

■トランプ大統領の株価対策が功を奏した? このコラムで何度か触れましたが、トランプ大統領は就任以来、米国株の急騰は自分の政策がうまく機能しているからだと、何度も喧伝していました。

【参考記事】

●2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定(2018年12月27日、西原宏一)

 そのため、昨年(2018年)末のように米国株が急落すると、経済政策の失敗としてメディアに攻撃されることになります。

 結果、トランプ大統領は株価対策(?)に乗り出します。

 米国株の急落のきっかけは、米中貿易協議が混沌としたことと、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル総裁のタカ派的なスタンスでした。

 そこでトランプ大統領は、まず、昨年(2018年)12月26日(水)に「米国株はとてつもない買いの好機」であるとコメントし、米国株の急落を抑制します。

 次に、懸念の米中貿易協議ですが、しばらくの間は関係改善を演出します。

【参考記事】

●2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定(2018年12月27日、西原宏一)

 加えて、トランプ大統領はツイッターで、「米経済にとって唯一の問題はFRBだ。彼らは市場に対する感覚がない」とし、FRBを「腕力はあるが、パットのセンスが欠けていてスコアの上がらないゴルファーのようだ」と批判。

 貿易戦争や強い米ドル、壁建設を巡る政府機関閉鎖について理解していないと指摘しました。



 一連のトランプ大統領のFRBに対する口撃が影響したとは言いませんが、FRBのパウエル議長は、いきなりハト派に変貌…。

【参考記事】

●米ドル/円が110円を大きく超えるのは困難!? リスク要因が見え隠れ。中国春節の影響は?(2月4日、西原宏一&大橋ひろこ)

 こうしたトランプ政権の迅速な行動により、米国株は前述のように戻り基調に入り、急反発を演じています。

 問題は、この動きが…
利上げ予測が霧散した豪ドルは反落開始! 呼応して、米ドル/円もじわじわと下落か ブログ

利上げ予測が霧散した豪ドルは反落開始! 呼応して、米ドル/円もじわじわと下落か

■2018年は主要通貨で豪ドルがもっとも下落 みなさん、こんにちは。

 今回は、久しぶりにRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会をきっかけに動意を見せた豪ドルについて。

 以下は、2018年の主要通貨の対米ドルの騰落率です。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 グラフが示しているように、2018年は主要通貨の中で、豪ドルがもっとも値を下げています。

 これは、米中貿易戦争が勃発したことによって上海総合指数が3000ポイントを割り込み、ダウントレンド入りしたことが豪ドルの下落を誘引した形となります。

【参考記事】

●反発は一時的!? 「米中貿易戦争」を背景に中期での豪ドル軟調は変わらないと見る!(2018年9月20日、西原宏一)

上海総合指数 週足(出所:Bloomberg)

 ところが、今年(2019年)に入って、米中貿易戦争は融和しつつあるという報道が目立ちます。

 これには、昨年(2018年)末の米国株の急落に対して、一時的にも米国と中国の間で融和状態を醸し出し、米国株の支えにしようという米政権の思惑が垣間見えるのですが、ともあれ、その演出は米国株にとってかなりポジティブな影響を与えます。

 昨年(2018年)12月26日(水)には、2万1176ドルの安値まで急落していたNYダウは、本稿執筆時点(2月6日)では、2万5000ドル台まで急回復。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 呼応して、フラッシュ・クラッシュで急落していたリスクアセット通貨である豪ドルも急反発。

 1月3日(木)には、豪ドル/円で70.64円、豪ドル/米ドルで0.6741ドルまで急落していましたが、米国と中国の融和期待を背景とした米国株の暴騰に呼応し、あっという間に急騰しました。

 豪ドル/円は79.60円、豪ドル/米ドルは0.7295ドルまで上昇しています。

 すさまじいのは豪ドル/円で、わずか1カ月で9円近く暴騰。

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)

 ただ、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュが典型的なのですが、最近のマーケットは簡単に売られ過ぎ、買われ過ぎの状態に陥る傾向があります。

 マーケット参加者の中では、米国と中国の融和期待だけを背景にした1月の米国株急騰、豪ドル/円の反発はフラジャイル(脆弱)なものではないかと、危惧されていました。

■ロウRBA総裁のハト派的コメントで豪ドル急落 そして、2月5日(火)のRBA理事会では、政策金利を1.50%に据え置き、声明文も予想ほどハト派的ではなく、豪ドルは上昇する場面もありました。

 ところが、2月6日(水)のロウRBA総裁のコメントで一変します。

 「金利見通しは均衡している」。

 昨年(2018年)12月のRBA理事会では、ロウ総裁が声明において「次の金利変更は利下げではなく利上げ」を示唆していましたので、マーケットでは、2019年の10月~12月にRBAの利上げが予測されていました。

 しかし、このロウ総裁のハト派的なコメントにより、RBAの利上げ予測は霧散。

 呼応して、豪ドルは急落。

 本稿執筆時点(2月6日東京時間午後)での豪ドル/円は78.30円、豪ドル/米ドルで0.7135ドルまで急落しています。RBA総裁のコメントで豪ドルの反発局面は終了を迎えたようです。

豪ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足)

豪ドル/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 4時間足)

■豪ドル/円の下落が米ドル/円にも影響… この豪ドル/円の影響を受けたのが、米ドル/円。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)が、ハト派的なスタンスに変更したため、米ドル/円の上値は110.00円程度で限定的です。

 ただ、FOMCのハト派的なスタンスは株にとってポジティブであり、豪ドル/円を筆頭としたリスクアセット通貨は堅調に推移。

 このクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の底堅さが米ドル/円のサポートとなり、なかなか下がらなかったのですが、豪ドル/円が値を下げることに呼応して、米ドル/円もじわじわと値を下げてきています。引き続き、米ドル/円の動向にも注目。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 RBAが中立姿勢に転換したことにより、反落を開始した豪ドル/円の動向に注目です。
FOMCのハト派的な内容に市場は驚き!? 米ドル/円は104円に向けて下落再開へ ブログ

FOMCのハト派的な内容に市場は驚き!? 米ドル/円は104円に向けて下落再開へ

■FOMCは極めてハト派的な内容に みなさん、こんにちは。

 本日(1月31日)未明に、注目のFOMCが開催されました。

【参考記事】

●注目のFOMCは「バイ・ザ・ファクト」に注意! 6週連続陽線のポンド/ドル、1.40ドルへ!?(1月28日、西原宏一&大橋ひろこ)

 今回のFOMCの注目度が高かったのは、先週(1月21日~)末、ウォール・ストリート・ジャーナルが下記のような報道をしていたためです。

FRBのバランスシート縮小、想定より早期終了か

米連邦準備制度理事会(FRB)は、2年前に開始したバランスシートの縮小を予想よりも早い段階で終了することを決める調整に入っている模様だ。最終的なバランスシートの規模も、当初の想定を上回る水準となりそうだ。

出所:WSJ

 この記事を受けて、先週(1月21日~)末のマーケットでは、米ドルが全面安、米国株は急反発しています。

 こうした環境下、日本時間本日(1月31日)未明に発表された、FRB(米連邦準備制度理事会)のスタンスは極めてハト派的なもので、マーケットを驚かせました。

 FOMCでは、FF金利(※)を2.25-2.50%のレンジで据え置き。

 将来の金利変更の判断においては、「Persevere=辛抱強くなる」と表明。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

(Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)

■米国の経済状況によっては量的緩和再開も? マーケットが注目したのが、バランスシートの正常化について、利下げだけでは金融緩和が十分ではない場合には、「バランスシートの規模や構成内容を変更すること(altering the size and composition of its balance sheet)を含めて、すべての緩和手段を講じる用意がある」との文言。

 これは経済状況によっては、「量的緩和の再開」も示唆するといったもの。

 結果、当面、FRBはFF金利だけの金融政策、そして、金融政策の方向性は中立に。

 OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)での利上げ予測は、5月までわずか1.00%に低下。

 極めて、ハト派的なトーン。

 呼応して米国株は上昇し、NYダウは434ドルの反発となりました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円は108.80円近辺、ユーロ/米ドルは1.15ドル台へと、米ドルは総じて軟調な展開に。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

 1月31日(木)のマーケットで、一部のトレーダーの間で話題に…
英ポンド/円はわずか3週間で12円弱反発! 合意なきEU離脱懸念後退で上値余地拡大。 ブログ

英ポンド/円はわずか3週間で12円弱反発! 合意なきEU離脱懸念後退で上値余地拡大。

 今週からコラムを再開させていただきます。

 本年もよろしくお願いします。

■フラッシュ・クラッシュをこなし、米ドル/円はもみ合いへ… 2018年11月~12月のコラムでご紹介させていただいたとおり、2019年の注目通貨の1つは米ドル/円。ターゲットは、まず、105.00円。

 株の動向次第では100.00円割れの可能性もあるというのが、米系のマーケット参加者のコンセンサスでした。

【参考記事】

●2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定(2018年12月27日、西原宏一)

 そして、その最初のターゲットである105円台に、今年(2019年)のマーケットが始まった直後に到達しました。

 1月3日(木)の米ドル/円は、早朝の薄い時間帯にあっという間に104円台まで暴落しています。

 この短時間での急落は「フラッシュ・クラッシュ」の動きとなり、その後の米ドル/円は急速に値を戻す展開。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 本稿執筆時点での米ドル/円は、109.70円で推移。

 このレベルは、今年(2019年)の米ドル/円のスタート時点のレートです。

 過去のユーロ/スイスフランや英ポンド/米ドルで起きたように、一度、フラッシュクラッシュで急落を演じた相場は、当面、方向感のない持ち合い相場に終始する傾向があります。

2012年4月前半のユーロ/スイスフラン 1時間足(出所:Bloomberg)

2016年10月前半の英ポンド/米ドル 1時間足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円の中期トレンドは、変わらず「米ドル安・円高」。

 ただ、前述のように、年初の米ドル/円はフラッシュ・クラッシュで5円超の暴落を演じたため、当面108.00~111.00円での調整相場を演じる公算が高まっています。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

■合意なきEU離脱懸念後退で英ポンドは上昇 そして、その米ドル/円の代わりに、為替相場の主役に躍り出たのが英ポンドです。

 年末、年始の英ポンドは「合意なきEU離脱」懸念が拡大し、続落。

 1月3日(木)に米ドル/円がフラッシュクラッシュを引き起こした局面では、英ポンド/円は、一時131.70円台まで急落しています。

 しかし、急落後の英ポンドは一転して大きく値を戻し、本稿執筆時点では143円台まで急反発しています。

英ポンド/円 日足(出所:Bloomberg)

 その要因は「合意なきEU離脱」懸念の後退。

 後述するように、ゴールドマン・サックスを筆頭に、英ポンドに対する強気、もしくは楽観的なコメントが増えてきました。

ポンドは全面高へ-ゴールドマンが「ソフト」か「ノー」ブレグジット予想

ゴールドマン・サックス・グループは、ポンドが今年すべてのG10通貨に対して上昇する可能性があると指摘する。

英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(ハードブレグジット)のリスクが後退したとみているためだ。

出所:Bloomberg

 たしかに、英ポンド/米ドルは…
英ポンド/円はわずか3週間で12円弱反発! 合意なきEU離脱懸念後退で上値余地拡大。 ブログ

英ポンド/円はわずか3週間で12円弱反発! 合意なきEU離脱懸念後退で上値余地拡大。

 今週からコラムを再開させていただきます。

 本年もよろしくお願いします。

■フラッシュ・クラッシュをこなし、米ドル/円はもみ合いへ… 2018年11月~12月のコラムでご紹介させていただいたとおり、2019年の注目通貨の1つは米ドル/円。ターゲットは、まず、105.00円。

 株の動向次第では100.00円割れの可能性もあるというのが、米系のマーケット参加者のコンセンサスでした。

【参考記事】

●2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定(2018年12月27日、西原宏一)

 そして、その最初のターゲットである105円台に、今年(2019年)のマーケットが始まった直後に到達しました。

 1月3日(木)の米ドル/円は、早朝の薄い時間帯にあっという間に104円台まで暴落しています。

 この短時間での急落は「フラッシュ・クラッシュ」の動きとなり、その後の米ドル/円は急速に値を戻す展開。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 本稿執筆時点での米ドル/円は、109.70円で推移。

 このレベルは、今年(2019年)の米ドル/円のスタート時点のレートです。

 過去のユーロ/スイスフランや英ポンド/米ドルで起きたように、一度、フラッシュクラッシュで急落を演じた相場は、当面、方向感のない持ち合い相場に終始する傾向があります。

2012年4月前半のユーロ/スイスフラン 1時間足(出所:Bloomberg)

2016年10月前半の英ポンド/米ドル 1時間足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円の中期トレンドは、変わらず「米ドル安・円高」。

 ただ、前述のように、年初の米ドル/円はフラッシュ・クラッシュで5円超の暴落を演じたため、当面108.00~111.00円での調整相場を演じる公算が高まっています。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

■合意なきEU離脱懸念後退で英ポンドは上昇 そして、その米ドル/円の代わりに、為替相場の主役に躍り出たのが英ポンドです。

 年末、年始の英ポンドは「合意なきEU離脱」懸念が拡大し、続落。

 1月3日(木)に米ドル/円がフラッシュクラッシュを引き起こした局面では、英ポンド/円は、一時131.70円台まで急落しています。

 しかし、急落後の英ポンドは一転して大きく値を戻し、本稿執筆時点では143円台まで急反発しています。

英ポンド/円 日足(出所:Bloomberg)

 その要因は「合意なきEU離脱」懸念の後退。

 後述するように、ゴールドマン・サックスを筆頭に、英ポンドに対する強気、もしくは楽観的なコメントが増えてきました。

ポンドは全面高へ-ゴールドマンが「ソフト」か「ノー」ブレグジット予想

ゴールドマン・サックス・グループは、ポンドが今年すべてのG10通貨に対して上昇する可能性があると指摘する。

英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(ハードブレグジット)のリスクが後退したとみているためだ。

出所:Bloomberg

 たしかに、英ポンド/米ドルは…
2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。 リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定 ブログ

2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。 リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定

■炭鉱のカナリアの警告どおり米国株暴落 みなさん、こんにちは。

 前回のコラムで、多くの金融関係者がラッセル2000の急落に注目していることをご紹介させていただきました。

【参考記事】

●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)

 その理由は、ラッセル2000の急落が「炭鉱のカナリア」として、再び米国株の急落を警告しているのではないか?という見方が台頭してきたためです。

 以前、公開したコラムでも、このラッセル2000の急落が米国株急落を警告していることを紹介し、実際、10月に米国株が急落したことから、個人的にも通常以上に緊張感をもって、先週(12月17日~)の米国株の動向に留意していました。

【参考記事】

●「炭鉱のカナリア」が米国株急落を警告!? 米ドル/円、クロス円の続落に警戒必要!(10月11日、西原宏一)

 結果は、今回もラッセル2000が炭鉱のカナリアとしてワークしており、今週(12月24日~)の米国株は大暴落しました。

ラッセル2000 日足(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■米国株急落のきっかけはパウエル議長のタカ派発言 この「米国株急落」のきっかけとなったのは、もちろん先週(12月17日~)開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)です。

【参考記事】

●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)

●もし、パウエルFRB議長解任なら株高に!? 2019年のテーマは米国経済失速でドル安(12月24日、西原宏一&大橋ひろこ)

 前回のコラムでピックアップしたとおり、FOMCでのパウエル議長の声明は、ややタカ派的な内容でした。

【参考記事】

●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)

 彼は、トランプ大統領の度重なる圧力に対し、屈することなく利上げを決行。

 声明においては、金融政策に政治は「一切影響しない」とし、「我々が正しいと考える行動を止めるものは何もない」と言い放ちました。

 マーケットがある程度、利上げを織り込んでいたため、12月の利上げ自体は大きな問題ではありませんが、声明においての彼の極めてタカ派的なスタンスは、マーケットとの対話に失敗した結果となり、米国株の下落を加速させました。

FOMCでの利上げは大きな問題ではなかったが、声明でのパウエル議長のタカ派的なスタンスが、結果として米国株の下落を加速させた (C)Bloomberg/Getty Images News

■トランプ大統領のコメントで米国株の下落幅拡大 加えて、米国株の下落幅を大きくしたのがトランプ大統領のコメント。

 トランプ大統領は、「米国経済が抱える唯一の問題はFRBだ。相場感覚がなく、必要不可欠な貿易戦争のほか、米ドル高、国境問題により民主党が政府機関を閉鎖したことすら理解していない」とツイート。

 加えて、ムニューシン財務長官が、市場急落を阻止するチーム(プランジ・プロテクション・チーム)の電話会合を招集したことが、逆に相場の重しとなった可能性も。

 さらには、つなぎ予算法案が成立せず、一部政府機関の閉鎖が長期化の様相を呈してきたことが、マーケット参加者を神経質にしました。

 このように、米国株にとってネガティブな材料が立て続けに飛び出し、特に、12月24日(月)の米国株は急落。

 NYダウは2.9%、S&P500は2.7%、ナスダック総合指数は2.2%急落しました。S&P500は、2017年4月以来の安値まで反落し、弱気相場入り寸前です。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

 原油は、1年半ぶりの42ドル台に急落。

WTI原油先物 日足(出所:Bloomberg)

 米10年国債利回りは、2.74%近辺に低下。

米長期金利(10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 金価格は、半年ぶりの高値に反発。

NY金先物 日足(出所:Bloomberg)

 米ドルは、円とスイスフランに…
2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。 リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定 ブログ

2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。 リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定

■炭鉱のカナリアの警告どおり米国株暴落 みなさん、こんにちは。

 前回のコラムで、多くの金融関係者がラッセル2000の急落に注目していることをご紹介させていただきました。

【参考記事】

●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)

 その理由は、ラッセル2000の急落が「炭鉱のカナリア」として、再び米国株の急落を警告しているのではないか?という見方が台頭してきたためです。

 以前、公開したコラムでも、このラッセル2000の急落が米国株急落を警告していることを紹介し、実際、10月に米国株が急落したことから、個人的にも通常以上に緊張感をもって、先週(12月17日~)の米国株の動向に留意していました。

【参考記事】

●「炭鉱のカナリア」が米国株急落を警告!? 米ドル/円、クロス円の続落に警戒必要!(10月11日、西原宏一)

 結果は、今回もラッセル2000が炭鉱のカナリアとしてワークしており、今週(12月24日~)の米国株は大暴落しました。

ラッセル2000 日足(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■米国株急落のきっかけはパウエル議長のタカ派発言 この「米国株急落」のきっかけとなったのは、もちろん先週(12月17日~)開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)です。

【参考記事】

●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)

●もし、パウエルFRB議長解任なら株高に!? 2019年のテーマは米国経済失速でドル安(12月24日、西原宏一&大橋ひろこ)

 前回のコラムでピックアップしたとおり、FOMCでのパウエル議長の声明は、ややタカ派的な内容でした。

【参考記事】

●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)

 彼は、トランプ大統領の度重なる圧力に対し、屈することなく利上げを決行。

 声明においては、金融政策に政治は「一切影響しない」とし、「我々が正しいと考える行動を止めるものは何もない」と言い放ちました。

 マーケットがある程度、利上げを織り込んでいたため、12月の利上げ自体は大きな問題ではありませんが、声明においての彼の極めてタカ派的なスタンスは、マーケットとの対話に失敗した結果となり、米国株の下落を加速させました。

FOMCでの利上げは大きな問題ではなかったが、声明でのパウエル議長のタカ派的なスタンスが、結果として米国株の下落を加速させた (C)Bloomberg/Getty Images News

■トランプ大統領のコメントで米国株の下落幅拡大 加えて、米国株の下落幅を大きくしたのがトランプ大統領のコメント。

 トランプ大統領は、「米国経済が抱える唯一の問題はFRBだ。相場感覚がなく、必要不可欠な貿易戦争のほか、米ドル高、国境問題により民主党が政府機関を閉鎖したことすら理解していない」とツイート。

 加えて、ムニューシン財務長官が、市場急落を阻止するチーム(プランジ・プロテクション・チーム)の電話会合を招集したことが、逆に相場の重しとなった可能性も。

 さらには、つなぎ予算法案が成立せず、一部政府機関の閉鎖が長期化の様相を呈してきたことが、マーケット参加者を神経質にしました。

 このように、米国株にとってネガティブな材料が立て続けに飛び出し、特に、12月24日(月)の米国株は急落。

 NYダウは2.9%、S&P500は2.7%、ナスダック総合指数は2.2%急落しました。S&P500は、2017年4月以来の安値まで反落し、弱気相場入り寸前です。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

 原油は、1年半ぶりの42ドル台に急落。

WTI原油先物 日足(出所:Bloomberg)

 米10年国債利回りは、2.74%近辺に低下。

米長期金利(10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 金価格は、半年ぶりの高値に反発。

NY金先物 日足(出所:Bloomberg)

 米ドルは、円とスイスフランに…
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炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か

■2018年の米ドル/円の値幅は10円未満… みなさん、こんにちは。

 早いもので、本年(2018年)も間もなく終了。

 振り返ってみれば、2018年の為替相場は極めて値動きの少ない展開に終始しました。

 特に、今年(2018年)の米ドル円の値幅は、本稿執筆時で、わずか9.9円。

 年間の値幅が10円にも満たない、稀にみる膠着相場で1年を終えそうです。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

■2016年の大相場が低ボラティリティを演出 この低ボラティリティを演出したのが、2016年の大相場。

 2016年の為替相場は、6月のBrexit(英国のEU離脱)という歴史的サプライズとなった英国国民投票の結果を受けて、英ポンド/円が75円も急落。

 連れて、米ドル円も急落しました。

 ところが同年11月には、こちらも米大統領選でトランプ氏が勝利をおさめるというサプライズの結果を受け、米ドル円は急騰。

 年末までの1カ月強で約18円も急騰するといった大相場を演じました。

【参考記事】

●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(1) 英国がEU離脱! 英ポンドは二度死ぬ!?

●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(2) トランプ氏当選でまさかのリスクオン到来!

 さすがに、これだけ短期間にBrexitとトランプ米大統領の誕生という歴史的に重要なイベントで乱高下した為替相場はその後、方向性に欠け、ボラティリティが低下。

 為替市場全体のボラティリティの低下に伴い、米ドル/円の値幅も徐々に狭くなり、2018年の米ドル/円は、年間の値幅が10円にも到達しないという、稀にみる膠着相場に陥っています。

米ドル/円 月足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)

■2019年の米ドル/円相場は大きな動きを予想 こうした値動きの乏しいマーケットは、多くのトレーダーの収益を圧迫します。

 しかし、唯一の例外は、オプショントレーダー。

 金融機関のオプショントレーダーは、方向性だけではなく、ボラティリティに対してトレードを行います。

 つまり、今年(2018年)の米ドル/円のように、相場がレンジに陥り始めると、彼らは「さらに米ドル/円相場が膠着すること」にリスクを傾けます。

 結果、今年(2018年)の米ドル/円のように、終始相場が動かなくなると、膠着することに賭けた彼らの収益力は極めて高いものになります。

米ドル/円 月足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)

 しかし、オプショントレーダーにとって収益力の高い、膠着相場が長期に渡って続くことはありません。

 それは、2016年に大きな値幅を伴い、多くの為替トレーダーに多大な収益をもたらした相場が長く続かなかったことと同様です。

 つまり、彼らは、膠着相場を見込んでオプションを売っているわけですが、実際に少しずつマーケットが動意を見せ始めると、売ったオプションを一気に買い戻さないといけないことになります。

 結果、オプションの買い戻し、巻き戻しの動きが始まると、為替市場では突如、ボラティリティが急騰し、米ドル/円も一転して明確な方向性を見せ始めることになります。

 こうした流れから、過去2年間の膠着相場を経て、2019年の米ドル/円相場は大きく変動することが予想されます。

■米ドル/円相場のカギを握るのはFOMC では、米ドル/円が大きく調整するきっかけは何かを探ってみます。

 そのカギを握るのが、FOMC(米連邦公開市場委員会)。

 過去数年間に渡って米ドルの底堅さを演出してきたのは、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げです。

 その利上げが、まだ継続中であるというのが、11月中旬までのマーケットのコンセンサスであり、その意味において、米ドルはさらに続伸するのではないかという意見が大半でした。

 逆説的にいえば、FRBが政策金利を中立と判断した局面で、米ドルは続伸する理由を失い、ピークアウトするとも言えます。

 そして、今年(2018年)最後のイベントとして、マーケットの注目を集めたFOMCの結果が、日本時間本日(12月20日)未明に公表されました。

 まず、FF金利(※)誘導目標を2.25-2.50%のレンジへ引き上げました。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 そして、2019年の利上げ見通しは、前回予測の3回から2回に減少。

【参考記事】

●ハト派色強いFOMCなら米ドル/円は売り! 「黄色いベスト運動」で欧州が景気減速!?(12月17日、西原宏一&大橋ひろこ)

2019年12月FOMCで公開されたドットチャート(出所:FRB)

 これは、ほぼ大方のマーケットの予想通りです。

 ただ、一部のマーケット参加者は、もう少しハト派的なものを期待していたため、一時米ドルは買い戻される展開に。

 次に、注目のパウエル議長の…