西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル/円は104円台を下抜けると101円へ。 今年も10月から米国株のセンチメント悪化 ブログ

米ドル/円は104円台を下抜けると101円へ。 今年も10月から米国株のセンチメント悪化

■米ドル/円は108.50円が強烈なレジスタンスに みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでご紹介させていただきましたが、米ドル/円の108.50円のレジスタンスは、依然、強烈。

【参考記事】

●ドル/円の108.50円は強烈なレジスタンス! 米ドル/円の動きも、英ポンド/円次第か…(9月26日、西原宏一)

 今週(9月30日~)、30日(月)は、本邦の半期末。そして、第3四半期末、月末でした。

 そのため、季節的要因による米ドル買い重要がマーケットに投入され、ジリ高に推移。

 その影響なのか、10月1日(火)の東京市場で、米ドル/円は再び108円台ミドルまで上昇。しかし、今回も高値は108.47円までで失速しました。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 米ドル/円の高値(4月24日)と安値(8月26日)の50%戻し(=108.43円)水準である108円台ミドルの重さを再認識し、ダブルトップを形成して、欧米市場に入ります。

 第4四半期入りした欧米市場は、東京市場とは様変わりしてリスクオフ相場となり、米国株が大きく値を下げました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 呼応して、米ドル/円も下げ幅を拡大し、本稿執筆時点では一時106円台まで急落しています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)


■昨年(2018年)の相場を振り返ってみると… 今年(2019年)10月からの相場を確認するために、昨年(2018年)10月相場を振り返ってみます。

 マーケットでは、第4四半期の米ドル/円は円安になりやすいという意見も多く見られますが、昨年(2018年)10月の米ドル/円は第1週から急落しています。

 昨年(2018年)9月は、日経平均、米ドル/円とも上昇し、米ドル/円は114円台に到達。

 昨年(2018年)年末には(120円は難しいでしょうが)、少なくとも118円に向けて続伸するのでは? という意見が大勢を占めていました。

 ところが実際は、10月4日(木)につけた114.55円を高値に米ドル/円は急反落。

 今年(2019年)、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュの安値である104.87円まで、3カ月で一気に約10円急落しています。

米ドル/円 月足(出所:Bloomberg)

 この米ドル/円の反落は、米国株の急落に追随した展開。

 昨年(2018年)のNYダウは、10月3日(水)に2万6951ドルの高値に到達してから急反落し、それに米ドル/円が追随した流れです。

NYダウ 月足(出所:Bloomberg)

 今回も、NYダウは9月初旬に再び2万7000ドル台に乗せましたが、維持できず、反落。

 そして、10月2日(水)には約500ドルも暴落し、2万6078ドルで引けています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 今回の米国株の…
ドル/円の108.50円は強烈なレジスタンス! 米ドル/円の動きも、英ポンド/円次第か… ブログ

ドル/円の108.50円は強烈なレジスタンス! 米ドル/円の動きも、英ポンド/円次第か…

■米ドル/円の第3四半期の値幅は5円に届かず… 早いもので、来週から10月がスタート。

 振り返ってみれば、第3四半期の米ドル/円のレンジは4.86円と5円幅にも届きません(9月26日現在)。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 今週(9月23日~)、24日(火)のNY市場では、ペロシ米下院議長が正式に大統領弾劾尋問を開始すると発表したことで、一時、「株安・米ドル安・円高」に。

 ペロシ下院議長は、正式な大統領弾劾尋問の開始を同僚の民主党議員らに発表。

 ロシア疑惑では弾劾尋問の開始には至りませんでしたが、少なくともオンラインのブックメーカー(賭け屋)では年内にトランプ氏が弾劾されると賭ける人が42%に急上昇。

 今回の焦点は、バイデン前副大統領を調査するようにウクライナ大統領に圧力をかけたとされる問題。

 トランプ大統領はウクライナへの4億ドル軍事支援停止を命じた理由について、欧州も応分の負担をしていないことに不満だったからだと主張。

 ただ、下院は過半数の賛成で通るかも知れませんが、上院は3分の2の賛成が必要であるため、大統領弾劾尋問自体は議会を通りません。

 このことを、マーケットは理解しているはずなのですが、米ドル/円は一時、107.00円割れまで急落。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 9月25日(水)には、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の電話会談記録の概要をホワイトハウスが公表したことで、結局、米ドル/円は107円台後半まで巻き戻されています。

■米ドル/円は108.50円レベルが強烈なレジスタンスに こうした、大統領弾劾尋問や米中貿易戦争に関する報道も数多く流れるのですが、米ドル/円が下がれば本邦の機関投資家からの米ドル買いが持ち込まれ下げ渋り、108円台では本邦輸出企業による米ドル売りと、本邦機関投資家のヘッジ売りが持ち込まれたことで、108.50円がレジスタンスとなって伸び悩みました。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 前回のコラムでご紹介させていただいたとおり、今年(2019年)のレンジの半値戻しである108.50円レベルは強烈なレジスタンスとなっており、上値が抑えられています。米ドル/円は戻り売りスタンスのままですが、ボラティリティが低いままであるため、ショートポジションを買い戻しながら回転させないと、なかなか値幅が取れません。

【参考記事】

●ECBとFRBは金融緩和も日銀は動かず… 米ドル/円は108円台半ばへ上昇後、反落(9月19日、西原宏一)

 10月に入って第4四半期が始まることにより、米ドル/円のボラティリティが復活するのを期待したいところ。

 一方、ボラティリティを…
ECBとFRBは金融緩和も日銀は動かず… 米ドル/円は108円台半ばへ上昇後、反落 ブログ

ECBとFRBは金融緩和も日銀は動かず… 米ドル/円は108円台半ばへ上昇後、反落

■ECBとFRBは金融緩和に動いた みなさん、こんにちは。

 先週(9月9日~)から本日(9月19日)にかけては、ECB(欧州中央銀行)、FRB(米連邦準備制度理事会)、そして日銀と、重要な金融政策決定会合が開催されました。

 まず、先週(9月9日~)開催されたECB理事会。

 中銀預金金利を0.1%引き下げてマイナス0.5%とし、11月1日(金)から月額200億ユーロの債券購入を再開すると発表。

 ECBは2019年と2020年の経済成長予測を下方修正し、2021年までのインフレ見通しを引き下げました。

 ドラギ総裁は、リスクは依然として下方向にあると指摘。

 ECBの債券購入の金額は、コンセンサスの300億ユーロまでとどかなかったのですが、基本、満額回答。

 結果、ゴールドマン・サックスを筆頭に、米系参加者が想定していたとおり、ECB発表後は「バイ・ザ・ファクト」で、ユーロは買い戻し優勢となりました。

9月11日~13日のユーロ/米ドル 1時間足(出所:Bloomberg)

■FOMCでは2会合連続で利下げ決定 次は、日本時間、本日(9月19日)未明に発表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)。

 FOMCは、FF金利(※)の誘導目標レンジを1.75~2.00%に設定し、従来から0.25%引き下げました。利下げは、これで2会合連続となります。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

※誘導目標レンジの上限を掲載

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!が作成)

 ただ、これはコンセンサスどおりで、問題は金融緩和が継続されるかどうかですが、その必要性を巡っては当局者の間で意見が割れているようです。

 今回のFOMCでは、前回に続き、カンザスシティ連銀のジョージ総裁とボストン連銀のローゼングレン総裁が金利据え置きを主張。

 一方、セントルイス連銀のブラード総裁は0.5%の利下げを主張。

 結果、ややタカ派なトーンで、米ドル/円は一時108.47円まで上昇。

 ただ、108.50円というのは、今年(2019年)の米ドル/円の高値(4月24日)と安値(8月26日)の50%戻し(=108.43円)のレベルであり、本邦輸出企業がまとめて米ドル売りを置いているというウワサもあって上げ渋り。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 そして、最後は…
ボルトン氏解任、対中関税引き上げ延期で リスクオン! でも、この相場が続くか疑問 ブログ

ボルトン氏解任、対中関税引き上げ延期で リスクオン! でも、この相場が続くか疑問

■ボルトン大統領補佐官解任でリスクオンに? みなさん、こんにちは。

 今週(9月9日~)のマーケットの注目は、10日(火)にトランプ大統領がボルトン氏を解任したという報道。

米大統領、ボルトン氏を解任 イラン・アフガン政策などで対立

トランプ米大統領は10日、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任したことを明らかにした。

出所:ロイター

 ボルトン大統領補佐官の解任は、トランプ政権から最大のタカ派が去ったことを意味します。


トランプ大統領がボルトン補佐官を解任。最大のタカ派が去ったことで、トランプ政権はどういった動きを見せるのか… (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 同時にトランプ大統領が長らく望んでいた、イランとの交渉開始への道も開けてくるとの報道が目立ちます。

 なぜなら、イランとの交渉開始についてはボルトン氏が激しく抵抗していたから。

 英フィナンシャル・タイムズ紙はこれを「世界平和の見込みが著しく高まった」との表現で報道しています。

火曜日に世界平和の見込みが著しく高まったと言っても、過言ではないだろう。

トランプ氏は好んで、側近らに向かって「ジョンが決めていたら、我々は今頃、4つの戦争を抱えていた」と言っていた。

出所:英フィナンシャル・タイムズ​紙の原文を基に筆者翻訳

 この報道を聞いた時、個人的に思い出したのがイランを空爆する寸前でトランプ大統領が攻撃命令を撤回した出来事。

 そのイランは、ボルトン氏解任で、即声明を発表。

ボルトン氏解任、「最大圧力」戦略の失敗示す=イラン高官

出所:ロイター

 ここでの注目は、英フィナンシャル・タイムズ紙が述べているように、ボルトン氏の解任により、「世界平和の見込みが著しく高まった」ことになり、それによって、リスクオン相場に回帰できるかどうかという点。

■米中通商協議は、中国が時間稼ぎで攻撃回避? ボルトン氏解任報道がマーケットにサプライズを与えてまだ1日しか経っていないのですが、ボルトン氏の解任が影響しているのか、米中通商協議は下記のように進展が見られました。

トランプ米大統領は11日、米政府が2500億ドル相当の中国製品に対する関税の引き上げ時期を10月1日から10月15日に延期することで合意したと発表した。

出所:ロイター

 繰り返しになりますが、トランプ大統領は来年(2020年)、大統領選挙を控えているため、米国株の下落を誘引するような強烈な外交政策を取ることはできなくなります。

 逆に中国にとっては、今年(2019年)いっぱいのらりくらりと時間稼ぎをしていれば、トランプ政権からの攻撃を避けることができるといえます。

 今回の関税引き上げ延期は、中国が建国70周年を迎えることが理由のひとつのようですが、見方を変えれば、中国の時間稼ぎがうまくいっているともいえます。

 個人的な印象は、また延期なのか?というもの。

 米国の友人は、こうしてなんだかんだと理由をつけて関税引き上げが延期されていくうちに2020年に入ってしまうとコメントしていました。

 どちらにせよ…
香港デモは逃亡犯条例案撤回で一時収束! 今、ユーロ/米ドルに注目するワケとは? ブログ

香港デモは逃亡犯条例案撤回で一時収束! 今、ユーロ/米ドルに注目するワケとは?

■香港行政長官が逃亡犯条例案の撤回を表明 みなさん、こんにちは。

 今週(9月3日~)個人的にサプライズだったのが、香港行政長官が逃亡犯条例案を撤回した事。

香港行政長官、逃亡犯条例を撤回へ

香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は4日、香港政府トップの林鄭月娥・行政長官が同日中に「逃亡犯条例」改正案の正式な撤回を発表する見通しだと報じた。

出所:ロイター

 このキャリー・ラム行政長官による「逃亡犯条例」改正案の正式撤回にともなう株の反発は、NY市場も継続。9月4日(水)のNYダウは、前日比237ドル高の2万6355ドルでクローズしました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 今回のデモは、個人的に長期化すると見ていたので、突然の正式撤回はサプライズ。

 ただ、この撤回は、9月11日(水)~12日(木)にかけて予定されている「一帯一路」サミット2019の開催地が香港であることが影響したと見る参加者が多数です。

 つまり、香港当局は一時的に休戦させようとしたと言えます。

■香港デモいったん収束で株価は反発 キャリー・ラム行政長官が発表した正式撤回により、ボールは政府から民衆側に投げられた形。

 ここで、民衆側である香港市民の5つの要求を確認してみます。

(1)逃亡犯条例改正案の完全撤回

(2)警察と政府の市民活動を「暴動」とする見解の撤回

(3)デモ参加者の逮捕、起訴の中止

(4)警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施

(5)林鄭月娥(キャリー・ラム)の辞任と民主的選挙の実現

 改正案の完全撤回は勝ち取りましたが、彼らは5つの要求の実現に向けて動いているので、民衆側は戦い続けるのだろうと見る参加者が多数です。

 民主活動家のアグネス・チョウ氏も、条例の撤回表明について、「喜べません。遅すぎました」とし、「これからも戦い続けます」と決意表明しています。

条例の撤回は喜べません。遅すぎました。


この3ヶ月間、8人が自殺。

3人が警察の暴力によって失明。

2人がナイフを持つ親北京派に攻撃され、重傷。

1000人以上逮捕。

100人以上起訴。

怪我した人は数えきれないです。


私たちは、5つの要求を求めています。これからも戦い続けます。

— 周庭 Agnes Chow Ting (@chowtingagnes) 2019年9月4日 ただ、香港のデモがいったん収束したことによって、ハンセン指数のみならず、グローバルに株が反発。

香港ハンセン指数 日足(出所:Bloomberg)

 いったん調整相場の局面に入りそうです。

 過去数週間、香港のデモや…
米中当局間で展開される「ライアーゲーム」⁉ ドル/円は中期的に101円台へ向けて続落か ブログ

米中当局間で展開される「ライアーゲーム」⁉ ドル/円は中期的に101円台へ向けて続落か

■米中貿易戦争が再び過熱 みなさん、こんにちは。

 先週(8月19日~)、23日(金)、多くのマーケット参加者は、ジャクソンホールでのFRB(米連邦準備制度理事会)、パウエル議長の講演に注目していました。

 ところが、米中貿易戦争の過熱がマーケットを大きく動かし、パウエルFRB議長の講演がマーケットに与える影響は、ほぼゼロという結果に。

【参考記事】

●1月のフラッシュクラッシュとの違いは何? ドル/円は窓を埋めたが中期的には101円へ!(8月26日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米中貿易戦争の加熱を引き起こしたのが、中国。

 パウエルFRB議長の講演前というタイミングで、中国が米国への報復として追加関税を発表。

 追加関税は、9月1日(日)と12月15日(日)の2回発動。

 9月1日(日)は、米国産原油に10%課税。12月15日(日)には、米国の自動車や自動車部品への25%課税を再開するといった内容でした。

 これに対し、間髪を入れず、トランプ大統領は中国の関税措置に対応するとコメントしました。

 その発表が、なかなか強烈。

 「対中関税率、残り3000億ドルに対する10%関税を15%へ、10月1日(火)から、25%の関税を30%に引上げへ」

中国が米国への報復として追加関税を発表すると、間髪入れずに、トランプ大統領は対中国への関税率を引き上げるというように、米中貿易戦争は再び過熱  (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 この発表を受けて、週明け(8月26日)の日経平均は暴落、米ドル/円は一時、年初来安値を更新して、104.46円に急落しています。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 ところが、この流れが一変します。

 トランプ大統領が、「中国から2回の電話を受けた。中国は取引を望んでいる」と発言したとの報道で、米ドル/円は急反発(高値は105.99円)。

 ただ、中国は電話協議を否定(米ドル/円は105円台前半まで急落)。

 しかし、トランプ大統領が、「米国が中国と最高位レベルで電話会談した」と発言したことで、米ドル/円は105.50円~106.50円で方向感なく乱高下しました。

米ドル/円 2時間足(出所:Bloomberg)

■米国と中国当局のコメントを整理すると… NYダウも、2万6000ドルを挟んで激しく上下するマーケットが続いています。

 ここで、米国と中国当局のコメントを整理してみます。

 繰り返しになりますが、トランプ大統領は8月26日(月)、中国側から「米国の貿易担当トップ」に「交渉の席に戻ろう」と電話で伝えてきたと主張。合意成立に中国が必死になっていると語ったとの報道がありました。

 しかし、これに関しては「中国政府内で何を指しているか理解した者はいなかった」とブルームバーグは報じています。

 それどころか、中国側が圧力に屈しているかのようにトランプ氏が述べたことで、中国はトランプ氏に抱いていた最悪の不安を確認したとしています。

 つまり、合意を成立させるには、トランプ氏は信用できないとの懸念を持っていると結論づけています。

 結果、トランプ大統領なのか、中国側なのかはわかりませんが、両者の意見はかみ合わないまま。

 シンプルにいえば、どちらかがウソをいっているという「ライアーゲーム」が繰り広げられていることになります。

 米中貿易協議は…
英ポンド大混乱か。合意なき離脱の高まり がEU離脱取り止めの可能性を高める!? ブログ

英ポンド大混乱か。合意なき離脱の高まり がEU離脱取り止めの可能性を高める!?

■米ドル/円が105円ブレイクに失敗した要因とは? みなさん、こんにちは。

 先週(8月12日~)の12日(月)、13日(火)の2日間に渡って、米ドル/円の105.00円ブレイクを試みたマーケットですが、ブレイクに失敗して反発しています。

米ドル/円 2時間足(出所:Bloomberg)

 要因は2つ。

 まず、105.00円に、オプションからのまとまった米ドル買い注文があったこと。

 2つ目は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と憶測されている本邦機関投資家による大口の米ドル買い注文があったこと。

 ただ、今週(8月19日~)に入り、オプションからの105.00円の米ドル買い注文は、大口のオプションが行使期限となったことにより、多くが消滅。

 今後、105.00円をサポートすると思われるのはGPIFだけというのがマーケットのコンセンサスになりつつあります。

 今のところの戻り高値は106.70円。

 これは、直近高値と安値の38.8%戻し(=106.69円)水準となり、戻りは次第に重くなってきています。そして、50%戻しは107.19円、61.8%戻しは107.70円となっています。

 よって、米ドル/円は110円台どころか、108円台も次第に遠くなってきています。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 今後も、米国の金利低下が見込まれることもあり、米ドル/円の戻りは限定的。

■英議会再開に向けてブレグジット議論が活発化 先週(8月12日~)から、米ドル/円に大きな動きはないものの、神経質に動いているのが英ポンド。以下は、英国の今後の主要イベント。

 9月3日(火)に英議会が再開されます。

 ブレグジットに関してさまざまな憶測が飛んでいますが、基本はボリス・ジョンソン首相の戦時内閣(ウォーキャビネット)誕生により、合意なきEU離脱の可能性が高まっており、英ポンドは戻り売りという論調が増えています。

【参考記事】

●ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!(7月25日、西原宏一)

●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 ただ、下記のように英ポンドのショートポジションをスクエアにするヘッジファンドも。

ポンド売り持ちブルーベイが解消-ジョンソン政権不信任、総選挙予測

ヘッジファンド運営会社ブルーベイ・アセット・マネジメントは、英国の政治的混乱の結果、欧州連合(EU)からの離脱期限が再び延期され、総選挙が行われる可能性が最も高いと予想し、3年間続けてきたポンドのショート(売り持ち)ポジションの解消を決めた。

出所:Bloomberg

 現在、ウェールズ中部に位置するブレコンの予備選で保守党が議席を失ったことから(※)、保守党から2人造反が出れば、9月3日(火)にも内閣不信任投票が可決する可能性があります。

(※執筆者注:勝ったのはEU離脱取りやめを前面に押し出した自民党)

 それから、14日以内に「挙国一致内閣」ということで、EU残留派を首相とする内閣が成立すれば、解散総選挙を約束することで、EU(欧州連合)から離脱延期をとりつけることが可能となります。暫定首相候補には、労働党のコービン党首が有力です。

 ただ、現在は…
米国債に逆イールド発生で米景気後退か? NYダウは800ドル安! 米ドル/円は…!? ブログ

米国債に逆イールド発生で米景気後退か? NYダウは800ドル安! 米ドル/円は…!?

■アルゼンチン情勢、香港デモなどリスクオフ要因多数… みなさん、こんにちは。

 今週(8月12日~)は、多くのリスクオフ要因が飛び出し、リスクアセットの本丸である米国株が大幅下落。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 まず、8月12日(月)の海外市場では、アルゼンチンと香港の情勢が混乱へ。

 アルゼンチンで行われた大統領予備選で、現職のマクリ大統領が、ポピュリストの野党候補、フェルナンデス元首相に予想外の大差をつけられて2位となったことで、マクリ大統領の進めてきた市場寄りの経済政策から離れ、通貨や資本の統制への回帰を示唆するではないか?との懸念が台頭。

【参考記事】

●アルゼンチンでトリプル大暴落! 大統領予備選で野党候補圧勝し、またデフォルト!?

 結果、アルゼンチン資産は総崩れ。

 アルゼンチンペソは対米ドルで、一時30%超の急落。

 CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場では、5年以内のデフォルト確率が75%を示唆しました。

アルゼンチンペソ/米ドル 日足※通常は「米ドル/アルゼンチンペソ」ですが、アルゼンチンペソの下落をわかりやすくするため、「アルゼンチン/米ドル」のチャートを掲載しています。

(出所:Bloomberg)

メルバル指数 日足(出所:Bloomberg)

 これは、大きなリスクオフ要因です。

 一方、香港国際空港は8月12日(月)夕方、この日の残りの全便を運休にすると発表。

 デモ隊によるメインターミナルでの抗議活動は4日目に入り、6月上旬のデモ開始以来、香港経済にとって最大の混乱に拡大しました。

■米中貿易戦争も沈静化せず、米国株は急落 さらに、米中貿易戦争も沈静化せず。

 米当局が8月1日(木)に発表した追加関税第4弾の中で、一部製品については、9月1日(日)から12月15日(日)まで発動を延期すると報道されたことから米国株は一時反発。

 ただ、この一部製品というのは、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオゲーム機、玩具といったものであり、新学期を控えた学用品の購入やクリスマスショッピングに配慮したことがうかがえます。

 これは、アップルにとって朗報。

 9月20日(金)発売ともウワサされている新型iPhoneの需要がもっとも高まる期間を、関税の影響を受けずに販売できることになるためです。アップル株は一時5.8%急騰しました。

 つまり、この延期は米国の都合で延期したものであり、米中の通商協議に何らかの発展があったわけではありません。

 加えて、ナバロ大統領補佐官が、トランプ大統領は貿易協議で中国に譲歩する用意はないと、指摘。

 結果、追加関税第4弾の中で、一部製品については12月15日(日)まで発動を延期するという報道での反発は1日も持たず、米国株は続落しました。

 NYダウは、過去数回、ブルトラップを形成して急反落していますが、今回も前回の高値を大きく上抜いて、7月16日(火)には、一時2万7398ドルまで急伸。

 しかし、2万7000ドル台での滞空時間は短く、前述のアルゼンチンの混乱などもあり、2万7000ドルを割り込むと、一気に2万5400ドル台まで急反落しています。

 結果、今回もブルトラップとなって、米国株はトップアウトした可能性が高まっています。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 そして、今週(8月12日~)の米国株の中でも…
NZ中銀が0.50%大幅利下げのサプライズ! ドル/円は中期的に100円への流れ変わらず ブログ

NZ中銀が0.50%大幅利下げのサプライズ! ドル/円は中期的に100円への流れ変わらず

■NZ中銀が予想外の0.50%の利下げを実施 みなさん、こんにちは。

 8月7日(水)の海外市場では、世界経済の先行き不透明感が増す中で、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])、インド、タイの中央銀行が政策金利の引き下げを決定。

 その中でもサプライズだったのが、RBNZ。

 8月7日(水)のRBNZの金融政策決定会合に関して、金利先物市場では0.25%の利下げを100%織り込んでいました。

 しかし、RBNZの発表は0.25%ではなく、0.50%の大幅利下げ(これで政策金利は1.00%に)。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!が作成)

 RBNZの発表によれば、政策金利の大幅引き下げが雇用とCPI(消費者物価指数)の目標達成には必要とのこと。

 そして、マーケットが驚きを持って迎えたのが、RBNZのオア総裁のコメント。

「われわれは1%だが、他の多くの諸国が1%を下回り、ユーロ圏とスウェーデン、日本がいずれもマイナス金利を採用する状況を見れば、われわれがマイナス金利を使わざるを得なくなる可能性は間違いなくあり得る」

 つまり、将来的にはマイナス金利も避けられない恐れがあることを示唆。

 これにマーケットは驚き、NZドル/米ドルは一時、0.6378ドル、NZドル/円で67.57円の安値まで急落しました。

NZドル/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 4時間足)

NZドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 4時間足)

 当コラムで何度か取り上げた、英ポンド/円同様、今回のNZドル/円の下落も、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下値余地をさらに拡大させる要因となっています。

【参考記事】

●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)

●ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!(7月25日、西原宏一)

 現在、ECB(欧州中央銀行)や、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])も緩和へとシフトしており、グローバルに多くの中央銀行は金融政策を早急に緩和へとシフトしています。

 FRB(米連邦準備制度理事会)も…
ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」 発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ ブログ

ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」 発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ

■FOMCは予想どおり0.25%の利下げを決定 みなさん、こんにちは。

 2019年8月1日(木)日本時間未明、FOMC(米連邦公開市場委員会)はコンセンサスどおり、0.25%の利下げを決断。さらに、年内に追加利下げに動く可能性を示唆しました。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!が作成)

 しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」とコメント。

 これでNYダウが一時、前日比400ドル超下げたのですが、次にパウエル議長が「一度きりの利下げではない」とコメントしたため、株の下落幅は縮小。

パウエル議長はFOMC後の会見で、「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」としながらも、「一度きりの利下げではない」と発言。NYダウは大幅下落後に反発する展開に… (C)Bloomberg/Getty Images News

 結局、7月31日(水)のNYダウは、前日比333ドル安で終了しました。

 結果、FOMCは利下げはしたものの、パウエル議長のマーケットとのコミュニケーションがうまくいかなかったこともあり、NYダウは久しぶりに2万7000ドルを割り込んで取引を終えています。

 7月16日(火)に2万7398ドルの高値に到達して以来、2万7000ドル台を維持するも伸び切らず。FOMCの結果を受け、既報のように終値で333ドル急落し、2万6864ドルと2万7000ドル台を割り込んで取引を終えました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 NYダウは、ブルトラップとなって反落することが多いのですが、今回も前回の高値である2万6695ドル(4月23日)を週足終値ベースで割り込んでくると、再びブルトラップになって反落する可能性が高まるので要注意です。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

■米国株が下がれば、リスクオフ相場到来へ 仮に米国株が下がれば、リスクオフで為替はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が下落する公算が高まります。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 そして、クロス円の中で、下落幅が一番拡大する可能性が高いのが、前回のコラムでピックアップした英ポンド/円。

【参考記事】

●ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!(7月25日、西原宏一)

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 先週(7月22日~)に続き…